高分子論文集
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36 巻, 9 号
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  • 林 修, 陣田 一也, 高橋 透, 上野 治夫
    1979 年 36 巻 9 号 p. 567-573
    発行日: 1979/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    液状ブタジエンーアクリロニトリル共重合体の粘度測定を行い末端官能基の種類, 組合せ, 官能基率の粘度に対する影響を調べるとともに共重合組成の及ぼす影響を検討した. ポリマーはいずれもニュートニアンとみなすことができ, 末端官能基の種類によって粘度は変わり, -COOH> (-COOHと-OH) >-OHの順に大きい. 測定温度に対してはAndradeの式が成立し流動の活性化エネルギーを末端構造で比較すると差は少ないが粘度と同じ順序となる. コポリマー中のアクリロニトリル組成に対して粘度の対数は比例関係が成立している. コポリマーを18CNMRで調べるとプタジキン連鎖中アクリロニトリル単位は単独に分散されており連続シーケンスなどの特殊構造による粘度上昇は考えられない. これらの結果を極性基による会合により説明した.
  • 坂見 宏, 出石 豊彦
    1979 年 36 巻 9 号 p. 575-580
    発行日: 1979/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    融点以上において延伸状態で結晶化させた高分子量ポリエチレン (Mw=6×105~1×106) fibrilの高融点結晶をDSCの熱測定および広角X線測定によって研究した. この配向結晶化したfibrilは138~150℃の温度で8~15倍延伸すると高融点結晶が発現した. 延伸倍率15倍で延伸温度150℃の条件で形成したfibrilでは, DSCの結果から得られた高融点結晶は10%に達した. 高融点結晶を137℃および140℃で広角X線測定した結果は, orthorhombicポリエチレン結晶の格子間隔であることがわかった. したがって, 高融点結晶はextended-chain crystalとして生成したものであり, その融点は0.625℃/minの昇温速度で150.5℃が得られた.
  • 吉野 明, 仁木 淳, 八波 譲治, 宮田 清蔵, 坂奥 喜一郎
    1979 年 36 巻 9 号 p. 581-587
    発行日: 1979/09/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    分子配向したHDPEを融点近傍に短時間保った後, 増圧して処理する方法を用いて, 高配向ECC試料を得た. この試料の構造と物性について電子顕微鏡, X線回折, 密度法, DSCなどによって検討した. このような配向ECC試料は異方性融体からの高圧結晶化によって生成し, 等方性融体からの高圧結晶化および高圧アニーリングからは生成しない. この試料のDSC曲線は143℃にシャープなシングルピークを示し, 4,000Å程度にそろったECCバンドがジグザグに入り組む構造を有する. また, 結晶化度も92%と高い. このような構造を反映して, 高弾性および高熱安定性を示す. 更に, 配向ECC試料はガラスと同様な著しい透明性を有する. 透明性は, 従来結晶サイズの点から議論されているが, このようなECCという巨大結晶においても発現することから, 試料の分子配向状態, ボイド, 表面平滑性に依存するものと考えられる.
  • 畑 宏, 浜 義昌, 衣幡 晃一, 川崎 仁士, 中保 治郎
    1979 年 36 巻 9 号 p. 589-595
    発行日: 1979/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    SBRおよび炭酸カルシウム配合SBR加硫物の伸長時の応力と伸びの関係を測定した. 測定結果にゴム弾性理論, Mooney-Rivlinの式, 古川の式を適用し, それぞれの式に含まれるパラメーターの値を求めた. 炭酸カルシウム配合のSBRの加硫物は, 無配合のものより高い伸長応力を示したが, ゴム弾性理論から求められる弾性に関与する分子鎖の数は少ないという結果が得られた. これらの試料について, 応力緩和の測定および動的粘弾性の測定を行って緩和スペクトルを求めた. BKZの理論を適用して伸長時の応力と伸びの関係を求めた. その関係式に含まれる時間の関数を緩和スペクトルで置き換えて応力と伸びの関係を計算したところ, 実測値にかなり近い値を得ることができた. また, 引張遠度を変えれば応力と伸びの関係が変わることを示したが, 計算値と実験値のよい一致を得るには, 更にエネルギー関数の内容を検討する必要があるように思われる.
  • 加門 隆
    1979 年 36 巻 9 号 p. 597-601
    発行日: 1979/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    官能基数が4~6で, その官能基間のメチレン基数の異なる種々の脂肪族ポリアミンを硬化剤としたエポキシ樹脂硬化物について, その構造と動的粘弾性の関係を検討した. 両末端アミン間の原子数がほぼ同数のメチルイミノビスプロピルアミンージプロピレントリアミンートリエチレンテトラミン系では官能基数の増加とともに橋かけ密度 (ρ (E′)) が増し, 同時にφ′, Tgを増していった. しかし, 一般に同族高分子とされているエチレンジアミンージエチレントリアミンートリエチレンテトラミン系では, 官能基数が増すとρ (E′) は増すが, φ′とTgは増加せず, やや減少した. このように硬化樹脂の構造がいくぶんでも変化する系では, φ′やTgへの影響が橋かけ密度のみでなく, フェニル基の含量によっても大きく影響することが明らかになうた. 星状に官能基が配置したトリスアミノメチルヘキサンでは直鎖状で官能基数の等しいトリエチレンテトラミン硬化物に比べ, ρ (E′), φ′ Tgがわずかに高いのみで, 物性への影響は極めて小さかった.
  • 土原 豊治, 咲本 征一郎, 久保 賢
    1979 年 36 巻 9 号 p. 603-608
    発行日: 1979/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    塗料用エチレン-酢酸ビニル共重合エマルションを開発する目的で, さきに開発した“高温乳化共重合法”を保護コロイドの存在下にエチレン-酢酸ビニル共重合反応に適用した. まず, 共重合体のエチレン含量ならびに重合度と塗料性能 (耐洗浄性) との間の相関関係について検討し, エチレン含量8~12wt%, 重合度800以上で良好な塗料性能を与えることを明らかにした. 次に, 重合条件と塗料性能の検討から, 保護コロイドは0.5wt%程度 (最終エマルションに対し) の添加が最適なことを見いだした. かくして得られたエチレン-酢酸ビニルエマルションは塗料用ベヒクルとして優秀な特性を有していることを確認した.
  • 生川 洋, 川井 収治, 田坂 多希雄, 中保 治郎
    1979 年 36 巻 9 号 p. 609-615
    発行日: 1979/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    不飽和ポリエステル樹脂およびその組成物の硬化過程における反応時間の経過に伴う温度および音波の伝ば (播) 速度を測定した. 音波の伝ば速度の測定装置には, 樹脂の硬化に伴う収縮を自動的に補正する装置を内蔵させた. 多くの場合, 硬化開始後試料の温度が最高になる時間近傍で, 音波の伝ば速度は急速に増大し, 以後漸増して平衡値に達する. 硬化過程の各時点での音波の伝ば速度は, 樹脂組成および温度に影響される. その温度は形態の影響を含め, 試料の硬化条件によって変わる. また増粘をした不飽和ポリエステル樹脂の動的粘弾性をTBA法によって測定した. 増粘をした樹脂が温度の上昇とともに軟化し, 次いで硬化する状況を, 動的剛性率およびtanδの変化で捕らえた.
  • 鹿島 俊弘, 江藤 国臣
    1979 年 36 巻 9 号 p. 617-624
    発行日: 1979/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    テレフタル酸系ポリエステルについて, その融点の熱処理温度ならびに時間による変動をDSCおよびNMR測定から検討した. 試料ポリエステルの示す融点の前後温度城において熱処理した結果, ポリエステルの融点はいずれの場合も上昇した. これはエステル交換によるランダム配位からブロック配位への転換に起因するものであることを確かめた. また, 融点上昇に関する活性化エネルギーは熱処理温度域により異なり未処理の示す融点 (Tm) 0以下の温度域で大きい値を示す. 更に融点上昇度に及ぼす酸素の影響を追跡した結果, 1, 4-ブタンジオール系ポリエステルの場合は減圧下での上昇度が空気中のそれより大きいことを見いだした. なお, これらのポリエステルの融点は重合温度 (270℃) にまで加熱すると (Tm) 0に復元した.
  • 山本 統平, 山本 忠弘, 泉川 次郎, 広田 正義
    1979 年 36 巻 9 号 p. 625-628
    発行日: 1979/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    1, 1′-アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル (ACN) を用い, 溶媒ベンゼン濃度を変えて30℃で酢酸ビニルの光増感重合を行った. 重合速度 (Rp) はベンゼン濃度が増すと著しく減少したが, 重合開始速度 (Rl) の変化はわずかであった. 一方kt/kp2は著しく変化し, 回転セクター法によりktkpを分離したところベンゼン濃度が増すとkpが著しく減少しktはあまり変化しないことがわかった. また生成重合体の立体規則度に対するベンゼン濃度の影響は見られなかった.
  • 中島 文一郎, 西 則雄, 野口 順蔵
    1979 年 36 巻 9 号 p. 629-634
    発行日: 1979/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ (L-メチオニン) を液体アンモニア中, ナトリウムにより種々の条件で還元し, ホモシステイン残基をそれぞれ11, 19, 26, 44, 72, 81および88%含む7種類のコポリ (L-メチオニン, L-ホモシステイン) を合成した. ホモシスティンへの変換率が80%程度以内ならば, 比較的温和な条件で任意の比率のコポリマーが再現性よく得られる. 各種有機溶媒に対する溶解性は, ホモシスティン含量の増加とともに低くなるが, メタンスルホン酸, トリフルオロメタンスルホン酸には全試料とも可溶性である. 各試料の溶液中での構造を, 粘度および旋光分散により調べた結果, メタンスルホン酸中ではほぼランダム構造, またジクロル酢酸中では多少のα-ヘリックス構造を含むランダム構造であることが明らかとなった. また, 各試料の固体状態での構造は, 赤外吸収スベクトルによりいずれもα-ヘリックス構造とβ構造が混合している結果を得た.
  • 大内 辰郎, 大岩 正芳, 井本 稔
    1979 年 36 巻 9 号 p. 635-637
    発行日: 1979/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    井本の呈出したノボラック樹脂の質量分布関数式に基づいて重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比をもとめる理論式を誘導した. また, Poisson分布に基づくMw/Mn式も導いた. それらの理論式が文献のMw/Mn値と一致することを認めた.
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