高分子論文集
Online ISSN : 1881-5685
Print ISSN : 0386-2186
ISSN-L : 0386-2186
47 巻, 3 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 中木 潤二, 鎌形 一夫, 粟野 信明
    1990 年 47 巻 3 号 p. 169-175
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    イソシアヌル酸とエピクロルヒドリンから合成された1, 3, 5-トリグリシジル-s-トリアジントリオンは100℃付近に融点を持っα型結晶と150℃付近に融点を持つβ型結晶の混合物で両者は異性体の関係にある. 異性体の熱的挙動及び硬化反応性を示差熱分析装置で調べた. 両結晶を融点以上に昇温し, 冷却後直ちに昇温すると融解に基づく吸熱ピークは観測されないがα型は昇温後室温に1日放置して再び昇温すると吸熱ピークが観測された. しかし. β型は10日間放置して昇温しても吸熱ピ-クは観測されなかった. これはβ型がα型より緻密な構造のためと推測された触媒型硬化剤の2-メチルイミダゾールで硬化したときの反応の活性化エネルギーはα型で132kJ/mol, β型で163kJ/molとβ型の方が大きな値を示した. しかし, メチルヘキサヒドロ無水フタル酸の場合にはそれぞれ, 130kJ/mol, 136kJ/molとほぼ等しい値を示した.
  • 松本 哲, 池永 和敏, 宮村 勝巳
    1990 年 47 巻 3 号 p. 177-184
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    アジピン酸ジブチエルステル及び2エチルヘキシルエステルからチタン触媒を使用し各種ジオールとエステル交換反応を行って複合エステル類composite esterを合成した. 反応モル比によって複合エステル類の組成及び粘度が異なっていた. complex esterのethanediylbisbutyl adipate, 12-propanediylbisbutyl adipate, 13-butanediylbisbutyladipateは蒸留で分離することができた. これらの複合エステル類を可塑剤として試験し可塑化効率をシートの表面硬度値から算出した. 複合エステル可塑剤は一般の可塑剤に比べ非常に低い揮発性と優れた可塑化効率を持っている. 成形物の機械強度は同じ硬度で比較すると優れておりDOPの80~90%の量の使用で同等の可塑成形物が得られると考えられる.
  • 越智 光一, 川端 達也, 山下 喜市, 新保 正樹, 奥野 辰弥
    1990 年 47 巻 3 号 p. 185-191
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ビスフェノールA型エポキシ樹脂を末端アミノ基ポリシロキサン (ATPS) 及びポリジメチルシラノール (PDMS) の2種のシリコーンエラストマーを用いて変性した. いずれのシリコ-ン変性系でも, 硬化物はエポキシマトリックス中にシリコーン相の分散した二相構造を持つことが示された. このうちATPS変性系のシリコーン相は橋かけを持たず, PDMS変性系のシリコーン相は橋かけ構造を持つことが示された. 橋かけを持たないATPS変性系では硬化物の内部応力は未変性系とほぼ同じ値を示した. これは, この系では変性によるガラス状領域の弾性率の低下と収縮の増加が互いに相殺するためであることが示された. またこれらの系の内部応力はガラス状領域での温度低下に伴ってほぼ直接的に増加した. 一方, 橋かけ構造を持っPDMS変性系の内部応力は, 冷却の初期過程では上記のATPS変性系と同じ挙動を示したが, 雰囲気温度70℃付近で急激な低下を示した。このため, 室温付近の内部応力はPDMS変性系が他の2者に比べてかなり低い値を示した. この内部応力の急激な低下は硬化物が冷却途中で特異な膨張を示すためであることが示された. これらの結果より橋かけを持つシリコーンエラストマーによるエポキシ樹脂の変性が硬化物の内部応力の低下に有効なことが示された.
  • 佐々木 一雄, 佐々木 倫郎
    1990 年 47 巻 3 号 p. 193-196
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリフッ化ビニリデンフィルムの厚さ方向へ階段状に近い外力を加えたときに, 外力に比例する大きさの起電圧の過渡的変化が現れることを見いだした. この測定において, 外力の印加は, 先端部の曲率半径が0.09cmで, いわば, ポイント状に近い曲率をもっ金属製アンビルを備えたバネ秤を使って行われた. 電圧の過渡的変化は, 試料を含めた測定系の時定数によるものである. 本測定法では, 上記の比例関係と起電圧の減衰過程を結びつけることにより, フィルム状物質であるポリフッ化ビニリデンの厚み方向の圧電定数を求めることができた。得られたd33の値は-26.5×10-12C/Nであった.
  • 飯田 健郎, 池田 公久, 吉田 浩, 後藤 邦夫
    1990 年 47 巻 3 号 p. 197-205
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリ塩化ビニルの熱安定化に対するステアリン酸亜鉛/ステアリン酸カルシウム複合石けんとポリビニルアルコール (PVA) との相乗効果を, 色解析により, 検討した. PVAは複合系金属石けんと良好な相乗効果を示したが, その効果はPVAの添加法あるいは重合度に著しい影響を受けた. すなわち, 低重合度のPVAを溶液状で, 複合系金属石けんと併用した場合に, 顕著な相乗効果が認められた. PVAの安定化助剤としての効果と分散性との関連を知るために, 試料シートの画像解析を行った結果, 顕著な相乗効果が認められた系においては, PVAの分散が良好であり, 効果が認められなかった系においては, その分散が不良であった. このように, この系における相乗効果はPVAの分散度に著しく依存することが判明したとともに, 画像処理・解析手法が, 添加剤の分散性に対する, 定量的な評価法として有効であることも判廟した.
  • 横田 力男, 崎野 隆弘, 三田 達
    1990 年 47 巻 3 号 p. 207-214
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    主鎖に芳香環を含むポリエーテルエーテルケトン, ポリスルホンなど4種の芳香族高分子とカプトン, ユーピレックスSなど9種のポリイミドのフィルムについて, 化学構造と熱安定性の関係を調べる目的で窒素中の熱重量変化を測定した. その結果, 側鎖を持つポリイミドの初期重量減少温度が低く. 全芳香族ポリイミド, ユーピレックスSが最も高い熱安定性を示した. 重量減少曲線が初期分解から主分解へと連続して変化し, 全般に高い重量残存率を示すポリイミドに対して, 芳香族ポリマーの重量減少は急激に起こり, 重量残存率も低いものが多く見られポリイミド芳香複素環の寄与が明らかにされた. 化学構造と熱安定性の関係は, 芳香環やイミド環を結ぶ官能基の結合解離エネルギーの高いものほど高く, 活性化エネルギーではポリマーごとに一定値となる芳香環ポリマーに比べ, ポリイミドでは活性化エネルギーが構造によらず分解温度に対して比例関係を示す特異性がみられた.
  • 奥村 城次郎, 岸部 正行, 山口 幸一
    1990 年 47 巻 3 号 p. 215-221
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    メタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルをグラフト共重合したスチレンーブタジエンブロック共重合体の機械的物性とグラフト率, グラフト鎖のポリマーのガラス転移温度 (Tg), モルホロジーなどの関連について検討した. 引張及び引裂物性はグラフト鎖のポリマーのTgが高いものほど優れ, 特にメタクリル酸メチルによるグラフト重合物は低グラフト率領域 (約5%) で, 著しく高い引張強さと引張応力が認められた. 動的粘弾性挙動より低グラフト率あるいはグラフト鎖のポリマーのTgが低く, 溶解度パラメーターがポリスチレンと近似しているものでは, グラフト鎖とポリスチレンセグメントは相溶することがわかった. グラフト重合物のミクロ相分離構造はキャスト溶媒によって異なり, ポリスチレンドメインの表面積分率も変化したが, 引張強さはほとんど一定であった. これらのことから, 低グラフト率領域ではグラフト鎖とポリスチレンセグメントは相溶し, 一種の物理的橋かけとなり, 引張強さ及び引張応力が高くなることを見いだした.
  • 奥村 城次郎, 北出 清光, 山口 幸一
    1990 年 47 巻 3 号 p. 223-230
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    スチレン-イソプレンブロック共重合体 (SIS) をポリメタクリル酸メチルマクロモノマー (McMMA) またはメタクリル酸メチル (MMA) でグラフト化し, その接着性と機械的物性について検討した. McMMAによるグラフト化物 (SIS-g-McMMA) のグラフト率とグラフト効率は, McMMAの分子量が高くなるとともに低下した. SIS-g-McMMA及びMMAによるグラフト重合物 (SIS-g-MMA) のグラフト率はMMA濃度が高く, 重合時間が長くなるとともに上昇した. SIS-g-McMMA及びSIS-g-MMAのスチレンーブタジエンブロック共重合体と軟質ポリ塩化ビニルとの接着性については, グラフト率に対してはく離強さは極大値を示し, SIS-g-McMMAではその極大値はMcMMAの分子量が大きくなるとともに低グラフト率, すなわちグラフト鎖の数の少ないところにシフトすることが明らかになった. 特にMcMMAの分子量が10000以上, グラフト鎖の数が2個以下ではSIS-g-MMAによるはく離強さよりも高くなった. SIS-g-McMMAの引張強さはMcMMAの分子量が10000以上, グラフト鎖の数が0.5~2個で高くなった. SIS-g-MMAではグラフト率が高くなるとともに, 引張強さは低下した. このように, SIS-g-McMMAのグラフト鎖の分子量と数を制御することにより, SIS-g-MMAよりも優れた接着性及び機械的物性を付与できることが明らかになった.
  • 佐藤 貞雄, 菊地 正, 熊谷 慶一, 大柳 康
    1990 年 47 巻 3 号 p. 231-236
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    プローブ法による熱伝導率測定装置 (非定常法) を試作して装置の性能, 熱伝導率の温度依存性, 及び放射伝熱の影響などについて実験的に検討した. また, 本装置による実測値から, 金型内流動解析またはCAE (Computer Aided Engineering) における入力要素の一つである最適熱伝導率について考察した結果, 次のような知見を得た. プラスチックの固体域における熱伝導率は0.16~0.18kcal/m・h・℃の値を示し, 温度の上昇とともに増大する. 熱伝導率は250℃の溶融域に達すると固体域のものに比べて約39%程度高くなる. また, 溶融温度とガラス転移温度の領域で不連続性を示すことが分かった. 放射による伝熱量は, 温度に依存して固体域では2.7~7%, 溶融域では8~14%となり熱伝導率に及ぼす影響は大であるので無視できない. 特に, 溶融領域において透明になるプラスチックの熱伝導率はこの放射伝熱量を考慮して, 金型内流動解析あるいはCEAにおける入力値とする必要がある. 試作したプローブ法の本装置は±3~4%の精度で熱伝導率を測定することができる.
  • 高田 忠彦, 古川 雅嗣
    1990 年 47 巻 3 号 p. 237-244
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    高周波イオンプレーティング法により縮合系高分子の代表であるナイロン6の薄膜化を試みた. 10-4~10-3Torrの真空下でプラズマ状態を作り, 溶融させたナイロン6をプラズマ中に蒸発させると, 基板上に確かに通常の真空蒸着法とは異なる薄膜が形成することが分かった. 単なる真空蒸着法により形成した付着物はナイロン溶媒であるギ酸に溶解するが, 薄膜は形成しなかった. 高周波イオンプレーティング法で形成されたナイロン6薄膜の場合には, ギ酸可溶部分と不溶部分とからなる薄膜であった. さらに, IR, 熱分析, X線回折, 元素分析などの解析の結果, 原ナイロン6の構造とは異なるが, 比較的類似した構造を有する架橋及び未架橋の低分子量ナイロンと推定された.
  • 高田 忠彦, 古川 雅嗣
    1990 年 47 巻 3 号 p. 245-253
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    不活性表面を有する高分子物質の表面活性化法としての物理処理法を比較検討した. 本研究では電子線処理, 紫外線処理及び低温プラズマ処理法をとりあげ, PETフィルムを処理し, 表面変化, 微細構造変化及び力学的特性の変化をみた. これらの処理法の中で, 低温プラズマ処理法は表面がエッチングされ, 官能基が導入されることによって不活性表面が活性化されるが, 本来有している力学的特性を損なわない方法であることを確認した. また, 300kVの電子線処理法は透過力が大きく, 力学的性質を低下させるので, 表面改質法としては制約が多いように思われた. 紫外線処理法は比較的力学的性質の低下は小さい. マトリックスとの接着性はいずれの処理法についても向上することを認めた.
  • 宮内 信之助, 柴沢 勝, 反町 嘉夫, 津端 一郎
    1990 年 47 巻 3 号 p. 255-260
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    10~20℃の温度範囲で, 導電率の異なる4種類のポリチオフェンを電界重合によって作製し, その電気的特性を検討した. 得られたフィルムの面内方向と垂直方向について, -140~120℃の範囲で直流導電率を測定したが, 平面方向の導電率が垂直方向の導電率より, 4~7桁ほど大きかった. これらの温度依存性は1/Tより1/T1/ (n+1) に関係し, 特に高温で作製された試料の面内方向と各試料の垂直方向については, n=3であった. 交流導電率を10kHz-1MHzの範囲で測定した. 低温で作製した試料の面内方向の導電率はほとんど周波数に依存しなかったが, 高温で作製した試料の導電率は周波数依存性を示した. また, 同じ導電率の高温で作製された試料と低温で作製された試料について周波数を1MHzと一定とした場合, その温度依存性は前者が後者よりはるかに小さかった. これはホッピング機構を示唆している.
feedback
Top