高分子論文集
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43 巻, 11 号
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  • 吉川 正和, 江崎 知彦, 讃井 浩平, 緒方 直哉
    1986 年 43 巻 11 号 p. 729-732
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    塩基性固定キャリヤーとしでピリジン環を側鎖に有するコポリ (4-ビニルピリジンーアクリロニトリル) 膜によるCO2, O2, N2の透過ならびに収着挙動を検討した. その結果, CO2の膜透過現象は, 二元収着輸送理論によって説明された. 一方, O2ならびにN2はHenry型溶解によって膜内に溶解し拡散する, いわゆる単純透過によって脱明された. 本膜では, CO2がO2やN2と異なり選択的に透過され, と9わけCO2濃度の低い混合気体からのCO2の分離において有効であることが明らかになった.
  • 長瀬 裕, 上田 智子, 松井 清英, 内倉 昌樹
    1986 年 43 巻 11 号 p. 733-740
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ (2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキシド) (PPO) は気体透過係数の比較的高い膜材料の一つであり, また側鎖メチル基は反応性に富み種々の反応が可能である. これを利用すればPPOの側鎖に種々の官能基やポリマー鎖を導入することができ, PPOを新規な機能材料に改質できると考えられる. そこで, 高分子反応により側鎖にシリル基及びポリジメチルシロキサン鎖を導入し, PPOの気体透過性の改質を試みた. まず, PPOをn-BuLiと反応させ, 種々のクロロシラン化合物及び片末端クロロシリル化ポリジメチルシロキサンと反応させることにより目的とするシリル化物及びポリジメチルシロキサンを枝としてもつグラフト共重合体を合成した. 得られたポリマーを成膜し, 酸素及び窒素の透過係数PO2及びPN2を測定することにより高分子構造と気体透過性との関係を検討した. その結果, シリル基及びポリジメチルシロキサン鎖の導入によりPO2は向上し, 特にポリジメチルシロキサンを導入したPPOはPO2=1~3×10-8cm3・cm/cm2・s・cmHg, PO2/PN2=2.5~2.7程度の優れた膜性能を発現した.
  • 川上 雄資, 青木 俊樹, 山下 雄也
    1986 年 43 巻 11 号 p. 741-746
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    末端スチレン型のポリジメチルシロキサンマクロマーと7, 7, 8, 8-テトラシアノキノジメタンの共重合反応は, マクロマーの分子量によらず, 可溶性, かつ良好な成膜性を有する高分子量の交互共重合体を与えた. この共重合体を溶媒製膜して得た膜は, 高い酸素透過係数 (PO2=1.06×10-8cc (STP) ・cm/cm2・s・cmHg) と, 比較的高い分離係数 (α=PO2/PN2=2.4) を示した.
  • 下村 秀樹, 中西 和樹, 小谷 壽, 倉田 道夫, 増田 俊夫, 東村 敏延
    1986 年 43 巻 11 号 p. 747-753
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    P (TMSP) 膜への酸素, 窒素, 二酸化炭素, メタン, イソブタン, 及び5種の不活性気体の透過挙動を, 1atm以下の圧力域で. 30, 50, 70℃において調べた. 試料膜はベンゼン溶液から, 水銀面上で溶媒蒸発法により作製した. 製膜後, 試料膜はメタノール中に浸潰しておき, 実験開始直前に取り出し測定に用いた. 透過測定より透過係数P, 及び遅れ時間θの圧力依存性, 並びにPの時間的変化を調べた. 酸素, 窒素, 不活性気体では, 低圧域で圧力の増加とともにPは増加し, 中及び高圧域では一定となった. 一方θは低圧域で圧力の増加に伴い減少し, 中圧域を越えると一定値に近づいた. Pと真空中保持時間との関係には2段階の変化が見られ, 第1段階ではPは急激に, 第2段階では緩やかに低下した. 25℃におけるイソブタン収着測定の結果から, 膜中のミクロボイドや空孔の存在が示唆され, これに基づいて気体透過挙動についての考察を行った.
  • 坂口 佳充, 川田 寛, 加藤 康夫
    1986 年 43 巻 11 号 p. 755-759
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    異なる量比のビス [4 (4-アミノフェノキシ) フェニル] スルホンとメタフェニレンジアミン (MPD) からなる混合ジアミンとイソフタル酸ジクロリドを用いて共重合ポリ (スルホンーアミド) を合成し, 各々の平膜について水素及び一酸化炭素の透過係数を測定した. ジアミン中のMPD含有率の増加に伴い, 永素, 一酸化炭素透過係数比は上昇し, MPD含有率0%の時の59に対し, MPD含有率70%では89を示した. これは, 高分子主鎖中のアミド結合濃度の増加に伴って膜構造が緻密化し, 一酸化炭素の拡散が主としで抑制されるためである. MPDをパラフェニレンジアミン (PPD) に変更した系でも分離係数の向上が見られたが, その程度は小さかった. 高分子鎖のパッキング性上昇には, 分子構造への適度の屈曲性付与も重要であると考える.
  • 東 信行, 国武 豊喜, 梶山 千里
    1986 年 43 巻 11 号 p. 761-766
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    フルオロカーボン両親媒性化合物 (C3FC2OOH, 2C3FC3-de-C2N+) は, BaCl2を含む水相上または純水上21℃で安定な凝縮単分子膜を形成した. いずれの単分子膜も直接基板上に累積することは困難であったが, ステアリン酸をあらかじめ累積しておくとC3FC2COOHのBa塩単分子膜の場合には1層, 2C3FC3-de-C2N+単分子膜の場合には10層 (Z型) 累積できた. LB膜の酸素と窒素の透過速度 (RO2, RN2) はある一定のステアリン酸膜厚で急激に減少し, 同時に選択性 (RO2/RN2) も出現した. RO2/RN2の値は, フルオロカーボン層数に依存し, 最大でRO2/RN2=1.7 (RO2=7×10-5cm3 (STP) cm-2. s-1・cmHg-1) であった.
  • 鈴木 文男, 小野里 健二, 柳沼 淳子, 黒川 洋一
    1986 年 43 巻 11 号 p. 767-769
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    アルミニウムィソプロポキシドの加水分解生成物からゾル-ゲル法によって透明アルミナ膜を得た. 得られた膜を熱処理すると400~500℃において最大比表面積として約680m2/gを示した. 1300℃の処理によってほとんど吸着性がなくなった. 細孔分布曲線は600℃で処理したものがいちばんシャープであり, 約2nmの細孔径のところにピークを示した. それ以上の温度ではブロードになる. 永久気体の透過においてはベネトラントの分子量の増加とともに透過係数 (P) は減少した. これに対して, 脂肪族炭化水素の場合は, ベネトラントの分子量の増加とともにPも増加する特異な結果を示した. アルミナ膜を熱処理することによってPは増加した. 1300℃の処理によってもヘリウムなどのPは増加したが, n-ブタンの場合は減少した.
  • 本田 善次郎, 駒田 肇, 岡本 和夫, 甲斐 学
    1986 年 43 巻 11 号 p. 771-777
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    温度によって, アミンと酸との解離平衡反応の平衡定数が変化することを利用して, 温度差を駆動力とする酢酸の選択透過膜分離法について検討した. 膜の両側に温度差を設けることにより, 熱浸透現象による物質の移動が生じるが, 適当なアミノ基を有する膜を用いた場合には, 酢酸が選択的に輸送されることが, 実験的に確認できた. また, アミノ基の種類や膜素材によっても, 温度差を駆動力とする体積流の方向や大きさが変化することを見いだした. ジエチルアミノ化ポリスチレン膜 (DEA-PSt) を用いた場合には, 酢酸が低温側から高温側へ濃度こう配に逆らって輸送され, この時膜透過液中の酢酸濃度は, 原液の約1.5倍と高いものであった. これを不可逆過程の熱力学から導いた現象論的方程式を用いて考察した. また, 温度こう配下における物質移動を特徴づけるソーレー係数の新しい測定法について提案した.
  • 石原 一彦, 小暮 利衣子, 松井 清英
    1986 年 43 巻 11 号 p. 779-785
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    希薄なエタノール水溶液から, 膜に対する溶解性の差を利用してパーベーパレーション法によりエタノールを選択的に透過分離する目的で, スチレン (St) -ジメチルシロキサン (DMS) 系グラフト共重合体膜を作成し, その選択透過性を膜構造に注目して検討した. St-DMS系グラフト共重合体膜は, エタノールを選択透過するDMSドメインと, 膜の形態を維持するStドメインとから成るミクロ相分離構造を有する. この膜は, 供給液中のエタノール組成にかかわらず, エタノールを選択的に透過することが見いだされた. 特に, ペルフルオロアルキル基で置換したスチレンを含む三元グラフト共重合体膜では, 7wt%のエタノール水溶液が60wt%以上に濃縮され, 分離係数20以上の高い選択性を示した. これはペルブルオロアルキル基の導入による膜表面での撥水性の向上と, 膜内部でのミクロ相分離構造に基づく膨潤の抑制効果によると考えられる.
  • 拡散律速の証明
    山口 智彦, 杉浦 正昭, 島倉 佳江, 加茂 直樹, 小畠 陽之助
    1986 年 43 巻 11 号 p. 787-794
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    含浸型液体膜におけるアミノ酸の透過の律速過程を検討した. クラウンエーテルをキャリヤーとして溶存する含浸型液体膜 (支持体: ジュラガード2400) を積層して液体膜の膜厚を変え, アミノ酸の透過実験を行った. 最大流束Jmaxを与える条件下, Jmax-1は膜厚に比例した. 透過実験終了後積層したフィルムを分離し, 液体膜内部のアミノ酸の分布を調べたところ, 液体膜内の拡散過程が律速であると考えた場合に予想される結果と一致した. また, 拡散実験によりクラウンエーテル及びアミノ酸の拡散係数を求めた. アミノ酸の透過係数は, これらの拡散係数から算出される値とよく一致した. 以上の結果から, アミノ酸の透過の律速過程は, 界面における反応ではなく, 膜内拡散であると結論した.
  • 柳下 宏, 中根 堯, 山本 芳美, 吉留 浩, 後藤 幸平, 池田 弘治
    1986 年 43 巻 11 号 p. 795-801
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    耐熱性, 耐溶剤性などに優れた脂環族系のポリイミド樹脂を用いて, 相転換法 (キャスト法) による製膜を行い, キャスト液組成, 蒸発温度, 蒸発時間, ゲル化浴などの各種製膜条件を検討した. ポリマー濃度が12.5wt%, N-メチル-2-ピロリドン37.5wt%, ジオキサン50wt%のキャスト液をガラス板上に約150μm厚に流延し, 冷水中でゲル化することにより得られた膜は, 水溶液中の分子量6,000のPEG (3,000ppm) に対して, 操作圧3kg/cm2で92%以上の阻止率 (水の膜透過流束は約2.5m3/m2・day) を示し, トルエン溶液中でもほぼ同程度の阻止率を示した. また, アセトンをゲル化浴に用いることにより, Na2SO4 (5,000ppm) に対して操作圧20kg/cm2で97%以上の阻止率 (膜透過流束0.93m3/m2・day) を示す逆浸透レベルの膜が得られた. 浸漬試験により, これらの膜の耐溶剤性を調べたところ, ほとんどの有機溶媒に対して十分安定であった.
  • 箕浦 憲彦, 相羽 誠一, 冨士原 行彦
    1986 年 43 巻 11 号 p. 803-807
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    1,12-ジアミノドデカンで橋かけしたポリ [N5- (3-ヒドロキシプロピル) -L-グルタミン] 膜を調製し, 主鎖の二次構造変化の程度及びその変化速度を知るため3種の変性剤水溶液中での膜の長さ変化を調べた. ドデシル硫酸ナトリウム (SDS) では10-2Mの低濃度でも膜は32%伸張した. この伸張は, 赤外線吸収スペクトルによれば, 主鎖のα-ヘリックス含量の減少に起因することが分かった. また, 塩酸グアニジン (Gua) やCaCl2では0.1M濃度以上で膜は10%程度収縮した. この収縮はα-ヘリックス含量の増加に起因するものであった. SDSによる膜の伸張には60分程度が必要であったが, GuaやCaCl2による場合には20秒程度で平衡収縮率に達した. いずれの変性剤においてもこれらの伸縮挙動は可逆的であった. ビタミンB12の膜透過速度はGuaあるいはCaCl2の添加により低下した. この透過速度の低下はおもに拡散性の減少に起因していた.
  • 国眼 孝雄, 奈良部 均, 秋山 三郎, 荒井 三男, 北村 愛夫, 平杯 潔
    1986 年 43 巻 11 号 p. 809-817
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    逆浸透 (RO) 分離機構を分子運動論的観点から検討するため, 酢酸セルロース (CA) E398-3をキャストし, 熱処理温度を298Kから363Kまで変えて製膜した. 得られた膜についでRO分離実験と複素動的粘弾性の測定を行い, 次の結論を得た. (1) ろ過係数と現象論的係数はTt=335K近傍を境に急激に変化し, Tt<335Kではほとんど一定であるが, Tt>335Kでは急激に増加あるいは減少する. (2) 乾燥処理した膜の融点, 主分散, 副分散そして3番目の分散は, それぞれTm=515±5K, Tα=461±5K, Tβ=380±5K, そしてTγ=235±5Kである. (3) 水相においてはTd=335±5Kで分散が観測され, これは乾燥処理した膜のTβに相当し, 副分散と見なすことができる. (4) Tt>Tdの場合, 膜はTtの大きさに応じて非晶質部内の高分子の側鎖分子が配向し始め準安定化する. その結果膜はタイトになり, 液質排除は高くなり, 体積流束は小さくなるが, TtTdのときには膜中の分子には配向が起きないからRO分離特性は変化しない.
  • 仲川 勤, 桜田 豊久
    1986 年 43 巻 11 号 p. 819-825
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    スチレンスルホン酸 (SSA) の含有率が7.8, 9.8, 10.6, 14.4モル%であるメチルメタクリラート (MMA) との共重合体膜を合成した. これらの膜の含水率のうち, DSCにより凍結水を定量し, 総含水率より不凍結水の割合を求めた. SSAを7.8mol%含む膜の含水率は約30%であったが, このほとんどすべてが不凍結水であった. SSAの含有率の増加と共に凍結水の含有率が著しく増大した. クレアチニンの分配係数はSSAの低含有率の膜で最も大きく, 含水率の増加とともに減少したが, 拡散係数は増大し, この結果, 透過係数に対する含水率の影響は少なかった. これに対し, KCl, NaCl, KIなどの塩の場合, SSAを7.8モル%含む膜では, 低含水率, かつドナン排除が生じ, 分配係数が小さく, また透過係数も著しく小さかった. 膜電位の測定から有効固定電荷密度, 及び別に固定電荷密度を求めたが, これらは膜中のSSAの増加とともに減少を示した. この現象はSSAの増加に基づく高含水率のだめであると考察した. イオン輸送比D+/D-はKCl, KBr, KIの順に小さくなったが, この順位は水中のイオン輸送比の順位Cl-<Br-<I-と一致した. 荷電基の含有率を制御することにより, 有機物の溶質と電解質である無機塩の選択透過性を示す共重合体膜が得られることを示した.
  • 木下 隆利, 滝澤 章, 辻田 義治, 石川 元明
    1986 年 43 巻 11 号 p. 827-832
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    側鎖にアミノ基を有するポリアミノ酸膜を調製し, この膜の2次構造変化を利用した酸性水溶液中におけるL-リジン輸送の促進効果について検討した. 用いた試料膜は (メチル-L-グルタマート-N5- (2アミノエチル) -グルタミン) (MG/AEG) 共重合体橋かけ膜であり, 膜厚35μmのポリ (γ-メチル-L-グルタマート) (PMLG) 固体膜をエチレンジアミンを用いた側鎖部分のアミノリシス反応により得た. 同膜の共重合組成は, 上記の反応時関を変えて制御した. AEG組成の増加に伴い, 各pHにおける共重合体膜の膨潤膜面積及び水和度の値は増加傾向を示すとともにAEG組成42%以上の皮膜ではpH5.0以下における著しい膨潤挙動が明りょうに現れた, この挙動はIR測定より明らかにした膜の2次構造変化とよく対応した. 一方AEG組成42%のMG/AEG共重合体橋かけ膜を介する水の, ろ過係数Lp及びL-リジンの透過係数PのpH依存性も, この膜の2次構造変化を反映して, pH3.0における両係数の値は, 各々pH6.0~9.0のそれの約10倍の値を示し, 本試料膜の酸性水溶液中における輸送促進効果が確認された.
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