高分子論文集
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43 巻, 4 号
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  • 木村 初男
    1986 年 43 巻 4 号 p. 177-183
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    非極性で軸対称な棒状分子の系で, 分子間に引力と剛体的斥力を仮定し, 平均場近似を用いて, ネマチック相 (N相) の表面張力及び, ネマチック・等方相 (I相) 界面張力に対する分子論的表式を導いた. 分子配向に関して, 引力は両界面で同様な働きをし, 2種の引力定数B1及びE1の値に応じて, 界面に垂直, 平行, 斜めのいずれかの配向を安定化するが, 斥力はN相表面には垂直に, N・I界面には平行に配向させるよう働くことが示された. 引力と斥力の効果を総合的に考察することにより, 界面での傾き角θに温度変化が生ずること, 4-methoxybenzylidene-4′-butylaniline (MBBA) や4-ethoxybenzylidene4′-butylaniline (EBBA) のN相表面で観測された配向転移現象, 5CB分子がN相表面では垂直, N・I界面では斜めに配向する事実, 等々の観察結果が良く説明しうる. これらの観察結果を, 引力効果のみに基づいて説明することは困難である.
  • 坂元 隆一, 小森 尚志, 原田 成之
    1986 年 43 巻 4 号 p. 185-189
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    剛体棒状高分子の溶液中における液晶生成に関するFlory-Abeの理論をSchulz-Zimm型の分子量分布をもつ場合に適用した. 溶液が等方相と異方相に相分離するAポイントの臨界濃度を各種の軸比分布について平均軸比の関数として計算した. 同一軸比において, Schulz-Zimm分布の場合の臨界濃度υ2はPoisson分布と最も確からしい分布の中間の値となった. 計算値は軸比の増加とともに急激に減少するが, 実験値はゆるやかに変化する. 高分子量領域では高分子の屈曲性の影響で見掛けの軸比が減少すると推定した. Aポイントへの分子量分布の影響は理論計算上は著しいが, 実験結果はそれほどでもないことを示した.
  • 伊藤 隆司, 船田 論, 澁谷 文孝, 寺本 明夫
    1986 年 43 巻 4 号 p. 191-200
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ (γ-ペンジルL-グルタマート) の分子量の異なる三試料についてジメチルホルムアミドを溶媒として沈降平衡実験を行い, 溶媒の過剰化学ポテンシャル (Δμ0) SEDの濃度υ1微分 (∂ (Δμ0) /∂υ1] EBDを求めた. (Δμ0) EBDを分子量分布について補正すると, 久保と荻野の同じ系に対する浸透圧データからの値によく一致した. (Δμ0) SEDの濃度依存性からFlory-Abe理論に従って求めた相互作用パラメーターχは負で, 高分子濃度の増加とともに減少した. 軸比χwの大きいところでは, 等方一液晶相境界濃度υ1′, V1″はFlory理論の値 (χ=0) より大きかったが, χwの減少につれてυ1′, υ1″共にFlory理論の予想よりずっと緩かに増加し, χw<30ではOnsagerの理論値に近づいた. χ及びυ1′, υ1″についてよく似た傾向をシゾフィラン水溶液にも見いだした. Flory理論に負のχと配向に依存する非等方性相互作用の項G2 (G2<0) を導入することによりこれらの結果をほぼ定量的に説明できた.
  • 南 直樹, 會川 義寛, 鋤柄 光則
    1986 年 43 巻 4 号 p. 201-212
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    棒状高分子溶液は濃度が高くなると液晶相をとるが, この溶液の等方相に電場を加えても液晶相への相転移が起こる. この電場による相転移現象をポリ-L-グルタミン酸-γ-べンジル (PBLG) のジオキサン溶液について偏光顕微鏡観察及び電場を除いた後の放電電流の測定を行うことにより検討した. 顕微鏡観察によるPBLG-ジオキサン系の電場強度をパラメーターとする相図は, 電場が増大するに従い液晶相の存在領域が高温側に拡大した. また外部電場による相転移温度の変化は重場の自乗に比例することが見いだされた. この棒状高分子溶液の外部電場による等方相-液晶相転移に格子模型を適用して考察した. これより各相の自由エネルギー及び各相中での棒状分子及び溶媒の化学ボテンシャルを計算し棒状高分子溶液へ外部電場を加えた時の相図を得た. これより電場を加えると相分離領域は狭まり, 相転移濃度は低濃度側にシフトすることが示され, 実験結果と良い対応を示した. 更に転移濃度の変化と外部電場強度の関係も得た. またこの系を溶液中の分子会合を考慮して熱力学的に考察することにより相転移温度の変化と電場の自乗との線型関係式を得た. 電場を除去した後の液晶相から等方相への緩和は放電電流より解析した. 溶液が等方相をとる低電場ではその緩和は単に各分子の回転緩和によるものであるが, 相転移が起こる電場では液晶ドメインの回転緩和と熱的崩壊によるものであることがわかった.
  • 柳瀬 広美, 渡辺 毅, 浅田 忠裕
    1986 年 43 巻 4 号 p. 213-222
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    棒状高分子の典型的なリオトロピック・コレステリック液晶であるポリ-γ-ベンジルグルタマート (PBLG) のm-クレゾール溶液を2枚の平行なガラス板にはさんだものを試料とし, 液晶の高次組織が磁場の印加によりゆっくりと変化してゆく過径を偏光光の透過光強度を観測することによって研究した. 種々の厚さの試料について臨界磁場以上の強度の磁場を印加すると, 時間とともに光学的レターディションは連続的に増加し, コレステリックのねじれが解けてゆく. 試料の厚さが200μm以上になるとレターディションは二段階的な増加を遂げ平衡状態に達する. このような現象を壁面効果を考慮したモデルを設定することにより解釈した. これにより壁面効果の及ぶ範囲が約60μmと評価できた. また, 試料の厚さを一定とし種々の強さの磁場を印加した場合, 9kG以上の強さの磁場を印加すると二段階的なレターディションの増加が観測され, この系では, Cotton-Moutonの関係が成り立たないことが明らかとなった.
  • 高分子鎖の固有光挙的異方性の評価
    小野木 禎彦, 西島 安則
    1986 年 43 巻 4 号 p. 223-229
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    剛直な棒状の高分子鎖が形成するリオトロピック液晶の液晶構造について, 種々の方法により配向させた液晶溶液の屈折率異方性 (複屈折) 測定結果より考察を行った. 高分子としてセルロ. ース誘導体であるヒドロキシプロピルセルロースを試料に選び, 高分子鎖を配向させてから静止状態で安定なコレステリック液晶構造をとらせた後, 系の複屈折を測定した. また, 系を流動配向させ完全な流動配向状態をとったと考えられる系の複屈折値から計算できるHPCの固有の複屈折値も計算した. コレステリック構造を考えた場合, 屈折計のプリズム面に面配向した時の系の複屈折測定結果は流動配向で得ら義たHPC鎖の固有複屈折の値で説明できたことから, 高分子液晶は十分にその構造を安定化させれば, 非常にドメイン内の高分子鎖の配向因子の高い構造となることが明ら病となった.
  • 須藤 新一, 小原 一宏, 唐沢 幹雄
    1986 年 43 巻 4 号 p. 231-235
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ある条件下で液晶を形成するヒドロキシプロピルセルロース (HPC) の濃厚溶液のせん断粘度に対する温度の影響を広範囲の濃度域に渡って測定した. 用いた装置はコーン・プレート型粘度計である. HPCのジメチルホルムアミド, 蒸留水, 及び酢酸溶液はいずれも粘度対温度曲線に極大と極小を示した. それら極大及び極小点における粘度は, 例外もあるが, 濃度の増大とともに減少した. 同一温度で比較すると, 単一液晶相及び単一等方相溶液は, 高濃度ほど高粘度を示した. また, 適切な無次元粘度を無次元温度に対してプロットすると, 粘度の濃度-温度の重ね合わせが可能であった.
  • 須藤 新一, 大島 正義, 高津 修, 唐沢 幹雄
    1986 年 43 巻 4 号 p. 237-242
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    液晶形成高分子ヒドロキシプロピルセルロース (HPC) に屈曲性高分子ポリビニルピロリドン (PVP) または低分子ぶどう糖 (GLc) をブレンドした濃厚水溶液の相転移挙動と上記三成分系の希薄溶液特性との相関を検討した. そのため, 濃厚溶液のせん断粘度の温度依存性及び希薄溶液粘度特性のブレンド組成依存性を測定した. また, 水/HPC/HEC系の希薄溶液粘度も合わせ測定した. HPCとPVP及びHPCとGLc間には引力が, また, HPCとHEC間には斥力が作用し, 液晶状態はその相互作用に依存した.
  • 荘司 菊雄, 竹田 政民
    1986 年 43 巻 4 号 p. 243-245
    発行日: 1986/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンオキシド (PEO) とポリスチレン (PS) とから成るジブロックコーポリマーに対して, いずれか一方のブロックにのみ良溶媒となるような溶媒を加えた状態では, リオトロピックな液晶状態になることが知られている. そこで本研究ではPEO-PS-PEOからなるトリブロックコーポリマーを合成し, このトリブロックコーポリマーと選択良溶媒 (エチレングリコールかジエチルフタラート) との混合物をガスクロマトグラフ法の固定相として用い, オクタンの比保持容量を測定した. この相互作用パラメーターの温度依存性の実験結果から, 逆にリオトロピック液晶における溶媒組成と転移温度との関係を示す相図を得ることが目的である.
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