高分子論文集
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46 巻, 8 号
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  • 藤本 邦彦, 須藤 康浩
    1989 年 46 巻 8 号 p. 451-458
    発行日: 1989/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    液晶ポリマーの射出成形物の力学的特性はこれまで多く報告されているが, 破壊機構に関する研究は見当たらない. 本報では炭素短繊維を複合した液晶ポリマーの射出成形物について繊維配向分布を調べると同時に流動方向に対し任意方向の引張試験を行い, 破壊特性について検討した. 成形物に対しスキン層及びコア層で繊維配向がそれぞれ直交した直交サンドイッチ積層板モデルを提案し, 系の引張破壊はスキン層あるいはコア層における繊維及び分子鎖配向方向, せん断方向, 直角方向のひずみのいずれかが上限値に達したときに生ずると仮定して任意方向の破壊ひずみを数式表現し, 実験結果とよく一致する破壊モデルを導いた. また任意方向の応力ひずみ線図の近似式を与えることによって, 成形物の任意方向の引張強さを推定した.
  • 張 大省, 石坂 弘子, 福本 修
    1989 年 46 巻 8 号 p. 459-463
    発行日: 1989/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    全芳香族ポリエステルをハードセグメント, 脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとし, 溶融エステル交換反応によりコポリマー (エラストマー) を合成した. このエラストマーの性質を調べるために, エステル交換反応で生じる連鎖分布の変化についてNMR, IR, DSC, 及び動的粘弾性などの方法で検討した. その結果, NMRとIRでは新しいピークが現れ, DSCの加熱曲線からはハードセグメント及びソフトセグメントと異なるピークが現れた. 動的粘弾性の曲線からソフトセグメントのTgとハードセグメントのTmの二つの転移温度を示した. 各スベクトルはエステル交換反応の進行とともに変化し, 初めはブロック状態で, しだいに高分子連鎖が細分化してランダムネスBの値は大きくなることがわかった.
  • 椎橋 透, 広瀬 和正, 田形 信雄
    1989 年 46 巻 8 号 p. 465-472
    発行日: 1989/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    天然ゴム (NR) の優れた物性発現の原因が会合性の分子にあると考え, 合成シスポリイソプレン (IR) と対比してNRのゲル構造を解明することを目的とした. GPC/LALLSの測定からNRのゾルは分岐度が高いことが確認された. 練りロール機による素練り, 3種類の溶媒を用いた連続溶媒抽出, 酵素による脱蛋白などの処理を行いゲル含有率及びゾルの分岐度の変化を追跡した結果, NR分子の分岐点やゲルの網目はこれらの処理によって容易にはずれうる会合体であることが明かとなった. 13CNMRによる解析からNRの分子鎖中には微量のエステル基が存在していることがわかり, このエステル基がNR中にきょう雑する蛋白質のアミノ基と水素結合を形成することによりNRの網目点になっていると推定された. さらに, NRとIRのゲルの網目を透過型電子顕微鏡で直接観察し, NRの網目の方が相対的に疎であることを明らかにした.
  • 椎橋 透, 広瀬 和正, 田形 信雄
    1989 年 46 巻 8 号 p. 473-479
    発行日: 1989/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    溶液中で広がっているポリマーをそのままの状態で固定できれば, 分子の大きさと形態, ゲルや橋かけゴムの網目構造を直接的に透過型電子顕微鏡 (TEM) で観察することができると考え, ポリイソプレン (IR) 試料をスチレンモノマーで溶解・膨潤後にスチレンを重合して固定した. 網目鎖平均分子量 (Mc) が既知の4種類のIR橋かけ物についてこの方法で調製しOsO4で染色後にTEM観察した結果, ミクロ相分離した網目構造が観察された. 観察された網目の単位胞の平均のサイズは, 分子量Mcを有するポリマーの非摂動状態の末端間距離に比較的よく一致した. TEM写真上の網目部分の長さを多数計測することにより, 相対的な網日鎖長の分布曲線を得ることが可能であることを示した. IRのゾル分子の場合のTEM像は球形であり, 球の直径はIRの分子量から計算した非摂動状態の末端間距離に比較的よく一致した. しかし1分子を観察したものではなく, 10分子程度のIRの凝集体と結論された.
  • 高木 幹夫, 枚田 健, 近藤 順治, 浅見 柳三
    1989 年 46 巻 8 号 p. 481-486
    発行日: 1989/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    構造の明確なポリスチレン-graft-ポリテトラヒドロフランの合成を目的として, ポリ (p-ビニルベンジルアルコール-co-スチレン) のメタル化反応及びそのメタル化共重合体とリビングポリテトラヒドロフラン (PTHF) とのグラフト反応を検討した. この共重合体の場合, Na-ナフタレンによるメタル化で均一系を保持できる 「固有臨界メタル化率」 は約9モノマーユニット (スチレンユニットを含む) 当たりONa基1個の割合であった. メタル化共重合体とリビングPTHFのグラフト反応では80%強のグラフト率が得られた. 生成グラフト共重合体の均一性は, 反応が極めて速いため, 反応溶液の混合方法に影響されるし, また, [I] / [ONa] ([I] はTHFの開始剤濃度) 比が高くなるにつれ良くなることが認められた. このことは, グラフト共重合体の枝数は, [I] / [ONa] 比をほぼ1にして, メタル化率で制御した方が有利であることを示す. なお, グラフト共重合体に少量混在するホモPTHFはイソプロピルアルコールで容易に除くことができた.
  • 堀田 巌, 辻田 義治, 滝沢 章, 木下 隆利, 岡畑 恵雄
    1989 年 46 巻 8 号 p. 487-491
    発行日: 1989/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    フッ素系側鎖を有するポリ (γ-メチルL-グルタメート) (PMLG) を常法に従いエステル交換法によって調製した. この試料の固体薄膜中でのヘリックス含量は, フッ素含有量の増加に伴い減少した. 棒状のフッ素系ポリベプチドの (100) 面間隔d100はフッ素含有量とともに増加するが, その割合は一般の炭化水素系側鎖を有するポリペプチドと比較して小さく, フッ素系側鎖の特異な構造が示唆された. フッ素系ポリペプチドの酸素, 窒素の溶解度係数はフッ素含有量とともに上昇したが, 特に酸素に対して高い値を示した. 一方, 拡散係数は両気体とも増加し, 結果として酸素, 窒素の透過係数はPMLGと比較して増加した. さらに透過係数比の若干の向上が観察された.
  • 山口 茂彦, 平野 二郎, 磯田 好弘
    1989 年 46 巻 8 号 p. 493-498
    発行日: 1989/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    HEMA (メタクリル酸2-ヒドロキシエチル) -BA (アクリル酸ブチル) -EMA (メタクリル酸エチル) -St (スチレン) 四元共重合体, TiO2, ブトキシメラミン樹脂からなる塗膜をモデルとし, 熱分解ガスクロマトグラフィーの手法で塗膜中のアクリル樹脂の組成分析を行った. 熱分解は高周波誘導加熱装置を用い590℃で行った. HEMA-BA-EMA三元共重合体のBA/EMAの組成比はBA/EMAの熱分解生成比及びBAの熱分解生成モノマー/ダイマー比を独立変数とした重回帰式より求めた補正係数を用いて分析できた. このことよりBAの熱分解生成モノマー/ダイマー比を用いて組成を分析できることがわかった. HEMA-BA-EMA-St四元共重合体のBA/EMA及びSt/EMAの組成比も同様にBAの熱分解生成モノマー/ダイマー比を独立変数の一つとした重回帰式を用いて分析できた. 塗膜中のアクリル樹脂の組成分析はHEMAの熱分解生成率が顔料及びメラミン樹脂との橋かけの影響を受けて変数として利用できず問題となったが, 本報告の方法を用いると塗膜中のHEMA-BA-EMA-St四元共重合体のBA/EMA及びSt/EMAの組成比をHEMAの熱分解生成率にかかわりなく精度良く分析ができた.
  • 指田 孝男, 赤羽 可奈子, 川原 井貢
    1989 年 46 巻 8 号 p. 499-506
    発行日: 1989/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    高精度 (±1%RH) な容量型湿度センサを開発するため, 高分子感湿材料の探索を行った. 高精度な湿度センサに用いる感湿材料の必須条件は, 吸脱湿過程でのヒステリシスが小さいことであり, 第1報 [高分子論文集, 46, 169 (1989) ] で述べたように, ポリ酢酸ビニル (PVAc), ポリメタクリル酸メチル (PMMA), 酢酪酸セルロース (CAB) は, 吸脱湿過程のヒステリシスが1.5%RHと小さく, 有望な感湿材料である. 上記の三種の高分子感湿材料について, その感湿特性 (容量値対湿度特性) の温度依存性を5~40℃範囲で調査したところ, CABは, 感湿特性の温度依存性が-1%RH/10℃と最も小さく, 優れた感湿材料であることがわかった. また, これら三種の感湿材料について, 吸着水分量を測定し, 感湿特性と比較することで, 感湿機構について考察した. CABにおいては, 吸湿水分量はほぼ相対湿度に比例し, その感湿特性は, 吸着した水の層が感湿膜の表面に対して垂直に存在するというモデルによって, 説明可能であった.
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