高分子論文集
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37 巻, 5 号
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  • 林 修, 木村 圭一郎, 大井 康充, 上野 治夫
    1980 年 37 巻 5 号 p. 327-334
    発行日: 1980/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    部分エポキシ化シス-1,4-ポリブタジェンのモノマーシークェンス分布を13CNMRによって測定した. ポリマーのエポキシ化は過酸化水素と少量のギ酸からin situに生成する過酸を用いて行った. エポキシ化ユニットの定量はポリマーの1HNMRから算出した. 13CNMRスペクトルには元のシス-1,4構造の他にオレフィン炭素領域に3本, メチレン炭素領域に4本の新たなシグナルが現れる. スベクトルの帰属はランタニドシフト試薬の使用やエポキシ含量の異なるポリマーのシグナル強度の比較から行った. 各シグナルはシス-1,4とエポキシ化ユニットのdyad, またはtriadで説明できる. ピークの相対強度はシス-1,4とエポキシ化ユニットの分布にランダム仮定をおいた計算値とメチレン炭素だけでなくオレフィン炭素領域においてもよく一致する. この結果はエポキシ化される位置は既に反応している構造に影響されないことを示している.
  • 笠島 正行, 伊藤 勝彦, 菅沼 彰, 国井 大蔵
    1980 年 37 巻 5 号 p. 335-342
    発行日: 1980/05/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    高分子溶融体の流れ指数とせん断速度γ, せん断応力τ, 粘度η, 温度移動係数, 混合比との関係について測定し検討した. 各種流れ指数 (nτγ, nηγ, nητ; 添字は各流動特性から求まる値を示す) はγ (またはτ) 依存性が大であり, γの増加とともに減少する. 流動特性曲線を図微分して求めたnτγと温度移動係数曲線を図微分して求めたnτγとはほぼよく一致する. ポリプロピレン (PP) ・高密度ポリエチレン (HDPE) 樹脂, ポリカーボネート (PC). メタクリル (PMMA) 樹脂, ポリスチレン・低密度ポリエチレン樹脂それぞれの混合試料のnτγ, nηγのγ依存性はPC.PMMA混合試料が最も大きい. nτγ, nηγ-lnγ線図はPP・HDPE混合試料のものは混合比の順に位置するが, 他の混合試料のものはそのようにならない. 混合比の影響はPP・HDPE混合試料が最も大である.
  • 大北 熊一, 辻田 照之, 前田 稔
    1980 年 37 巻 5 号 p. 343-349
    発行日: 1980/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    カーボンブラックによって開始されるN-ビニルカルバゾール (NVC) のカチオン重合の見掛けの活性化エネルギーは約14kcal/molであった. NVCをブラックの存在下で重合して得たホモボリマーの分子量は, 重合率が増すにつれて低下し, 水素化ホウ素ナトリウムで前処理したブラックの系で得られるホモポリマーは, 更に低い分子量を与えた. NVCの重合に用いたブラックはもとより, 単にポリ (N-ビニルカルバゾール) [ポリ (NVC)] を吸着させたブラックでも, 溶剤によるソックスレー抽出では, 粒子表面のポリマーを完全に除去することが難しかった. 抽出不能なポリ (NVC) の量は, これをセミミクロケルダール法で窒素分析し, 表面構造を変えだブラックへの吸着ポリマー量との比較検討も試みた. 実験の結果は. 吸着ポリマーの量と粒子表面に存在するベンゼン状環との密接な関連性を示唆し, 表面のキノン型酸素がグラフト反応点になることを示した.
  • 山田 文一郎, 大津 隆行
    1980 年 37 巻 5 号 p. 351-356
    発行日: 1980/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    N-アクリロイルビロリジンの生長反応速度定数 (kp) および停止反応速度定数 (kt) を, 30℃において回転セクター法で決定した. kp=8270lmol-1s-1, kt=2.2×109lmol-1s-1. また, 交互生長の速度定数を求め, N, N-ジメチルアクリルアミドおよびN-アクリロイルビペリジンのものと比較した. モノマーとしての反応性にはほとんど差はないが, ポリマーラジカルとしての反応性には60倍にも及ぶ大きな差がある. そこで, 窒素上の非共有電子対の作用に注目し, N-CH3あるいはN-CH2プロトンの1HNMRにおけるcoalscence temperatureを測定したが, その差だけで反応性を十分説明することはできなかった. しかし, 窒素上の置換基の構造的なわずかな変化が共役状態に大きく影響することが明らかになった. したがって, ポリマーラジカルの反応性が大きく変化することも, 共役状態が置換基により変化したためと思われる.
  • 黄堂 慶雲, 西垣 広志, 大内 辰郎, 井本 稔
    1980 年 37 巻 5 号 p. 357-361
    発行日: 1980/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    通常のラジカル開始剤を用いることなく, 水溶性モノマーのセルロースヘのグラフト共重合が行われた. 媒体として純水が用いられた場合, メタクリル酸のセルロースに対するグラフト重合による重量増加率は3%と大変に小さかった. しかし, NaClの飽和水溶液が用いられた場合には重量増加率は26.6%に達した. 塩として, NH4Clにはある程度の促進効果が見られるが, LiCl, KClにはその効果はなかった. 更に, アクリル酸およびアクリルアミドもまたセルロースヘグラフトができるが, アクリロニトリルはグラフトしないことがわかった.
  • 今井 淑夫, 奥山 和雄, 北井 修平, 上田 充
    1980 年 37 巻 5 号 p. 363-366
    発行日: 1980/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    新しいモノマーとして, 4,4-ペンタメチレン-1,2-チアゼチジン-3-オン=1,1-ジオキシド (PTD) をシクロヘキサンカルボン酸から合成した. PTDは第三アミンと開始剤の存在下に室温で容易にアニオン開環重合して, 高粘度のポリアシルスルホンアミドを生成した, この重合において, 塩形成に必要なアミン成分としてトリエチルアミンを用いると分岐ポリマーが生成するが, ピリジン類を用いると線状ポリマーが得られる. PTDと4,4-ジメチル-1,2-チアゼチジン-3-オン=1,1-ジオキシドから得られるコポリマーは非晶性であって, 多くの溶媒に良好な溶解性を示し, これからもろいフィルムをキャストすることができた, PTDのホモボリマーおよびコポリマーは200℃付近から分解を始める.
  • 三軒 斉, 岡田 俊明, 石井 孝利, 山本 吉威
    1980 年 37 巻 5 号 p. 367-373
    発行日: 1980/05/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    数平均分子量Mn=1500のポリ (オキシ-1,4-ブチレン) グリコール [G1500] をソフトセグメントに用いたポリエーテル・ポリエステルエラストマー [T-G1500] について, 示差走査熱量測定 (DSC) を行った. ポリ (オキシエチレン) グリコール [E1540] を用いた前報でのT-E1540と対比し, ソフトセグメントの種類, 結晶状態, ハードセゲメントとの相混合の程度などの変化が熱的挙動に及ぼす影響を論じた. 溶融状態から冷却すると, T-Eより相溶性の低いT-Gは相凝離を生じやすく, ソフトマトリッケス中におけるハードドメインの凝集度は高い. 相凝離の進行はハードセグメントの結晶化度を高くし, ソフトセグメント束縛の効果を強める. この作用はT-Gが大きい. T-Gでは結晶化条件の変化に伴うソフトセグメントのガラス転移温度 (Tg) の変動は小さい. T-G, T-E間の熱的挙動の相違は, 主としてGおよびEのハードセグメントに対する相溶性の差と, G, E両鎖の結晶性の差に起因する.
  • 片岡 清一, 安東 忠直
    1980 年 37 巻 5 号 p. 375-382
    発行日: 1980/05/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    水媒体中で, キトサン (CS) 共存下でのソルビン酸 (SA) を, 過硫酸カリウムを開始剤として用いてラジカル重合を行い, そして得られたボリ (ソルビン酸) の構造を調べた, 重合溶液の調製は, 次の二つの方法を用いた. a) CSとSAの直接混合 (SA-CS系), b) CS酢酸塩 (CS基本モルに当量の酢酸を添加) (CS・AcOH塩) とSA・Na塩の間接混合 (SA・Na塩-CS・AcOH塩系). SA-CS系およびSA・Na塩-CS・AcOH塩系から得たポリマーは, 1, 4トランス型であっだ. 一方, 得られたポリマーは, 正の符易の旋光度を持つことを見出した, SA-CS系から得られたポリマーはオゾン分解し, 生成物は2-メチルーコハク酸を得た. 2-メチルーコハク酸の比旋光度は, +1.00°(R体の光学収率は6%) であった.
  • 赤羽 健志, 上総 雄二郎, 中保 治郎
    1980 年 37 巻 5 号 p. 383-387
    発行日: 1980/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    エチレンービニルアルコール共重合体の水素結合に関する知見を得る目的で皮膜試料の近赤外吸収スペクトルを検討した. 1.35~1.69μm付近の吸収を分離, 解析した結果, OHによる吸収の吸光係数はエチレンの共重合でやや増大するようであるが, 水素結合状態にはよらないと考えられる. 1.41, 1.49および1.58μm付近の吸収を遊離, 分子内および分子間水素結合によるものとして定重した. 通常のポリビニルアルコールの分子内, 分子間水素結合量の比は約1: 1で, この比はエチレン量とともに若干増大する. 遊離のOHの絶対量はエチレンmol%に対して上に凸な曲線を描き, エチレン75mol%付近で極大値を示すのに対し, 分子内および分子間水素結合はエチレンのmol%とともにほぼ直線的に低下し, エチレン75mol%付近で3者がほぼ同一レベルになることを認めた. なお, 延伸による水素結合状態の変化は小さいようである.
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