高分子論文集
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44 巻, 12 号
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  • 佐々木 信義, 横山 哲夫
    1987 年 44 巻 12 号 p. 857-865
    発行日: 1987/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリテトラメチレングリコール (Mn=984,2040) と4,4′-ジフェニルメタンジイソシアナートをベースとし, アイオネンセグメントを導入した橋かけポリウレタンを合成し, ミクロ相分離構造と力学物性を検討した. ジハライドにはp-キシリレンジクロリド (XDC) 及び1,6-ジブロモヘキサン (DBH) を用い, N, N, N′, N′-テトラメチルヘキサンジアミンを添加することによりアイオネンの鎖長を変えた. 電子顕微鏡観察からは, ジアミンを加えない鎖長の短い試料ではソフトセグメントの, 鎖長の増加した試料ではアイオネンに起因する球晶が観察され, 引張強さ37.7-63.4MPa, 100%モジュラス3.6-15.7MPa, 伸び460-710%の高強度, 高モジュラスのエラストマーが得られることが明らかとなった. DBH系はXDC系よりも結晶性が高く球晶サイズの大きいものが得られるが, これは生成アイオネンの鎖長が増加するためと解釈され, X線回折などから支持された.
  • 佐々木 信義, 横山 哲夫
    1987 年 44 巻 12 号 p. 867-876
    発行日: 1987/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    アイオネンセグメントを導入した橋かけポリウレタンについて, 動的粘弾性, 小角X線散乱により相分離構造を検討し, 応力ーひずみ関係から求めた網目鎖濃度を共有結合, イオン結合の寄与に分離した. その結果, これらのポリウレタンはアイオネンをドメインとする相分離構造を持ち, 網目鎖濃度に及ぼすイオン結合の寄与の極めて大きいことが分かった. イオン濃度の増加とともに一次橋かけによる網目鎖濃度は減少する傾向を示し, 代わって二次橋かけによる寄与が増大し著しい補強効果を示すことが明らかとなった. 一次橋かけによる網目鎖濃度と相分離構造との間には明確な相関が認められ, ジハライドに1.6-ジブロモヘキサンを用いた試料では相分離の進行に伴い網目鎖濃度が減少し, p-キシリレンジクロリドを用いた試料では逆に増大する傾向を示した. これらの原因はドメインサイズが異なるためと解釈した.
  • 足立 公洋, 山口 宗明, 高橋 高子, 田中 勝敏
    1987 年 44 巻 12 号 p. 877-884
    発行日: 1987/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    シラン系, チタン系, 及びリン系カップリング剤 (SCA, TCA, 及びPCA) で処理したガラスフレーク (GF) と, 無水ヘキサヒドロフタル酸及び4,4′-ジアミノジフェニルメタンで硬化したエポキシ樹脂との親和性を動的粘弾性, 圧縮強さ, 及びSEM観察で調べた. 材料中のGF含有率は49~61vol%である. 試料の切削面のSEM写真から, カップリング剤処理の有無にかかわらず, GF粒子は層状配列をしていることがわかる. 動的粘弾性測定は室温から250℃まで行った. 相対弾性率 (Ec′/Em′) が, 特にゴム領域で大きな材料はGFとエポキシ樹脂との親和性が大きい. DSCで大きな発熱ピークが認められるSCAで処理した材料は, TCA及びPCA処理した材料よりも圧縮強さが大きい. ゴム領域のEc′/Em′値と圧縮強さの比 (σcm) との間には良い相関性が得られた. したがって, ゴム領域のEc′/Em′値から親和性を評価することができる.
  • 細井 文雄, 齋藤 健司, 幕内 恵三, 小石 真純
    1987 年 44 巻 12 号 p. 885-891
    発行日: 1987/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    セルロースを主成分とする多孔性微粒子にγ線前照射法でメタクリル酸メチル (MMA) をグラフト重合した. グラフト微粒子は, サリチル酸を溶かした50%エタノールに浸漬しサリチル酸を吸着させ, 徐放性微粒子とした. グラフト微粒子のサリチル酸吸着量は, グラフト率 (G) の2.9次に比例して増加した. また. 吸着量 (Q) はLangmuirの吸着機構に従った. 吸脱着平衡定数比 (k) 及びサリチル酸飽和吸着量 (Q0) は, それぞれk=k1G, Q0=k2G2.4で表された. ここで, nは2.4であり, 吸着サイトはグラフト率のn次に比例して生成することがわかった. これらの結果から, サリチル酸はグラフトポリマーに吸着されるのではなく, グラフトポリマーとセルロースとの相互作用によって生成する吸着サイトに捕獲されることが明らかになった. 同様な結果が, サリチル酸存在下でMMA, MMA-スチレン (St), MMA-メタクリル酸 (MAc) などをグラフトさせて得た徐放性微粒子でも確認された. 吸着サイトの生成数, 吸着サイト間の相互作用やグラフトポリマー (吸着サイト) と薬物の相互作用の大きさなどはモノマー組成に依存し, これによってグラフト微粒子の薬物吸着量が異なることが明らかになった.
  • 高橋 利禎, 長田 英史
    1987 年 44 巻 12 号 p. 893-896
    発行日: 1987/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ (ヘキサメチレンp. p′-ビベンゾエート) (BB-6) の固体状態のモルホロジーとその液晶の組織への依存性を透過電子顕微鏡法により検討した. BB-6の薄膜は150℃においてマイカ上にキャストすることにより調製した. 薄膜の温度はホットブレートで制御した. 等方性融液 (260℃) より形成された薄い液晶膜はゆっくり室温まで冷却された. 板状結晶の積層構造より成る長い板状構造がサーモトロピック液晶より形成された薄膜に見いだされた. そのあるものは分岐したり, また隣接するものと融合してさらに高次の超分子構造を形成した. 板状結晶が同心円的に配列している球晶的構造も見いだされた. これらの構造はBB-6の液晶状態に見られるスメクチック組織に由来するものと考えられる. このようなモルホロジーはデュパンのサイクライドを用い, 双曲線がBB-6の膜に平行であると仮定することにより説明された.
  • 浅野 雅春, 吉田 勝, 嘉悦 勲, 森田 泰司, 福崎 裕延, 真下 透, 湯浅 久子, 今井 強一, 山中 英寿, 河原田 うめ子, 鈴 ...
    1987 年 44 巻 12 号 p. 897-903
    発行日: 1987/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    -78℃でβ-propiolactone (PL) を放射線固相重合させた時, 重合収率は50kGyまで照射線量とともに増加した (50kGyで22%). しかし, 50kGyから200kGyの照射線量範囲での重合収率の増加分はわずか3%であった. poly (PL) のIn Vivo分解率は. 圧融着法 (200kg/cm2, 50~75℃の条件下で加圧-加熱溶融処理) によって成形した円柱状ポリマーをウィスター系ラットの背中皮下に埋入することによって調べた. 例えば, 5,10,50,100,160, そして200kGy照射によって得たポリマーの20週埋入時でのIn Vivo分解率は, 上記順序において5,9,25,34,37, そして40%であった. これらのポリマーの粘度 (nsp/c値) は照射線量の増加に伴い減少する傾向を示した. nsp/c値とIn Vivo分解率の関係から. ポリマーのIn Vivo分解率が0.4dl/g付近のnsp/c値 (30kGy照射) に変曲点をもっていることが分かった. すなわち, 0.4dl/g以下の領域 (30kGy以上の照射) におけるポリマーのIn Vivoの分解速度はわずかな粘度減少で著しく加速された. 反面, 0.4dl/g以下の領域 (30kGy以下) では, そのような加速効果が顕著でなかった. したがって, 低温放射線重合によって得たpoly (PL) のIn Vivo分解速度は照射重合時でのポリマー鎖の切断によって加速されると結論した. 一方, X線回折パターン及びDSC測定データは, In Vivo分解がポリマーの結晶性の乱れ及びポリマーの融点低下とも関係していることを示した.
  • 高田 耕一, 松家 英彦, 岸木 博
    1987 年 44 巻 12 号 p. 905-910
    発行日: 1987/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    置換ポリアセチレンの一つであるポリ (トリメチルシリルプロピン) (PMSP) のUV光による分解と増感剤の影響について検討した. まず空気下と減圧下におけるUV分解を行い, 酸素の存存が分解を加速させることを確かめ分子量の逆数と照射量で直線関係になることから, ランダム主鎖分解で分解が進行していることを確認した. NDCl5とTaCl5のPMSPの重合触媒が異なるPMSPではNbCl5触媒PMSPの方が分解されやすくこの相違は分子構造の幾何構造の相違であろうことが想像された. PMSPの光増感剤としては, エチルアントラキノンなどの水素引き抜き能のあるキノン系化合物が効果があることが分かった. i線 (365nm), g線 (436nm) の分光増感ではそれぞれキノン系増感剤に加えて副増感剤を組み合わせる複合系増感剤が効果があることが判明した. また複合増感系におけるエネルギー移動も論議された.
  • 高田 耕一, 松家 英彦, 岸木 博
    1987 年 44 巻 12 号 p. 911-916
    発行日: 1987/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリトリメチルシリルブロピン (PMSP) を前報で検討された増感剤エチルアントラキノンと組み合わせると感度100ml/cm2のポジ型UVレジストになることが分かったが感度, 解像度, バターン寸法性は現像溶剤の系により異なることが分かった. 特にケトン系溶剤を現像溶剤として使用すると, 現像後のパターン寸法性の良い特性が得られた. 非イオン系界面活性剤のレジスト組成への添加は, 感度増感に顕著な効果があることが分かった. さらにインターべーク (熱処理) は感度, 解像度に共に効果があることが分かった. PMSPを2層レジストとして使用する時, 耐O2RIE性が要求されるが下層のノボラック型レジストに比べて, 十分エッチング耐性があることが分かった. しかし, 実際のO2イオンエッチングによるパターン形成時にはパタ-ンが収縮し, 寸法性が悪くなり, 実用性能を満足することはできないことが判明した.
  • 林 和子, 福村 裕史, 吉川 暹, 山本 襄, 境 哲男, 山下 岩男
    1987 年 44 巻 12 号 p. 917-924
    発行日: 1987/12/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    ポリマーの抗血栓性に及ぼす放射線酸化の影響を調べるため, ポリテトラフルオロエチレン (PTFE) 及び低密度ポリエチレン (PE) チューブ (内径1及び3mm) のr線照射を行い, 50℃で水処理後, 表面のキャラクタリゼーションと抗血栓性評価とを行った. PTFEへは主にアルゴン中, 0.14~0.47MRを, PEへは空気または水中で0.44~8MRを照射した. ESCA及びゼータ電位のデータは, 照射表面への酸素含有基の導入を示し (照射PEで約10mol%), PTFE及びPE表面の接触角は線量とともにそれぞれ98°及び80°まで低下した. 犬末梢静脈内での相対開存時間は, 線量とともに著しく低下した. 生体外試験ではすべての試料で補体と接触相の活性化はみられなかったが. 生体内試験では照射試料で血小板粘着の増加がみられた. ゆえに, 照射表面の抗血栓性の低下は, 表面の疎水性の低下に由来する血小板系活性化の亢進によるものと推定される.
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