高分子論文集
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44 巻, 1 号
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  • 宮崎 幸雄, 上出 健二
    1987 年 44 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    分岐状セグメントポリウレタンの希薄溶液物性におよぼす分岐構造 (アロファナート, ビューレット結合) の影響を検討した. そのため, メチレンピス (4-フエニルイソシアナート) /ポリカプロラクトン/2-アミノエタノール系のセグメントポリウレタン (PU-1) を重合した. PU-1をジメチルアセトアミド/エチルエーテル/n-ヘプタン系の逐次分別沈殿法で分別した. PU-1の分別区分の極限粘度数 [η] と見掛けの重量平均分子量Mw, a, 慣性半径〈S21/2z, a, 第2ビリアル係数A2, aを光散乱法でもとめた. PU-1は長鎖状分岐を有する高分子で, 高分子量の分別物ほど1箇の分子鎖当たりの分岐構造の数が多くなり, そのため, PU-1の [η] -Mw, a,〈S21/2z, a-Mw, a, A2-Mw, aのlog-logプロットは上に凸の曲線となる. DMFまたはDMAc溶液の加熱による溶液粘度の低下は分岐構造の分解によって生じる.
  • 多留 康矩, 高岡 京
    1987 年 44 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    尿素樹脂とアルキド樹脂から成るアミノーアルキド樹脂塗膜の表面における特性成分の濃縮効果をESCAにより研究した. この結果は以下に述べる通りである. この塗膜の表面におけるアミノ樹脂は塗膜内部に比べて濃縮していた. この濃縮したアミノ樹脂量は等混合分率から成る塗膜の表面で最も多い. 塗膜内部に対する表面のアミノ樹脂の分率比は混合割合に依存した. この表面におけるアミノ樹脂の偏析量はアミノ樹脂が5~10%から成る塗膜で約300%である.
  • 桑原 宣彰, 尾畑 納子, 陶 智子
    1987 年 44 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    エチレンービニルアルコール共重合体 (EVA) を, ホルムアルデヒド (FA化), アセトアルデヒド (AA化), n-ブチルアルデヒド (BA化) によってアセタール化 (AC化) し, AC化による水の吸着, 透過および拡散の変化を検討した. 結果は次のとおりである. (1) EVAのAC化物の吸湿曲線は, いずれもシグモイド型を示し, BET式で計算される単分子層吸着ははAA化EVA>FA化EVA>BA化EVAの順に多かった. (2) ポリマー水相互作用係数χ1は, AA化EVAが最も低い値をとった. (3) AC化によって透過係数Pは増加したが, この増加は拡散係数Dが大きくなることによる. (4) 低湿度領域では主に水分子によるOH基の水素結合切断が効果的であるためにDは湿度と共に上昇するが, 高湿度になると水分子がクラスターを形成するためDは上昇しなくなり一定植を示すようになる. (5) このDの一定値を示す時の湿度, これは単分子吸着層形成時の湿度と考えられるが, この湿度におけるDの対数とAC化度との間に直線関係が成立した.
  • 三輪 実, 大沢 直志, 佐守 左知代, 水野 朋子
    1987 年 44 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    エポキシ樹脂中に埋蔵されたナイロン6繊維の引抜挙動に及ぼす環境温度の影響を検討した結果, 次のことが明らかとなった. 引抜時の繊維の最大引張応力と埋込み長さとの関係曲線は二つの領域からなり, 埋込み長さが短い領域の第1のこう配から得られた界面領域の降伏せん断応力の温度依存性は, 繊維とマトリックスとの熱膨張係数の相違によって生ずる熱応力の温度による変化に起因すると推定される. 埋込み長さが長い領域の第2のこう配から得られた界面の摩擦力は, 上記の界面の降伏せん断応力の値に比べ約二桁小さく, 引抜時のはく離過程から得られた摩擦力とほぼ一致する. この摩擦力はこの複合系の破壊エネルギーを支配する重要な因子である.
  • 石沢 真樹, 大島 宏
    1987 年 44 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    熱可塑性樹脂の銃弾等の高速衝撃に対する耐衝撃性について検討し, 以下の結果を得た. 高速飛しょう体による破壌と類似の高速打抜き試験を行うことにより, 耐銃弾性の結果を推定できることがわかった. すなわち, 高速打抜き破壌エネルギーは, 0.1~10m/sの範囲で打抜き速度の関数として簡単な実験式で表せる. この実験式は, 銃弾速度領域である300m/sにおける銃弾による破壌エネルギーをも推定することができる. また, 高速打抜きによる破壌挙動は, 簡単な粘弾性体の力学モデルであるVoigtモデルで定性的に説明できることがわかった. 上記の評価法に基づき, 各種熱可塑性樹脂の耐衝撃性を評価した結果, 破断伸びの大きいスチレン系エラストマーやウレタン系エラストマーなどのエラストマー系材料が耐衝撃性に優れていることがわかった.
  • 加藤 康夫, 遠藤 誠司, 木村 邦生, 山下 祐彦, 次田 浩, 物延 一男
    1987 年 44 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    p-アシロキシ安息香酸を液状パラフィンまたはサームS800 (R) 中で重合させることにより, 針状のポリ (p-オキシベンゾイル) 結晶を得た. 重合は静止状態330℃で360分間行った. 得られた針状結晶の密度は, 1.50~1.51g/cm3で単位格子の大きさから求めた結晶密度1.52g/cm3に非常に近い値を示した. また, X線粉末図形では非晶部に基づくピークは認められなかった. 更に, 他の形態を持つ結晶と比較して高い転移温度及び分解温度を示した.
    これらの事実からこの針状結晶が高分子ウイスカーであることが強く示唆された.
  • 山下 祐彦, 加藤 康夫, 遠藤 誠司, 木村 邦生, 次田 浩, 物延 一男
    1987 年 44 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    前報で得たPOB針状結晶が電子線回折図などから高結晶性の延伸鎖型結晶であることを明らかにした. そして, このウイスカの生成機構は, 重合初期生成物の形態観察から次のようなものであると考えた. 溶媒中での縮合によりある重合度に達したオリゴマー分子がラメラ晶として析出する. さらにオリゴマー分子がラメラ晶上に発生したらせん転位に基づいてスパイラル成長で結晶化し, ラメラが高度に積層する. 引き続いて後重合が起こり, ラメラ関のオリゴマー分子が縮合し延伸鎖型結晶となる. また, 用いる溶媒などの重合条件によって他の形態も観察されるが基本的に類似の重合結晶化機構が考えられた.
  • 三輪 実, 大沢 直志, 岩田 真示
    1987 年 44 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ガラス繊維/ナイロン繊維系ハイブリッド複合材料の引張強度及び衝撃破壊エネルギーに及ぼすハイブリッド比の効果を検討した結果, 次のことが明らかとなった.
    いずれの温度においても, ナイロン繊維のハイブリッド比が増すにつれて, 引張強度はほぼ直線的に減少する. 任意のハイブリッド比における引張強度は, それぞれの繊維系における繊維-マトリックス界面領域の降伏せん断応力及び臨界繊維長を考慮して推定できる. 一方, 衝撃破壊エネルギーは, ナイロン繊維のハイブリッド比につれてほぼ直線的に増大し, その傾向はハイブリッド比例複合則に従う. 環境温度30~90℃においては, 例えば, ナイロン繊維のハイブリッド比を0.5程度とすると, 引張強度はガラス繊維のみで強化された複合材料の70~80%に減少するのみであるが, 衝撃破壊エネルギーは2.0~2.3倍に増加する. しかし, 120℃においては, その効果は認められない.
  • 車谷 元, 長岡 昭二, 森 有一, 丹沢 宏, 菊地 良和
    1987 年 44 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    体外循環時の抗凝固剤使用量の低減および濾過血漿の品質向上を目的として, 血液適合性に優れた長鎖ポリエチレンオキシド (PEO) の導入によるポリアクリロニトリル系血漿分離膜の改質をはかった. まずアクリロニトリルとメトキシポリエチレングリコールモノメタクリラート (側鎖ポリエチレンオキシドの鎖長100) の共重合体から血漿分離膜を作成する条件を検討し, 実用的な透過性と力学的性質を有する膜を得ることができた. この膜の血液適合性をin vitroでの家兎血小板の付着という観点から評価した. その結果, PEO鎖の導入により血小板の付着が抑制され, 血液適合性が向上することが明らかとなった.
  • 井上 洋, 三宅 泰治, 田中 秀次郎, 松田 昭, 神山 政樹
    1987 年 44 巻 1 号 p. 59-66
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    エチレン, プロピレン及びジシクロペンタジエンを共重合して得たEPDM (ethylene propylene diene methylene) を種々の有機溶媒で選択的に溶解し, 抽出物を分析した, この手法でEPDMの化学組成分別を行い, その組成分布を決める方法を作成した. 化学組成分別 (CCD) を定量的に表わすため, 平均エチレン組成, CCDの標準偏差及びその非対称因子を検討した. 生ゴム強度 (RS) の高いEPDMを検討するため, エチレン・プロピレンコポリマー (EPM) をモデルに選び, 重合温度因子とCCDとの関係を調べた. 次に, EPMの分子は分布をGPC法で検討した結果, EPMはエチレン含有量が高い高分子は成分と, エチレン含有はが低い低分子量成分と, 主成分であるEPランダムコポリマーとから成ることがわかった. この結果, 使用した触媒中に数種の異なる活性種が存在することが明らかになった. RSの起原はEPDM中のポリエチレン結晶に由来することがX線回折から明らかにされた.
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