高分子論文集
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40 巻, 5 号
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  • 角谷 賢二, 渡谷 誠治, 中前 勝彦, 端山 文忠, 松本 恒隆
    1983 年 40 巻 5 号 p. 285-290
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    磁性塗膜の磁気的性質に及ぼすバインダーの効果を解明するためモデルバインダーとしてOH基を0~9mol%の間で系統的に変化させた水酸基含有ポリ酢酸ビニル (PVAC-AL) を作成し, このポリマーの Co-γ-Fe2O3 粒子への吸着挙動と Co-γ-Fe2O3 粒子の充てん・配向挙動との関係を研究し, 次の結果を得た. 1) 磁性塗膜中におけるCo-γ-Fe2O3粒子の充てん・配向性は, バインダーとしてアルカリ直接ケン化法で作成したPVAC-ALを用いた場合のほうが, 再酢化法で作成したものより優れ, バインダー中の OH 基含有量が4~6mol% のところでピーク値が得られた. 2) Co-γ-Fe2O3へのPVAC-ALのベンゼン媒体からの飽和吸着量は, OH基含有量とともに増加し, ケン化法のほうが再酢化法で作成したものより多かった. 以上の結果は, 分子鎖中のランダムとブロック的なOH基分布の違い並びに界面における吸着挙動の違いから説明できた.
  • 中村 吉伸, 大久保 政芳, 松本 恒隆
    1983 年 40 巻 5 号 p. 291-297
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    スチレンーメタクリル酸グリシジル共重合体エマルション粒子表面のエポキシ基の化学反応によるアミノ基, スルホン基, 及びカルボキシル基の導入について検討した. このエマルションとNH3, CH3NH2, 及び (CH3) 2NHの各水溶液を混合, 反応させることにより, それぞれ第1, 2, 3級アミノ基が導入された. 生成アミノ基量は, 試薬濃度, 反応時間, 反応温度, 及びエマルション粒子表面のエポキシ基量により制御が可能であった. また, 生成アミノ基量は (CH3) 2NH>CH3NH2>NH3の順に多く, これは試薬の求核性に関する序列と一致した. スルホン基は亜硫酸水素ナトリウム濃厚水溶液を, カルボキシル基は高pH域で, コハク酸, アジピン酸などのジカルボン酸水溶液をそれぞれエマルションと混合, 加熱することにより導入が可能であった.
  • 藤村 保夫, 中前 勝彦, 井上 祐一, 酒井 五十治, 松本 恒隆
    1983 年 40 巻 5 号 p. 299-305
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    湿式延伸法による, ポリビニルアルコール (PVA) フィルム中の染料分子の配向挙動について検討を加え, 次の結果を得た. 染料の配向が, 非晶領域の配向を上回るという異常配向が, ある種の染色方法と延伸方法の場合に認められた. すなわち, 浸漬染色フィルムを延伸した場合, および染色フィルムを湿式延伸した場合に染料の異常配向が発現した. 浸漬染色の場合には, PVAセグメント中で運動性が高く配向しやすい非晶領域に優先的に染料分子が吸着する. したがって, この試料を延伸配向させると染料の異常配向が現れることが明らかになった. また, PVAの非晶セグメントに染料が吸着すると, その運動単位が見掛け上長くなる. 湿式延伸の場合には, 非晶セグメントの運動性が非常に高いために, 染料の吸着した長いセグメントの配向が優先的に起こり, 染料の異常配向が現れることが明らかにされた.
  • 伊藤 精一, 吉田 完爾
    1983 年 40 巻 5 号 p. 307-315
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    アクリロニトリル/酢酸ビニル共重合体 (93/7重量比) をSO2/過硫酸力リウム (KPS) 系レドックス開始剤を用い水系連続重合により製造する方法において, 水/モノマ-比, SO2/KPS比と重合挙動, ポリマー特性の関係を調べた結果, 水/モノマー比の減少に従い生成スラリーの濾過性脱水性の向上とポリマーかさ密度の増加, 更にポリマー粒子構造の緻密化が認められた. また粒子が緻密な構造に変化する理由につき推論した. SO2/KPS比の減少に従い, 生成スラリーの脱水性向上とポリマーかさ密度の増加が認められ, 同一水/モノマ-比ではスラリー脱水性とポリマーがさ密度は重合系のイオン強度と密接な関係にあることが認められた.
    繊維形成用重合体としてAN/VA共重合体 (93/7重量比) をSO2/KPS系開始剤を使用して水系連続重合する方法について重合条件として水比とSO2/KPS比に着目し, 重合挙動と主にポリマーの物理特性の関係を実験的に検討結果, 以下のことが分かった. (1) 水比を4.0より1.5の範囲で減少するに従い (a) 重合率の増加 (b) 生成スラリーの濾過脱水性の向上及び (c) ポリマーかさ密度の増加が認められたが, スラリーの見掛けの粘性は1.8から2近辺で急激に低下し2~4の範囲ではほとんど一定であった. (2) 水比減少によるスラリー脱水性の向上とポリマーかさ密度の増加は主にポリマー粒子の緻密化によるものと考えられる. またポリマーかさ密度の増加はポリマー粒子の球形化もある程度寄与していると考えられる. (3) ポリマー粒子は粒径0.1~0.2μmの一次粒子の凝集してできた粒径1~4μm程度の二次粒子の凝集したものであり, 水比減少と共に二次粒子径減少と二次粒子の凝集が見られ, ポリマー粒子の緻密化はこの二次粒子径減少と二次粒子の凝集性増加が関与していると考えられる. (4) SO2/KPSモル比を10より4.3まで減少するに従いスラリーの見掛けの粘性低下, スラリー脱水性向上, ポリマーかさ密度増加の傾向が認められたが, 主にポリマー粒子の緻密化によるものと考えられる. (5) 同一水比では脱水ポリマー水分率, ポリマーかさ密度は重合系イオン強度と密接に関係している.
  • 原 薫, 赤真 正人, 篠原 功, 高松 俊昭
    1983 年 40 巻 5 号 p. 317-320
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    スチレン-プロピレンオキシド交互ブロック共重合体の熱刺激脱分極電流 (TSDC) 及び熱刺激分極電流 (TSPC) を測定した. この共重合体のTSDC曲線には-20~-17℃, 46~74℃及び110℃付近にピークが現れた. -20~-17℃のピークは, この共重合体のプロピレンオキシド (PO) 部分の配向双極子の乱れから生ずるのであろう. 46~74℃のピークはスチレン (St) 部分のガラス転移温度 (Tg) に対応して, PO組成の増加に伴い低温に移行した. 110℃のピークは, ブロック界面に捕えられた空間電荷の移動によるのであろう. ポリプロピレンオキシド (PPO) のTSDC及びTSPC曲線では-68~-65℃に鋭いピークが現れ, この温度域はTgに一致する. TSPCの電流方向は, 試料の温度がTgを越えると逆転した. この方向逆転の電流は, PPOの配向双極子が熱的乱れで生じたのであろう.
  • 長谷川 喜一, 福田 明徳, 殿谷 三郎, 堀内 光
    1983 年 40 巻 5 号 p. 321-327
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    メチレンの結合位置や置換基位置の異なるフェノール系2核体を母体とした6種のエポキシ樹脂を合成し, その化学構造と硬化物の動的粘弾性との関係を検討した. 硬化剤としてトリエチレンテトラミン及びジアミノジフェニルメタンを用い, 完全硬化後のガラス転移温度 (Tg), ゴム弾性理論式から誘導される橋かけ点間平均分子量 (Mc) 及びフロント係数 (φ) などを求めた。その結果, エポキシ樹脂母体が直鎖状で剛直性が高いものほど高いTgを与えること, また, 主鎖の屈曲度が大きいものほどMcが大きく, φが小さくなることが明らかとなった.
  • 福田 明徳, 長谷川 喜一, 堀内 光
    1983 年 40 巻 5 号 p. 329-336
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    硬化二段法フェノール樹脂の耐熱性及び機械的諸性質に及ぼす熱処理の効果を検討した. まずメチレン橋のo-/p-比がそれぞれ, 75/25, 45/55, 38/62と異なる3種のノボラック (HON, GPN及びHPN) を合成し, これらから得た成形材料を用いて130~170℃で試験片を作製した. HON及びGPN試料を170℃で6時間熱処理すると, いずれも熱変形温度はノボラックの構造や硬化温度に関係なく200℃付近に上昇した. 熱処理温度を高めると熱変形温度は更に上昇して210℃の処理では250℃を越え, 同様な効果は木粉を含まない試料においても認められた. ヘキサミン配合量の異なるGPN試料について, 熱処理による機械的諸特性の向上程度を比較すると, ヘキサミン量5及び10phrの試料が最も顕著であった. 更に熱天びん法により耐熱分解性をHON, HPN試料について比較すると, 200℃, 8時間の熱処理によって両試料とも同程度の耐熱分解性に達することが認められた.
  • 福田 明徳, 長谷川 喜一, 堀内 光
    1983 年 40 巻 5 号 p. 337-344
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    既報の, 熱処理による二段法フェノール樹脂成形品の耐熱性向上の機構を明らかにする検討を行った. すなわち, 成形品の熱処理による熱変形温度の向上は, 可塑化作用を有する低分子量物質の揮散が主原因でないことがジフェニルエーテルを配合した試料の実験によって明らかとなった. また, 熱処理によって硬化樹脂の耐アルカリ加水分解性が著しく向上すること, 窒素含有量が大幅に減少すること, 及び赤外線吸収スペクトルが大きく変化することなどが認められた. これらの結果から, 耐熱性向上の主原因は熱処理によって硬化樹脂における橋かけ結合のタイプが変化し, それに伴った橋かけ密度の増大であると結論した.
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