高分子論文集
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39 巻, 5 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 浅野 雅春, 吉田 勝, 嘉悦 勲
    1982 年 39 巻 5 号 p. 327-332
    発行日: 1982/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    制癌剤を含む水溶液をアルブミン, ヘモグロビンのようなタンパク質と混合し, 適当な形状に成形後, 熱変性処理を行うことによってタンパク質-制癌剤複合体を調製した. この複合体からの制癌剤の放出性およびタンパク質分解酵素存在下での制癌剤の放出性と複合体の消化性の関係について検討した. 制癌剤の放出速度は用いたタンパク質の種類のみならず, タンパク質の変性時における温度・時間, 複合体作成時の水分含量, および加圧条件に大きく依存することがわかった. この場合, 牛血清由来のアルブミン結晶物を担体とした時が, 制癌剤の放出が最も抑制された. 一方, タンパク質分解酵素存在下で制癌剤の放出試験を行った場合, 経時的に複合体表面に多数の空孔構造が形成された. この空孔構造は熱処理した複合体の変性度の不均一性に依存するもので, 変性度の低い部分から消化作用を受けていくと考えられる. この場合, 制癌剤の放出速度は複合体の消化によって著しく増加した.
  • 浅野 雅春, 吉田 勝, 嘉悦 勲
    1982 年 39 巻 5 号 p. 333-338
    発行日: 1982/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    タンパク質-ビニルモノマー混合系を担体とする複合体を低温放射線重合法と熱変性処理法を組み合わせることによって調製し, 複合体からの薬物の放出性について検討した. 系中に含まれる2-ヒドロキシエチルメタクリラート (HEMA) を-78℃で放射線重合させた後, アルブミンを熱変性処理した時, 複合体からの塩酸ブレオマイシン (BLM) の放出速度は最も抑制された. この抑制効果は橋かけポリマーを共存させることにより, 更に有効であることがわかった. 一方, 放出試験をタンパク質分解酵素存在下で行った場合, 混合組成における仕込みHEMA濃度の増加に伴い消化性は著しく低下したが, 組成と消化性との間に加成性が成立しなかった. 走査型電子顕微鏡観察, 放出試験などの結果から, アルブミン単独系の担体にビニルモノマーを共存させることによって, BLMの放出性及び複合体中に含まれるアルブミンの消化性を顕著に抑制できることが明らかになった.
  • 山口 貞充, 清水 哲男
    1982 年 39 巻 5 号 p. 339-344
    発行日: 1982/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリテトラフルオロエチレン (PTFE) のエマルション粒子に, 電子顕微鏡中で電子線を照射した後, シャドウイングを施すと, 粒状粒子にめいりょうな帯状構造が観察された. この帯状構造について研究した. エマルション粒子には粒状粒子と棒状粒子と幅の広い棒状粒子が観察される. これらの粒子に電子線を照射してゆくと, 次のような現象が生じた. (1) 粒子の高さ方向の径は40~60%低下する. (2) 棒状粒子の中央が長軸に沿つて凹む. (3) 幅の広い棒状粒子には数本の段が観察さ, 段と段の幅は粒状粒子に観察される帯の幅とほぼ等しい. (4) これらの棒状粒子には盛り上がりが観察され, その盛り上がつた領域が凹むのが認められる. 以上のことと粒状粒子にも盛り上がりが観察されることから, これらの棒状粒子の凹む現象と帯状構造の生じる現象は同じ原因によるものと考えた.
  • 大久保 政芳, 中村 吉伸, 朝倉 光彦, 丹下 豊吉, 山下 晋三, 松本 恒隆
    1982 年 39 巻 5 号 p. 345-350
    発行日: 1982/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    高固型分濃度のアルカリ増粘カルボキシル化高分子エマルションを得ることを目的とし, カルボキシル化高分子エマルションのアルカリ増粘性, 造膜性に及ぼす粒子中の橋かけ点の影響について検討した. 橋かけ点は, メタクリル酸 (A), メタクリル酸メチル (B), アクリル酸エチル (C) からなる系にジビニルベンゼン (D) を加えることにより導入された. A, B, C, Dを一括添加して乳化共重合した場合, アルカリ増粘性を抑制するに必要なD含有量のところで, 同時に造膜性も低下した. そこで, 二段階乳化重合法を用いてDを一括後添加し, 橋かけ点を粒子表面層に偏在させた. その結果, アルカリ増粘性が適度に抑制され, しかも造膜性良好なエマションが得られた. 更に, 重合初期からD濃度が徐々に増加するようなモノマー分割添加法を用いることはより効果的であり, アルカリ増粘エマルションの高固型分化の可能であることが明らかになった.
  • 吉井 正樹, 青木 正義, 佐藤 秀巳, 金田 愛三
    1982 年 39 巻 5 号 p. 351-358
    発行日: 1982/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    射出成形による精密プラスチック成形において, 寸法バラツキを少なくするために成形因子との関係について検討した. 要因として, パッキンゲ (充てん, 圧縮), 熱膨張 (収縮), 結晶化を取り上げ, 更に, 新たにパッキング状態と寸法とを関係づける量としてキャビティ内圧の時間積分値を導入して, 寸法バラツキと成形因子との関係を求め, 寸法バラツキ発生の原因を解明した. ここでは, ポリアセタール樹脂の円筒射出成形品について, 寸法バラツキと成形条件因子 (射出圧, 保圧, 型温, 樹脂温) の変動との関係式を求めた. これによつて, 寸法バラツキを生じないように各成形因子を定量的に制御する方法が明らかになった.
  • 藤村 保夫, 上原 周, 酒井 五十治, 中前 勝彦, 松本 恒隆
    1982 年 39 巻 5 号 p. 359-364
    発行日: 1982/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリマー-セメント気泡体を作製する過程で問題となるノニオン性乳化剤の起泡性, ポリマーエマルションの化学的安定性について検討し, 以下の結果を得た. ノニオン性乳化剤の起泡性は, HLBが10以上, 乳化剤濃度がCMCの約10倍, 起泡温度が曇点より20℃程度低い場合に最大値を示した. ポリマーエマルションのセメント存在下における安定性は, エマルション粒子表面の電荷の種類によって大きな影響を受けた, 以上の知見から, カチオン性開始剤を用いてエマルション粒子表面に正電荷を導入し, 曇点の低いノニオン性乳化剤を起泡剤として用いることによって, 容易にポリマー-セメント気泡体を作製できることを明らかにした.
  • 須藤 新一, 藤村 敏一
    1982 年 39 巻 5 号 p. 365-371
    発行日: 1982/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    非等温カレンダー加工時のポリマーの固化挙動を推定するため, ロールニップ部におけるポリマー融液の静止時固化を熱伝導方程式により解析し, 赤外線温度計による実測との比較により解析式の妥当性, 及び固化に対する加工条件の影響を考察した. 1) 熱伝導方程式の差分化近似式はカレンダー加工に適用可能で, 固化の初期においては固化層厚が時間の平方根に比例するというStefan型の固化挙動を示した. 2) 融液の静止時固化に対してはロール表面温度が融液初期温度より影響が大であった. また, 適正な加工条件の推定も可能であった.
  • 折原 勝男, 小野寺 恒義, 松本 昌一
    1982 年 39 巻 5 号 p. 373-377
    発行日: 1982/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    基質 (A), 2, 4-ジニトロフルオロベンゼン及び2, 4-ジニトロクロロベンゼンと求核剤 (B), アンモニアあるいは各種アミノ化合物の水溶液内反応におけるポリビニルピロリドン (PVP) の効果を調べた. Aと未解離のBとの反応 (I) 並びにBの解離によって生じるOH-との反応 (II) に対するPVP効果を分離して評価した. その結果, PVPの添加によって反応 (II) のみならず反応 (I) も加速されることがわかった. 効果の大きさは求核剤Bの種類に関し, OH->>アンモニア>シクロヘキシルアミン 3-アミノ-1-プロパノール n-プロピルアミン n-ペンチル-アミンの順である. この順序から, PVP加速効果はAとBがPVPコイル内で結合座席を競争し, 奪い合うと低下するものと考えられた.
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