高分子論文集
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43 巻, 6 号
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  • 飯田 健郎, 林 さつき, 後藤 邦夫
    1986 年 43 巻 6 号 p. 319-324
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ塩化ビニルの安定化に対する, ステアリン酸亜鉛/ステアリン酸カルシウム複合石けんと種々の含硫黄化合物との相乗効果を, 色解析により, 検討した. t-ノニルメルカプタン, ジチオグリコール, β-メルカプトプロピオン酸及びチオ尿素は良好な相乗効果を示し, 複合系金属石けんの効果を顕著にしたが, オクチルメルカプタン, ジチオスルフィド, α-メルカプトプロピオン酸及びメルカプト酢酸2-エチルヘキシルは効果を示さなかった. 含硫黄化合物と複合系金属石けんから生じる塩化亜鉛との混合物の赤外分光分析及びX線光重子分光分析を行ったが, 効果を示した系においては, 含硫黄化合物と塩化亜鉛とが錯体を形成し, 効果の無い系においては, これが認められなかった. したがって, 含硫黄化合物と複合系金属石けんとの相乗効果はマスキング効果, すなわち, 過剰の金属塩化物と無色の錯体を形成する効果に基づくことが判明した.
  • 吉井 敏男, 小中原 猛雄, 佐藤 謙二
    1986 年 43 巻 6 号 p. 325-329
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    メラミンのホルムアルデヒド (F) によるヒドロキシメチル化反応について, N- (2-クロロエチル) モルホリン-共役酸緩衝溶液を用い, 水溶液中40℃で, pH 55 (r= [HB+] / [B] =3.0) ~pH6.6 (r=1/5) の範囲において速度論的に検討した (HB+及びBはそれぞれ緩衝剤の酸及び塩基成分). その結果, 遊離のメラミンをMHf初速度R0=koorr [MHf] 0 [F] 0で与えられる二次速度定数をkcorr, 非緩衝溶液中の速度定数をk′とするとき, 本反応は, kcorr-k′=kHB+ [HB+] +kB [B] で与えられる一般酸塩基触媒反応であることがわかった. また本速度式右辺第1項のkHB+一反応の機構に考察を加えた.
  • 上田 明, 永井 進
    1986 年 43 巻 6 号 p. 331-336
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    主鎖の一部にアゾビスシアノペンタン酸アミド単位を含むコポリアミド6.6あるいは6.10を開始剤に用いてスチレンを重合し, ポリアミド-ポリスチレンブロック共重合体を生成する際のポリアミドセグメント鎖長を推定する手掛りとして, アゾビスシアノペンタン酸メチルエステル (ACPA-Me) の分解挙動を調べた, すなわち, ベンゼン及びm-クレゾールを溶媒とし, スチレンの不在下及び共存下でACPA-Meの分解を60℃で24h行い, 分解生成物をガスクロマトグラフィーで分離定量した. その結果ACPA-Meの分解後の再結合率はベンゼン中で約85%, m-クレゾール中で約43%となり, 各系にスチレンが共存すると, それぞれ約48%, 28%まで下がり, 再結合反応に対する溶媒及びモノマーの影響の著しいことがわかった. この結果は上記ブロック共重合体の分子設計上の基礎資料となる.
  • 芹田 元, 村井 幸一
    1986 年 43 巻 6 号 p. 337-343
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    2-ビニルピリジンービニルエステル共重合体 (2VP-VE) と種々の臭化アルキルの反応により2-ビニルピリジン-ビニルエステル共重合体の4級アンモニウム塩 (ポリマー) を得た. 5%カオリン懸濁液に対する凝集作用をポリマーの構造との関連において検討した. 得られた結果は次の通りである. 1) いずれのポリマーに対しても, 4~40ppmのポリマー添加濃度の範囲内で良好な凝集効果が認められた. 2) 凝集作用は, いずれも, i) イオン化の割合 (α), ii) 幹ポリマーの分子量, そしてiii) 幹ポリマーのビニルエステルのアルキル鎖長, の増加に伴って増加した. 3) いずれのポリマーを使用しても, pH1~12の範囲において, 良好な凝集効果が認められた. 4) ポリマーの四級化剤のアルキル鎖長の凝集作用への影響は, C12H25>C2H5≈C8H17>C4H9の順で増加しており, その増加の順序はカオリン粒子へ吸着されるポリマー量に依存しているのが認められた.
  • 伊藤 精一, 川井 良訓, 大下 孝
    1986 年 43 巻 6 号 p. 345-351
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    アクリロニトリル/酢酸ビニル共重合体 (93/7重量比) をSO2/過硫酸カリウム系レドックス開始剤を用い低水/モノマー比の重合条件下で水系達続重合により製造する方法において, 竪型重合槽を使用しかくはん翼 (タービン) の翼径 (D1) とかくはん速度 (n) を変え重合挙動, ポリマー特性に対するかくはん効果を実験的に検討結果, かくはん翼径は生成ポリマー粒子径に影響し翼径がある程度大きくなると粒子径が小さくなり, また均一化すること, 一方, n3D15で大きさを規定したかくはん動力が増加すると重合生成スラリーの粘性低下, 重合率の減少, ポリマーかさ密度の増加が認められ, またかくはん動力増加により不規則な形状のポリマー粒子が減り, 球状のものが増えることが認められた.
  • 垰田 博史, 早川 浄, 川瀬 薫, 小坂 岑雄
    1986 年 43 巻 6 号 p. 353-359
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    潜熱型蓄熱材料としてポリエチレンオキシドを使用する場合の経時熱劣化の程度を推測するため, 1日1回の加熱-冷却サイクル (30~200℃, 30~150℃及び0~35℃) を設定し, 種々の分子量のポリエチレンオキシドの空気中における物性変化を測定した. その結果, 30~200℃及び30~150℃の加熱-冷却サイクルでは重量減少, 酸素含有率の増大, 融解温度と融解熱量の低下などがみられた. これは, 熱酸化分解によるポリエチレンオキシドの低分子量化と生成したラジカルの結合による高分子量化の同時進行によるものと考えられる. 低分子量のポリエチレンオキシドに対して低温の0~35℃の加熱-冷却サイクルを繰り返した場合には, 3カ月後あるいは6カ月後においても物性に変化がみられなかった. ポリエチレンオキシドの経時熱劣化に対して, ラジカル捕捉剤の添加による抑制効果がみられた.
  • 多留 康矩, 高岡 京
    1986 年 43 巻 6 号 p. 361-367
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    疎水性高分子の表面はプラズマ処理により親水化する. しかし, この表面の親水性は保存時間の経過とともに退行する. この主な原因に高分子表面における極性基の反転が考えられる. そこで, ポリプロピレンフィルムの表面を酸素及び窒素プラズマで処理をほどこし, この表面の元素組成をESCAにより経時的に追跡した. この結果, 表面に生成した極性基は内部にもぐり込み, 内部の炭化水素鎖が表面に現れる. この反転の経時的変化の傾向は表面の水との接触角の退行の傾向と同じである. また, この極性基の反転は低温 (-196℃) で起こりにくく, 高温 (100℃) で起こりやすい. この極性基の反転により表面エネルギーが緩和するに要する時間はプラズマ放電時間に影響され, 長時間プラズマ処理試料では, 緩和に長時間要した. この極性基の反転の難易性は基の種類によって異なり, プラズマ処理直後では主に親水性の大きい基が先にもぐり込む. また, 表面エネルギーの緩和が完了した試料表面には比較的親水性の小さい基の一部が残る.
  • 林 修, 神田 和郷, 松本 幸男
    1986 年 43 巻 6 号 p. 369-375
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    高分子量の部分エポキシ化シス-1, 4-ボリブタジエンを有機カルボン酸共存下に第3アミンと反応させて得られた水溶性の新規なポリマーの構造を解析し, エポキシ開環反応の機構を推定した. 汎用高分子量ボリブタジエンのエポキシ化はIn-situ過ギ酸法で行った. エボキシ化ポリマーを乳酸, ビリジンの共存下に加熱したところ回収したポリマーはベンゼン, クロロホルムなどの通常の有機溶剤には不溶であり, 水, アルコール類に溶解するという興味ある性質を示した. 1HNMR, 赤外吸収スペクトル, 及び13CNMRなどで変性ポリマーの構造を調べると, もとのエポキシ構造はピリジニウム塩として開環しており, 他に少量のカルボン酸エステルの型も存在していることを明らかにした. エポキシ化率, 使用する第三アミン, 酸の組み合せ, その反応条件によってビリジニウム塩構造含有率は幅広く選ぶことができる. 本変性ポリマ-の水溶液を使用して直流による電気析出を検討したところ陰極表面にポリマー析出が見られる.
  • 荻野 圭三, 大塚 俊之, 石川 延男
    1986 年 43 巻 6 号 p. 377-383
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    3種のペルフルオロカルポン酸クロリド (CnF2n+1COCl, n=4, 6, 8) で改質したポリビニルアルコールフィルム (PVA) の表面状態を表面張力成分 (ロンドン分散力, 極性力, 及び水素結合力) により検討を行った. ロンドン分散力と水素結合力成分は, 未改質状態のPVAよりもベルフルオロカルボン酸クロリドで処理したPVAの方が小さかった. PVAフィルムの撥水性, 撥油性は, 改質試薬のベルフルオロアルキル鎖長が増加するにつれて強くなった.
  • 林 修, 神田 和郷, 松本 幸男
    1986 年 43 巻 6 号 p. 385-388
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    部分エポキシ化シス-1,4-ポリブタジエンをカルボン酸共存下, 第二アミン溶媒中加熱反応させ, 得られた変性ポリマーを1H及び13CNMRで構造解析して第三アミン溶媒中の反応と反応スキーム, 変性ポリマーの性質の大まかな比較を行った. カルボン酸として乳酸を用い, モルホリン中でエポキシ化ポリブタジエンを反応させるとポリマー中のエポキシ環はモルホリンによって優先的に開環しており, カルボン酸による求電子的な開環構造 (エステル) ならびに乳酸塩 (アンモニウム) 構造は回収ポリマー中には少ない. 反応率を変えても第三アミンを用いた変性ポリマーのような水溶性はみられなかった.
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