高分子論文集
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37 巻, 12 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 加門 隆, 斎藤 勝義
    1980 年 37 巻 12 号 p. 765-771
    発行日: 1980/12/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    脂肪族カルボン酸ジヒドラジドを分散したエポキシ樹脂配合物は室温で4カ月以上の長いポットライフがあり, 約150℃以上に加熱すると円滑に硬化した. この樹脂の硬化機構はIR分析とガラス転移温度 (Tg) の測定から, ジアミンによるエポキシ樹脂の硬化とよく似たもので, ヒドラジドの末端窒素の活性水素によるエポキシ基への付加反応であることが認められた。硬化物の動的粘弾性の測定により, 両末端のヒドラジド基間のCH2基の数が減るとTgも橋かけ密度 (ρ (E′) ) も高くなった. そして, 同じρ (E') のジアミン硬化樹脂に比してヒドラジド硬化物はTgが高かった, これらの結果から, ガラス状態で   脂   性の大きいヒドラジド基がアミン基より強く相互作用しているものと推定した.
  • 池田 功夫, 鈴木 公宏
    1980 年 37 巻 12 号 p. 773-779
    発行日: 1980/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    Na化ポリビニルアルコール (PVA) によるアクリルアミド (AAm) の転位重合について検討した. ジメチルスルホキシド (DMSO), ヘキサメチルホスホルアミド (HMPA) のような極性溶媒に溶解したPVAをジムシルNa, Naナフタリン, NaメトキシドのようなNa化剤によりNa化し, これにAAmを加えて重合させるとPVAのほかにAAmが転位重合して生成するポリ (β-アラニン) およびビニル重合機構で生成するポリアクリルアミド (両者を含めて転位ポリマーと呼ぶ) を含む生成物が得られた. メタノール可溶性および熱水不溶性の転位ホモポリマーを除去した成分にグラフト共重合体が含まれることを濁度滴定およびアセチル化により確認した. この成分の転位ポリマー含有率, 転位率は反応温度およびPVAのNa化度とともに増大し, Na化剤の種類による影響は小さかった. しかし, アセチル化の結果, グラフト共重合体はPVAのNa化度が低いほど効率よく生成することが推定された.
  • 高松 俊昭, 和田 仁一, 深田 栄一, 松本 博志
    1980 年 37 巻 12 号 p. 781-787
    発行日: 1980/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    放射線を用いて多孔質ポリテトラフルオロエチレン (EPTFE) の種々のグラフトポリマーを作り, それらの抗血栓性を調べた. EPTFEは内径10mm, 厚さ1mmの管状および厚さ0.79mmのシートを用い, ビニル系モノマーは酢酸ビニル (VAc), メタクリル酸メチル (MMA), スチレン (St) および2-ヒドロキシエチルメタクリラート (HEMA) であった. EPTFEはこれらのモノマー液中でγ線を照射し, グラフトポリマーを作製した. VAcグラフトポリマーの一部はビニルアルコール (VAl) に, Stグラフトポリマーの一部はスルホン化スチレンに変換した. これらのグラフトポリマーを室温で生理食塩水中で強制伸縮したときの吸水量を測った. その飽和吸水量はグラフト率や親水性の増加によって増加した. 生理食塩水に対する接触角は飽和吸水最の大きいものほど減少した. In vivoテストでの開存率はグラフト率が5%以下では良い結果を与え, VAl>MMA>VAc>St>スルホン化Stグラフトポリマーの順に低下した. スルホン化Stグラフトポリマーを犬の上大静脈に移植中, 溶血が起こり, 血栓による厚い内膜が早期に形成された.
  • 奥野 健次
    1980 年 37 巻 12 号 p. 789-796
    発行日: 1980/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    面配向したフレークを分散相とする複合材料の弾性率を, フレークのアスベクト比の関数として考察した. アスベクト比の異なるマイカ, またはガラスフレークを充てんしたポリプロピレンおよびスチレンーアクリロニトリル共重合体の曲げ弾性率を20℃から110℃の温度領域で測定した. 得られた測定値をフレーク強化複合材料の弾性率の考察に用いられているPadawer-Beecherの式, Tsai-Halpinの式, 短繊維強化複合材料の弾性率の考察に用いられているRileyの式, およびRileyの式をフレーク強化複合材料に適用しうるよう修正した式から計算される理論値と比較した. Rileyの式においては分散相間の相互作用が考慮されている. 曲げ弾性率の測定値は, Rileyの式を基に導いたフレーク強化複合材料の弾性率についての理論式に最も良好な対応を示した.
  • 藤山 光美, 小屋 慶弥, 東 敬一
    1980 年 37 巻 12 号 p. 797-801
    発行日: 1980/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    液状1, 2-ポリプタジエン (L-PB) を助剤として溶融状態でベルオキシド橋かけしたアイソタクチックポリプロピレン (i-PP) の動的粘弾性および熱的性質の測定により, その構造と物性に関する知見を得た. L-PBを用いても, 橋かけすれば弾性率は低下せず, 高剛性, 高熱変形温度というi-PPの特徴は失われない. αa吸収温度は橋かけi-PPでは未橋かけi-PPに比べて10~20℃上昇し, 無定形部分の分子鎖の熱運動性が拘束されている. 橋かけi-PPは未橋かけi-PPに比べて融点は約10℃低下するが, 融解熱の低下は小さく, 結晶構造は乱れているが, 結晶化度の低下は少ない. 橋かけi-PPの結晶化温度は, 未橋かけi-PPに比べて10~15℃高く, 橋かけ点のため, 融解しても残留構造の保持が強いことが推定される.
  • 小高 正人
    1980 年 37 巻 12 号 p. 803-807
    発行日: 1980/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    α-シクロデキストリン (α-CD) との包接化における基質の構造選択性を利用すれば酵素反応を選択的に阻害できると考えられる. 紫外吸収スペクトルの結果から, p-ニトロフェニル-β-D-グルコビラノシド (PNPG) はα-CDと包接化合物を形成するがO-ニトロフェニル-β-D-グルコビラノシド (ONPG) はほとんど包接化しないことがわかった. したがってPNPGのβ-グルコシダーゼによる加水分解反応のみが阻害された. 更に, アルカリホスファターゼによるp-ニトロフェニルリン酸の加水分解反応でも阻害作用が見られた. 両方の反応についてスキームを仮定し, 実験結果を解析した.
  • 伊藤 信義, 吉田 弘
    1980 年 37 巻 12 号 p. 809-814
    発行日: 1980/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    アセトキシメチルビニルケトン (AMVK) は1, 4-ジヒドロキシ-2-ブチンのレッペ反応を経て合成した. AMVKはラジカル重合が可能であり, 単独重合, および, メチルメタケリラ-ト (MMA) またはスチレン (St) との共重合を行った. モノマ-反応性比は, MMA (M1) -AMVK (M2) でγ1=0.95, γ2=0.77, そして, St (M1) -AMVK (M2) でγ1=0.10, γ2=0.36が得られた. AMVK-Stのモノマー反応性比から, Q=2.3, e=1.0が得られた. AMVKとMMAはランダム的に共重合し, AMVKとStは交互的に共重合する. ポリ (アセトキシメチルピニルケトン) (PAMVK) はポリ (メチルビニルケトン) (PMVK) (軟化温度, 40~60℃) と似て, 少し弾性があり, ガラス転移温度 (Tg) が36~41℃であった. ポリマーの光分解性は溶液中, 285nmと312nmで測定した. ポリマー主鎖の切断はgel-permeation chromatographyで求め, その量子収率は, PAMVKで (2.4~2.7) ×10-2, ポリ (アセトキシメチルビニルケトンーメチルメタクリラート) [P (AMVK-MMA)] で (1.6~3.3) ×10-2, ポリ (アセトキシメチルビニルケトンースチレン) [P (AMVK-St)] で (3.4~5.7) ×10-2であり, PMVK (φcs=2×10-2) とほぼ同じくらいの光分解性であった.
  • 羽山 茂, 新野 昭伍, 武石 誠
    1980 年 37 巻 12 号 p. 815-817
    発行日: 1980/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    可溶性ポリ (4,4′-ビフェニレン) の合成法を応用して, 1, 5-ジアミノナフタレン, 1, 4-ジアミノアントラキノン, 4,4′-ジアミノスチルベンなどから純粋なビスジアゾニウムクロリドを経て, ポリ (ナフチレン-1, 5-ジイル), ポリ (アントラキノン-1, 4-ジイル), ポリ (4,4′-ビフェニレンビニレン) などと関連コポリマーを得た. 単独ポリマーは軟化せず, 250℃以上の温度で発熱分解した. それに対して, メタクリル酸メチルとアクリルアミドモノマーとの共重合体は150~180℃で軟化した. 各試料のジメチルフォルムアミド溶液を用いて測定した粘度曲線にはポリ (4,4′-ビフェニレン) の粘度曲線に認められたのと同様なピークが0.2~0.05g/100ml濃度域に現れた.
  • 箕浦 憲彦, 仲川 勤
    1980 年 37 巻 12 号 p. 819-821
    発行日: 1980/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ-L-グルダミン酸メチル膜のNaCl, Na2SO4, MgSO4, グルコースおよびショ糖の透過を研究し, 現象論的係数, つまり反射係数と力学的透過係数を求めた. これらの溶質の反射係数は非常に小さく, 10-2-10-3のオーダーであった.
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