高分子論文集
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45 巻, 12 号
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  • 田中 勝敏, 山口 宗明, 松下 啓, 杉田 正見, 岡田 正七
    1988 年 45 巻 12 号 p. 903-910
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ塩化ビニル (PVC) にアラミド短繊維 (AF) を体積分率 (φr) で0.22まで充てんした試料について, 動的粘弾性測定, 曲げ試験, SEM観察などを行った. ロール混練時のせん断応力により, AF粒子の表面は損傷するが, 粒子はローロルの進行方向によい配向をしている. その結果, AFの充てん量が大きくなると, ガラス転移温度 (Tg) 及び相対弾性率 (Ec′/Em′) は大きくなる. この現象はロールの進行方向 (MD) の方が直交方向 (TD) に比べて顕著である. ガラス状領域におけるMD方向のEc′/Em′は複合則 (rule of mixture) からの計算値より大きく, TD方向の値は計算値に近い. また, 疑似的ゴム状態のTD方向のEc′/Em′はMooney式からの計算値より大きい. 曲げ弾性率の比はMD及びTD方向共に直線的に増加し, MD方向ではφr≤0.16でEc′/Em′と一致するが, TD方向ではわずかに大きい. また, AFをシラン系及びチタン系カップリング剤で処理したが, 充てん材とPVCとの界面の親和性を向上させる効果は小さい.
  • 国貞 秀雄, 結城 康夫, 落合 哲美, 西井 美保, 佐野 忍
    1988 年 45 巻 12 号 p. 911-918
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    新しいイソプロペニル-1, 3, 5-トリアジンとして, 2-アミノ-4- (P-エトキシ [1], o-エトキシ [2], p-プロモ [3], m-メトキシ [4], 及びo-メトキシ [5] アニリノ) -6-イソブロベニル-1,3,5-トリアジン合成した. [2], [3] には結晶二形の現象がみられた. アゾピスイソブチロニトリルを開始剤, ジメチルスルポキシドを溶媒として [1] ~ [5] の単独重合及びスチレン, メタクリル酸メチル, アクリル酸メチルとの共重合を行い, 共重合パラメーターを決定した. また, [2] ~ [5] は融解後, 熱重合による発熱がみられたので, 示差走査熱量計 (DSC) を用い, 昇温法, 等温法による熱重合を行い, 天井温度 (Tc), 重合熱 (ΔHp) を決定した. これらのモノマーのTcは約170℃, ΔHpは約-11kcal/molであり置換基の影響はほとんど観測されなかった.
  • 小林 一清, 住友 宏, 平手 美式, 赤池 敏宏
    1988 年 45 巻 12 号 p. 919-924
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ベンゼン環のパラ位にセロビオース及びメリビオースの誘導体をもつスチレン [N-p-ビニルベンジル-O-β-D-グルコピラノシル- (1→4) -D-グルコノアミド及びN-p-ビニルベンジル-O-α-D-ガラクトビラノシル- (1→6) -D-グルコノアミド] を合成し, そのラジカル単独重合を60℃の水中で行って, 重合体 (それぞれPVCA及びPVMeAと表示する) を得た. 既報の6種類のオリゴ糖置換スチレン重合体と併せて, 赤血球の凝集反応を利用して, オリゴ糖鎖の分子認謝幾能を調べた. コンカナバリンAによる赤血球の凝集反応は, α-D-グルコース糖鎖末端をもつマルトース, マルトトリオース, マルトベンタオース, 及びマルトヘプタオースから合成した重合体により阻害された。その阻害活性は原料のオリゴ糖よりも約103倍高かった. 重合体が繰り返し単位当たりに一個のオリゴ糖鎖をもっので, それに基づく高分子効果が発現したものと考えた. また, PVCA以外のこれらの糖質重合体はそれ自身赤血球を凝集する作用をもち, なかでもPVMeAの赤血球凝集活性が著しく高いことを見いだした.
  • 糸山 國義, 山川 隆道
    1988 年 45 巻 12 号 p. 925-935
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    p-ヒドロキシ安息香酸 (HBA) を60, 70mol%含む全芳香族コポリエステル (WACP) について超高弾性率ロッドの物性・構造を研究した. ネマティック融液を1~5mm径のダイスから押出し, それを伸長変形してロッドを成形した. 一定温度で, 伸長倍率 (λ) を変数にとって分子配向度の異なるロッドを調整し, 広角X線散乱, 走査型電顕 (SEM) を用いてその構造の変化を調べた. 同一試料径で比較すると, 径の大きいダイスを使って高倍率に伸長した試料ほど高い引張弾性率 (Es) 及び結晶配向係数 (Π) を示した. 高伸長倍率のロッドの表層, 中央部では, 伸長方向に高度に配向したフィブリル組織をSEMによって観察した. また, 径5mmのダイスから成形したロッド断面の径方向のEsとΠの分布を測定した. 低伸長倍率のロッドほど, 表面から中心部に進むに従ってEsとΠの値は急激に低下した. しかしながら, 表層部のEs, Πは融液の伸長倍率によらず比較的に高い一定値にとどまった. 高分子量WACPでは, ロッド表層と中央部間のEs, Πの差は小さくなり, 70mol%HBAを含むWACPのロッドは, 1.2mm径で90GPa, 2.2mm径で61GPaの高い曲げ弾性率を示した.
  • 杉沢 寿志, 鳥海 弥和, 渡辺 啓
    1988 年 45 巻 12 号 p. 937-944
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ヘリックスーコイル転移領域におけるポリペプチド鎖の形態変化に関する知見を得る目的でポリ (ε-カルボベンゾキシL-リシン) の電気複屈折測定を行った. まず, Zimm-Bragg理論をもとに比カー定数Bvpの変化を記述する表式を導き, ついでジクロロエタンージクロロ酢酸混合溶媒中における実験結果について解析した. 転移に伴うBvpの変化は. 旋光分散測定より得られた転移パラメーターを用いて再現され, 特にヘリックスの柔軟性を補正した場合にはほぼ定量的な再現性を得ることができた. また, 複屈折に影響を及ぼす種々のファクターについて検討し, 電場誘起によるコンホマー平衡の変化がないこと, コイル残基は複屈折に寄与しないこと, ヘリックスの配向は永久双極子モーメントによること, さらに鎖中に共存するヘリックス・シークエンスの配向相関が無視できることを示した. 以上の結果より, 電気複屈折法がポリペプチドの空間形態解折法として有効であることを明らかにした.
  • 西村 健, 矢島 博文, 窪田 茂, 石井 忠浩, 遠藤 隆一
    1988 年 45 巻 12 号 p. 945-952
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    アミロース・ヨウ素錯体の吸収及び円二色性 (CD) スベクトルに及ぼすI-濃度効果を, 広範囲のI-濃度領域 (0~2×10-2MKI) にわたり検討した. 600nm近傍にある錯体の最大吸収帯は, I-濃度の増加に伴い強度の増加及び短波長移動を示した. これに対応して観測される正負対称なCD帯は, 吸収と同様の挙動を示した. しかしながら, 光学異方性因子gmax及び最大吸収波長λmaxは, I-3の結合モル分率Rに対して直線的に変化し, R=0.5においてそれぞれ, gmaxは極小値及びλmaxは屈曲点を示した. R=1及びR=0.5における錯体のスベクトルに基づく波形解析により, 錯体には独立した3種のスベクトル種の存在が明らかとなった. 電子論的考察に基づき, これらのスベクトル種は独立した3種のヨウ素発色種. I2. I2, I2. I-3, 及びI-3. I-3と帰属された. その結果, I-濃度に伴う錯体のスベクトル変化は, 3種のヨウ素発色種の存在分布の変化に起因することがわかった.
  • 長谷川 智, 日比 貞雄, 鳥居 隆司, 田中 昭, 杉山 栄吾, 中西 英二
    1988 年 45 巻 12 号 p. 953-961
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    前報では, ロール延伸した市販の高密度ポリエチレンのOff-angle再延伸時の塑性変形を検討した本報では, いろいろの分子量の試料のロール延伸過程での微結晶の配向機構を解析し, 次の結論を得た. 1) 結晶分子鎖軸; c軸まわりの選択配向は分子量の増加とともに増加した. 2) 分子量の増加がロール延伸過程でフィルムの収縮を引き起こし, ヤング率と降状応力の異方性は分子量の増加とともに低下する. 3) No. 1試料を除く各分子量試料のヤング率及び降伏応力の異方性はSchsrtid形の異方性を示した. 4) 2段階重合試料は, 低分子量部の存在により良好なロール効果を示すが. しかしこの低分子量部は結晶c軸の配向を抑制する働きをする.
  • 丸山 照法, 野呂 良彦, 村中 昌幸, 高木 正雄
    1988 年 45 巻 12 号 p. 963-971
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    高精度プラスチックレンズの最適成形条件と最適金型構造の探索にコンピューターシミュレーションを適用した. 有限要素法による温度熱応力歪み解析を主な手順とする解析方法により, 射出圧縮成形プラスチックレンズのひけとそりの成因を検討し以下のことを明らかにした . 成形プロセス中, 樹脂が可塑的な軟化温度域を脱し, 固化する際のレンズ成形中の温度分布がひけやそりの支配的原因である. ひけはレンズ成形品の表層と内部の温度差に起因する. そりは主に金型キャビティ面の温度差に起因するが, レンズ両面の曲率半径の違いから生じる非対称的内部温度分布の影響も受ける. また, プラスチックレンズを高糟度化するには, キャビティ表面温度を均一化しうる金型構造と成形プロセス中樹脂が軟化温度域を脱し, 固化する際にレンズ成形品の表層と内部の温度を均一化する金型冷却条件が重要であり, 温度均一化の程度に応じて高精度化できる可能性がある.
  • 加藤 康夫, 山下 祐彦, 木村 邦生, 遠藤 誠司, 梶崎 弘一
    1988 年 45 巻 12 号 p. 973-978
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    p-アセトキシ安息香酸を流動パラフィン中で重合して得られるポリ (p-オキシベンゾイノレ) ウィスカ-の反応時間による形状変化を詳しく検討した. その結果, ウィスカーの成長を引き起こすスリップ転位をもった結晶は, 重合の極めて初期のみで発生する. 引き続いて重合によって生成する結晶化可能なオリゴマーは, 上述の結晶へのらせん転位による成長のみに利用される. らせん成長によって生じたウィスカーは, 初期では長さと太さの増加が起こり, 続いて長さ方向のみの成長が起こる. また, 重合の後半では結晶の先端角の細化が起こった. これらの形状変化は, 重合によって生じる結晶化可能なオリゴマーの過飽和度の変化にようて説明できた. また, ウィスカー成長を引き起こす初期結晶の生成数に関しても重合温度を変えた実験結果から議諭した.
  • 西野 孝, 杉橋 達也, 中前 勝彦
    1988 年 45 巻 12 号 p. 979-984
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    結晶内で分子鎖が平面ジグザグ構造を有するポリテトラヒドロフラン〓CH2CH, CH2CH2O〓nの分子鎖軸方向の結晶弾性率Elの温度依存性を測定した. (3110) 面にっいて測定したEl値は-135℃以下の低温域では183GPaと一定であったが, それ以上の温度域で急激に減少し, 18℃では37GPaとなった. さらに, (3110) 面の面間隔の温度変化において-120℃に屈曲点が存在し, この温度域以上で分子鎖は熱収縮した. したがって, -135℃以上でのElの低下は結晶内分子鎖の運動性の増大に基づくものであり, 分子鎖は室温で完全に伸び切った構造を有しているのではなく, 力学的な面より見た場合. 熱振動によりかなりの程度短縮しているものと考えられた. 一方, -135℃以下の温度域で熱振動は抑制されるが, この温度域においても主鎖のエーテル結合が他の結合角と異なることから直線からの分子鎖のずれが残るものと考えられた.
  • 中前 勝彦, 平山 直人, 谷川 聡, 角谷 賢二, 松本 恒隆
    1988 年 45 巻 12 号 p. 985-991
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    γ-Fe2O3粒子の表面改質剤として, イソプロビルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート (チタネートカップリング剤) を用いて, その磁性塗膜中におけるγ-Fe2O3粒子の分散・配向・充てん性に及ぼす影響にっいて研究し, 次の結果を得た. 1) チタネートカッブリング剤のγ-Fe2O3粒子表面上における吸着挙動は. Langmuir型を示し, その占有面積は約125A2/moleculeであった. 2) γ-Fe2O3粒子をチタネートカップリング剤で表面改質することにより, ポリビニルブチラールあるいはポリ酢酸ビニルいずれのポリマーをバインダーとして用いた場合でも, 磁性塗膜中におけるγ-Fe2O3粒子の分散・配向・充てん性は飛躍的に向上した. また, 塗膜中におけるγ-Fe2O3粒子の最適含有率は, 約80wt%であった. さらに, こらの結果を, 表面改質剤であるチタネートカップリング剤及びバインダーのγ-Fe2O3粒子表面における混合吸着形態モデルから説明した.
  • 岡本 健一, 西岡 政司, 鶴 秀一, 佐々木 茂明, 田中 一宏, 喜多 英敏
    1988 年 45 巻 12 号 p. 993-999
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    未添加ポリジメチルシロキサン (PDMS) 膜及びシリカ充てんPDMS膜におけるエタノール, ジオキサン, そしてピリジン水溶液の収着及びバーベーパレーション実験を行い, 濃度平均拡散係数Dを求めた. また, 非定常透過実験から拡散係数Dを求めた. PDMS膜の場合, 収着液の有機液体組成は透過液組成よりかなり高く, 各成分のDは, 供給液組成に依存せず一定であった. 10及び30wt%エタノール水溶液での水及びエタノール成分のDは, 純成分系と同じ値, 14.5及び4.5×10-6cm2/sであり, D値とほぼ一致した. シリカ充てんPDMS膜の場合, 各成分の, 特に水成分の, D及びDは, 見掛け上PDMSのそれより著しく小さく求められた. PDMS膜における有機液体選択透過性は, 有機液体の選択収着に起因しており, 拡散過程は選択性をむしろ低下させているが, その低下度合が大きな自由体積分率のためあまり大きくないことも重要な寄与をしている.
  • 1988 年 45 巻 12 号 p. xvii
    発行日: 1988年
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
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