高分子論文集
Online ISSN : 1881-5685
Print ISSN : 0386-2186
ISSN-L : 0386-2186
39 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 田中 守, 仲矢 忠雄
    1982 年 39 巻 3 号 p. 109-114
    発行日: 1982/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ズルシトールを含むポリウレタン (DPU) を合成し, これと数種の金属イオンとの間の相互作用を調べた結果, 次の点が確認された. a) Cu2+との間の相互作用では, 錯体の形成は, pH 6.8付近から始まり, pH 8.0付近で完了する. その際の溶液中の雰囲気として, イオン強度による影響, 共存陰イオンの影響は, 本実験の条件では無視できる. b) 変形Henderson-Hasselbalch式の適用により, DPUの平均酸解離定数, pKa=15, 3, 定数n=2.37となった. c) 金属塩として, Cu2+, Ni2+, Mn2+, Co2+, について比較した結果, 錯体の安定度は, Cu2+>Ni2+>Mn2+>Co2+の順となり, Miller-Maleyの序列およびIrving-Williamsの序列に従う.
  • 杉原 茂雄, 岩沢 晃, 田中 啓順
    1982 年 39 巻 3 号 p. 115-120
    発行日: 1982/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    強固な密着力と高い耐熱性を有するプラスチックめっきを得るため, ニトリルゴムを含む熱硬化性樹脂の組成を探索し, 表面処理法を検討した. ニトリルゴムにノボラック型フェノール樹脂-固形エポキシ樹脂および酸化亜鉛を配合した樹脂は6.8kg/cmの密着力と260℃で600秒以上のはんだ耐熱性を有することを見いだした. 樹脂の粗面化法として重クロム酸カリウムを含む化学エッチング法と液体ホーニングによる機械的粗化法を比較し, 前者では理想的な粗化面が, 後者の方法でも上記の樹脂組成を用いることにより高い接着性と耐熱性を有する粗化面が得られることがわかった. 接着性に寄与する要因の主なものはニトリルゴムと熱硬化性樹脂の配合比, 相溶性, 酸化亜鉛配合量, 樹脂の膜厚および粗面化状態であり, 耐熱性に寄与する主な要因は樹脂の熱安定性, 無電解めっき触媒量および密着力である.
  • 辰巳 正和, 山本 清香
    1982 年 39 巻 3 号 p. 121-126
    発行日: 1982/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    3, 5-ジメチルスチレン (DMS) の30℃から120℃の重合温度での塊状熱重合をラジカル開始剤を加えずに行った. この重合温度範囲でのアルレニウスの見掛けの活性化エネルギーは18.7kcal/mQlと求まった. 30℃から40℃の極く限られた温度領城でDMSのポプコンポリマー (PCP) が自然重合で生成した. DMSとアケリル酸メチルおよびスチレンとのボプコン共重合は30℃ですべての仕込みモノマー組成について起こった. しかし, DMSとメタケリル酸メチルとの共重合において, 仕込み中0.3モル分率以上のメタケリル酸メチルが存在するときPCPは得られなかった. 生成ポリマーの組成分析の結果, ポプコン共重合の生長は非選択的な過程であることおよび可溶性共重合体は通常のラジカル共重合で生成していることがわかった. しかし, はじめに発生するPCP共重合体粒子中のDMS組成はきわめて低い値となつた.
  • 田坂 茂, 鈴木 智之, 宮田 清蔵
    1982 年 39 巻 3 号 p. 127-131
    発行日: 1982/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ-1-ブテン (I型) の高圧固体フィルム状押出しを2500気圧, 100℃で行った. 無配向試料から押出しを行った場合良好な押出し物を得ることができないが, 予備配向 (×1.5) を行い, かつ押出し物を引っ張る機構を付加することにより連続的な押出しが可能になった. 押出し物は, 平滑で透明性および柔軟性を有するフィルムであった. X線回折の結果では, I型結晶のc軸が加工方向に, a軸がフィルム面に向く二重配向構造を示した. このような選択配向性は, I型結晶の (300) 面が押出しに際し優先的にすべり変形を起こすことにより発現すると考えられる.
  • 山田 純男, 浜谷 健生
    1982 年 39 巻 3 号 p. 133-140
    発行日: 1982/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    塩素化ポリエチレン (PE-Cl2), 塩素化ポリシス-1, 4-イソプレンゴム (PIR-Cl2) と塩化水素化ポリシス-1, 4-イソプレンゴム (PIR-HCl) における放射線安定性に対する塩素の作用を調べる目的で, 60Coからのγ線照射によるガス発生量を測定した. PE-Cl2の場合, 主鎖に沿った枝分れ点や二重結合などの不安定な結合が塩素に置換されるため安定性は増すが, 塩素化度30%以上では低下した. ポリシス-1, 4-イソプレンは, たとえ分解ガスが発生しても吸収作用のある不飽和結合が存在するため, 見掛け上ガス発生量は極めて少なく, 塩化水素化あるいは塩素化することによって, ガス発生量は塩素化度とともに単調に増加した. 同じ塩素化度でPIR-Cl2とPIR-HClとを比較すると, PIR-Cl2の方がわずかにガス発生に対して抑制効果が強い. 実際のPIR-HClはγ線照射に対してかなりのガス発生量がみられることが確認された.
  • 折原 勝男, 小野寺 恒義, 松本 昌一
    1982 年 39 巻 3 号 p. 141-147
    発行日: 1982/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    2, 4-ジニトロフルオロベンゼン, 2, 4-ジニトロクロロベンゼンおよびp-ニトロフェニルカプロアートと求核剤OH-, アンモニア, 3-アミノ-1-プロパノール, ∈-アミノ-n-カプロン酸およびβ-メルカプトプロピオン酸 (MPA) との水溶液系反応, さらにアスピリンおよびp-ニトロフェニルホスファート (PNPP) の加水分解反応に対するポリビニルピロリドン (PVP) の添加効果を調べた. 各基質A-, アンモニア, アミノ化合物の反応およびアスピリンのアルカリ加水分解反応はPVPにより加速されるが, 同基質AとMPAの反応およびアスピリン, PNPPの単分子分解反応は影響を受けない. A, B二分子間反応で両基質がPVPに吸着されると反応は加速され, どちらか一方でも吸着されないと効果が現れないと考えられる. また単分子反応では基質がPVPに吸差されても吸着による活性化の促進がなければ, 加速は起こらない.
  • 内倉 昌樹, 小谷 壽, 倉田 道夫
    1982 年 39 巻 3 号 p. 149-156
    発行日: 1982/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    高分子膜への気体・蒸気混合物の透過測定装置を試作し, その構成, 機能, および操作の概要を述べた. この装置はキャリヤーガスとしてヘリウムを用い, 透過気体・蒸気の検出・定量をガスクロマトグラフで行う. 温度が-30~150℃, 圧力が6atmまでの領域で, 個々の成分気体あるいは蒸気の透過挙動の測定が可能である. 気体・蒸気混合物の圧力が1atm以下の場合には循環法により, また1atm以上の場合には流動法によって, 試料気体を高分子膜の上流側に供給した. この装置を用いて, 混合物中の酸素, 窒素の透過係数を約4%の誤差範囲内で, またこれら以外の気体の透過係数を約2%の誤差範囲内で測定することができた. 更にこの装置を用いて, 交互層状ドメイン構造を持つスチレンーブタジエンブロック共重合体膜へのアルゴン, クリプトン, 窒素の透過挙動を調べ, 高真空型の圧力法による透過測定装置により得られた結果と比較した. 両装置による測定結果の一致は良好であった.
  • 大久保 政芳, 中村 吉伸, 朝倉 光彦, 丹下 豊吉, 山下 晋三, 松本 恒隆
    1982 年 39 巻 3 号 p. 157-163
    発行日: 1982/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    カルボキシル化高分子エマルションのアルカリ増粘性, 造膜性に及ぼす粒子内カルボキシル基分布の影響を検討した. そのため, メタクリル酸メチル, アクリル酸エチル, メタクリル酸から成るエマルションをモノマー分割添加法で2種類 (B, C) 作製し, これらとモノマー一括添加法で作製した同ポリマー組成から成るエマルション (A) とを比較した. Bでは重合初期から徐々にメタクリル酸濃度が低下していくように, Cでは逆に徐々に高くなるようにした. その結果, メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル/メタクリル酸が63/27/10 (モル比) の組成のエマルションでは, 粒子表面層のカルボキシル基濃度は, C>B>Aの順に高かった. これに対応して, アルカリ増粘性はC>B>Aの順に顕著であり, 最低造膜温度はA>B>Cの順に低くなった. これらのことから, 粒子内カルボキシル基分布がアルカリ増粘性, 造膜性に影響を及ぼすことが明らかになった.
feedback
Top