高分子論文集
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44 巻, 3 号
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  • 筏 英之, 長谷川 裕彰, 芦田 道夫
    1987 年 44 巻 3 号 p. 143-149
    発行日: 1987/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    温室栽培農業用に使われている軟質ポリ塩化ビニルフィルムは長時間太陽光に曝露され, 大気中で使われる. このため, 化学反応が進行し, フィルムは劣化し, 廃棄される. 廃棄ポリ塩化ビニルは焼却されるが, 焼却時に人間の生命活動に有害な化合物を発生させることは周知の事実である. 廃棄ポリ塩化ビニルの再利用に関し多くの研究がなされてきた. 異なるメーカーにより製造されたフィルムを温室用テントとして3年間使い, それらの劣化を調べた. 重合度は10から20%低下し, 破断強度はすべてのフィルムにおいて約10%低下した. 光透過率は, フィルムの表面処理に依存し, 異なる変化を示した. カルボニル基と二重結合とが生成していることが13CNMRスペクトルで検出された. 再利用のために, 再生フィルムにパラトルエンスルホニルヒドラジドを加え, カルボニル基と二重結合を還元し, 物性を調べた.
  • 井上 俊英, 岡本 勝
    1987 年 44 巻 3 号 p. 151-156
    発行日: 1987/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    核置換ヒドロキノンと4,4′-ジフェニルジカルボン酸からなるポリアリラートに1, 2-ビス (フェノキシ) エタン-4,4′-ジカルボン酸または1,2-ビス (2-クロルフェノキシ) エタン-4,4′-ジカルボン酸を共重合したポリアリラートは, 300℃以下で液晶を形成することがわかった. これらポリアリラートの紡出糸の弾性率は, 繊維径0.05~0.13mmで52~145GPaと高弾性率であり, 射出成形品の曲げ弾性率もEastman Kodak社の液晶ポリエステル, X-7Gの1.5~2.0倍の曲げ弾性率を有し, メチルヒドロキノンと4,4′-ジフェニルジカルボン酸及び1,2-ビス (2-クロルフェノキシ) エタン4,4′-ジカルボン酸からなるポリアリラートの曲げ弾性率は, 成形品厚み0.8mmで31.5GPaと高弾性率であった. 一方, メチルヒドロキノンと4,4′-ジフェニルジカルボン酸及び1,2-ビス (フェノキシ) エタン-4,4′-ジカルボン酸からなるポリアリラートの紡出糸の破断面の走査型電子顕微鏡から流動方向に配向した年輪状の板状フィブリルのあることがわかった.
  • 前川 善一郎, 濱田 泰以, 堀野 恒雄, 五辻 精一, 鈴木 恵
    1987 年 44 巻 3 号 p. 157-164
    発行日: 1987/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    本論文では, 切欠きを有する繊維強化プラスチック (FRP) の強度特性を取り扱っている. 本実験で用いられた材料は, マトリックスとして不飽和ポリエステル樹脂を用い, 強化材として2種類の強化形態の異なるガラスクロスとガラスマット及びそれらの混合したものを用いている. FRPの切欠き効果を調べるために, 本材料の平滑試験片及び切欠き付き試験片の引張試験をひずみ速度を変化させて行った. 本実験から, FRPの切欠き効果は強化材の形態及びひずみ速度に依存することが判明した. 本研究では更にFRPの破壊機構を解明するために, 引張荷重を受ける試験片に対しアコースティック・エミッション (AE) 試験と写真観察を同時に行い, AE事象数と試験片の損傷領域の広がりとから強化材の形態による損傷進展機構の相違を明確にした.
  • 古川 睦久, 吉武 紀道, 横山 哲夫
    1987 年 44 巻 3 号 p. 165-172
    発行日: 1987/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ボリエーテルウレタン尿素の熱分解機構を質量分析計へ試料を直接導入し350℃で熱分解する方法により調べた. 試料にはポリ (オキシテトラメチレン) グリコール-エチレンジアミン-4,4′-ジフェニルメタンジイソシアナートあるいは-2,4-トリレンジイソシアナート系セグメンティドポリウレタンとそれらのモデル化合物を用いた. モデル化合物の熱分解マススペクトルとの比較により, ウレタン・ウレア結合の解離によりハードセグメント部の切断がまず生じ, 次にソフトセグメント部が分解されることがわかった. ウレア・ウレタン結合はi) モノアミンモノイソシアナート, ii) ジイソシアナート, iii) ジアミンへ定量的に解離した. しかしながらこの解離反応の生起はジイソシアナートの構造に影響された. ソフトセグメント部の分解では第1段階としてC-O結合が主に切断するが, エーテル酸素の隣接C-C結合 (α-β結合) での切断も生じた.
  • 小関 健一, 柴田 剛, 山岡 亜夫
    1987 年 44 巻 3 号 p. 173-178
    発行日: 1987/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    側鎖分子構造及び感光基濃度の異なるアジド系フォトポリマーにおける光架橋反応を架橋効率により評価しフォトポリマーの分子設計上必要な分子構造論的知見を得ることを目的とした. ポリマーとしては側鎖長の異なるメタクリラート系ポリマー及びエステル化率の異なるポリ (ビニルp-アジドベンゾエート) を用い前報と同様に架橋効率を求めた. その結果, エチレンオキシド鎖が長くなるにつれTgが低下し, 光分解で生じたニトレン同士の架橋反応に結び付くカップリング反応が生じ易くなること, また感光基濃度の低下が架橋効率の上昇をもたらすことが明らかになった. 感光基濃度の増加は, 架橋反応に結び付かない分子内カップリング反応の確率を高めることがわかった. 以上よリフォトポリマーの架橋効率を増大させるためには, 系のTgを低下させ側鎖の運動性を増大させるとともに, 感光基濃度を最適化することが分子設計上重要であることが明らかになった.
  • 加藤 忠哉, 前田 寿苗, 高橋 彰
    1987 年 44 巻 3 号 p. 179-183
    発行日: 1987/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    水溶性セルロース誘導体であるメチルセルロース (MC), ヒドロキシプロピルメチルセルロース (HPMC) 及びヒドロキシエチルメチルセルロース (HEMC) を混和したポリマーセメントモルタル (PCM) 供試体の曲げ強度を材令を変化させて測定した. 水セメント比 (W/C) が0.65のときはPCMの材令28日強度は未混和モルタル (OPCM) より低いが, W/Cを0.42に減じたときは初期強度及び材令28日強度ともに未混和のものより高強度のものが得られた.
  • 松浦 武利, 岡田 武司, 小中 庸夫
    1987 年 44 巻 3 号 p. 185-191
    発行日: 1987/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    低収縮性付与剤を含んだ不飽和ポリエステル樹脂 (UP樹脂) を結合材とするレジンモルタルの水中における加速劣化試験を行った. 低収縮性付与剤としてはUP樹脂と相溶性であるポリ酢酸ビニルと非相溶性であるポリスチレンを用いた.
    水中における強度低下はレジンモルタル硬化時の残留応力と水の拡散が影響している事が分かった. 非相溶系及び低収縮性付与剤を含まないUP樹脂レジンモルタルでは残留応力が大きく, 水の試料中への拡散が強度低下の原因である. これらのUP樹脂レジンモルタルについては, 劣化特性推定式を作成し寿命を推定した. 相溶系の場合, 硬化時に低収縮性付与剤が小さな連続気泡を作るため試料中への水の浸透は速く, 強度試験期間の初期に一定の強度低下が見られる. しかし, 残留応力が小さいため, 二, 三万時間以上では非相溶及び低収縮性付与剤を含まないUP樹脂レジンモルタルよりも高い強度を保持できる.
  • 尾形 正次, 河田 達男, 金城 徳幸
    1987 年 44 巻 3 号 p. 193-199
    発行日: 1987/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    硬化剤としてフェノールノボラック樹脂を用いたエポキシ樹脂の硬化物物性に及ぼす硬化促進剤の影響について検討した. その結果, 硬化促進剤の種類によって最終硬化物の諸物性に著しい差が生じたが, ゴム状態式により求めた橋かけ密度ρ (E′) との関係を検討し次のことが明らかになった. ガラス転移温度Tgはρ (E′) に依存し, 両者の関係は柴山が提案している式Tg=K1logK2ρによく適合した. ガラス領域の弾性率はρ (E′) が高い硬化物ほど小さいがこれは硬化物の比容積と良く対応した. 熱膨張係数αはρ (E′) が高い硬化物ほどゴム領域では小さな値を示したが, ガラス領域では逆に大きな値を示した. ρ (E′) が高い硬化物がガラス領域でαが大きな値を示すのは硬化物の自由体積が大きいためと推察した. 硬化促進剤の種類によって最終硬化物の諸物性を支配するρ (E′) に著しい差が生じるのは, 硬化促進剤によって樹脂の硬化機構が異なるためと推察された.
  • 橋田 勲, 天野 高男, 宮本 雅彦, 西村 正人
    1987 年 44 巻 3 号 p. 201-206
    発行日: 1987/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドとポリスチレンスルホン酸ナトリウムとから合成される高分子電解質錯合体を素材として, ジオキサン-H2O-Ca (NO3) 2系キャスト溶媒を用いる限外ろ過膜の製造法について検討した. 膜性能は, ポリマー濃度および分子量, キャスト膜厚, 溶媒蒸発温度と時間などの因子によって変化した. 製膜条件を適当にコントロールすることによって, 分子量20万以上のポリアニオンと数100万のポリカチオンとから透水性の優れた限外ろ過膜が得られ, 分画分子量は300程度であった. この膜では単糖類と二糖類との分離が可能で, 異性化糖中のイソマルトース以上の多糖類を分離, 濃縮できた.
  • 鈴木 浩司, 日比 貞雄, 中西 英二, 前田 松夫, 牧原 政幸
    1987 年 44 巻 3 号 p. 207-212
    発行日: 1987/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    直交二軸延伸系の場合の非結晶鎖セグメントの配向分布関数が, 一軸延伸フィルムの非結晶鎖セグメント及びゴム状網目の配向分布関数の誘導法を拡張して確立された. この方法は一軸拘束一軸延伸PETフィルムの偏光螢光法で測定された非結晶鎖の2次及び4次モーメント評価の場合に適用された. 計算のモーメントが測定値に一致する各延伸試料の分布関数が極図法を用いて示された.
  • 手塚 育志, 塩見 友雄, 宮 正光, 佐藤 正彦, 今井 清和
    1987 年 44 巻 3 号 p. 213-216
    発行日: 1987/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    メチルビニルスルホキシド (MVSO) /酢酸ビニル (VAc) 共重合体の乳化分散能をトリクロロエチレン/水, トルエン/水系について検討した. この乳化安定性は, 共重合体中のMVSO含量により大きく変化し, MVSO含量27mol%共重合体では, 既存の乳化分散剤である部分ケン化ボリピニルアルコール及び代表的な両親媒性ポリマーであるボリビニルピロリドン (PVP) よりも高い乳化安定性を示した. また, MVSOとポリピニルアルコール (PVA) のMichael付加物であるメチルスルフィニルエチル化ポリビニルアルコール (MPVA) の吸湿性は, MVSO含量の増加に伴い著しく増加することが認められた. MVSO含量50mol%のMPVAの25℃, 相対湿度80%における吸湿量は, 既存の非電解質高分子中で最高度に吸湿性を示す, PVPのそれよりも格段に大であり, 約2.7倍にも達し, 140%であった.
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