高分子論文集
Online ISSN : 1881-5685
Print ISSN : 0386-2186
ISSN-L : 0386-2186
48 巻, 12 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 溶液論による分子量・分子量分布・分岐及び連鎖移動剤の作用機構の研究
    糸山 謙治, 広川 昂臣, 清水 紀弘
    1991 年 48 巻 12 号 p. 737-742
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    連鎖移動剤, n-ドデシルメルカプタン (DDM) の添加量を変えて重合実験を行い, 重合の進行に伴う固有粘度及び数平均分子量, 重量平均分子量の変化を調べた (いずれもθ-溶媒で測定した). その結果をZimm, Stockmayer, Kilb, 倉田, Colemanらの希薄溶液論に基づいた長鎖分岐の評価法を用いて, 解析した結果, 分子構造及び重合機構に関して, 以下のことを明らかにした. (1) 連鎖移動剤, n-DDMは生長ラジカルとの反応による一次分子量の調節のみでなく, 分岐生成反応そのものに作用している. (2) n-DDMが存在する場合は, 存在しない場合よりも生成する分岐の数が少なく, 特に重合の前~中半において, 分岐の生成が強く抑制されている. (3) 低重合率領域では, 実質的には生長反応及びn-DDMとの連鎖移動反応からなる.
  • ゲル化挙動についての速度論的解析と分岐反応の研究
    糸山 謙治, 伝田 泰明, 平島 伸拓, 松永 四郎
    1991 年 48 巻 12 号 p. 743-749
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    クロロプレンの乳化重合系において, 分子構造: 平均分子量, 分子量分布, 分岐の形成に関与する素反応について検討, 考察し, 9種の素反応からなる反応系としてモデル化した. これについて反応速度論的解析を行い, この反応系を表現する基本式を導いた. これと併行して, 連鎖移動剤, n-ドデシルメルカプタンの添加量を変えて重合実験を行い, 各々についてのゲル化点を求めた. その結果を上記の基本式により解析した. その結果, (1) 二次的に生成したポリマーラジカルに連鎖移動剤が, モノマーに比べ極めて高い選択性で反応して, 分岐構造の生成を直接的に抑制していること, 及び (2) この選択性は, n-ドデシルメルカプタンの添加量が大きく, ゲル化点が高くなるほど小さくなることがわかり, (3) この重合反応系における分岐の生成と抑制を体系的に把握することができた.
  • 五十嵐 高, 安納 浩, 古屋 光太郎, 湯川 佳宣
    1991 年 48 巻 12 号 p. 751-758
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    生体内と同様の湿潤状態にある骨は, 曲げ変形を受た場合, 凸側に正, 凹側に負の分極電位を生じる. Wolffの法則と呼ばれる, この現象の機構を明らかにするために分極電位に関する実験が行われ, 理論モデルとの比較・検討がなされた. 牛脛骨皮質骨より調製された円板形試料に電解質溶液が透過することにより発生する電位差が測定された. この実験は脱灰・脱タンパク化された試料に対しても行われ, さらに曲げ変形を受けた長管骨に発生する分極電位も測定された. 骨組織内でのイオン流動と電位差の緩和現象, 電解質溶液pHに対する電位差の依存性, 特に等電点の両側での極性反転が, 結果より議論された. 一方, 理論モデルは, 骨成分・電解質間の界面電気現象の流体力学的取扱いより導かれた. 実験結果は流動電位によるモデルの予測を支持する. このことは, Wolffの法則が曲げ変形を受けた長管骨の流動電位による分極により説明されることを示唆している.
  • 田畑 憲一, 井上 俊英, 後藤 典明, 田中 達人
    1991 年 48 巻 12 号 p. 759-763
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    4'-ヒドロキシビフェニル-4-カルボン酸 (HBCA) 及び4, 4'-ジフェニルジカルボン酸と種々の核置換ヒドロキノンを用いて, ポリマ主鎖中に剛直な4, 4'-ビフェニレン骨格を高い割合で含有するサーモトロピック液晶性ポリアリラートを合成した. HBCAを50 mol%共重合したポリアリラートを溶融重合するにはフェニルヒドロキノンなどのバルキーな置換基を有する置換ヒドロキノンが必須であり, これらポリアリラートの紡出糸弾性率は56.4~81.0 GPaであった. また, 代表的なポリアリラートの射出成形品 (0.8 mm厚み) の曲げ弾性率は43.8 Gpaと高い値を与えた. さらに, この成形品を熱処理すると, 曲げ弾性率は51.7 Gpaに達した. 熱処理前後の成形品破断図のSEMを比較すると, フィブリル形態の変化が認められた. X線解析の結果から, 熱処理によって結晶配向度が向上し, 結晶サイズが増大していることが確かめられた.
  • 井上 俊英, 山中 亨, 後藤 典明, 田畑 憲一, 田中 達人
    1991 年 48 巻 12 号 p. 765-770
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ヒドロキノンまたは核置換ヒドロキノンと4, 4'-ジフェニルジカノレボン酸に2, 6-ジヒドロキシナフタレンを共重合したポリアリラートは, 液晶性を示した。 ヒドロキノンまたはメチルヒドロキノンと4, 4'-ジフェニルジカルボン酸に30 mol%の2, 6-ジヒドロキシナフタレンを共重合したポリアリラートの射出成形品の曲げ弾性率は低く, 破断面には針状フィブリルが観察された. これに対してメチルヒドロキノンと4, 4'-ジフェニルジカルボン酸に5 mol%の2, 6-ジヒドロキシナフタレンを共重合した射出成形品の曲げ弾性率は高く, 破断面には板状フィブリルが観察された.
  • 王 秀訓, 斎藤 拓, 井上 隆
    1991 年 48 巻 12 号 p. 771-774
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリオキシメチレン (POM) /ノボラック樹脂混合系におけるPOMの球晶成長速度の温度, 組成依存性を調べた. Hoffman-Lauritzen理論に基づいて解析した結果, POM-rich系 (POM含量>80 wt%) では, 過冷却度の低下に伴い結晶成長機構がRegimeIIIからRegime IIへ転移すること, またノボラック樹脂を30 wt%以上添加した混合系では, Regime IIからRegime Iへ転移することを見いだした. また一定の結晶化温度での成長速度Gの組成依存性においては, ノボラック含量の増加とともにIII→II→IのRegime転移を伴いながらGが低下することがわかった.
  • 奈倉 正宣, 村井 淳, 大越 豊
    1991 年 48 巻 12 号 p. 775-781
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ゴム状の高含水ブレンドゲルをポリビニルアルコール (PVA) とアニオン性高分子のアルギン酸 (Alg) とから反復凍結・解凍法によって作成し, pH変化による膨潤・収縮挙動とその構造について検討した. 得られたブレンドハイドロゲル膜は, pH変化によって膨潤・収縮を繰り返す. このブレンドゲル膜内には, μmオーダーのフィルムやテープを組み合わせたような三次元的な蜂の巣状構造が存在し, さらに微視的には, フィルムやテープ内に2種類の架橋構造が存在する. 一つは, PVA微結晶であり, 他の一つは, Alg分子が2箇所以上で, 架橋点間のPVA非晶鎖と水素結合により結合したものである. 膨潤・収縮率は, pH変化を繰り返すと低下し, 最終的には平衡値に達する. この原因は, 水素結合に関与していたAlgの-COOH基がアルカリ側で解離しやすくなり, わずかな溶出が起こるためである.
  • 畑中 研一, 牛尾 剛, 金子 有太郎, 三村 亨, 山本 直樹, 瓜生 敏之
    1991 年 48 巻 12 号 p. 783-787
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    長鎖アルキル基を有する硫酸化多糖の合成を目的として, 1, 4-無水リボース誘導体の重合を行った. パルミチン酸クロリド (C15H31COCl) とAgPF6とのコンプレックスを開始剤として1, 4-アンヒドロ-2, 3-ジ-O-t-ブチルジメチルシリル-α-D-リボピラノース (ADSR) の選択的開環重合を行い, 得られたポリマーを脱保護することによって, 非還元末端にパルミトイル基を有する立体規則性リボフラナンを得た. さらに, DMSO中のピペリジン硫酸によって多糖部分の水酸基を硫酸化して, 目的とする硫酸化多糖を合成した. 得られた硫酸化多糖は, in vitroでエイズウイルスの増殖を抑制した. また, ヘキサデカンスルホン酸クロリド (C16H33SO2Cl) とAgPF6とのコンプレックスを開始剤として同様の反応を行うと, 非還元末端に長鎖アルキルスルホン酸エステルを有する硫酸化リボフラナンが得られた.
  • 市川 朝子, 荒木 千佳子, 中島 利誠
    1991 年 48 巻 12 号 p. 789-795
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    キトサンとポリグルタミン酸 (PGA) の種々の組成比のポリイオンコンプレックスフィルムを60%ギ酸液の溶媒を用いて調製した. このフィルムを用い, 吸水挙動他の特性について検討し, 以下の結果を得た. 水に浸漬した場合の吸水膨潤度は, キトサンとPGAの繰り返し単位モル比が3/7から2/8で最小値を示した. 酸性溶液下ではキトサン含量の増大に伴い, 値は増加したが, アルカリ性溶液下では, 大きな差違はみられなかった. IRスペクトルにより5/5及び3/7組成で架橋結合形成に由来すると思われる新しい吸収が1630cm-1に見られた. さらに3/7から1/9組成でスペクトルパターンが大きく変わり, これは13C NMRスペクトルにおける2/8及び1/9組成の20~60及び180ppmに見られる特異シグナルパターンの出現と符合していた. フィルムに吸水させた水のDSCによる融解熱測定から, キトサンの多いフィルム中で水は大部分が自由水の形で存在し, PGAが増すにつれて, 拘束水の存在を認めた.
  • 沢田 英夫, 松本 竹男, 中山 雅陽
    1991 年 48 巻 12 号 p. 797-801
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    オクテニル無水コハク酸と1, 1-ジメチルエチルヒドロペルオキシド及び1, 1-ジメチルブチルヒドロペルオキシドとの反応によりカルボキシル基含有過酸エステルの合成を行った. 本過酸エステルはトルエン, ベンゼンなどの芳香族溶媒に易溶であり, 特に1, 1-ジメチルブチルヒドロペルオキシドより合成された過酸エステルにおいては, イソパラフィンなどの脂肪族溶媒にも易溶であることがわかった. これら過酸エステルの熱分解においては, 1, 1-ジメチルエチル基よりも1, 1-ジメチルブチル基を有する過酸エステルにおいて分解速度が高まることがわかった. カルボキシル基含有過酸1, 1-ジメチルエチルエステルを重合開始剤とするスチレンの重合は, カルポキシル基を含まない過ラウリン酸1, 1-ジメチルエチルを用いた系とほぼ同等の重合速度及び分子量のポリスチレンを与えることがわかった. さらにカルポキシル基含有過酸1, 1-ジメチルエチルエステルを用いたスチレンの重合により, ポリマー鎖に過酸化物に起因するカルポキシル基が導入されることが明確となった.
  • 尾野 凱生, 谷垣 輝之, 山口 幸一, 谷野 吉弥, 橋詰 源蔵
    1991 年 48 巻 12 号 p. 803-810
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    表面未処理の2種類の絹短繊維 (シナサク蚕繊維及び家蚕繊維) とアクリロニトリルブタジエンゴム (NBR) を混練によって複合化し, その補強効果について検討した, このうち, シナサク蚕繊維は, NBRとのバンバリーミキサーによる強いせん断力を受けてフィブリル化するとともに, ゴム中に均一分散して複合体の補強効果を増大させた. 一方, 家蚕繊維は混練によってその繊維長が短かく切断されるだけでフィブリル化せず, その複合体には補強効果が認められなかった. これらの結果から混練時にフィブリル化が進行する繊維では, その比表面積を増して表面活性となりNBRとの間に相互作用の存在することが示唆された.
  • 相羽 誠一, 笠井 正宏
    1991 年 48 巻 12 号 p. 811-816
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    4-アジド安息香酸無水物を用いてキトサンのアミノ基にアジド基を導入し, このアジド基の光反応を利用して, 高分子材料表面へのキトサンの固定化を試みた. アジド基の導入率 (D%) は, モデル低分子化合物, N- (2-ヒドロキシエチル) 4-アジドベンズアミド, のUV吸光係数を用いることにより, D=16730A/ (199500C2L-145A) の式から算出できた (ここで, Aは濃度C2%のキトサン溶液の274nmの吸光度であり, Lはセル長 (cm) ). さらにこれに基づいて, IRとGPCによる定量法も検討し, 有効であることがわかった. アジド基は熱に対して安定であったが, 紫外線に対しては分解しやすく, 高圧水銀ランプ及び殺菌蛍光管を用いて数分間照射するだけで容易に分解した. ポリプロピレンフィルム上にスピンコーターを用いて, アジドベンゾイル化キトサンをコーティングし. 光固定化した. そのコーティング層の厚さは100~400nm程度で, コーティング溶液の濃度に依存していた. キトサンの光固定化によって, 水に対する接触角が, 50°以下に低下した. 以上のように, アジドベンゾイル化することによってキトサンが容易に材料表面に光固定化できることがわかった.
  • 児玉 峯一
    1991 年 48 巻 12 号 p. 817-819
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    溶液キャスト法により作製した, p-ヒドロキシ安息香酸-ポリエチレンテレフタレート共重合タイプの液晶性ポリエステルとポリカーポネートのブレンドは, 両成分ポリマーの主分散の中間温度域に二つのブロードな力学分散を示す. これを熱処理するとこの二つの分散はより明瞭に分離し, 成分ポリマーの主分散に近づいていく. これらの結果と相補的な情報が走査電子顕微鏡観察から得られた.
  • 山口 貞充
    1991 年 48 巻 12 号 p. 821-824
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    フッ素ゴムやポリビニリデンフルオライド (PVDF) のエマルション粒子は微小粒子より形成されている. PFA (ポリテトラフルオロエチレン (PTFE) にパーフルオロプロピルビニルエーテルを2, 3 wt%共重合したポリマー) の粉末にも徴小粒子が観察されるが, PFA3部にPTFEワックス1部をブレンドした圧縮成形シートの破断面に微小粒子が明瞭に観察される. これはPTFEワックスが結晶化する際に発生した歪のために生じたと考えられる. またPFAとPTFEを接着させ, 接着断面を観察すると四つの領域が認められる. (1) PFA相内で溶融相と結晶化相が接する界面, (2) PFA相とPTFE相の界面, (3) PFA相, (4) PTFE相. PTFE相にはPFAの微小粒子が十数μmも侵入している.
feedback
Top