高分子論文集
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39 巻, 10 号
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  • 相澤 益男, 碇山 義人, 豊島 武博
    1982 年 39 巻 10 号 p. 587-592
    発行日: 1982/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    3種類の方法によってセルロース系天然高分子膜の表面をビオチンで化学修飾し, 分子認識膜とした. すなわち, (1) セルロースアセタート (CA), キトサン, 橋かけ剤による複合膜調製法, (2) カルボン酸多核金属錯体によるCA膜の表面修飾法, 及び (3) グリシジルメタクリラートによるCA膜の表面修飾法によって, ビオチン膜を調製した. これらのビオチン膜はアビジンを分子認識して膜表面にビオチン-アビジン複合体を形成し, 膜電位変化を示した. 膜電位変化は膜マトリックスの荷電密度及びアビジン結合におけるビオチン膜の荷電変化に著しく依存し, 負荷電膜の場合に最も顕移な膜電位変化が認められた.
  • 安斉 順一, 鈴木 康浩, 上野 昭彦, 長 哲郎
    1982 年 39 巻 10 号 p. 593-595
    発行日: 1982/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    キトサン膜及び3種のクラウンエーテル固定化キトサン膜を調製し, ピクリン酸及びそのアルカリ金属塩の透過性について検討した. キトサン膜はピクリン酸に比較してそのアルカリ金属塩に対して大きい透過性を示した. クウウンエーテル固定化キトサン膜は, クラウンエーテル含量が増すに従いアルカリ金属塩の透過性が低下する傾向を示した. この効果は, クラウンエーテルとアルカリ金属との選択的コンプレックス形成に起因するものと考えられる.
  • 平山 忠一, 園井 竹比呂, 松本 和秋, 本里 義明
    1982 年 39 巻 10 号 p. 597-604
    発行日: 1982/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    セルロースエステルとポリ酢酸ビニルのジクロロメタン混合溶液から両者の複合球状粒子をつくり, ケン化後, 生じたポリビニルアルコールを抽出して多孔質セルロース球状粒子を得た. 両成分の複合粒子内における相分離状態を変えるため, 各種セルロースエステルの使用, その混合比の変化, 粒子化温度の変化及び第3成分の添加などの実験条件の検討を行った. セルロースのトリアセタートまたはアセタートブチラート (高粘度) とポリ酢酸ビニルから得られたセルロース粒子の排除限界分子量は100,000以下であった. さらに高分子量の分子が浸透可能なセルロース多孔質球状粒子はセルロースアセタートブチラート (低粘度) とポリ酢酸ビニルとからつくられ, その排除限界分子量はポリエチレンオキシドの分子量で4, 500,000以上と推定される. 得られたセルロース多孔質球状粒子はゲルクロマトグラフィー充てん剤として有用である。
  • 松本 和秋, 平山 忠一, 本里 義明
    1982 年 39 巻 10 号 p. 605-611
    発行日: 1982/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    トウモロコシデンプン及びそれから分離したアミロース, アミロペクチンの水溶液を油中に懸濁させ, エピクロロヒドリンで橋かけして親水性ゲルを得た. またそれぞれの酢化物のジクロロメタン溶液をゼラチン水溶液に懸濁させ, 加熱して溶媒を除去することにより球状粒子化し, これらをケン化し, 更に橋かけして親水性ゲルを得た. 水溶液から得られたゲルは30~500μmの粒径を有し, ポリエチレンオキシドの標準試料を用いて測定したゲルの排除限界分子量は1,000~40,000を示した. 酢化物から得られたゲルは10~500μmの粒径を有し, 排除限界分子量2,000~150,000を示し, 橋かけ浴の違いにより特性値の異なるゲルが得られた. これらのゲルの酸性基の定量を電導度滴定により行った結果, アミロペクチンゲル, デンプンゲル, アミロースゲルの順に小さくなった.
  • 岡島 邦彦, 栗木 登美男, 大植 一人, 上出 健二, 小松 義也
    1982 年 39 巻 10 号 p. 613-619
    発行日: 1982/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    一種のセルロース系イオン交換樹脂, 3- (N, N-ビプロピルアミノ) -2-ヒドロキシプロピルセルロース橋かけ体 (DHC) を合成し, この植物性嗜好品の混濁成分及び潜在的制ガン効果のあるポリフェノール類の吸着除去性能を, 今までに使用されている吸着剤と比較した. 嗜好品としてビール及び煙草を用いた. 吸着性能を紫外分光, 可視分光, 薄層クロマトグラフィーによって定性的に評価した. その結果, DHCは1) ジエチルアミノエチルセルロース (DEAE) に比して, フェノール類の吸着が選択的である. 2) 従来のビール用ポリフェノール吸着剤であるポリアミド (ポリ (∈-カプロラクタム)) に比しポリフェノール除去率ははるかに高いが, 同時に相当量のタパンク質も除去する. 3) 煙草の水抽出液からポリフェノール類, フェノール性タンパク質を除去するが, これらの物質はポリアミドや酢酸セルロースでは除去されない. 4) 酢酸セルロースと異なり, 着火煙草からも潜在的制ガン効果を有すと考えられる不飽和カルボニル基を含むフェノール性酸化防止剤及びポリフェノール類をよく吸着し, ステロイドなどにも特異性をもつなどが判明した.
  • 浅野 雅春, 吉田 勝, 嘉悦 勲, 中井 克幸, 山中 英寿, 志田 圭三
    1982 年 39 巻 10 号 p. 621-628
    発行日: 1982/10/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    薬物-タンパク質粉末混合物を100kg/cm2の圧力下で加熱溶融の後, 放射線照射によって橋かけ構造をもっ複合体を試作した. ペプシン酵素を含む緩衝液 (pH1.8) を用いてγ-グロブリン複合体を消化 (分解) させながら, その複合体からのテストステロンの放出特性を調べたところ, 試験開始後8日目での薬物の累積放出量は加圧-加熱溶融複合体系が約90%であるのに対し, 照射複合体のそれは約67%であった。したがって, 薬物の放出は酵素消化系の場合, 放射線照射によって抑制される傾向を示すことがわかった. また, 照射した担体のペプシン消化はタンパク質の種類及び起源によつて著しく異なった. 例えば, ヒトアルブミン結晶とヒトアルブミン凍結乾燥系は照射によって消化が加速され, 逆に牛アルブミンとγ-グロブリン系は消化が抑制された. 更に, 卵アルブミン系のように消化が照射に影響されない場合も観察された. これらのタンパク質複合体からのテストステロンの放出は, 上述した担体の消化性とよく対応することがわかった.
  • 清水 敏美, 山崎 嘉彦, 植田 政良, 本田 巌, 田中 芳雄, 津田 圭四郎
    1982 年 39 巻 10 号 p. 629-635
    発行日: 1982/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    尿毒症, 腎不全患者に対する経口尿素処理剤として, 酸化デンプン (DAS) に着目した. そして, 尿素処理能力, 及び安全性の高いDASを得るために, DAS粒子の表面露出アルデヒド基のみをアルブミンまたはゼラチンで不活性化させ, しかも粒子内部には尿素吸着活性のあるアルデヒド基を残存させる表面化学処理条件を検討した. 10~15% (wt/vol) -DAS分散液を50℃で3~5時間, 加熱熟成してDAS粒子を膨潤状態にし, そのあと, DAS重量の5~10%のタンパク質と4~5時間反応させることが, 高い収率と大きなタンパク導入率を得るための最適条件であった. こうして得たアルブミンまたはゼラチン表面処理DASは, 残存アルデヒド含量, N含量分析, 及び赤外吸収スペクトルから, 処理前の約90%のアルデヒド基が残存する, タンパク質との複合体であることが判明した. また, 粒子の表面形態は走査型電顕観察から未処理DASに比べて著しく変化していることがわかった.
  • 清水 敏美, 下田 敬子, 田中 芳雄, 佐々木 寛治, 津田 圭四郎, 秋沢 忠男, 越川 昭三
    1982 年 39 巻 10 号 p. 637-641
    発行日: 1982/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    アルブミンまたはゼラチン表面処理酸化デンプン (DAS) を, 尿毒症, 腎不全患者に対する尿素処理剤として調製し, そのin vitro尿素吸着活性を生体条件下 (透析液中, 37℃) で評価した. 表面処理DASは, DAS粒子を膨潤状態にし, 2~4%重量のタンパク質と反応させて得た. 40~60%の酸化度 (アルデヒド含量) をもつDASが, 種々の酸化度をもつ未処理DASの尿素吸着実験において最大の吸着性能を示した. また, 表面処理DASの尿素吸着量は同一条件下での未処理DASの2~6倍であった. この吸着能力の差は膨潤度の大きさで説明した. 処理DASの吸着発現は約2時間後から生じ, 初期尿素濃度が高いほど, 尿素吸着量は大きかった. 酸化度49.2%のアルブミン表面処理DASのg当たりの尿素吸着量は初期尿素濃度70mg/dlで24時間後, 平均7.lmgであり, 従来の尿素処理剤より優秀であった.
  • 平山 文俊, 小田切 優樹, 上釜 兼人, 和久田 徹, 稲葉 光治
    1982 年 39 巻 10 号 p. 643-648
    発行日: 1982/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    水溶液中ならびに固体状態における16, 16-Dimethyl-trans-Δ2-prostaglandin E1 methylester (ONO-802) とα-, β-, γ-シクロデキストリン (α-, β-, γ-CyD) との複合体形成を溶解度法並びに粉末X線回折法により検討した. 複合体の安定度定数の大きさはβ-CyD複合体>α-CyD複合体>γ-CyD複合体の順であった. 溶解度相図に基づきモル比1: 2 (ONO-802: 2CyD) のβ-及びγ-CyD固体複合体を調製し, それらの溶解性, セロハン膜透過性, 坐剤基剤 (Witepsol H15) からの放出性を検討し, ONO-802の場合と比較した. ONO-802の見掛けの溶解速度並びに膜透過速度は包接複合体形成により著しく増加した. また, CyD複合体の坐剤基剤からの放出性はONO-802単独に比べて著しく優れていた. これらの知見はONO-802のバイオアベイラビリティの向上及び製剤化に際してCyDの有効利用を示唆するものである.
  • 見矢 勝, 岩本 令吉, 吉川 暹, 美馬 精一
    1982 年 39 巻 10 号 p. 649-652
    発行日: 1982/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, キトサンを限外炉過膜として利用するための基礎的知見を得る目的で, その製膜法を検討した. 製膜時に加える添加剤の種類, 量が膜の限外炉過速度, 溶質透過定数, 吸水率及び湿潤時の引張り強さ, 破断時の伸び率に及ぼす影響について検討した. その結果, 添加剤は平均分子量2,000のポリエチレングリコールをキトサン100部に対して75~100部加えるのが最適であった. これらの膜は, 引張り強さが240~190kg/cm2で再生セルロース膜の約2倍, 限外炉過速度及びビタミンB12の透過定数は各々7~14倍, 1.9~2.5倍であり, また, プルランP20 (Mw 20, 800) を97%阻止することから限外炉過膜として優れていることがわかった.
  • 野沢 靖夫, 松下 智久, 東出 福司
    1982 年 39 巻 10 号 p. 653-658
    発行日: 1982/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    加熱尿素処理による微結晶セルロースのウレタン化に関する挙動と, 加熱尿素処理セルロースのトリプシンなど酵素の固定化支持体としての性質を検討した, セルロースのウレタン化挙動は, IRの結果から, 主として加熱温度及び加えた尿素量に影響されるが, 空気流入下, 175℃, 尿素の対セルロース重量比0.4にウレタン化の好適条件が見いだされた. ウレタン化の高いセルロースへのトリプシンの固定化挙動は, 多数回の洗浄操作で酵素は徐々にセルロースから放出される. 一方, 185℃, 尿素の重量比1.5で処理したセルロースはトリプシン及びペニシリンアシラーゼをよく固定化する. 固定化された酵素の活性は, セルロースの単位乾燥重量1g当たり, 元のトリプシンの12mg及び元のペニシリンアシラーゼ溶液の16%の活性に相当した. 固定化能の高い試料は, 溶液内トリプシンをよく吸着し, トリプシン捕集用支持体としての特徴的な性質を示した.
  • 大倉 一郎, 楠 真, 青野 重利
    1982 年 39 巻 10 号 p. 659-664
    発行日: 1982/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    光増感剤-メチルビオローゲン-メルカプトエタノール-ヒドロゲナーゼ系を光照射したところ, 水素の発生がみられた. 光増感剤として各種の金属錯体を用いた結果, 亜鉛-テトラフェニルポルフィリントリスルホン酸がきわめて高活性であることがわかった. 水素の発生は定常的であり, 1時間当たりの光増感剤に対するターンオーバー数は1200であった. ヒドロゲナーゼと白金触媒との活性比較を行った結果, 活性点当たりの活性はヒドロゲナーゼの方が数百倍高活性であることがわかった.
  • 金子 正夫, 今村 喜夫, 浜西 広平, 山田 瑛
    1982 年 39 巻 10 号 p. 665-668
    発行日: 1982/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    天然物固相における光エネルギー変換の一環として, ゼラチン膜固相におけるメチルビオロゲン (MV2+) の可視光照射に伴うカチオンラジカル (MV+.) 生成について研究した. MV2+のみを含むゼラチン膜ではゼラチンが光還元剤となり, MV+. が光畜積した. この系にトリス (2, 2′-ビピリジル) ルテニウム (II) 錯体 (Ru (bpy) 32+) を添加しても増感効果はなかったが, これに加えてエチレンジアミン四酢酸 (EDTA) を共存させると, MV2+の光還元は増感され, MV+. の光畜積の初期速度は非増感系の約10倍となった. 増感系ではRu (bpy) 2+ 3の光励起を介して, EDTAからMV2+への光電子リレー反応が起こっていると結論された.
  • 浦上 忠, 丹羽 直樹, 杉原 瑞穂
    1982 年 39 巻 10 号 p. 669-674
    発行日: 1982/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    アルギン酸-銅 (II) 錯体膜の過酸化水素の透過分解能を種々の条件下で検討した. 成膜温度を変えて調製した錯体膜では, 低い温度で成膜された錯体膜の方が銅 (II) の含量が少なかったが. 過酸化水素の分解能は高かった. これは, 過酸化水素分子と配位したCu (II) との接触のしやすさに依存していた. また, 祖雑な構造をもつ膜では過酸化水素が物理的に分解されていた. 物理的な過酸化水素の分解のないアルギン酸-銅 (II) 錯体膜では, 過酸化水素の分解反応は, MichaelisMenten式に従い, この錯体膜は, 酵素類似の分解触媒機能を発現していた. 錯体膜に触媒された過酸化水素の分解反応は, 錯体膜の物理的及び化学的構造因子に影響されていた.
  • 古賀 城一, 陳 耿明, 林 龍進, 黒木 宣彦
    1982 年 39 巻 10 号 p. 675-678
    発行日: 1982/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    n-アルキルトリメチルアンモニウムブロミドと牛血清アルブミンの存在下でp-ニトロフェニルヘキサノアートのアルカリ加水分解の反応速度は著しく加速された. この反応加速はタンパクー界面活性剤複合体の形成により新しい反応場の提供を示唆した.
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