高分子論文集
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45 巻, 10 号
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  • 小嶋 健博, 能間 勲, 小野 徳仁, 重富 康正
    1988 年 45 巻 10 号 p. 741-746
    発行日: 1988/10/25
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    モノ及びジアリルリン酸は通常のアリルモノマーに比し, 重合性に優れている. したがって, アリルポリマーを得る重要な出発物質と思われる. しかし, アリルアルコールと五酸化リンの反応混合物はモノ及びジアリルリン酸を含むので分離精製が望ましい. そこで, 合成した粗アリルリン酸混合物からモノ及びジアリルリン酸の分離に関し溶媒抽出法を用い検討した. モノアリルリン酸とジアリルリン酸のエチルエーテルとn-オクチルアルコールへの抽出挙動にはかなりの差があった. モノアリルリン酸とジアリルリン酸は水溶液中でミセルとして存在し, 塩析を利用すれば, その分離は可能であると思われた. そこで, 種々の塩析剤とその濃度の影響について検討した. その結果, 4M塩化ナトリウムが有効であった. 実際, 溶媒としてエチルエーテル, 塩析剤として塩化ナトリウムを用い粗アリルリン酸混合物からモノ及びジアリルリン酸の分離を向流分配抽出法により行った. その結果, 純度95.0%のモノアリルリン酸と95.0%のジアリルリン酸が得られた.
  • 鈴木 嘉昭, 日下部 正宏, 高橋 勝緒, 岩木 正哉, 鈴木 正昭
    1988 年 45 巻 10 号 p. 747-754
    発行日: 1988/10/25
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    イオン注入法によりO2+, N2+, Ar+, C+イオンをシリコーンシート表層に打ち込み, その表層の物性変化の観察及び表面の親水化を試みた. イオンの加速エネルギーは50, 100, 150keV, 注入量は1×1012~1×1017ions/cm2とした. イオンビームの照射によりシロキサン結合, メチル基は分解され, SiH, 〓C=O, CH2, SiOHの生成が観察された. イオンビーム照射直後の試料の水に対する接触角は注入量の増加に伴い低下し, その後経時的に復元する傾向を示した. この経時的変化は注入後試料の保存条件の違いで差が見られ, 大気中に比べ真空中にて保存した場合小さいことが観察された. 注入された元素は試料内部において保存条件の差による拡散は見られなかった. 大気中保存試料の場合, 経時的に表面のOH基, メチル基, シロキサン結合の増加, SiH, 〓C=Oの減少が観察され, 接触角の経時的変化の一要因であると考えられた.
  • 加門 隆
    1988 年 45 巻 10 号 p. 755-759
    発行日: 1988/10/25
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    低温速硬化として知られているエポキシ樹脂/ポリメルカブタン配合物は塩基性触媒を用いないとほとんど硬化しない. そこで, 触媒として第三フォスフィン, 第三アミン, 第一アミンを用いて, この配合系の触媒効果を示差走査熱量計 (DSC) を用いて, 速度論的に検討した. 第三アミンと第三フォスフィンを触媒とした系では. 触媒の塩基性 (pKa) が強いほど速度定数 (K2) は大きかった. そして, 塩基性の強さがほぼ同じ触媒では, 第三フォスフィンの方が第三アミンより触媒の効果は大きかった. 第一アミンを触媒とした系では. 硬化反応が少し遊行してから停止した. これらのことから, この系ではエポキシ基はメルカプト基と反応するのではなく, 第一アミンと反応するものと推定された.
  • 末次 憲一郎
    1988 年 45 巻 10 号 p. 761-764
    発行日: 1988/10/25
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    ナイロンRIM材料に, ミルドグラス, マイカ, 及びガラスフレークなどの充てん剤を単に混合して補強した複合材料の場合, 通常の射出成形された繊維強化複合材料とは異なり, それらの引張強度は, 充てん剤の重量分率や平均アスベクト比の増加につれて向上せず, むしろ低下する傾向が見られた. これは溶存気体により, 樹脂と充てん剤間の界面に空隙が存在し, これによって, 樹脂/充てん剤間の物理的密着度が良好でなくなっていると仮定した. この仮定を実証するため, 充てん剤を混合したナイロンRIM材料を成形前に減圧脱泡処理を行い, この空隙を除去した. その結果, 通常の射出成形品の場合と同様な繊維強化効果を示したことにより, 上記の想定が正しいことがわかった. このことは, ナイロンRIM材料において, 充てん剤による補強効果を向上させる方法として成形前に減圧脱泡処理を行うことが有効であることを示している.
  • 田中 裕子, 中原 佳子
    1988 年 45 巻 10 号 p. 765-770
    発行日: 1988/10/25
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    ビスフェノールF系エポキシ樹脂に界面反応法で合成した多孔質壁中空球形シリカ粒子 (多孔質シリカ粒子) を充てんした複合体を合成し, 充てん粒子の表面積, 細孔径及び吸着水が複合体の力学的, 熱的性質に与える影響を動的粘弾性, 熱的特性 (線膨脹率, DSC), 曲げ強さ, 衝撃強さを測定することによって調べた. その結果, 動的粘弾性及びDSC測定により求めたガラス転移点Tgは多孔質シリカ粒子の吸着水の増加とともに低下した. これは吸着水がエポキシ樹脂硬化剤ヘキサヒドロ無水フタル酸の能力を低下させ, 充てん粒子表面付近のエポキシ樹脂の硬化が不十分になったためと考えられた. 貯蔵弾性率及びTg以上での熱膨脹係数は多孔質シリカ粒子の半径約4nm以上の細孔の表面積への依存性を示し, 表面積が増加すると, 貯蔵弾性率は増大, Tg以上での熱膨脹係数は減少した. このことより, エポキシ樹脂と力学的相互作用に有効な細孔の半径は, 約4nm以上であると推定された.
  • 遠藤 政孝, 笹子 勝, 小川 一文
    1988 年 45 巻 10 号 p. 771-776
    発行日: 1988/10/25
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    ジアゾナフトキノン型のポジ型フォトレジストは, 遠紫外線照射によって, 成分中の低分子量クレゾール・ホルムアルデヒド・ノボラック樹脂の重合化やクレゾール・ホルムアルデヒド・ノボラック樹脂とジアゾナフトキノンエステルの光反応物間でのエステル結合の生成などが起こることが推測された. このようなポジ型フォトレジストのバターンを形成した後に遠紫外線照射を行うと, レジストの耐熱性が向上し, レジストバターンは160℃でも熱変形しないことがわかった. 一方, レジストのプラズマに対する耐性は変化しなかった.
  • 成沢 郁夫, 石川 優, 野中 紀史
    1988 年 45 巻 10 号 p. 777-781
    発行日: 1988/10/25
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    マイクロピッカス硬さ試験を多数の高分子を対象に行い, 押し込みに対する局部的な抵抗力の測定が射出条件による射出成形品の品質評価に応用できるかを検討した. 押し込み荷重と保持時間の硬さ値に対する影響をまず明らかにして, 結晶化による密度増加に伴う硬さ値の増加及び異方性の増加に伴うピラミッド型くぼみの対角線の長さの差異の増加が射出成形品の断面あるいは流動方向に沿っての結晶形態や異方性の分布をよく反映することを示した.
  • 井上 俊英, 山中 亨
    1988 年 45 巻 10 号 p. 783-787
    発行日: 1988/10/25
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    メチルヒドロキノンと4,4′-ジフェニルジカルボン酸 (BB) からなるポリアリラートに5~10mol%の1,2-ビス (2-クロルフェノキシ) エタン-4,4′-ジカルポン酸 (Cl-PEC) を共重合したポリアリラートの融点は, 294~352℃であり光学異方性を示した. これらの共重合体のうちBB/Cl-PEC (モル比) 9/1, 9.5/0.5の紡出糸弾性率はそれぞれ65, 91GPaと高弾性率であり, 射出成形品の曲げ弾性率はそれぞれ39.6GPa, 39,2GPa (0,88m厚み) とやはり高弾性率であった. しかしながらこれらの射出成形品の広角X線回折図形と曲げ試験片の破断面のSEMは大きく異なりBB/Cl-PEC (モル比) 95/0.5の射出成形品はBB/Cl-PEC (モル比) 9/1よりも異方性が少なくフイブル化しにくいことがわかった.
  • 村山 三樹男, 矢野 彰一郎
    1988 年 45 巻 10 号 p. 789-793
    発行日: 1988/10/25
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    ポリプロピレンの光劣化における波長依存性と天候劣化における季節的変化の関係を調べることを目的として, フィルム試料について分光劣化実験を行った. 劣化の評価は赤外吸収スペクトルのカルボニル基の吸光度変化 (ΔA1720) の測定によった. ΔA1720と照射時間 (h), 相対照度 (Er), Er×h, 及び照射波長の関係が得られた. 変化の起こる上限の波長は315~320nmで, 以下短波長照射ほどΔA1720は大きくなる, 日光の分光エネルギー分布とΔA1720の波長依存性とから日光を光源とした場合の分光劣化の値を試算した結果, 夏と冬の劣化量の差が顕著となることがわかった. 別に行った屋外促進劣化試験の結果はこのこととよく対応しており, 天候劣化の遅速は季節の推移に大きく影響されることが示されている. 分光劣化の温度依存性の実験からΔA1720に対する活性化エネルギーとして6~8kcal/molの値が得られた.
  • 山城 誠一
    1988 年 45 巻 10 号 p. 795-802
    発行日: 1988/10/25
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    セグメント化ポリウレタンのハード成分を1,4-ブタンジオール (BDO) と4,4′-ジフェニルメタンジイソシアナート (MDI) からのポリウレタンに固定し, これにポリエステル, ポリエーテル, ポリエーテルエステルをそれぞれソフト成分とするポリウレタンを合成し, その弾性糸の特性との関係を調べた. ポリエチレンアジパート (PEA), では分子量1800~2000の間でゴム弾性が極大値を示す. 分子量1800~2100のPEA, ポリブチレンアジパート, ポリエチレンプロピレンアジパート (PEPA), ポリオキシジエチレンアジパート (PDEA), ポリオキシテトラメチレンジオール (PTDO), ポリオキシプロビレンーポリオキシエチレンジオール (PPDO-PEDO) を検討したが, PDEAが, ついでPEPAが-30℃から160℃の間で良好なゴム弾性を示す. 前者は5倍に延伸してもX線回折図にソフト成分の配向結晶化が現れない.
  • 花畑 誠, 古田 秋弘
    1988 年 45 巻 10 号 p. 803-808
    発行日: 1988/10/25
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    ポジ型フォトレジストの主成分であるノボラック樹脂として, ハイオルソノボラック樹脂 (オルソーオルソ結合率の高いもの) を用いた場合のレジスト特性を調べた. その結果・感度・残膜率の面では最適のオルソーオルソ結合率があること, ハイオルソノボラック樹脂を用いるとレジストの耐熱性は低下する反面, 解像度が大幅に向上することがわかった. これらのことにより. 特にハイオルソノボラック樹脂を用いたポジ型フォトレジストにおいては, ノボラック樹脂とナフトキノンジアジド化合物間でのアゾカッブリング反応がそのパターン形成機構に関与している可能性が示唆される.
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