高分子論文集
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39 巻, 2 号
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  • 中村 邦雄, 畠山 立子, 畠山 兵衛
    1982 年 39 巻 2 号 p. 53-58
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    非晶性でかつ水酸基数の異なるスチレン-ヒドロキシスチレン共重合体を調製し, 吸着水が共重合体の水素結合に及ぼす影響について検討した. 共重合体吸着水の結晶化現象は, 255K付近のシャープな立上りの吸熱ピーク (ピークI) と235K付近の小さなブロードな吸熱ピーク (ピークII) の二つが観測された. これらのピークの結晶化エンタルピーの計算から不凍水 (nonfreezingwater) が存在することが明らかであり, 自由水であるピークIおよび束縛水 (Bound water) の一種であるピークIIの3種類の吸着水の存在を確認した. 束縛水は共重合体側鎖の水酸基数の増加とともに増加し, 共重合体の1モノマー単位当たり最大約0.7モル吸着した計算となる. 束縛水は前報の限界水分率と良い一致を示す. これは共重合体相互の水素結合を切断して, 水酸基に束縛された水であり, 1モノマー単位当たり吸着した束縛水のモル数は各共重合体の1モノマー単位当たりの水素結合の形成能力の指標であると考えられる.
  • 須藤 道雄
    1982 年 39 巻 2 号 p. 59-62
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    第1報において円錐形マンドレルを用いて, インフレーションフィルムを縦方向 (MD) に約1倍, 横方向 (TD) に25倍延伸するプロセスについて理論的に研究した. そして末延伸フィルムのMDとTDの降伏点応力の比σ1y2yがある値より大きく, ネッキング後のTDの応力がσ2yと等しくなる点の延伸倍率λ2minが2.5より小さい場合に延伸過程は安定であるという結論を得た. 本報ではこの点について実験的に確認した. 高密度ポリエチレンを頂角55°のマンドレルでMDに1.2倍, TDに25倍延伸する場合, σ1y2y>1.28およびλ2min<2.5で安定な延伸ができ, 延伸フィルムの偏肉も少なかった. またλ2min>2.5の場合, 延伸フィルムの厚みが不均一であり, σ1y2yが1.28より小さくなると延伸が不安定になった.
  • 西村 哲夫, 酒井 武一
    1982 年 39 巻 2 号 p. 63-70
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    4種類の市販乾式不飽和ポリエステルプリミックスコンパウンドについて, 細管型粘度計により流動特性を測定した. せん断流動においては, 流動性は温度の上昇に伴って増大するが, ずり速度がある値を越えるとすべり流動を起こして, 流量が急に増大する. せん断流動での押出物は, 単位長さ当たりの重量が小さく, 表面は粗くけばだっているが, すべり流動では重量が大きくほば一定となり, 表面は平滑である. これは樹脂内部のせん断抵抗と管壁での流れ抵抗との相対的な大きさの違いに原因するものと考えられ, 前者が管壁でのせん断応力より大きくなったときにすべりが発生する. また, 樹脂の流れに伴う降伏応力は種類によって異なり, 温度が高いほど小さい.
  • 中村 吉伸, 大久保 政芳, 松本 恒隆
    1982 年 39 巻 2 号 p. 71-77
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    粒子表面層にエポキシ基を局在させたアクリル酸エチルとメタクリル酸グリシジルを成分とする高分子エマルションに三フッ化ホウ素を添加して得られる橋かけフィルム (I) は, 吸水しても白濁せず透明なものが得られることを見いだした. このような特異現象は以下の理由に基づくと考察した. 通常, 乳化重合法により作製された高分子エマルションのフィルムが吸水した場合, 粒子融着界面相 (A) に乳化剤, 開始剤切片などが偏在し, そのためA部分の吸水率が粒子中心部相 (B) のそれより高く, 結果として吸水状態におけるA, B部分の屈折率が異なるためにフィルムは白濁する. しかし, IのA部分には, 元のエマルション粒子中のエポキシ基の分布からも予想されるように, 橋かけ点が同時にA部分により多く存在し, 吸水が抑制される. その結果A部分の吸水因子とその抑制因子が互いに打消し合って, 吸水下におけるA, B部分の屈折率が一致したため, フィルムは透明であった.
  • 田中 勝敏
    1982 年 39 巻 2 号 p. 79-86
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ塩化ビニル (PVC) に3種類の大きさのガラスビーズ (GB) を充てんした複合材料には, GBとマトリックスとの界面に空げきが存在し, GBの容積分率 (φf) が0.4~0.5で急激に増加する. そしてφfは最大充てん率 (φfm) に達するが, この値は0.59~0.63で, シランカップリング剤 (SCA) 処理した試料では, 0.58~0.62とわずか減少する. 動的粘弾性測定からは, ガラス転移温度 (Tg) の上昇はφf0.3で小さく, φfmに近くなって大きくなる. 相対弾性 (Er) はガラス領域では, 末処理試料で1.6, SCA処理試料で1.9に達するが, 修正Halpin-Tsai式への適応を検討したが, 空げきのためにガラスの大きな弾性率の約1/7だけが複合体の弾性率に貢献しているにすぎない. ゴム領城では, Mooney式への適応を検討したが, SCA処理した試料のφf0.2の範囲においてのみ適合する
  • 上原 赫, 細川 一彦, 田中 誠
    1982 年 39 巻 2 号 p. 87-91
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    加熱によってpH変化をもたらすポリマーフィルムを得る試みについて報告する, フィルムは種々の量のホウ酸塩を含むポリビニルアルコール (PVA) をキャストすることによって得た. 対応pH値の測定はフィルム中に含ませたpH指示薬の色調変化によった. フェノールフタレイン (PP) を含むフィルムの変色温度に及ぼすホウ酸塩の種類, 濃度, およびPVAのケン化度の影響が調べられた. ホウ砂 (Na2B4O7) を含むフィルムの変色温度はメタホウ酸ナトリウム (NaBO2) を含むものより高く, またいずれの場合もホウ酸塩の濃度が高くなるほど変色温度が低下する傾向を示した. PVA中のアセテート基含量の増加と共に変色温度は高温側にシフトした. 室温での対応pH値はフィルムにプロムチモールブルーを含ませ, その可視吸収スペクトル分析から決定した. 室温で低い対応pH値を持つフィルムはPPの変色温度が高くなることを認めた.
  • 森 邦夫, 中村 儀郎
    1982 年 39 巻 2 号 p. 93-97
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    2-ベンゾチアゾリルジスルフィド (DM) による6-置換1, 3, 5-トリアジン-2, 4-ジチオール (RTD) の脱水素重合を反応条件, 反応機構およびジスルフィドポリマーの性質などから検討した. ジスルフィドポリマーのηsp/cおよび収率は反応時間, 反応温度, 溶剤, RTDとMDの濃度, およびモル比 ([RTD] / [DM]) の影響を受けた。RTDのジスルフィドポリマーはRTDのSH基の水素がDMで脱水素されて生成するが, 重合はこの過程でRTDとDMから生成した中間体が縮合して進行することがわかった. また, ジスルフィドポリマーはそのSS結合が非常に弱いため, 溶液中において光や熱で解重合しやすいこともわかった.
  • 粟屋 裕, 枝 義人, 三谷 勝男, 水谷 幸雄
    1982 年 39 巻 2 号 p. 99-104
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    PStブレンドPPの溶融流動挙動を検討した. PStをPPに溶融混練りによってブレンドした試料は, ソックスレー法でベンゼンに抽出されないPStを生じるようになるので, このようなPStはPPとグラフトしたPSt (gt-PSt) と推定した. PSt0~20wt%の範囲では, 10wt%ブレンドした時, gt-PStの量は最大となり, 同時にPP中に分散するPSt粒子の大きさは最小となる. これはgt-PStが分散助剤の働きをするためと推定した. PSt含量を増すと, 溶融粘度はブレンド物中のPStの滑剤効果によって減少するが, 組成-溶融粘度曲線はPSt 10wt%付近で微小の変曲点を示した. この現象はPStがPPにグラフトすることによって, PPのdomain sizeが大きくなったためと考えられる.
  • 森 哲夫
    1982 年 39 巻 2 号 p. 105-108
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ (L-グルタミン酸) (PGA) の固体膜をアセトン-水 (A-W, 3: 1v/v), エタノールー水 (E-W, 3: 1), メタノールージオキサン (M-D, 2: 1) およびN, N-ジメチルアセトアミド (DMA) から60℃でキャストして調製した. A-W (3: 1) からの膜は透明で非常に脆く, 高い結晶性を示した. E-W (3: 1) からの膜は半透明で膜の一部分にコレステリック色が見られたが, M-D (2: 1) からの膜は膜全体がコレステリック色を呈した. DMAからの膜は最も低い結晶性を示した. これらの膜の-100~210℃における力学緩和を測定した.
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