高分子論文集
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35 巻, 8 号
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  • 森川 洸, 天野 高男
    1978 年 35 巻 8 号 p. 471-476
    発行日: 1978/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ塩化ビニル (PVC) の酸化的熱分解における有機ホウ素化合物の作用機構を, テトラリンの酸化およびテトラリンヒドロベルオキシドの熱分解に対する有機ホウ素化合物の効果から検討した. ホウ酸メチル, ホウ酸エチレン, フェニルボロキシンなどは, テトラリンの酸化反応において酸素の吸収, 過酸化物の生成を抑制し, 又, テトラリンヒドロベルオキシドの熱分解反応においては活性ラジカルを発生せずに熱分解を促進する. 一方, これらの化合物はPVCの酸化的熱分解を抑制する. これはテトラリン, テトラリンヒドロベルオキシドの反応において見られたのと同様の作用に基づくものと考えられる. なお, n-ブチルボロキシンはPVCの酸化的熱分解を促進する. この効果は, n-ブチルボロキシンの酸化により生成する過酸化物のラジカル分解促進作用に基づくものと考えられる.
  • 古川 薫, 吉崎 修
    1978 年 35 巻 8 号 p. 477-485
    発行日: 1978/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    カプロラクタム (CL) 1molに対し初期添加水が0.3mol以下と, 粘度安定剤として酢酸, ブチルアミン又はこの両者の0.05mol以下を含む組成で, 重合温度が241-275℃の実用的な密閉系の重合条件と反応速度の相関を見いだすため研究を行った. 反応機構としてCLの加水分解による開環反応, NH2基とCOOH基との縮合反応, NH2基へのCLの付加反応の三つの主反応が競争的に起こり, いずれの反応にもCOOH基が触媒作用をする型が妥当なことがこれらの粘度安定剤の共存によっていっそうはつきりした. 直鎖分子についてはFlory分布を仮定し, 末端基とCL変化率の実測値より各種反応について多くの実験例に合うようにコンピューター計算により最適反応速度定数を決定した. ここに得た速度定数と平衡定数をパラメーターとして, 初期組成を設定すれば, CL末端基および数平均重合度の時間的変化が理論的に求められるようになった. 各主反応の見掛けの活性化エネルギーが得られた.
  • 岩崎 博四, 荻野 安弘
    1978 年 35 巻 8 号 p. 487-492
    発行日: 1978/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    任意の使用条件下での複合フィルムの酸素透過量および透湿量を複合フィルムの構成と各素材の基礎物性値のみから計算する方法について検討し, これをエチレン-ビニルアルコール共重合 (EVA) ラミネートフィルムに適用した結果, 基礎物性として, (1) 平衡水分率, (2) 透湿量の湿度依存性, (3) 水分率と酸素透過量との関係, (4) 酸素透過量の酸素分圧依存性, の4項目の測定を行えば, 任意のラミネート構成および使用条件のもとでのEVAラミネートフィルムの酸素透過量と透湿量を計算できることが明らかとなった.
  • 石田 紘靖
    1978 年 35 巻 8 号 p. 493-499
    発行日: 1978/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ-1-アリール-1,3-ブタジエン類のミクロ構造をNMRおよびIR測定から検討した. ラジカル重合ポリマーにおいては, トランス-1,4構造が約60-70%で支配的であり, カチオン重合ポリマーにおいては, 3,4構造が約70-80%で支配的であるが, 不飽和度は, 50-60%と低かった. ポリ-1-フェニルブタジエンにおいては, 少量の1,2構造が存在することが確認された. その他のポリマーにおいては, 置換基の影響はほとんど見られなかった. カチオン重合ポリマーについては, 重合溶媒, および重合温度のミクロ構造への影響についても検討した.
  • 佐藤 守之, 飯島 忠利, 内田 高雄, 横山 正明
    1978 年 35 巻 8 号 p. 501-507
    発行日: 1978/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ビス (3-アミノフェニル) アルキルホスフィンオキシドと無水トリメリット酸からN, N′-ビス (4-カルボキシフタルイミド) -3,3′-ジフェニルアルキルホスフィンオキシド (BCIAP) を合成し, これと芳香族ジアセトキシ化合物とのアシドリシスによって含リンポリエステルイミドを合成した. また, その反応条件についても検討を加えた. 得られたポリマーはDMSO, 濃硫酸などに可溶で, DMSO中 (0.2g/dl), 30℃で測定した還元粘度は0.07-0.29であった. 熱分析の結果, ポリマーは空気中では2段階で分解したが, 窒素中では1段階で分解した. 又, 窒素中での熱分解の活性化エネルギーは33-80kcal/molであった. いずれのポリマーも炎の外に出すとただちに消火する程度の自己消炎性を示した. 600℃以上のポリマーの熱分解残留物のIRスペクトルにはほとんどの吸収が見られなかった.
  • 能美 隆, 真鍋 征一, 上出 健二, 河合 徹
    1978 年 35 巻 8 号 p. 509-516
    発行日: 1978/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    高分子多孔膜の気体透過係数P (P1, P2) (P1, P2は膜の表裏面の圧力) の実測値を用いて, 3および4次の平均孔径 (r3およびr4) および孔径頻度分布関数N (r) (rは孔半径) を定める解析法を確立した. この解析法を利用すると, 気体透過が自由分子流れで近似できるときにはP (0, 0) (≡lim P1→0, P2→0 P (P1, P2)) と空孔率Prとからr3を, 又, 粘性流れで近似できるときにはP (P1, P1) =C1P1と表示した時のC1, C2の値からr4を, C1Prの値からr3を, C2Prとから (r3r4) 1/2をそれぞれ評価できる. 又, 上記2種の流れが混在する場合のP (P1, P1) からN (r) を決定できる. 円筒状貫通孔を持つ多孔膜について, この解析法で得たr3, r4は電子顕微鏡 (SEM) で得た値と一致した.
  • 筒井 哲夫, 中野 寛文, 田中 隆一, 田中 武英
    1978 年 35 巻 8 号 p. 517-524
    発行日: 1978/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリアクリル酸とポリビニルビロリドンから成る分子間水素結合を介しての高分子間コンプレックス膜を成分高分子の組成を変えて, (a) ジメチルスルホキシド均一溶液より製膜する方法, (b) 水-エタノール混合溶媒中であらかじめ高分子間コンブレックスを形成させた後製膜する方法の二つの手法で作成した. 固体膜中の分子鎖間水素結合の量をポリピニルピロリドンのC=O伸縮振動バンドの水素結合形成に伴うシフトから知ることができ, (a) の膜中においてより, (b) の膜中により多くの分子間水素結合が形成されていることが分かった. 動的粘弾性の測定を行い, (a), (b) 両方の膜とも両成分高分子は均一に混合していることが分かり, 又, (b) の膜の主分散温度は, (a) の膜より同一組成で比較して最大50℃高いことを見いだした. この現象は (b) の膜では高分子間コンプレックスとしての規則構造がよく発達していることによると解釈した.
  • 玉置 克之, 稲毛 貴子, 河内 稔子, 西野 潤, 坂口 康義
    1978 年 35 巻 8 号 p. 525-533
    発行日: 1978/08/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    水溶液中における中性添加物と種々のモノ, ジ, 又は高分子カルボン酸との相互作用を電位差滴定により検討した. 一般に低分子カルボン酸水溶液のpH値に与える中性添加物の効果は小さかった. 高分子カルボン酸の場合も又, 中性低分子の効果は小さかった. しかし, 中性高分子は多くの高分子酸の滴定曲線に影響を及ぼした. これらの結果から, 中性添加物と高分子カルボン酸の相互作用において2個以上の構造単位の共同作用が重要な役割を演じていると考えられる. そのことはこの系の粘度変化からもうかがえる.
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