高分子論文集
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47 巻, 9 号
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  • 南部 昌生
    1990 年 47 巻 9 号 p. 695-703
    発行日: 1990/09/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリ (ビニルアルコール) (PVA) 水溶液を, 凍結状態のまま若干脱水・解凍し, ゴム状弾性体の生成することを見いだした (文献1). 同じくPVA水溶液に反復凍結を施し, ゴム状弾性体を得た (文献2, 3). これらは含水率70~85%に及ぶにもかかわらず, 一般のゴム同然の機械的強度を備える. これを3年間水中浸漬しても膨潤・溶解しないことを確かめ, 高含水ゴムと命名した (文献3). 医用材料への用途探索に努める (文献4~19) とともに, 長期 (9年間) の水中浸漬, 温水浸漬 (3年間) 結果から, ゲル化機構として, 高分子鎖の絡み合い点における微結晶形成を推察した.
  • 佐々木 一雄
    1990 年 47 巻 9 号 p. 705-708
    発行日: 1990/09/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    真空容器内で熱平衡状態にあるポーリングを施したポリフッ化ビニリデンフィルムに, 102Pa程度の小さな圧力を加えたとき, 表面電位の過渡的変化が観測された. 表面電位の符号はフィルムの極性に対応している. この測定はケルビン法によってなされたものであるが, 表面電位変化の値は数100mVで, これは静水圧効果として期待される値よりもはるかに大きかった. これに対して, 圧力変化に伴って現れるフィルム表面の温度変化と表面電位変化との間には, 明らかな対応関係が認められた. したがって, この現象はフィルムの焦電効果によるものとして説明することができた.
  • 市川 朝子, 吉川 悦雄, 窪田 英一, 中山 博, 中島 利誠
    1990 年 47 巻 9 号 p. 709-716
    発行日: 1990/09/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    キトサンと種々のエーテル化度のカルボキシメチルセルロースのギ酸水溶液から, ポリイオンコンプレックス膜を調製し, その吸水挙動について検討した. コンプレックス膜中のアミノ基とカルボキシル基のバランスが吸水性に重要な役割を果たし, それらが同数の場合に吸水性が極小となり, いずれかに比率が片寄ると増大し, 極端に異なる場合には自重の数百倍も吸水した. 浸漬水に電解質や非電解質を添加した場合, 低吸水性の組成のものは, ほとんど影響を受けないが, 高吸水性であったものは, 電解質の存在で吸水性が大幅に低下した. しかし, キトサンの比率が大の場合, 2価のカチオンによる低下はカルポキシメチルセルロース (CMC) の比率が大きいものほどは大きくなかった. 浸漬を繰り返すことにより膜中に残存する水溶性成分を除去することができるが, コンプレックス膜の組成は, ほとんんど変化しないことが示された.
  • 西村 健, 矢島 博文, 窪田 茂, 石井 忠浩, 遠藤 隆一
    1990 年 47 巻 9 号 p. 717-725
    発行日: 1990/09/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    高分子アミロース・ヨウ素錯体の分光学的特性を支配する要因を解明するため, 錯体 (DP1000) のヨウ素発色種に及ぼすアミロースの高分子効果を広範囲のI-濃度において検討した. あるI-濃度においてI2濃度とともに, I3-の結合モル分率Rは一定であるにもかかわらず, 600nm近傍における高分子錯体の吸収は増加した. これに対応して, 正負のCD帯の強度は非対称的に変化し, 正のみのCD帯に移行した. 類似の挙動が, R値の増加を伴うI-濃度の増加に対して現れた. DP100 (A構造と呼ぶ) のアミロースにおける錯体のスペクトル成分を基準とする波形解析により, R値に対応するA構造の他に2種の配置異性体 (B, C構造) の存在が示された. 電子論的考察の結果, 3種の配置異性体は, 電子状態と幾何配置の異なるヨウ素発色種であることが帰属された. 錯体の分光特性に及ぼすアミロースの高分子効果は, R値に対応する3種の配置異性体の存在分布の変化に起因することがわかった.
  • 高橋 清久, 石川 直元, 小森 俊司, 尹 興洙
    1990 年 47 巻 9 号 p. 727-734
    発行日: 1990/09/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    1, 1-ジアミノ-3, 3, 5, 5-テトラ (2, 2, 2-トリフルオロエトキシ) シクロトリホスファゼン (AFEP) をビスフェノールA型のエポキシ樹脂EPIKOTE828の硬化剤として用いた。AFEPはヘキサクロロシクロトリホスファゼンからLenton-Lewisの方法により合成した. 硬化物の力学的性質と耐水・耐薬品性を調べ, 硬化剤として1, 1-ジアミノ-3, 3, 5, 5-テトラフェノキシシクロトリホスファゼン (PC10) 及び1, 3, 5-トリクロロ-1, 3, 5-トリ (ジメチルアミノ) シクロトリホスファゼン (CL3) を用いた場合と比較した. AFEPで硬化したエポキシ樹脂は, ねじり振子試験で130℃から190℃で最も高い剛性率を示し, 引張試験においても130℃以上で最も高いヤング率, 150℃以上で最も高い強度を示した. PC10で硬化したエポキシ樹脂は酸, アルカリ, 及び水に浸漬した場合, 剛性率が低下し, CL3で硬化したエポキシ樹脂は酸及び水浸漬により劣化する. これに対して, AFEPで硬化したエポキシ樹脂は酸による劣化はいくぶん見られるものの, 耐水・耐アルカリ性に優れている. ただしAFEPはエポキシ樹脂の硬化に長時間を有する欠点がある.
  • 久保 宏記, 加藤 忠哉, 高橋 彰
    1990 年 47 巻 9 号 p. 735-739
    発行日: 1990/09/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    固体表面に吸着した高分子鎖の形態を調べるために, 金属表面に生ずるプラズマ振動を利用する表面プラズモン測定装置を試作した. この装置を使用して, 水溶液から銀蒸着膜表面へ吸着したポリエチレンオキシド (PEO) のプラズモン測定を行ったところ, 比較的良い精度で吸着層の厚さと吸着量を同時に見積ることに成功した. これらの測定結果の解析によって, 試作した表面プラズモン測定装置が溶液から金属表面に吸着した高分子鎖の形態を推定するための有効な測定結果をうることができる手段として機能することが明らかになった. また, 測定操作はエリブソメトリーに比較して簡単であるが, 測定精度は同程度であった.
  • 木本 正樹
    1990 年 47 巻 9 号 p. 741-748
    発行日: 1990/09/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ラス繊維 (GF) クロスーエポキシ樹脂複合材料 (GF-P) の曲げ強度 (σ), 歪み率 (ε), 曲げ破壊後の形態に及ぼす温度, 歪み速度, 及びGF表面処理の影響について検討した. マトリックス・エポキシ樹脂 (Ep) と3種ガ類のGF-Pについて, 種々の温度, 歪み速度下でのσ, εの測定から, それぞれのマスター曲線を得た. 温度-速度重ね合わせの際に得られる移動係数 (σT) の温度依存性はAsthenius式に従い, 活性化エネルギーはEp, 及び3種類のGF-Pの間で差が認められた. またσ及びεの値は, Ep, 3種類のGF-Pで差が認められ, 曲げ破壊後の形態の温度, 速度依存性についても, GF表面処理によって差が見られた, GF-PについてのσTの温度依存性は, GFとマトリクスとの接着性によって決り, 接着性が良好な場合にはマトリクスのσTの温度依存性とほぼ一致する.
  • 散乱強度の温度依存性の解釈
    手塚 正男, 堤 耀広, 松嶋 範男, 千葉 明夫
    1990 年 47 巻 9 号 p. 749-756
    発行日: 1990/09/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリ (γ-メチルL-グルタメート) やポリ (γ-ベンジルL-グルタメート) 固体について, X線回折強度の温度依存性は, いわゆる硬い主鎖領域と柔らかい側鎖領域から成る2相モデルによって説明されることが知られている. 本研究は, γ-メチルレグルタメートと長い側鎖を持っγ-ペンタデシルL-グルタメートの共重合体における, ヘリックス間の規則的な配列によるX線回折の温度変化を, DSC及び比容の測定とともに調べた. 測定は, γ-ベンタデシルL-グルタメート含有率を違えた4種類 (92%, 64%, 54%, 30%) の試料を用いた. 回折強度の結果は, 2相モデルでは説明されないものであり, ペンタデシル含有率が増えるにつれ, その解析値からのずれが著しくなった. この現象を説明するために, 2相モデルでは均一に仮定された側鎖領域を結晶と無定形領域に分けた, 3相モデルを提案した. 特に, 含有率92%の共重合体における3相モデルの解析から得られた側鎖のアルキル部分の結晶の大きさは, DSC, 比容の結果と一致した.
  • 高橋 清久, 石川 直元, 尹 興洙
    1990 年 47 巻 9 号 p. 757-762
    発行日: 1990/09/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    1, 1-ジアミノー3, 3, 5, 5-テトラ (パラクロロフェノキシ) シクロトリボスファゼン (ACPP) をエポキシ樹脂の硬化剤として用いた. 硬化物の力学的性質をねじり振子試験により測定し, 硬化剤として1, 1-ジアミノ-3, 3, 5, 5テトラフェノキシシクロトリホスファゼン (PC10) を用いた場合と比較した. ACPPはヘキサクロロシクロトリホスファゼンからKajiwara et al. の方法により合成した. ACPPは合成段階における収率がPC10より高く, またACPPはエポキシ樹脂を短時間で前硬化できる. PC10で硬化したエポキシ樹脂は, メタフェニレンジアミンで硬化した場合より室温付近で高い剛性率を示すが, 温度上昇に伴う剛性率の低下が著しい. これに対してACPPで硬化したエポキシ樹脂は150℃付近まで高い剛性率を維持する. またアルカリ浸漬によりPC10で硬化したエポキシ樹脂は劣化したがfACPPで硬化したエポキシ樹脂は優れた抵抗を示した. 以上の結果より, ACPPはエポキシ樹脂の150℃以下での剛性率と耐アルカリ性を高めるために効果的な硬化剤といえる.
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