高分子論文集
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36 巻, 7 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 須藤 新一, 藤村 敏一, 山口 和則
    1979 年 36 巻 7 号 p. 429-435
    発行日: 1979/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    カレンダー加工におけるシート厚予測の基礎として, 拡大流ダイス型押出のシート厚をエネルギー収支を基に解析し, 実測と比較して前提の適否と応用の可能性を考案した. その結果, 上流のずり流動エネルギーの記憶効果, 慣性のシート厚に対する影響は無視しえたが, 流入部で蓄えられるエネルギーの影響は大きな部分を占めた. シート厚の実測値は計算値よりやや大きく接着効果が考えられたが, 一定比を示した. けん引流動による速度分布変化を考慮すれば, 本解析法はカレンダー加工に適用可能であろう.
  • 増田 精造, 松永 勇治, 太田 忠甫
    1979 年 36 巻 7 号 p. 437-445
    発行日: 1979/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    アクロレインオキシム (AOM) の熱および水酸化リチウム触媒重合を水溶液中で行い, 速度式としてRp∝ [(AOM) 2~3] 1.5 (熱重合) およびRp∝ [(AOM) 2~3] 1.08・ [LiOH] 0.94 (触媒重合) を得た. 重合の開始種は, 熱重合では会合性モノマーよりイオン解離で, また触媒重合ではモノマーと触媒との反応で生成するCH2=CH-CH=N-Θである. 生長反応は塊状および有機溶媒中と異なり, フリーイオン機構で進行し, 安定ポリマーは水およびモノマーへの連鎖移動で主として生成し, 低分子量 (1000~2000) である. 水への連鎖移動の結果生成するOHΘによる, ポリマー側鎖のオキシム基への付加が起こる. この副反応は触媒重合で顕著であり, その結果ポリマーは分枝および環化構造を有し, 有機溶媒に不溶性となる.
  • 漆崎 美智遠, 相田 博
    1979 年 36 巻 7 号 p. 447-453
    発行日: 1979/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    窒素気流下でN- (p-置換フェニル) マレイミド-スチレン共重合体の熱安定性を検討した. 共重合体は約200℃まで安定であるが, それ以上では, 初めに主鎖の切断が起こる. 重量減少は350℃前後より著しくなり, N- (p-アセトキシフェニル) マレイミドースチレン共重合体およびN- (P-カルベトキシフエニル) マレイミドースチレン共重合体を除く, 他の共重合体では橋かけは生じない. p-置換基が電子吸引性であるほど, 主鎖が切断しやすく, 重量減少も多い. さらにN-フェニルマレイミド-スチレン共重合体は無水マレイン酸-スチレン共重合体より優れた熱安定性を示す.
  • 遠藤 隆一, 岡野 博, 後藤 昭彦
    1979 年 36 巻 7 号 p. 455-458
    発行日: 1979/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ [(エチレン-ビニルアルコール) -枝- (エチレンオキシド)] からなる疎水親水型グラフト共重合体の水溶液の挙動を表面張力測定により研究した. 主鎖に2.7mol%ビニルアルコールを含むグラフト共重合体は, 表面張力の濃度依存性で, 低濃度と高濃度とにそれぞれ水平部分がある. 一方, 他のグラフト共重合体 (20.3mol%ビニルアルコール) は, 表面張力の濃度依存性で, 高濃度に水平部分が一つある. グラフト共重合体 (12.4mol%ビニルアルコール) の表面張力と濃度の関係は主鎖に2.7mol%と20.3mol%ビニルアルコールを含むグラフト共重合体の示す性質の中間であると思われる. これらグラフト共重合体の表面の挙動は水溶液中のグラフト共重合体のコンホメーションに依存すると考えられる.
  • 大久保 政芳, 勝田 善春, 山田 祥, 松本 恒隆
    1979 年 36 巻 7 号 p. 459-464
    発行日: 1979/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    異種ポリマーから成る複合エマルション粒子中における, ポリマー相分離に伴って発現する異相構造の制御に関する知見を得ることを目的とし, ポリアクリル酸ブチル (PBA) をseedとするスチレン (St) のseed乳化重合を各種条件下で行った. 仕込みSt量をあらかじめ完全に吸収させた, 粒子中のモノマー濃度の高い系では, 相分離によりPBA連続相中に生成するポリスチレン分散粒子数 (N) は重合初期よりほぼ一定で少なかった (6~9個). 一方, Stを滴下させた, 粒子中のモノマー濃度が常に低い系では, 重合率の増大に伴ってNは増加の一途をたどり, 重合率53%では約35個であった. 前者のエマルション皮膜は自色光に対し, 反射光は青色, 透過光は黄赤色を示したが, 後者のそれは単に白濁したものであった. これらの結果より, seed乳化重合により生成される複合エマルション粒子中の異相構造は, 重合中における粒子中の粘度により制御することができ, また, そのことより, 皮膜物性を大きく変えうることが明らかになった.
  • 大北 熊一, 内山 正喜, 下村 雅人
    1979 年 36 巻 7 号 p. 465-471
    発行日: 1979/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    カーボンブラック表面ヘメチルメタクリラート (MMA) のポリマー鎖を結合させる反応条件の確立を目標にして, 粒子表面と過酸化ベンゾイル (Bz2O2) との相互作用下におけるMMAの重合反応を調べた. Bz2O2を用いると, 室温以下においてさえ, ブラックはMMAの重合の促進剤となるが, 初期には禁止作用が現れる. Bz2O2の核に電子吸引基を導入すると, MMAの重合はさらに促進した. 一方, 粒子表面の酸素含有基を不活性化する目的で, アゾビスイソブチロニトリル, 次いでジアゾメタンで処理すると, このブラックには, 誘導期がなく, 促進性は, もとのブラックに比較して変わらなかった. これに反し, 酸素の存在下で, あらかじめBz2O2を用いて処理すると, 促進性を失い, 長い誘導期が現れた. したがって, 粒子表面の芳香族環にはBz2O2を誘発分解する力があり, キノン型酸素には, MMAの重合禁止性のあることなどが分かった.
  • 土原 豊治
    1979 年 36 巻 7 号 p. 473-479
    発行日: 1979/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    エチレン-酢酸ビニル共重合エマルションは塗料・接着剤などの応用分野をもち, その工業的製造法としては, 半回分式高温乳化共重合法が有利と考えられる. 本重合法を確立するために, 重合温度70℃付近, エチレン圧20kg/cm2付近で, 乳化剤の選択, 各種重合条件の影響について検討し, 最適重合条件を決定した. また, 重合反応速度と得られた共重合体の組成とから, 生成エチレン-酢酸ビニル共重合体は若干の分岐をもつことを確認したが, 低温レドックス重合より得られた比較的分岐の少ない, より高重合度のエチレン-酢酸ビニル共重合体と比較してもほぼ同様の皮膜強伸度をもつことが分かった. したがって, 本法はエチレン-酢酸ビニル共重合エマルションの工業的製造法として応用しうるものと思われる.
  • 笠島 正行, 菅沼 彰, 国井 大蔵, 伊藤 勝彦
    1979 年 36 巻 7 号 p. 481-488
    発行日: 1979/07/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    ポリプロピレン樹脂 (PP) と高密度ポリエチレン樹脂 (HDPE), ポリカーポネート樹脂 (PC) とメタクリル樹脂 (PMMA), ポリスチレン樹脂 (PS) と低密度ポリエチレン樹脂 (LDPE) それぞれの各組合せ混合溶融体について, 混合率を変えて流動特性を測定し検討した. PP.HDPE, PC.PMMA混合試料の各混合率の流動特性曲線は, 各単一成分試料の曲線間に位置するが, PS・LDPE混合試料では一部の混合率の曲線がLDPEの曲線よりさらに流れやすい側へである外に位置する特異流動現象が生じた. 各組合せ試料とも相加性が成り立たず, PC.PMMA, PS.LDPE混合試料の流動特性は, 流れやすい成分であるPMMA, LDPEそれぞれの流動性に支配される程度が大である. PP.HDPE混合試料の流動特性は, 流れにくい成分であるPPの流動性に支配される程度が大きい.
  • 遠藤 隆一, 岡野 博, 後藤 昭彦
    1979 年 36 巻 7 号 p. 489-494
    発行日: 1979/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    市販のポリ (エチレンー酢酸ビニル) 共重合体を加水分解したポリ (エチレンービニルアルコール) 共重合体3種を出発物質に用いた, このポリマーを少重のイソプロピルアルコール (または三級ブチルアルコール) を含むトルエンに溶かし, 金属カリウムを加え, 窒素気中で加熱した. イソプロピルアルコール (三級ブチルアルコール) は減圧蒸留で溶媒とともに残らず除去した. このようにして活性化されたポリ (エチレンービニルアルコール) 共重合体に酸素のないふんい気中でエチレンオキシドをアニオングラフト重合することができる. ポリ [(エチレンービニルアルコール) -枝- (エチレンオキシド)] のグラフト共重合体が得られ, 蒸気圧浸透圧計や高分解能NMR分光法を用いて種々の性質を調べた. グラフト重合における, 重合温度, 溶媒およびモル比, [エチレンオキシド] / [カリウム], の効果を議論した.
  • 浜谷 健生, 山田 純男, 仲川 勤
    1979 年 36 巻 7 号 p. 495-498
    発行日: 1979/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    耐薬品性がよく, 透過に対してより高いバリヤー性の膜を得ることを目的としてポリ (塩化ビニリデン-アクリロニトリル) 共重合体膜のヒドラジン処理を行った. 処理の結果, 膜はヒドラジンによって橋かけするが, 同時に着色も生じた. 色は茶褐色で反応が進むにつれて紺青色へと変化するが, 膜の透明さは失なわれない. 初期に脱塩化水素反応が起こり, 共役二重結合が生成するが, 生成した二重結合に隣接する活性塩素にヒドラジンが反応することにより, 膜中に橋かけが導入されると考えた. 橋かけが増すにつれて, 膜がしだいに剛性を増していくことが, 動的弾性率およびtanδの測定から明らかである. 水蒸気の透過速度は処理時間に対して初期に減少するが, これは橋かけが進行して水分子の拡散が抑えられるためであり, その後, 極小値を通って増加するのは, 導入されたヒドラジン残基およびその塩が親水性であるために水分子の溶解度が著しく増大し, 拡散による低下を凌駕するようになるためであると推定した.
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