高分子論文集
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47 巻, 6 号
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  • 丹羽 貴裕, 日比 貞雄, 鳥居 隆司, 長谷川 智, 祖父江 利江, 下方 潤一
    1990 年 47 巻 6 号 p. 459-466
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    前報では, 分子量を異にするロール延伸高密度ポリエチレンフィルムの結晶鎖軸 (c軸) まわりのa, b軸の選択配向と力学的性質を調査した. 本報では, 分子量を異にする高密度ポリエチレンのロール延伸したフィルムをゾーン加熱によりoff-angleで再延伸する場合の再配向と結晶化の機構を解析した. 次の結論が得られた. 1) ゾーン再延伸によりDSC測定の吸収ピークは高温側に移動した. この現象は, 再延伸フィルムの過熱により説明された. 2) Off-angle再延伸フィルムのゾーン再延伸中の塑性変形に伴う分子の再配向と結晶化によってヤング率の増加が得られた. 3) 力学的性質の改善は, ゾーン熱処理中のoff-angle再延伸の滑り変形によって達せられた.
  • アルコキシアルキル基の影響
    伊藤 昭二
    1990 年 47 巻 6 号 p. 467-474
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    側鎖に酸素原子を含む, 例えばヒドロキシアルキル基, アルコキシアルキル基を持つポリN-置換アクリルアミド誘導体を各種合成し, それぞれの一次構造と水に対する溶解特性の関係を比較した. ポリ (N-アルキル-N-ヒドロキシアルキルアクリルアミド) 誘導体は, 側鎖アルキル基の鎖長の増加につれて「水溶性」から「水不溶性」へと変化する. 一方, 側鎖がアルコキシアルキル基である高分子は, 側鎖のアルキル基あるいは側鎖のエーテル基に隣接したアルコキシアルキル基の鎖長の増加につれて「水溶性」から「低温で水溶性で, かつ高温で水不溶性」, 「水不溶性」へと変化する. 「低温で水溶性, かつ高温で水不溶性」を示す高分子については, その水溶液を加熱するとき相転移に相当する曇点現象が観測され, その相転移温度はそれぞれの高分子の一次構造に依存することが実証された. このようにして側鎖アルコキシアルキル基の形状を含めた鎖長の構造を変えることにより, 転移温度が9℃から85℃までの範囲に見られる種々の高分子が得られた. メタクリルアミド系高分子水溶液の転移温度は, アクリルアミド系高分子のそれと比べいずれも3~20℃高温側に現れることが分かった.
  • 山水 孝文, 山本 高弘, 武田 邦彦
    1990 年 47 巻 6 号 p. 475-482
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ジビニルベンゼンを橋かけ剤とする多孔性橋かけポリスチレンを用いて, 乾燥して収縮したポリマーの有機溶媒中での膨潤挙動を調べた. その結果同じように良溶媒に属する溶媒でも膨潤速度が大きく異なり, 膨潤に要する時間が溶媒によって1000倍も違う現象が見いだされた. また, 同一架橋度で空孔のないポリマーでも, 重合時の相分離の違いによって高分子鎖の堅さが異なり, 膨潤時間が20~30倍違うことも見いだされた. このような溶媒中でのポリマーの膨潤機構について検討し, 乾燥して収縮したポリマーの膨潤は溶媒の拡散過程と考えるべきであり, その拡散速度は溶媒の粘性及び分子容だけでなくポリマーの網目構造と強く相関していることが示唆された.
  • 宝蔵寺 裕之, 堀江 修, 尾形 正次, 沼田 俊一, 金城 徳幸
    1990 年 47 巻 6 号 p. 483-490
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    エポキシ樹脂に充填剤として球形のシリカを用いた成形品の機械強度, 樹脂と充填剤の界面の接着性に及ぼすカップリング剤の種類, 添加方法, 添加量の影響について検討した. インテグラルブレンド法でカップリング剤を添加した場合カップリング剤の種類や添加量を変えても樹脂と充填剤の接着性はあまり改良されず成形品の機械強度もほとんど向上しない. あらかじめ充填剤表面をアミノシラン系カップリング剤で処理した場合には, 樹脂と充填剤の界面の接着性が改良され, 成形品の機械強度が大幅に向上した. 成形品の機械強度は, 充填剤表面にカップリング剤の単分子層が形成された場合に最も高い値を示す.
  • 吉井 正樹, 金田 愛三, 上田 雅信
    1990 年 47 巻 6 号 p. 491-498
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリカーポネート樹脂を用いた薄肉円板の射出成形における円板平面内及び板厚断面内の複屈折分布と, その成形条件との関係, さらに複屈折発生メカニズムについて検討した. (1) 円板の板厚断面内の複屈折 (n1-n3), (n2-n3) のマクロ的な推定は, 斜入射レターデーション法により可能である. (2) (n1-n3) は, 樹脂温度, 型温度, 及び射出速度を高くすることにより小さくなる. (3) (n1-n3) の板厚方向分布については, 約5×10-4の直流成分をもち, ゲート近傍では板表面より約0.2~0.3mmの内側で最大となる分布を示す. キャビティ末端部では, 板厚中心部で最大となる分布を示す. (4) このような (n1-n3) の特徴的な分布は, 充填過程における伸張流動変形による複屈折に加えて, ゲート近傍では保圧過程における微小剪断流動変形による複屈折と, キャビティ末端では保圧力による静水圧ひずみに起因する複屈折が重畳されたものであると推定できる.
  • 瓜生 敏之, 宋 鎭哲
    1990 年 47 巻 6 号 p. 499-507
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    p-N-アセチルアミノ安息香酸を一成分とする3成分系サーモトロピックコポリエステルアミドを合成した. ジカルボン酸成分として4~12のアルキレン鎖を持つα, ω-ビス (フェノキシ) アルカン-4, 4'-ジカルボン酸, ジオール成分として4, 4'-ジアセトキシビフェニル, アミン成分としてp-N-アセチルアミノ安息香酸を用いた. その他のジオール成分としてヒドロキノンジアセタートを持つポリマーも合成した. 得られたポリマーは, DSC, 偏光顕微鏡, X線回折, 13C NMRなどによって構造解析を行った. アミド結合形成のために加えたp-N-アセチルアミノ安息香酸の増加に伴って得られたポリマーのTmは低くなり, ジカルボン酸体のアルキレン鎖を長くしたポリマーのTmも低くなることがわかった. X線回折の結果からα, ω-ビス (フェノキシ) アルカン-4, 4'-ジカルボン酸, 4, 4'-ジアセトキシビフェニル, 及びp-N-アセチルアミノ安息香酸から成る3成分系サーモトロピックコポリエステルアミドは80~85%の高い結晶化度を持つポリマーであることがわかった. 本研究で得られた3成分系コポリエステルアミドは典型的なネマチック液晶性を示すことが, 偏光顕微鏡観察から明らかとなった.
  • 飯田 健郎, 池田 公久, 山下 淑子, 後藤 邦夫
    1990 年 47 巻 6 号 p. 509-516
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリ塩化ビニルの熱安定化に対する, ステアリン酸亜鉛/ステァリン酸カルシウム複合石けんとポリ酢酸ビニルの部分けん化物 (SPVAc) との相乗効果を検討した. その効果はSPVAcのけん化度あるいは添加法に著しい影響を受けた. すかわち, 高けん化度のSPVAcは溶液状で添加しないと, 複合系金属石けんとの相乗効果が認められなかったが, 低けん化度のSPVAcは固体状で添加した場合でも, 顕著な相乗効果が認められた. SPVAcの安定化助剤としての効果と分散性との関連を知るために, 試料シートの画像解析を行った結果, 顕著な相乗効果が認められた系においては, SPVAcの分散が良好であり, 分散が不良であった系においては, 効果が認められなかった. これは, 酢酸ビニルセグメントがビニルアルコールセグメントのPVCへの分散性の増大に寄与し, ビニルアルコールセグメントの安定化助剤としての機能を顕在化したものと考えられる.
  • 須山 修治, 田浦 克樹, 石垣 秀世
    1990 年 47 巻 6 号 p. 517-522
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    一分子中にO-O結合を数個以上もつポリ過酸化物として, 新しい脂環式構造を有するポリペルオキシエステル型の, ポリ [ (2, 5-ジメチルヘキサン-2, 5-ジペルオキシ) シクロヘキサンジカルボキシレート] 類を合成した. このポリメリックペルオキシドの熱分解速度を測定したところ, 通常の過酸化物と同様に一次分解を示し, 10時間半減期温度 (T10) は80℃であった. これは, 従来のジアシル型のポリ過酸化物のT10に比べ, 15から20℃高いものである. さらに, それを用いてスチレン (St) /α-メチルスチレン (α-MS) 及びSt/α-MS/アクリロニトリル (AN) のランダム共重合を行った. その結果, 得られた重合体は, 通常の過酸化物を用いた方法に比べ機械強度及び耐熱性の向上した重合体が得られた.
  • 宇野 敬一, 栗田 智晴
    1990 年 47 巻 6 号 p. 523-527
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    組成の異なる種々のポリアミドイミド樹脂 (PAI) を無水トリメリット酸 (TMA) と種々のジイソシアナート (下記) から作り, その物性を調べた. 4, 4'-ジフェニルメタンジイソシアナート (MDI), 2, 4-トリレンジイソシアナート (2, 4TDI), 1, 5-ナフタレンジイソシアナート (1, 5-NDI), トリジンジイソシアナート (TODI). 2, 4-TDIや1, 5-NDIから作ったPAIの軟化点は高く, 主鎖に可僥性の結合を含むPAIの軟化点は低い. 1, 5-NDIまたはTODIから作ったPAIは, 熱酸化分解に対して安定で, MDIから作ったPAIは, 他のPAIに比べて熱酸化分解しやすい. 種々のジイソシアナートから作ったPAIの熱膨張係数は, 次の順序で増大する. 1, 5-NDI, TODI<2, 4-TDI<MDI・TODIから作ったPAIのヤング率や破断強度は高い. TODIを含む2種のジイソシアナートから作った共重合PAIのヤング率や破断強度は, 共重合体中のTODI成分の含量が増えると高くなる.
  • 福本 喜久子, 石原 一彦, 中林 宣男, 杉村 徳子, 青木 淳治
    1990 年 47 巻 6 号 p. 529-532
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    血液透析膜素材高分子として分子凝集力の大きいポリアクリロニトリル連鎖にメタクリル酸メチルを導入した疎水性共重合体を合成し, 膜の物理構造に与える成膜条件について検討した. 溶媒キャスト法により成膜する場合, 膜の物理構造は溶媒留去時間, 展開溶液中の高分子濃度及び展開溶液の厚さに強く依存することがわかった. また膜の物理的構造は溶質透過性及び機械的強度に影響した. 溶質透過性に与える溶質の分子量の影響はセルロース系の透析膜に比較して小さいことが明らかになった.
  • 池田 潔
    1990 年 47 巻 6 号 p. 533-536
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    マイクロビッカス硬さ試験の圧痕径の測定を容易にする目的でプラスチック試料表面へのスパッタ膜の応用について検討した. 試料表面に金, または白金-パラジウムをスパッタすると, 試料の光の反射率が向上し, 顕微鏡下での圧痕径の測定が容易になった. ポリメタクリル酸メチル (PMMA) とポリスチレン (PS) について, スパッタ膜を使用した試料と未処理試料の測定値を比較した結果, 両者の間には有意な差は認められなかった. また, 膜のSEM観察の結果も同様の結果を示唆した. この方法を用いて, 密度の異なる数種のポリエチレン (PE) の硬さを測定した結果, 密度が増加すると微小硬さも増加する傾向を示した.
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