高分子論文集
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41 巻, 11 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 井上 俊英, 小松 秀雄, 柳 正名
    1984 年 41 巻 11 号 p. 643-647
    発行日: 1984/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ハイドロキノンとイソフタル酸を主成分とする結晶性全芳香族ポリエステル (ポリアリラート) は, その高い融点と溶融粘度のため溶融成形性が極めて不良である. しかしながら, このポリアリラートにトリフェニルホスファート (TPPA) を添加すれば溶融成形性が大きく改善できることを見いだした. このポリアリラートとTPPAの相互作用の解明を行うことによって, このポリアリラートを熱分解を起こすことなく380~410℃で紡糸できることがわかった. この繊維は初期弾性率が65.2~79.5g/dで優れた耐熱性を有している.
  • 竹島 幹夫
    1984 年 41 巻 11 号 p. 649-656
    発行日: 1984/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    多軸引張り型の破裂衝撃試験方法を用い, PC, PVC, PMMA, PSフィルムの破裂衝撃特性に及ぼす衝撃速度, フィルム厚, 衝撃ヘッド形状などの試験条件の影響を調べた. 破裂衝撃値はPCが一番優れ, 次いでPVCが大きく, PMMA, PSは小さな値を示した. 破壊形態の面からはPCが延性破壊, PMMA, PSがぜい性破壊を示した. PVCは2~3m/sの衝撃遠度においてductile-brittle転移を生じた. 延性破壊ではフィルム径方向に加わる最大応力Pbが小さく, 見掛けの平均伸長率εrは大きな値となり, 逆に, ぜい性破壊ではPbが大きく, εrは小さな値となった. また, 高分子フィルムの破裂衝撃特性を評価するためのパラメーターとしてβ転移による力学的減衰ピーク, integrated loss tangent (L), steric hindrance parameter (σ) などを適用できることが明らかとなった.
  • 木村 良晴, 杉原 範洋, 谷口 五十二
    1984 年 41 巻 11 号 p. 657-664
    発行日: 1984/11/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    両末端にカルボキシル基を有するポリオキシエチレン (PEO酸) をジカルボン酸として用い, ピペラジン (PZ), ヘキサメチレンジアミン (HA) のジアミン類と反応させた. 50°~60℃では, PEO酸とジアミンの1: 1組成からなる塩が生成し, 100℃以上では, 脱水重縮合が生じてポリアミドを生成した. PEO酸とジアミンからなる1: 1塩をナイロン6, 6塩と混合し, 熱共縮合させて種々の組成をもったセグメントブロックコポリ (アミド・エーテル) を合成した.
    また, PEO酸をオキザリルクロリド, チオニルクロリドによって塩素化し, 両末端に酸クロリド基を有するボリオキシチレン (PEO酸クロリド) を合成した. PEO酸クロリドはPEO酸より高い反応性をもつため, ジアミン類と低温で溶液重縮合させることができた. この重合法を用いて, PEO酸クロリドとアジピン酸ケロリドの組成物から, セグメントブロックコポリ (アミド・エーテル) の合成を行った.
  • 光石 一太, 川崎 仁士, 児玉 総治
    1984 年 41 巻 11 号 p. 665-672
    発行日: 1984/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    リン酸系カップリング剤 (III) により表面改質した炭酸カルシウム (II) 充てんポリプロピレン (I) 機械的特性 (破断伸び, 引張弾性率) 及び流動性について検討した. その結果, 破断伸び及び流動性においては, 物性の改善が期待できるが, それは高分子フィラ界面における (III) 相の働きによる滑剤的効果, ならびに界面の応力集中の減少から生ずる界面での密着性に要因がある. 一方未処理 (II) においては, 相対弾性率 (Er) は, (II) の体積分率 (φ2) とともに増加するが, (III) 処理 (II) では, Erは, (III) の体積分率が3.4vol%で, φ2とともに減少した. さらに, (III) 処理 (II) 充てん (I) は, 未処理に比べて, 減衰 (tanδ) がより多く発現するが, その減衰の増加は, (II) のφ2に相関性があることが認められた.
  • 大久保 政芳, 小島 昌樹, 水嶋 佳孝, 松本 恒隆
    1984 年 41 巻 11 号 p. 673-678
    発行日: 1984/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    100nm以下の小さな粒子径のアニオン性アクリル酸エチルーメタクリル酸メチル共重合体エマルションかちの陽極酸化アルミニウム板上への化学析出挙動に関してエマルション浴のpH, 温度及びべースポリマー組成を変化させた場合の影響を中心に検討した. ポリマー析出量は浴のpHを2以下に低下させることにより増大した. 浴温度が40℃付近でポリマー析出量は極大を示した. また, その温度以下ではべースポリマーのガラス転移温度が高いほど析出量は増大したが, その温度以上ではそのような傾向は認められなかった. 析出塗膜表面の走査型電子顕微鏡観察より, これらの析出挙動と塗膜のち密性や欠陥部 (穴) の存在との間には密接な関係のあることがわかった.
  • 亀田 徳幸, 服部 雅
    1984 年 41 巻 11 号 p. 679-683
    発行日: 1984/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ジヒドリドロジウム錯体 [RhH2 (PhNNNPh) (PPh3) 2] ーテトラヒドロフラン系によるいくつかのビニルモノマーの重合にういて研究したところ, メタクリル酸メチル (MMA), 酢酸ビニル及びスチレンは重合を開始した. しかし, イソブチルビニルエーテル及びアクリロニトリルは重合を開始しなかった. RhH2 (PhNNNPh) (PPh3) 2によるMMAの重合における溶媒効果の検討を行ったところ, 1, 2-ジメトキシエタン, ジエチルエーテル及びジメチルスルホキシドは重合を開始させる作用のあることがわかった. THFを溶媒としてMMAの重合を行った場合の見掛けの活性化エネルギーは16.1kcal/molであった. スチレンとMMAとの共重合ならびにMMAの重合に対するラジカル重合禁止剤の添加効果より, この開始系はラジカル重合であることを明らかにした.
  • 井上 俊英, 小松 秀雄, 柳 正名
    1984 年 41 巻 11 号 p. 685-689
    発行日: 1984/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    自己消火性であるポリアルキレン1, 2-ビス (2-ブロムフェノキシ) エタン-4, 4′-ジカルボキシラート (ポリエーテル-エステル) の熱的特性を調べた . このポリエーテル-エステルのガラス転移温度は芳香環の臭素置換による分子鎖の剛直化のために対応するポリアルキレン1, 2-ビス (フェノキシ) エタン-4, 4′-ジカルボキシラートのそれよりも高くなった. しかしながら, その融点は結晶性がやや低下する影響を受けてほぼ同じ程度であった. ポリエチレン1, 2-ビス (2-ブロムフェノキシ) エタン-4, 4′-ジカルボキシラートは, 280℃で熱分解することなく溶融紡糸可能であり, 初期弾性率は158g/dと高く良好な耐光性を有している.
  • 田尻 象運, 田中 俊枝
    1984 年 41 巻 11 号 p. 691-697
    発行日: 1984/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンテレフタラート (PET) の薄膜状態における縮合反応を解析し, 拡散係数及び反応速度定数が, それぞれ重合度の-0.8乗及び-1.18乗に比例することを見いだした. この縮合反応は化学反応速度と拡散速度の組合せによる偏微分方程式によって衰される. 多変数を含むこの方程式は解法により数値解の精度, 計算速度, 式の拡張性が大きく異なり, 優れた解法を見出すことがPETの縮合反応を解析する上で重要である. 本報では偏微分方程式の解法に2重選点法 (Double Collocation Method) を適用し, 同手法がPETの縮合反応解析に適した手法であることを確認した. なお2重選点法の計算速度はオイラー法及びガラーキン法との比較により判断し, 解の精度は膜厚を0とした極限における厳密解との比較により判断した.
  • 橋本 寿正, 木下 瑞穂, 鈴木 千章, 高久 明
    1984 年 41 巻 11 号 p. 699-703
    発行日: 1984/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ (α-クロロアクリロニトリル) を脱塩化水素して, 主鎖にポリエン構造を持ち側鎖に大きな双極子モーメントを有する半導性高分子を作製した. 脱塩化水素試料の可視吸収スペクトルを自由電子模型で解析した結果, フィルム状で370Kで熱処理した試料ではπ電子数24個の共役鎖が形成されていることが明らかとなった. この試料の導電率は10-8S・m-1で出発試料より8桁増大した. 更にこの試料はジメチルホルムアミドに可溶で, 溶液をキャストすることでフィルムを再形成させることができた. 熱処理を410Kで行うと, 初期の導電率増大は生ずるものの長時間処理物ではむしろ減少の傾向を示し, DMFにも不溶となった. 処理をトリエチルアミンないし溶液状での熱処理により行うと共役鎖はπ電子数で10~12個程度にとどまった. これらの試料では, 脱塩化水素率は高いものの導電率はほとんど増加せず, 分子量は著しく低下した.
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