高分子論文集
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46 巻, 3 号
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  • 〓村 知之, 畑 敏雄
    1989 年 46 巻 3 号 p. 125-130
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    高分子有機溶剤溶液の不溶性媒体に対する界面張力を測定することは溶液からの界面への高分子の吸着挙動を解明するために有効である. 異なるアルキル側鎖長をもつポリビニルアルキレート (PVAI) の3種の溶剤溶液について, それらの水に対する界面張力 (γW/S) を静滴法を用いて, 種々の温度で測定した. PVAIのシクロヘキサン及びクロロベンゼン溶液と水とのγW/Sは側鎖長 (m) の増加とともに増加した. トルエン溶液の場合, m<4の範囲で, γW/Smとともに増加し, C4の極大の後, γW/Sは減少に転じ, C10の極小を通過した後, 再び増加した. γW/SへのPVAIの極性 (表面張力の極性成分の全表面張力に対する比, xPP/γ) とPVAIと溶剤との溶解度パラメーターの差 (Δδ=|δSP|) の影響も検討した. xPとΔδが共にmとともに減少するときは, γW/Sは単調に増加した. mとともにxPが温少しΔδが増加するときは, Δδ<0.5の範囲では, ΔδがγW/Sに支配的な影響を及ぼし, Δδ>0.5の範囲ではxPが支配的になる. γW/SxP・Δδ2との関係はそれぞれの溶剤について, 一つの曲線で表すことができた.
  • 鈴木 和富, 中谷 健司, 岡庭 宏, 側島 重信, 大内 伊助
    1989 年 46 巻 3 号 p. 131-138
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    我々は, アモルファスシリコン太陽電池をポリエステルフィルム基板上に, 任意の段数で直列接続した, いわゆる集積構造太陽電池を連続長尺形成する技術を開発してきた. 本報ではその中で, 基板フィルム, 封止材料, 保護窓材について記した. 基板フィルムは, アモルファスシリコン層を堆積するグロー放電CVD工程において, 200℃以上の温度に曝され, 水分やオリゴマーを放出する. しかしポリエチレンナフタレートや, AI層を設けたポリエチレンテレフタレートでは, オリゴマーの発生は少ない. また高温, 張力下でのフィルムの伸縮挙動及び表面粗度の影響についても検討した. モジュール封止材料には, エチレンビニルアセテート, 保護窓材としては, ポリエチレンテレフタレートフィルム, アクリルフィルム, ポリカーボネート複層シートを用いた. そしてそれらのいくつかについて促進劣化試験を行った. 現在20×60cm2の面積で, 実用光電変換効率6.1%の軽量で可撓性に富んだ太陽電池を得ている.
  • 高田 耕一, 流郷 治郎
    1989 年 46 巻 3 号 p. 139-144
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    分子量が1000万以上の超高分子量を保有し, 高分子凝集剤として実使用されている部分加水分解ポリアクリルアミドの分子量分布の効果を検討した. まず分子量分布が相対的に比較しうる試料を調製し, その溶液物性を分子量及び分子量分布の函数として表現した. その結果, 粘度のせん断速度依存性, 曳糸性, 及び超音波による分子切断などは, 高分子凝集剤の分子量分布を実用的に評価するのに有用な手段であることが分かった. 中でも曳糸性は分子昂分布を表現するのに簡便で有力な手段であることが分かった. 次にカオリンの懸濁液について, その凝集性能を分子量及び分子量分布の函数として評価した. 一般に分子量分布が広い方が凝集性能が優れていることが分かったが, しかし懸濁液の濃度の高い場合には, 分子量分布が狭い方がむしろ良好な凝集性能を示した. それらのメカニズムを考察した.
  • 高田 耕一, 流郷 治郎
    1989 年 46 巻 3 号 p. 145-150
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    分子量が1000万を超す超高分子量の部分加水分解ポリアクリルアミドについて, その荷電基密度及びこの分布の函数として溶液物性あるいは凝集性能を評価した. まず溶液物性としてBrookfield粘度, 固有粘度, 曳糸性を評価したが, これらの溶液物性は荷電基密度分布にほとんど依存しなかった. これらの結果は前報の分子量分布が溶液物性に影響を示すことと対照的であった. したがってこれらの溶液物性から荷電基密度を定性的に判断することはできないことが分かった. 一方, 荷電基密度分布を定性的に評価するのは電気泳動のSchlieren図形が好手段であることが分かった. さらに荷電基密度分布の函数として凝集性能を評価した. この場合, いかなる懸濁液の条件についても荷電基密度分布の狭い方が凝集性能が良いことが分かった.
  • 尾崎 文彦, 佐山 潔, 玄 宏一, 藤倉 嘉昭, 荻田 哲也
    1989 年 46 巻 3 号 p. 151-160
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    電場配向ポリ-γ-ベンジルL-グルタメート (PBLG) キャストフィルムを得るため, PBLG液晶溶液に電場を印加した状態でのキャスト過程の高次構造変化と得られたフィルムの配向状態を, 偏光顕微鏡及び小角光散乱装置を用いて検討した. 電場下でのキャスト過程において, その初期ではポリドメイン構造の液晶溶液は電場方向へ流動しながら棒状の液晶ドメインを形成し, その長軸は電場方向に優先配向する. 棒状液晶ドメイン内でPBLGの分子軸は, 電場と平行である. 溶媒の蒸発が進むと, 分子間相互作用のため, 隣接する分子の重心の位置がそろい始める. これが進行すると, 隣接する分子の重心で形成する面は電場と垂直に並び, この結果, 電場と垂直な面をもつ層状構造を形成する. この間, 各層内でPBLGの分子軸は電場と平行のままである. 溶媒蒸発による粘度上昇の結果, 溶液の流動は停止する. この層状構造は固化に至るまで保持され, バンド構造と呼ばれる. 得られた結果より電場下でのキャスト過程の高次構造変化をモデルで示した.
  • 川瀬 薫, 坂見 宏, 早川 淨
    1989 年 46 巻 3 号 p. 161-168
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    γ線重合によって誘起されるシリカコロイドとポリアクリルアミドによる複合コアセルベーションについて検討した. シリカコロイド水溶液にアクリルアミド及びメタノールを添加して60Coのγ線を照射し, アクリルアミドを重合させた後, 冷却することにより複合コアセルベートを得た. 複合コアセルベーション現象は系中のメタノール濃度に依存し, メタノール濃度が33~41 (vol%) の限られた範囲内で生じ, またシリカコロイド濃度はほとんど影響しないことが明らかになった. 水素イオン濃度を変化させても複合コアセルベートの生じる組成条件ではすべて2相分離が起こったが, ポリアクリルアミドの含有率は酸性領域では平衡液中が大きく, 中性からアルカリ性の範囲では複合コアセルベートが大きくなった. X線小角散乱法による複合コアセルベートの粒子径の測定から算出したポリアクリルアミドの含有率は上記とほぼ同様な結果を示した. 複合コアセルベートの塩の添加に対する安定性は未処理シリカコロイドより優れていることが分かった. 複合コアセルベートの電気泳動移動度は未処理シリカコロイドより小さかった. これらのことより疎水性シリカ粒子が親水性のポリアクリルアミドによって保護されていることが明らかになった.
  • 指田 孝男, 本杉 賢司, 赤羽 可奈子
    1989 年 46 巻 3 号 p. 169-176
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    高精度 (±1%RH) な静電容量型湿度センサを開発するため, 感湿材料としての高分子の性質を調べた. カルボニルまたは水酸基を有する高分子材料について検討した結果, ポリ酢酸ビニル, ポリメタクリル酸系エステル, 及び酢酪酸セルロースが1.5%RH以下のヒステリシスしか示さない有望な感湿材料であること, 高分子材料の吸脱湿による比誘電率の変化は, 高分子中の親水基への水分の吸着に起因し, 水分吸着は, 親水基の種類だけではなくまわりの疎水性に影響されることを確かめた.
  • 山本 武志, 高橋 清久, 金 雄二, 古林 和典
    1989 年 46 巻 3 号 p. 177-181
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    エポキシ樹脂の硬化剤として2種類のホスファゼン誘導体を用い, 硬化物の引張特性の温度依存性と耐熱性を, 一軸引張試験及び熱重量分析により比較検討した, エポキシプレポリマーとしてはビスフェノールA型とフェノールノボラック型の2種類を用いた. ホスファゼン誘導体で硬化したエポキシ樹脂は, メタフェニレンジアミン (MPDA) を硬化剤として用いた場合と比べて, 室温付近で, 高いヤング率を示した. 特に, トリクロロトリジメチルアミノシクロトリホスファゼンで硬化したエポキシ樹脂は, ガラス転移温度付近まで高いヤング率を保持し, 破断強度, 伸度も比較的高い値を示した. 熱重量分析の結果, 今回のホスファゼン誘導体で硬化したエポキシ樹脂は, 500℃以上の重量残存率が著しく高く, 分解完了温度も約800℃を示しMPDAで硬化した場合と比べて約200℃向上した.
  • 成智 聖司, 阿久津 文彦, 阿由葉 努, 三浦 正敏
    1989 年 46 巻 3 号 p. 183-188
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    1-ヘキセン-3, 4-ジカルボン酸無水物 (1a), (E) -2-ヘキセン-3, 4-ジカルボン酸無水物 (2a), 1-ヘキセン-3, 4-ジカルボン酸ジメチル (1e) 及び (E) -2-ヘキセン-3, 4-ジカルボン酸ジメチル (2e) のそれぞれはいずれも単独でのラジカル重合はしない. これらのモノマーをM2とし, アクリロニトリル (AN, M1) とのラジカル共重合を60℃で行い, モノマー反応性比を求めた.
    AN-1a r1=5.02, r2=0.00
    AN-2a r1=15.98, r2=0.00
    AN-1e r1=8.46, r2=0.00
    AN-2e r1=17.40, r2=0.00
    同一モノマー組成では, 酸無水物とジメチルエステルいずれも末端オレフィン系 (1a, 1e) の方が対応する内部オレフィン系 (2a, 2e) に比べて共重合体中での組成が高く, またこれらの共重合体の固有粘度はいずれもANの組成が減少すると著しく低下することがわかった. AN-2a及びAN-2e共重合体の主鎖と側鎖に結合する二種のメチル基を1H NMRから判別した. AN-1aとAN-1eの共重合体の1H NMRから二重結合の移動した2aと2eは含まれていないことがわかった.
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