高分子論文集
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47 巻, 7 号
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  • 天野 雅人, 王 銘調, 日比 貞雄, 森 隆康, 門田 優
    1990 年 47 巻 7 号 p. 537-542
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    我々は, 片側ノッチのクラックを有する低密度ポリエチレンフィルムの引張り実験によるクラックの開口挙動を調査した. 次の結論が得られた. 1) クラックの開口と破壊は, クラック先端の応力集中が起こり, 全有効幅部の塑性変形の拡大によって説明された. 2) 変位に伴うクラック先端の応力集中状態は, 初期クラック長さの増加とともに増す. 3) 変位に伴うクラック先端部の厚さと有効幅部の減少傾向が異なることが判明した.
  • 瓜生 敏之, 大川 春樹, 花谷 靖之
    1990 年 47 巻 7 号 p. 543-547
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    カルバゾール基を含むエポキシモノマーである1-N- (2, 3-エポキシプロピル) カルバゾール (EPCz) を合成した. このモノマーをジエチル亜鉛-メタノール, 水酸化カリウム, t-ブトキシカリウム, トリエチルアルミニウムを開始剤としてアニオン重合した. 水酸化カリウムやトリエチルアルミニウムを用いて重合したポリマーは比較的低分子量であったが, 良いキャストフィルムを与えた. さらに, ラセミ体のモノマーであるEPCzをキラル化合物充填カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより光学分割し得られた光学活性モノマーを水酸化カリウムを開始剤として重合した. 13CNMRスペクトルにより, このポリマーは高いアイソタクティシティを持っていることが判明した. このアイソタクティックリッチポリマーのX線回折パターンは, アタクティックポリマーとは異なり, これらのポリマーの結晶構造が異なっていることが示唆された.
  • 高田 俊成, 赤星 晴夫, 高橋 昭雄
    1990 年 47 巻 7 号 p. 549-552
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ヘキサフルオロエタン (C2F6) のプラズマ重合について検討を行い, 水素や炭化水素を添加しない単独系でも含フッ素系有機薄膜が生成することを確認した. IR及びXPSにより分析した結果, 重合膜は主に-CF2CF2-構造から成ることがわかった. しかし, PTFEと異なりかなりの割合で分岐構造が存在した. 一方, 重合膜のかなりの部分が溶剤に対して可溶であったことから, 膜中には低分子量成分が多く混在すると考えた. 重合時の放電電力を大きくするに従って, 膜中のフッ素含量が増加し, 分岐構造の比率及びGPCで測定される今子量が減少した. プラズマ中での原子状フッ素の生成量が増加し, 形成された重合物の分解, フッ素化が促進され, 低分子量化したものと考えられる.
  • 西岡 利勝, 西川 孜, 寺前 紀夫, 澤田 嗣郎
    1990 年 47 巻 7 号 p. 553-557
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    異種高分子同士による塗装界面付近における相互作用を顕微FT-IR分光法により観測する方法を開発した. この方法は, 塗装試料からウルトラミクロトームで厚さ10μmの切片を切り出し, 顕微FT-IRにより深さ方向分析するものである. 本法により, ポリウレタンとエチレン-アクリル酸エチル共重合体のエチルエステル基を一部加水分解した共重合体 (EAA・EEA) との塗装界面付近の相互作用を調べた. その結果, ポリウレタンとEAA・EEAの塗装界面で約140μmにわたる異種高分子同士の混合相が形成されていることが分かった. またポリウレタンの第二アミンとエチレン-アクリル酸共重合体 (EAA) のカルポキシル基との分子間相互作用 (水素結合) が観測され, EAA・EEA層の約100μmの深さにまで及んでいることが分かった. これらが塗装界面の接着に寄与していると推定される.
  • 越智 光一, 大西 一彰, 山下 喜市, 新保 正樹
    1990 年 47 巻 7 号 p. 559-567
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    紫外線硬化エポキシ樹脂塗膜の内部応力をレ-ザー変位計を用いて被塗布体の変位を測定することによって求めた. この方法では, 塗膜の硬化及び冷却の両過程における内部応力を精度よく測定することができた. 塗膜の内部応力は, 紫外線照射に伴う塗膜温度の上昇の少ない系ほど低下した. これは, 硬化後の冷却過程における塗膜の冷却収縮の低下に起因することが示された. また, 内部応力は塗膜の膜厚の増加に伴って減少した. この内部応力の膜厚依存性は, 硬化過程では紫外線硬化系に特有な表面層と内部の硬化度の不均一性の面から議論され, 冷却過程では塗膜温度の不均一性の面から議論された. すなわち, 硬化過程では表面層の硬化収縮はまだ硬化していない内部層によって緩和され, 冷却過程では内部層の冷却収縮が先に冷却された弾性率の高い表面層によって抑制されるため, 内部応力が低下するものと考えられた.
  • 高瀬 巌, 河津 和幸, 相田 博, 高亀 寿
    1990 年 47 巻 7 号 p. 569-574
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    アクリロニトリル (AN), N-フェニルマレイミド (PMI), 及びN-p-クロロフェニルマレイミド (CPMI) とa-メチルスチレン (MS) のラジカル共重合をシクロヘキサノン中, 60℃で行った. PMI及びCPMIとMSの共重合は強い交互共重合の傾向を示し, 広いモノマー仕込比にわたって1: 1組成のコポリマーが得られた. また, これらコモノマー間で弱い電荷移動錯体の生成が認められた. 各々の共重合における単量体反応性比は次のように決定された. MS (M1) -AN (M2): r1=0.11, r2=0.06; MS (M1) -PMI (M2): r1=0.003, r2=0.04; MS (M1) -CPMI (M2): r1=0.011, r2=0.04. DSC測定によるガラス転移点 (Tg) 及びTGAによる熱分解開始温度 (Td) において, MS-ANコポリマーと比べMS-マレイミドコポリマーの特徴的に高いTgと熱安定性が示された.
  • 宇野 敬一, 栗田 智晴
    1990 年 47 巻 7 号 p. 575-581
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    架橋剤を用いたポリアミドイミド樹脂 (PAI) の架橋を検討し, 次の結果を得た. (1) PAIは, その末端基と反応する多官能化合物を用いて, 200℃以下の低温で架橋させることができる. (2) 多官能エボキシ化合物 (特にフェノール/ボラック型) が, PAIの最も良い架橋剤である. (3) PAIは, エポキシ化合物で架橋することによって溶融温度を100℃以上, 高めることができる. (4) しかし, エポキシ化合物で架橋したPAIは, 架橋前のPAIに比し, 軟化点 (またはガラス転移点) が低下し, 耐熱分解性が低下し, 熱膨張係数が増大する. これはPAIに比し低い耐熱性を有するエポキシ化合物を大量に混合することによって, PAI本来の耐熱性が薄められた結果である. 有効な架橋ができる範囲で, なるべく少量の架橋剤を用いることが好ましい.
  • 加藤 康夫, 山下 祐彦, 木村 邦生, 遠藤 誠司, 太田 利彦
    1990 年 47 巻 7 号 p. 583-589
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    p-アセトキシ安息香酸を流動パラフィン中で重合して得られるポリ (p-オキシベンゾイル) ウィスカーの生成過程における重合度の変化を調べた. 溶液中から析出してくるオリゴマーの重合度は, 液相クロマトグラフィーによるパラフィン中に残存しているオリゴマーの種類の分析から8前後であることを明らかにした. また, 析出した結晶中での固相重合過程について検討した. その結果, 結晶析出3分後ですでに重合度の増加が認められ, 硫酸に可溶性のスルホン化物のNMR測定から平均重合度は48程度になっていることが分かった. この試料や完成されたウィスカーの冷凍粉砕やアルカリエッチング物の形態観察は, 結晶のフィブリル化を示し, 長さ方向への結晶の発達が起こっていることを示唆した. 完成されたウィスカーの平均重合度は約1860と非常に大きく, 繊維周期から計算した平均分子鎖長は1μmを越えていた. これらの結果を基に固相重合過程での高分子量化機構について議論した.
  • 楯 進, 千葉 明
    1990 年 47 巻 7 号 p. 591-596
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    高分子を溶融状態で高温雰囲気へ押出した場合の, 溶融粘性体の落下, 及び細化挙動を解析するための基本式を案出し. 高分子溶融体の落下挙動シミュレーションを行った. ポリ (エチレンテレフタレート) をモデル物質として, 溶融落下実験を行い, 繊維径の実測値と計算値を比較することにより, 上記シミュレーション式の妥当性を検証した. このシミュレーション式から, 高分子溶融体の落下速度, 繊維径, 温度などが計算できる. また, 高温雰囲気へ落下させたときの曳糸長 (流体糸条が切断して液滴になるまでの長さ) と押出し条件の関係について解析したところ初速度とトラウトン粘度及びノズル径の関数として表せることが分かった.
  • 笹野 幹雄, 西久保 忠臣
    1990 年 47 巻 7 号 p. 597-604
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    二官能性モノマーとしてビニルエーテル残基とエポキシ基を有するグリシジルビニルエーテル (GVE) に着目し, その重合特性について種々検討を行った. GVEと電子吸引性モノマーとのラジカル共重合ではコモノマーとしてN-フェニルマレイミド, N-フェノキシカルポニルオキシマレイミドを用いた場合, 側鎖にエポキシ基を有する反応性ポリマーが高収率で得られた. またGVEと種々の環状酸無水物との開環交互共重合では無水フタル酸 (PAn) を用いた場合, 高収率で側鎖にビニルエーテル残基を有するポリエステルが得られた. GVEとPAnの開環交互共重合において第三アミン, 第四オニウム塩, クラウンエーテル錯体などを用いて, その触媒効果について検討したところ, クラウンエーテル/カリウムフェノキシド錯体が最も優れた触媒活性を示した. さらにGVEのカチオン重合についても検討を行ったが, 側鎖にエポキシ基を有する可溶性のポリマーは得られなかった.
  • 岡部 勝, 松田 英臣
    1990 年 47 巻 7 号 p. 605-610
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    分子量及び分岐度の異なる数種類の分岐低密度ポリエチレンがテトラリン中で作るゲルの静的弾性率と融点を測定し, 高橋理論 (ゲル融点に関する熱力学的な理論式) から推算される橋かけ点 (微結晶) の大きさζと弾性率Gの大きさとの関連性を調べた. その結果, Gとζには相関関係が見いだされ, Gの値が大きいゲルはζも大きな値を示した. これは, ゲルの弾性抵抗として作用する橋かけ点が主として微結晶であることを結論づけるものである. また, ゲルの弾性率の濃度依存性を還元濃度のべき乗則で整理すると, ゲル化点近傍での指数は試料の分子量や分岐度には無関係にほぼ2となった. この実測値は三次元パーコレーション理論から予想される臨界指数と一致し, 結晶性高分子ゲルのゲル化点近傍での弾性率の挙動は同理論に従うことを示唆する結果が得られた.
  • 高橋 秀郎, 井上 良徳, 上垣外 修己, 尾崎 邦宏
    1990 年 47 巻 7 号 p. 611-617
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    相容系高分子対として分子構造が異なり, 両成分のガラス転移温度Tgが大きく相違するブレンド系の107s-1に至る超高せん断速度領域の溶融流動特性について検討した. 高分子対はポリフェニレンオキシド (PPO) とポリスチレン (PS) とした. PPO-PSブレンドの流動曲線は, 低粘度成分であるPSの影響を強く受け, 非相容系高分子ブレンドの流動曲線と類似の挙動を示した. この結果, 相容系高分子ブレンドの流動特性は, 相容性の程度により, PPO-PSブレンドのように分子鎖が独立に振舞う度合が大きくなれば, 低粘度成分の影響が大きくなり, 非相容系高分子対のブレンドと類似の振舞をすることが明らかとなった.
  • 浅海 愼五, 古田 光寛
    1990 年 47 巻 7 号 p. 619-621
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    プレベーク後のポジ型ホトレジストを現像液に浸漬すると, 初期の溶解速度は著しく遅く, 時間の経過とともに速くなる. この現象はインダクション効果と呼ばれているが, プレベークによってレジスト表面層の特性が変化したものである. このインダクション効果を明らかにするために, レジストを現像液に浸漬した時の現像液溶解物を分析した結果, PACに含まれている2, 3, 4-トリヒドロキシベンゾフェノン (TBP) が減少していることが分かった. TBPはアルカリ水溶液への溶解性が著しく良いので, 現像液中でのホトレジスト表面層の低溶解速度はブレベークにおけるレジスト表面層からのTBPの蒸発によると推定した.
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