高分子論文集
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47 巻, 5 号
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  • 塚原 安久, 鶴田 厳一, 河野 研二, 山下 雄也
    1990 年 47 巻 5 号 p. 361-370
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリマーアロイによる高分子材料の機能化として, 2- (2-ヒドロキシ-2-ビニルフェニル) -2H-ベンゾトリアゾール (UVSモノマー) を紫外線安定化剤単位として主鎖に含み, かつアンカー成分としてポリスチレンの側鎖を, また表面活性成分としてポリジメチルシロキサン成分またはパーフルオロアルキルエチルアクリレート (FA) 成分を有し, 有効かつ安定に表面析出しうるグラフトポリマーを高分子紫外線安定化剤として合成した. また, ポリスチレンに対するこれらのグラフトポリマーの紫外線安定化能を検討した. 紫外線安定化グラフトポリマーは単分散のスチレン及びジメチルシロキサンマクロモノマーとUVSモノマー及びFAとをアゾビスイソブチロニトリルを開始剤として均一系でラジカル共重合することにより得ることができた. これらのグラフトポリマーをポリスチレン (PSt) に添加して成膜することにより, PStの表面に有効な紫外線安定化層を付与でき光酸化を抑制できることがわかった.
  • 堀 照夫, 名和 英樹, 五十嵐 泰蔵, 中村 良治
    1990 年 47 巻 5 号 p. 371-378
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    ナイロン6 (Ny) 及びポリエチレンテレフタレート (PET) を両者の共通溶剤であるヘキサフロロ-2-プロパノール (HFIP) に溶解し, これを水平板上にキャスト後, 高電場を印加しながら溶媒除去する方法でNy/PET複合膜を調整した. 通常のキャスト法で作成した膜と合わせ, 膜の内部構造をDSC, X線回折法及び電子顕微鏡観察などを用いて調べた. その結果, 通常のキャスト法では両成分が網目状にランダムに入り込んだ構造をとるのに対し, 電場を印加しながら作成した膜の場合, Nyが〈海〉となる組成では両成分が膜面に平行にミクロラミネートしたように配向し, Nyが〈島〉となる組成ではNy成分が膜面に垂直な方向に配向するという極めて特異的な構造を発現することを見いだした. そして, この電場印加効果は電気乳化 (静電分散) の理論で説明できることを示した. 両方法で得られたNy/PET複合膜に対する色素の透過係数も複合膜の構造の特徴を反映した.
  • 嶋田 繁隆, 鹿島 啓一, 堀 靖郎, 柏原 久二
    1990 年 47 巻 5 号 p. 379-385
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリマーブレンド中における異種分子の相溶性及び相分離性を分子レベルで観測する方法として電子スピン共鳴 (ESR) の応用を考えた. アイソタクチックポリメチルメタクリレート (i-PMMA) を合成し, 末端部位にナイトロオキサイドラジカルをスピンラベルした. 次にそのPMMAとポリエチレンオキサイド (PEO) とのブレンド試料を得た. スピンラベル濃度が高い場合, 不対電子不対電子相互作用によりESRスペクトルは幅広くなる. この効果を利用してまず線形パラメーターとPMMA中のスピン濃度との実験式を求め, これを用いて不均一構造をもつブレンド中のPMMA鎖の局部濃度を決定できた. 100℃で相溶化されたブレンド試料を低温の各温度で熱処理した後, 測定されたスペクトルを解析した. 評価されたPMMA鎖の局部濃度の変化から, 60℃以下で相分離が起こり, 60℃以上で分子相溶の進行することが明らかとなった.
  • 山中 淳彦, 加地 篤, 村野 政生
    1990 年 47 巻 5 号 p. 387-393
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリエピクロロヒドリン (PECH) /ポリメチルメタクリレート (PMMA) のポリマーブレンドでのPECHの分子運動性を調べるため, 相構造の異なる透明なブレンドフィルムと白濁したブレンドフィルムの2種の試料を調製し13CNMRを測定した. PECHピークの形状, T1T2の温度依存性は, バルク・白濁ブレンド・透明ブレンドの順に高温側にその挙動が移っており, ブレンドフィルム中のPECH分子鎖の運動性はバルクのそれに比して低いこと, その程度は相溶性に対応していることがわかった. これよりブレンド中のPECH分子鎖は近傍に存在するPMMA分子鎖の影響を受けていると考えられる. また, PMMAとの混合あるいは相構造の違いによるPECHの緩和時間の変化はT1よりもT2に顕著に現れており, この系におけるPECH分子鎖の運動性の変化は, 局所的な速い運動よりも遅い運動に顕著であるといえる.
  • 高原 淳, 寺屋 竜男, 梶山 千里
    1990 年 47 巻 5 号 p. 395-402
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    PStをA成分, 種々の表面エネルギーを有するポリマーをB成分とするジブロック共重合体をリビングラジカル重合法により合成し, その表面特性について検討した. XPS測定の結果, 空気-固体界面には低表面自由エネルギー成分が濃縮されることが明らかになった. またB成分の末端基の化学構造が表面化学組成に大きく影響することを見いだした. 空気中から水中へ固体表面が移行する際の表面特性の変化を動的接触角法により検討した. 水中では, 表面は親水性の成分に富むことが明らかとなった. 環境の変化に対する表面構造変化の応答性は各成分のガラス転移温度と表面におけるオーバーレイヤーを構成している化学組成と分子凝集状態に大きく支配されることが明らかになった.
  • 上遠野 浩樹, 丸山 厚, 讃井 浩平, 緒方 直哉, 由井 伸彦, 片岡 一則, 桜井 靖久
    1990 年 47 巻 5 号 p. 403-408
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンオキシド (PEO) を有するポリエーテルポリウレタンウレア (PEUU) からの薬物放出に及ぼす薬物初期濃度, PEUU組成の影響を調べ, 薬物-PEUU間の相互作用について検討した. モデル薬物としてクリスタルバイオレット (CV) を用いた. PEUUへのCVの収着実験による収着等温線はFreundlich型を示し, CVは強度分布を伴ってPEUUと相互作用していることがわかった. PEUUからのCV放出実験においてはPEUU中のCV初期濃度が高いほど放出初期において速い放出速度を示した. 一般的な拡散支配型放出挙動と比較することにより, PEUUからのCV放出は拡散にのみ支配されるのではなく強度分布を有するCV-PEUU間相互作用に強く影響されることがわかった.
  • 中村 元一, 井上 隆
    1990 年 47 巻 5 号 p. 409-414
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    互いに非相溶な三種類のポリマー (A, B, C) を溶融混練する際に形成される多相構造についてNeumannの三角形の概念により考察した結果, Cが主成分で連続相となる場合に限定しても, (1) A in B様式のカプセル型混成粒子, (2) B in A様式のカプセル型混成粒子, (3) A-B付着型混成粒子, 及び (4) A, Bの分離分散型粒子の計4種類の形態を取りうることがわかった. この結果を検証するため, ポリカーポネート/ポリブチレンテレフタレート/スチレンーアクリロニトリル共重合体の三成分系について, A, Bポリマーフィルムの間にCポリマーの小片をはさみ, 溶融状態で等温熱処理した後, 断面観察を行った. これよりNeumannの三角形のcosθを求めて相形態を予測すると, Hobbsらの混練実験結果 [Polymer, 29, 1598 (1988) ] と良好に一致することがわかり, cosθによる考え方の妥当性が確認された.
  • 中島 俊夫, 木下 隆利, 滝澤 章, 辻田 義治
    1990 年 47 巻 5 号 p. 415-423
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    A成分がポリ (γ-メチルL-グルタメート) (PMLG), B成分がポリジメチルシロキサン (PDMS) であるA-B-A型トリブロック共重合体膜 (MSiM膜) を調製し, 同膜の構造と気体の収着・拡散挙動を検討した. A, B両成分は同膜中においてミクロ相分離構造を形成し, さらにその界面領域でPMLG (A成分) のランダムコイル構造が誘起された. その結果, MSiM膜の二酸化炭素の収着挙動は, PMLG成分のヘリックス領域とPDMS成分の2相にPMLG成分のランダムコイル領域を加えた3相に律せられた. 一方, 二酸化炭素の拡散性はPMLG含率が高い (70vol%以上) MSiM膜では, このランダムコイル含率の増加とともに減少したが, PMLG含率が50vol%前後のMSiM膜では, PDMS相の高い拡散性に基づいて二酸化炭素の透過係数は著しく増加した. さらにMSiM膜の酸素・窒素の透過係数比は, PMLG成分のランダムコイル領域が収着・拡散性を強く律するPMLG高含率の膜において良好な値 (3.5~4.4) を示した.
  • 植田 正, 三瀬 興造, 小谷 壽, 高橋 秀郎
    1990 年 47 巻 5 号 p. 425-431
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリエチレン/ポリアミド混合物の射出成形シート中の分散相の形態は, 射出成形条件により異なり, 分散相は通常のせん断速度での成形では粒子状であるが, 高せん断速度で成形すると繊維状となる. 本研究では, 組成の異なる混合物の射出成形シート中の分散相の形態と水蒸気の溶解・拡散性との関係を調べた. 30℃, 水蒸気圧約1.9cmHg (相対湿度: 約60%) における, 濃度ゼロからの, あるいは濃度ゼロへの, 積分吸収, 脱着測定を行った. 平衡量である溶解度係数は, PA-6含量が増大するにつれて単調に増加し, 分散形態の違いによる影響は見られなかった. 見掛けの拡散係数の値は, 分散相が繊維状の試料の方が粒子状のそれよりも大きかった. これは主として高分子鎖のシート面内での配向効果によるものと考えられる. また透過係数-組成関係には, ある組成で極大値が現れるという, 特徴的な挙動が見られた. この極大は分散相が繊維状の試料の方がより顕著に現れた.
  • 瀧川 敏算, 冨永 幸男, 升田 利史郎, 高橋 秀郎
    1990 年 47 巻 5 号 p. 433-437
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    医用材料として広く使用されているセグメント化ポリウレタン (SPU) とポリアクリルアミド (PAAm) からなる相互侵入網目 (IPN) を合成し, 合成条件とIPN中のPAAm分率との間の関係, 及びPAAm分率とIPNの水膨潤度の間の関係を検討した. ソフトセグメント部の分子量の異なる3種類のSPUを実験に使用した. IPNの合成は, SPUフィルムをアクリルアミド, 重合開始剤及び架橋剤を含む溶媒中で膨潤させた後, フィルム中のアクリルアミドを熱重合することにより行った. 同一の重合条件で合成したIPNのPAAm分率は, SPUの種類に依存した. 膨潤溶媒中のアクリルアミドの濃度が高いほど, 重合後のIPN中のPAAm分率も高いことが観測された. さらに, IPNの平衡含水量は, IPN中のPAAm分率が高くなるほど大きくなることも明らかになった.
  • 高橋 正人, 鵜野 かさね
    1990 年 47 巻 5 号 p. 439-443
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリスチレン (PS) /ポリメチルフェニルシロキサン (PMPS) 混合系の相分離過程を光散乱法を用いて調べた. 構造関数S (k, t) の自己相似性を表すスケーリング則S (k, t) =km-3s (k/km) を検証するために, 散乱強度I (k, t) の重ね合わせを行った. ここでkは波数, tは時間, kmは散乱強度の極大値を与える波数である. 臨界組成では良好な重ね合せ曲線が得られたが, 非臨界組成では時間の経過とともに構造関数がブロードになり, 良好な重ね合わせ曲線は得られなかった. 臨界組成も非臨界組成も, 構造関数の波数依存性は, 共にPorod則に従っているように見えるものの, Tomitaicよる保存則∫0 [k4S (k, t) -4πA] dk=0は非臨界組成では定性的に成り立っが, 臨界組成では成り立っていないことがわかった.
  • 末永 純一, 藤田 英二
    1990 年 47 巻 5 号 p. 445-449
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    半芳香族サーモトロピック液晶ポリマー (以下LCP) の耐熱性を向上させる目的で, 耐熱性の特に優れた全芳香族LCPとのポリマーブレンドを検討した結果, そのブレンド割合に比例して耐熱性が向上することがわかった. 実用面で問題となるブレンド温度が高いことによる半芳香族LCPの熱分解を押えるため, ブレンドは半芳香族LCPのみが溶融する低い温度で行い, 射出成形のみを双方の樹脂が溶融する高い温度で行うというプロセスを検討した結果, 熱分解は押えられ実用的な性能が得られた. この際, 双方のLCPは射出成形機内の短時間の溶融ブレンドで, 化学的な相互作用を伴うて均一に混合されることが観察された.
  • 塩見 友雄, 遠山 正生, 鈴木 正人, 今井 清和
    1990 年 47 巻 5 号 p. 451-454
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    構成モノマーに対応するホモポリマー同士が相溶であっても, ある共重合組成で非相溶となる共重合組成が存在し得るブレンド系である, 酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体とイソブチルメタクリレート・n-ブチルメタクリレート共重合体のブレンドにおいて, χパラメーターの温度依存性が共重合組成とともにどのように変化するかが状態方程式理論に基づいて計算された. その結果, χはある温度で共重合組成とともに負→正→負と変化したが, その温度依存性はすべて単調増加型となり, いわゆるimmiscibility window型ではないことが示唆された. しかし, 計算に用いられた交換エンタルピーパラメーターは分子量有限のブレンドの相溶性の実験結果から決定されたものであるので, さらに詳細な検討が必要である.
  • 高橋 正人, 原沢 延幸, 吉田 博久
    1990 年 47 巻 5 号 p. 455-458
    発行日: 1990/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンオキシド (PEO) /ポリメタクリル酸メチル (PMMA) ブレンド中でのPEOの等温結晶化過程に及ぼすPMMAのタクチシチーならびに分子量の影響を検討した. 結晶化速度はPMMAの組成と分子量の増加に伴い遅くなる. ブレンド試料の融解熱はPMMA分子量には依存せず, PMMA組成が増加すると小さくなる. また, 融解熱はPMMAタクチシチーに依存しアイソタクチック, シンジオタクチック, アタクチックの順に小さくなる. 結晶化の活性化エネルギーはPMMA組成と分子量には依存せず, PMMAタクチシチーに依存し, アイソタクチック, シンジオタクチック, アタクチックの順に小さくなる.
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