高分子論文集
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38 巻, 1 号
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  • 小嶋 邦晴, 田村 成, 桂 義郎, 善国 麻佐子
    1981 年 38 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1981/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    トリブチルボラン (TBB) を重合開始剤として, 水系でペプシンへのメタクリル酸メチル (MMA) のグラフト共重合について検討した. ペプシンが存在すると, MMAの重合は促進され, グラフト共重合体が得られることがわかった. この場合, ペプシン量の増大とともに全重合率も, グラフト重合率も増大する. TBB濃度ならびにMMA濃度に関して最適条件を検討し, また反応温度の影響を検討した. 反応温度が高くなると全重合率は増大するが, グラフト重合率は40℃のときに最大となった. この反応の見掛けの活性化エネルギーは約5.5kcal/molであった. また得られたグラフト共重合体の固定化酵素としての利用についても検討した.
  • 桐生 春雄, 熊野谿 従, 増田 初蔵
    1981 年 38 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 1981/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    実用塗料組成に近い数種のポリマーを同一溶剤に溶解し, その溶液に対する沈殿剤による希釈価の測定から, 混合ポリマーの相溶性を検討した. その結果を要約すると次のようである. (1) 単一ポリマー (ここではニトロセルロースをNCで表す), あるいはプチル化メラミン樹脂を規準にとったとき, 混合ポリマー溶液の沈殿剤による希釈価曲線の型から, 樹脂ポリマー-樹脂ポリマー, あるいは樹脂ポリマー-繊維素誘導体ポリマー間の相溶状態は, 溶解型, 平衡型, および分離型に分類することができる. (2) 混合ポリマー溶液の希釈価は単一樹脂溶液のそれに比べて小さくなる場合が多い. 特にニトロセルロース溶液では少量の第2成分樹脂ポリマーを混合することにより希釈価を急減する. (3) 実用塗料は希釈価曲線の型からみて, 混合樹脂ポリマー間に良好な相溶性のある系が選択されていると考えられる.
  • 岡部 勝, 渋谷 香, 松田 英臣
    1981 年 38 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 1981/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    溶液中の高分子の拡散定数を簡単な光学系で粘度よく測定するために, モアレ (moire) 光学系を試作し, 既に作製した拡散セルによって実験的に本装置の有用性を検討した. その原理は1インチに100本の等間隔な平行線をもつ格子G1を水平にセルの前方に置き, これと直角にレーザー光線を当てるとG1上の各平行線はセル中の濃度こう (勾) 配に比例して屈折率の大きい方へ変位し, セルの背後では線のピッチがガウス分布を示す平行直線群の像が得られる. この像にG1と全く同じ格子G2を少し傾けて重ねると, 両直線群の交点の軌跡としてSchlieren法と同じ拡散曲線が得られる. 本装置によると極めて容易にシャープな界面が得られ, しかも光源に単色光を用いているので非常に鮮明な拡散曲線が撮影でき, 更にG2上の等間隔な平行線が拡散曲線の座標を決めるスケールになっているので解析が容易で, 得られた拡散定数の絶対値に関しては従来の精度を1けた (桁) 上げることができたと思われる.
  • 赤羽 健志, 中保 治郎, 河合 紀元, 足利 直雄, 川井 収治
    1981 年 38 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 1981/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリビニルアルコール水溶液を乾式紡糸し, 230℃で10秒間に3~5倍に延伸した繊維の断面に, 顕微鏡観察でめいりょうなリング状の線を見いだした. このリングの径は延伸倍率とともに減少した. 染料に染まりやすいこと, あるいは30wt%のエチレンジアミン水溶液で溶出することなどから, リング状の線を境界にして内部ではほぼ延伸前の繊維の状態を保持していることを認めた. 更に, 繊維の分子配向の度合は外周部ほど大きいことがわかった. このような二層構造形成の機構を次のように考えた. 繊維の外周部は初期の延伸で配向結晶化が進行し, 張力下でもあるのでその融点は230℃以上になるが, 内層部は融液類似の挙動をする状態となって張力負担をすることなく, 張力は外周部に集中して, 内層部は変形しても延伸効果が付与されないために境界のめいりょうな二層構造が形成される. 境界線の位置は延伸速度および温度に依存する延伸張力によって決まると考えられる.
  • 荒井 定吉, 石川 広高, 八田 博志
    1981 年 38 巻 1 号 p. 29-37
    発行日: 1981/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    流入部端に丸味を付けたものや, テーパをつけたもの, 流路断面積の収縮比を変えたものなど流入部形状の異なる平行スリット流路を試作し, そこを流れる高密度ポリエチレン融液の複屈折を測定した. スリット流入後, 流れ方向で応力状態の変化がなくなる点までのスリット入口からの距離を等色線しま次数の変化から求め, これを助走距離と定義し, スリット流入部形状とこの助走距離の相関性を光弾性解析を利用して検討した. その結果, 助走距離は流入部で生ずる流れ方向の張力が大きく, その増加率が小さいと長いことを示した. これらの挙動を流路入口形状に対応させると, 流入夾角と流入部断面の収縮比の小さいものほどそれぞれ長くなった. この助走距離と称せられる領域の偏差応力の減衰状態は, スリット中心面上のしま次数の最も高いところを境にして, 流入前のアプローチ内でのその増加状態と近似的に対応すると認められた。
  • 野沢 靖夫, 長谷川 瑞江, 東出 福司
    1981 年 38 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 1981/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    セルロースへのパンクレアチントリプシンの固定化とその性質について検討した. 尿素で処理し, 更にジアルデヒドデンプンで処理したセルロースは容易にトリプシンを固定化する. 固定化されたトリプシンの量は, ゼラチン基質の分解活性から, セルロースの単位乾量当たり0.45mgの元の酵棄の活性量に相当した. このものは自然乾燥させても約40%の活性復元が認められた. トリプシン固定化セルロースは元の酵素に比べわずかに熱的に安定化される. また, pHに対しては, 最適pHがわずかにアルカリ性側へ移動する. 動力学定数の定性的な検討からは, 固定化トリプシンのゼラチンに対する分解反応には特に著しい差は認められない. このセルロースはα-アミラーゼを同時に固定化することが認められた.
  • 大塚 保治, 千賀 孝雄, 菅野 年子
    1981 年 38 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 1981/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ジエチレングリンールビスアリルカルボナート (CR-39) を一部重合してゲル化させたゲルロッド (GR) を, メタクリル酸メチル (MMA), メタクリル酸トリフロロエチル (3FMA), メタクリル酸1, 1, 3-トリヒドロペルフルオロプロピル (4FMA), およびメタクリル酸1, 1, 5-トリヒドロペルフルオロペンチル (8FMA) に浸せきして光集束性プラスチックロッド (LFR) を得た. 作成条件とLFRの屈折率分布定数Aとの関係には, 使用する浸せきモノマー (M1) の種類によって異なった傾向が見られた. M1がGR中に進入, 拡散する速度がM1の分子容によって異なることを考慮することにより上述の複雑な関係を統一的に説明することができた.
  • 奥野 健次
    1981 年 38 巻 1 号 p. 53-59
    発行日: 1981/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリプロピレン, アクリル酸変性ポリプロピレン, ナイロン6をマトリックスとするマイカ系, ガラスフレーク系複合材料の応力-ひずみ挙動を, ガラス短繊維系複合材料の場合と比較して検討した. 複合材料およびマトリックスの応力-ひずみ曲線から補強材中の平均応力σfをひずみの関数として算出した. σfの最大値 (σf) maxは, Shepherdの理論式を用いることによりフレークのアスペクト比およびフレークとマトリックスの界面せん断強度の関数として整理することができた. アスペクト比が一定の場合, フレーク系複合材料の (σf) maxは短繊維系複合材料のそれの約0.5となる. マイカ系複合材料の場合には, マイカフレークのシリケート層間がはく離し, フレークが部分的に引き抜かれることにより複合材料が破壊することがあることを示した.
  • 森 哲夫, 田中 隆一
    1981 年 38 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 1981/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ピリジン-水混合溶媒 (P-W) 中で形成されるポリ (L-グルタミン酸) (PGA) のコレステリック液晶構造による可視光の選択散乱スペクトルを測定した. 60℃で溶媒蒸発法によりPGA固体膜を作成した. P: W=9: 1~4: 6v/vからの固体膜にはPGAに強く吸着したピリジンが約5wt%残存した. P: W=3: 7, 2: 8からの膜はピリジンを含まず非常に高い密度を示した. PGA固体膜の力学緩和を周波数3.5Hzで-100℃から210℃まで測定した. α分散 (200℃付近) はPGAの熱分解に, β′分散 (150~160℃) は固体膜に残存するピリジンの蒸発に, γ分散 (100~120℃) は非晶域主鎖のミクロブラン運動に, ∈分散 (50~60℃) は非晶城の側鎖の運動に帰属した.
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