高分子論文集
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46 巻, 11 号
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  • 高橋 恒人, 齋藤 修
    1989 年 46 巻 11 号 p. 647-654
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    付加重合におけるゲルの発生は, 生成される高分子の分子量分布の形に関係するが, その分布の形はξ=Mw/Mn-1対η=Mz/Mn-1のグラフによって判別されることがわかった. 連鎖移動反応のない付加重合では, ゲルは発生せず, 生成される分子量分布はボアソン (Schulz-Zimm) 分布に似ていることもわかった. これに対して, 連鎖移動を伴う付加重合においては, 反応速度係数の適当な組み合わせに対してゲルが発生すること, 及び重合率90%以内でゲルが発生する限界などが明らかになった. またこの場合には, 反応の初期の段階では分子量分布の形はボアソン (Schulz-Zimm) 分布に似ているが, 反応の後期では対数正規 (Wesslau) 分布に近くなることがξ対ηのグラフから明らかになった. さらに, ゲルが発生する場合には, 重量平均分子量などがゲル点で発散すること, ゲル点を過ぎるとそれらが減少すること, 及びゲル点以後にゲル分率が増加する様子などがわかった.
  • 長田 義仁, 安永 秀計
    1989 年 46 巻 11 号 p. 655-660
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    アクリル酸ステアリル (SA) とアクリル酸 (AA) の共重合ゲルを合成し, モノマーの組成がゲルの構造に与える影響を調べた. その結果, ジメチルスルホキシド (DMSO) 中で膨潤させたゲルはSAとAAのモル比が1: 3のときに最も規則性の高い液晶構造をとることが見い出された. また溶媒の組成によってもゲルの構造は特異的に変化し, 1-ヘキサノールとDMSOの質量比が1: 9のときにゲルの構造規則性が最も高くなることが明らかとなった. これらのゲルは対応する組成の直鎖状共重合体溶液よりも構造規則性の高いことが見い出された.
  • 平佐 興彦, 森下 恭好, 小野村 理加, 一條 久夫, 山内 愛造
    1989 年 46 巻 11 号 p. 661-665
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリビニルメチルエ-テル (PVME) のアタクチックポリマーは水溶液を加熱することにより, 温度38℃にて相転移を起こす感温性高分子である. 水溶液でγ線照射により橋かけしたヒドロゲルも水溶液と同様に感温性を示し, 転移点を境に温度変化に応答して膨潤, 収縮する. この応答性が早いゲルを得る目的で, PVMEとアルギン酸ナトリウムとを混合紡糸した後, γ線照射を行うことにより, 繊維状のPVMEヒドロゲルが合成できた. この繊維状ゲルは直径が膨潤時, 400μm, 収縮時, 200μmであり, 長さ方向にも1/2に収縮する等方性ゲルである. ゲルが転移することにより, 単位面積当たりの最大破断強度は9倍, 最大伸度は2.6倍, ヤング率は5倍に増加する. ゲルの温度を20℃から40℃に変化させた時の転移に基づく熱収縮応力は約100kPaを示し, 生体筋肉の1/3から1/10の値であり, ゲルの温度変化に対する応答性は1秒以下と良好であった.
  • 荻野 賢司, 佐藤 寿弥
    1989 年 46 巻 11 号 p. 667-671
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    種々の高極性ビニルモノマーから, 水系HPLC用のポリマーゲルを通常の懸濁重合あるいは逆懸濁重合により合成した. それらを充てんしたカラムを用い蒸留水を溶離液としHPLC測定を行い, 耐圧性, 排除限界分子量, 親水性という観点からゲルの評価を行った. 合成したいずれのゲルも110kg/cm2以上の耐圧性を持つ硬質なゲルであることがわかった. ゲルの親水性は溶解度パラメーターによって定量的に表現でき, 逆懸濁重合により合成したゲルは通常の懸濁重合により合成したゲルより親水性が高いことが分かった. アクリルアミド (AA) -N, N'-メチレンビス (アルリルアミド) (BA) ゲルが最も高い親水性を示すことが明らかとなった. さらに, AA-BAゲルでは, 希釈剤の量及びモノマー組成の変化またはモノマー相へのポリマーの添加によりカラムの排除限界分子量を2×103から3×106まで変化させることができた.
  • 玄 丞烋, 車 源日, 筏 義人
    1989 年 46 巻 11 号 p. 673-680
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリビニルアルコール (PVA) 濃厚水溶液を凍結させた後, 0℃付近の低温にて徐々に解凍させることにより高含水率で高強度なPVAハイドロゲルが得られる. 重合度1750, けん化度99.5mol%のPVA濃度30wt%の水溶液を-20℃で24時間凍結させた後, 5℃にて10時間かけて徐々に解凍させて得られたPVAハイドロゲルの強伸度はそれぞれ約60kg/cm2. と500%を示すのに対し, 同じ条件下で凍結させ, 室温下, 3時間で解凍させたPVAハイドロゲルの強伸度は35kg/cm2と400%であった. PVAハイドロゲルはPVA濃厚水溶液の凍結の際水相とPVA相とに相分離され, その後の低温結晶化により多孔質構造が形成される. X-線回折とSEM観察からPVAハイドロゲルは微結晶をもつミクロ多孔質構造であることが認められた.
  • 岡部 勝, 三井 和博, 松田 英臣
    1989 年 46 巻 11 号 p. 681-692
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    分子量及び結晶化度の異なる数種類の直鎖高密度ポリエチレン (LHDPE) の熱溶液を急冷及び徐冷させた場合に生成する急冷ゲルと徐冷ゲルについてモルホロジー, 熱的・力学的性質を調べ, LHDPEが有機溶媒中で作るゲルの構造を明らかにすることを目的とした. DSCの測定結果によると, 急冷ゲル中には構造的に安定な結晶と準安定な結晶 (結晶化度の低い不完全な構造をもっ結晶で, 温度上昇に伴い安定な結晶へ再組織化する結晶) が存在している. 急冷ゲルの場合は, これらの結晶がお互いに連結してゲルの三次元網目構造の物理的な橋かけ点を構成し, 結晶網目の中にポリマー溶液を閉じ込めてゲルを形成している. 一方, 徐冷ゲル中には大きく成長した構造的に安定な結晶成分のみが存在し, これらがゲルの網目構造を形成していることが判明した. また, 急冷・徐冷ゲル共にゲルからゾルへの転移は, ゲル中の構造的に安定な結晶の融解に付随して起こる. X線の測定結果によると, 急冷・徐冷ゲル中の構造的に安定な結晶は共に斜方晶系よりなるラメラ晶であった.
  • 片山 誠二, 桜井 敬久, 曽布川 正
    1989 年 46 巻 11 号 p. 693-701
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    導電性微粒子を含んだ導電性シリコーンゲルの導電特性を圧縮応力下において調べた. その結果, 導電性微粒子のサイズ, 形状 (球状, リン片状, 繊維状) に著しく依存した導電特性曲線が得られた. これらの結果は, 導電性微粒子の形状を反映したパーコレーションカップリングのモデルによって説明された. フィラー濃度の増加は, 導電特性曲線を抵抗値の低い領域ヘシフトさせ, かつ、大きな歪領域まで低い抵抗値をもたらした. また, 導電性ゲルのゴム弾性の増加により, 抵抗-歪特性曲線は, 高い抵抗値領域ヘシフトした.
  • 篠原 寛明, 相澤 益男
    1989 年 46 巻 11 号 p. 703-708
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    メカノケミカル高分子ゲルの形態変化を微小な電気刺激によって制御することを目的とした. 水溶液中で電気化学酸化, 中性化によってイオンの取り込み, 放出を行いうるポリピロール膜電極と, イオン移動に応答して変形するメカノケミカル高分子ゲルとを接触させ, 電極電位のシフトに伴うゲルの変形を顕微鏡及び画像録画装置からなるシステムを用いて観察した. ポリメタクリル酸-Ca2+マイクロゲルの解離, 再ゲル化による変形を1V程度の微小電位シフトによって迅速に可逆的に引き起こすことできた. このゲル変形は, 電気化学ドーピングによるポリピロール膜電極近傍のダイナミックなpH変化に基づくものと考察された.
  • 志賀 亨, 広頼 美治, 岡田 茜, 倉内 紀雄
    1989 年 46 巻 11 号 p. 709-713
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    内部にポリアクリル酸ナトリウムを含有した高強度ポリビニルアルコールヒドロゲル (PVA-PAAゲル) の電解質溶液中において電場の作用で発現する屈曲現象の詳細を明らかにするとともに, 高分子ゲルの電場屈曲性を応用した駆動システムを設計製作した. PVA-PAAゲルは直流電場下で負極側に大きく屈曲した. この現象は高分子ゲルが見せる膨潤挙動の一つであって可動イオンの移動で浸透圧が変動するために発現する. 屈曲速度は印加電圧と外部溶液の電解質濃度に依存し, 屈曲の歪みはイオンの移動量すなわち電荷量により決定された. PVA-PAAゲルと二枚の白金電極を積層してなる触指をもつロポットとPVA-PAAゲル製尾ひれをもつ人工魚を製作した. 触指は電解質溶液中で電場の作用で屈伸して物体をつかみ, そして放すことができた. 人工魚は電解質溶液中で電場により尾ひれを振ってダイナミックに泳ぎ, 屈伸運動を介して並進運動を行うことが確かめられた.
  • 中野 義夫, 山本 隆史, 鈴木 治久, 下辻 俊雄, 清田 佳美
    1989 年 46 巻 11 号 p. 715-721
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    高分子ゲル (スミカゲルN-100; サンウエットIM-1000) と無機高分子吸湿剤 (シリカゲル, セラ・ホワイト) の動力学的特性を, 蒸発器と吸湿剤充てん層からなる吸湿量測定システムを用いて検討した. 吸湿剤の吸湿等温線はFreundlich型, q*=m [Ps (Tw) /Ps (Ts) ] 1/nで良く相関することができ, 高分子ゲルの場合にはn<1, 無機高分子吸湿剤の場合にはn>1の形となった. 吸湿速度は, dq/dt=ksαp (q*-q); ksαp=k exp (-Ea/RT) の式で整理することができた. 高分子ゲルの吸湿平衡に達するまでの時間は, 無機高分子吸湿剤の場合と比較してかなり長いことが分かった. 吸湿時における吸湿剤層内の吸湿量qと温度Tsの変化を吸湿平衡関係, 吸湿速度, 吸湿熱による熱移動を考慮した簡単な数式モデルを用いてシミュレーションを行った. モデルの中に含まれているパラメーターを変化させてシミュレーションを行った結果, 合理的と考えられるパラメーターの値によって実験結果と計算結果は良い一致を示した.
  • 津布子 一男, 倉本 信一, 川村 栄一, 大河原 信
    1989 年 46 巻 11 号 p. 723-731
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    電子写真液体現像剤における耐久性, 画像濃度, 定着性を向上させるため, 極性制御性のある高分子ゲル粒子の合成を試みた. 高分子ゲル粒子の合成は, アビエチン酸の反応性に着目し無水マレイン酸を付加反応させた後, ペンタエリスリトールとのエステル化反応により, アビエチン酸変性マレイン酸樹脂を合成した. 次にこのアビエチン酸変性マレイン酸樹脂をラウリルメタクリレート, グリシジルメタクリレートモノマー中で過酸化ベンゾィルの存在下にグラフト重合させた. さらに, 残存するカルボキシル基とグリシジル基をピリジン触媒でエステル化させ, 非水溶媒に分散した高分子ゲル粒子を合成した. この高分子ゲル粒子の平均粒子径は0.09μmで極性制御能を有することがわかった. そこで, この高分子ゲル粒子を電子写真液体現像剤に応用したところ, 現像液中への樹脂の溶出分が少なく粒径, 比電荷量 (Q/M) の経時変動が小さく, そのため高画像濃度で定着性のよいコピーが得られることが判明した.
  • 田崎 美智子, 木田 剛志, 本間 輝武
    1989 年 46 巻 11 号 p. 733-738
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリ (ビニルアルコール) (PVA) 水溶液を凍結・融解を繰り返して機械的強度に優れたゲル膜を作成し, 水・アルコール分離膜としての性能をパーベーパレーション法を用いて調べた. PVA濃度5, 10, 20%で作ったゲル膜を偏光顕微鏡下で観察し, 一種のマクロ組織構造があること, さらにSEM像観察から網目構造を持っていることを認めた. 網目形態はゲル濃度依存性を示した. これらの膜はいずれもパーベーパレーション実験に十分な強度を有していた. 20%ゲル膜ではアルコール含量90%の供給側溶液に対しその分離係数 (αエタノール) はαエタノール>50の結果が得られた. ただし透過速度Qはあまり大きくはなかった. 5, 10%ゲル膜においてはQは, 20%膜に比較して大きいがαエタノールに関しては20以下であった. ゲル膜に保持されている水ないし溶液及びPVA鎖のOH基が水及びアルコールのキャリヤーとなり, そこに供給液中の水が選択的に溶解し拡散して分離が行われると思われる. このことを高吸水性ゲルによる水・エタノールの加圧透過実験を行って確かめた.
  • 栗秋 政光, 中村 完一, 水谷 潤
    1989 年 46 巻 11 号 p. 739-743
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリビニルアルコール (PVA, けん化度99.4mol%, 重合度1500以上) 20wt%水溶液を-4℃で凍結し, 凍結フィルムを得た. この凍結フィルムを-4℃で凍結乾燥した後, エタノール/水溶液中に浸せき・膨潤し, 強靱化処理を行い, 再び精製水でエタノールの置換を行い, 伸長率500%以上, 強度約40kg/cm2以上, 可視光線透過率92%以上のPVAゲルを得た. このPVAゲルは従来のヒドロゲルコンタクトレンズ素材より強度的に強く, 水分の保持性があり脱水が少ないものであった, 本透明PVAゲルは種々の優れた物性を有していることから, コンタクトレンズとして興味あるヒドロゲルであることが確認された.
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