高分子論文集
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48 巻, 1 号
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  • 森 浩治, 輿石 謙二, 増原 憲一
    1991 年 48 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    10Mrad s-1以上の高線量率下において, 低密度ポリエチレンフィルム及び高密度ポリエチレンフィルムの表面に同時照射法によりメタクリル酸メチルを電子線グラフト重合し, 得られたグラフトフィルムの酸素透過係数, 破断応力, 破断伸び, 表面張力からグラフト重合機構について考察した. 低密度ポリエチレンの酸素透過係数はグラフト率の増大に伴い減少したが, 高密度ポリエチレンではグラフト率が4~5%まではほとんど変化しなかった. このことからグラフト重合の場は低密度ポリエチレンでは非晶部, 高密度ポリエチレンでは結晶部近傍の非晶部であることが考察される. また高密度ポリエチレンへのグラフト率が4~5%を越えると, 酸素透過係数, 破断応力, 破断伸び, 表面張力はいずれもグラフト率の増大に伴って減少した. これは結晶部近傍での局所的かつ急速な (10%s-1以上) グラフト重合により, 重合熱に伴う発熱から非晶部の粘性が低下し, グラフト鎖が形成していたミクロドメイン構造が凝集して巨大化したためと考えられる.
  • 松本 哲, 池永 和敏, 加勢 英顕, 江戸 学
    1991 年 48 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    異なった二つの酸よりなる複合エステルの異種複合エステルを, トリトメリット酸とアジピン酸の2種酸及び2官能性アルコールならびに1官能性アルコールより合成した. 酸成分の反応モル比ジオール及び対応する1官能性アルコールの反応モル比を変え, 脱水エステル化反応を行い, また酸のエステルの混合物よりジオールとの問でエステル交換反応を行い, さらにまたトリメリット酸とジオールついでアルコールを反応させて得られるエステルアルコールを経由して異種複合エステルの合成を行った. 生成物は240℃/0.5mmHg以上の高沸点エステル混合物でポリ塩化ビニルの低揮発性の可塑剤としての使用を検討した. トリメリット酸エステル, 複合エステル, 及びその混合物と比較し, さらにその混合物に異種複合エステルを添加したときの可塑化効率, 粘度, 及び柔軟温度を報告した. 異種複合エステルは2成分混合物の混和を良くする混和剤の働きをし, 添加は少量でもその効果が現れた.
  • 松本 哲, 池永 和敏, 渕上 博章
    1991 年 48 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    ジオール成分として2, 2′-チオジエタノールよりなる複合エステルを合成した. アルコールとしてチオジエタノールとブチル, ヘキシルまたは2-エチルヘキシルアルコールを, 二塩基酸としてアジピン酸, マレイン酸またはフタル酸を用いて複合エステル及び異種複合エステルを作った. その合成は直接脱水エステル化反応またはそれらのエステルを経由するエステル交換反応によった. 生成物の粘度ならびにこれらのエステル類の, ポリ塩化ビニルの可塑剤として使用したときの可塑化効率を測定した. アジピン酸より得られた複合エステル及び異種複合エステルは, いずれも良好な可塑化性能を持ちDOPに対比して可塑化効率ならびに低揮発性を示した. 柔軟温度は非常に低く, チオジエタノール成分として使用するときは特に対低温特性に優れることが分かった.
  • 星村 義一, 山本 滋
    1991 年 48 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    絶縁物に加わる電界が強くなると絶縁物の内部あるいは表面に部分放電が発生する. 特に, 電気絶縁材料として多く用いられているポリエチレンにおいて, この部分放電の抑制が望まれている. この部分放電の抑制を目的としてポリエチレンに炭酸リチウムの粉体を添加し, 加熱処理した結果, 部分放電及び放電による劣化が抑制されることを見いだした. 各種無機粉体を重量比1%程度添加したポリエチレンは, 放電パルス発生頻度が最小である. また, 炭酸リチウムの添加では部分放電劣化によるカルボニル基 (1715cm-1) の生成が最小であることがわかった. さらに, 無機粉体とポリエチレンの球晶との関係についても偏光顕微鏡により詳細に検討した. その結果, 炭酸リチウムの添加により直径15~20μm程度の大きな球晶によるmaltese crossが消滅することを示した.
  • 樋口 弘志, 前田 宗雄, 山内 健次, 高橋 伸夫
    1991 年 48 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    エポキシ樹脂は経済性と信頼性に優れ, また生産性が高いため電子部品などの封止材料として広く利用されている. しかしエポキシ樹脂は合成高分子のため帯電性があり半導体デパイスでは障害をもっことがある. 本論文は半導体デパィスのエポキシ樹脂封止パッケージに帯電あるいは放電する静電気現象を解明するためエポキシ樹脂に高電界を加え体積抵抗率, そして内蔵されたチャージ・アンプで分布した空間電荷などの電気的パラメーターを測定した. そしてエポキシ樹脂封止パッケージの高電界と温度に対する体積抵抗率, 空間電荷, 容量, 複素比誘電率, 蓄積エネルギーの値が明らかになった. その結果, 帯電した状態で静電気放電などのインパルス高電圧 (3000~10000V) が加わった場合は10-9~10-8C程度の電荷が蓄積される. なお, 温度が加わった場合は樹脂の電気伝導と容量が大きく変化するため, さらにこれ以上の電荷が蓄積され半導体デパイスの障害を容易にしている.
  • 高木 勝, 乗松 孝好, 山中 龍彦, 中井 貞雄
    1991 年 48 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    最近のレーザー核融合研究では, プラスチック中空球ターゲットを用い, 球殻状の燃料層の爆縮ダイナミックスの研究や, 高密度プラズマ中の物理の研究を行っている. そのターゲットの一つとして, 密度整合エマルジョン法により, 高品質の重水素化ポリスチレン中空球を製作した. 直径100μmから1500μm, 壁厚4μmから15μmのものが製作可能である. 真球度, 壁厚さの均一性, 表面の平滑性はそれぞれ99.8%, 99.3%, 0.1μm以下であった.
  • 志賀 亨, 太田 隆, 広瀬 美治, 岡田 茜, 倉内 紀雄
    1991 年 48 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    微粒子を分散した高分子ゲルの電場下における粘弾性挙動を検討した. 微粒子には少量の水分を含むポリメタクリル酸コバルト塩の粒子を, 高分子ゲルには二液反応型のシリコーンゲルをそれぞれ用いた. 試料はシリコーンゲルの反応に微粒子を所定量均一に分散させた後, 加熱することにより得た. 微粒子分散高分子ゲルは電場の作用でその粘弾性を可逆的に変化させることが明らかになった. この電気粘弾性効果は分散粒子濃度が高く, 電場印加前に微粒子が互いに接触している状態のときに観測された. 粘弾性変化の大きさは印加電場の強度, せん断ひずみの大きさと周波数などに依存した. 電場下では電流が観測された. 微粒子分散高分子ゲルの示す電気粘弾性効果はマトリックスが絶縁油である懸濁液の示すそれよりも大きいことが明らかにされた.
  • 生駒 修治, 野元 栄吾, 横井 弘
    1991 年 48 巻 1 号 p. 53-56
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    ポリビニルアルコール (PVA) 及びPVA水溶液中でテトラエチルオルトシリケートを加水分解し, 風乾して得られたPVA-シリカ複合体の低温熱分解を熱分析, 吸収スペクトル, FT-IRスペクトル及びESRによって検討した. PVA―シリカ複合体は, 60~100℃という低温で分解して共役二重結合を形成するとともに炭素鎖の切断によって有機ラジカルの生成が認められた. ラジカル生成量は一定時間後には頭打ちになった. ところが, PVA水溶液に塩酸を添加して乾燥させた膜は, 同様な加熱挙動を示すが, 有機ラジカルはより短時間で生成し, その発生量は加熱時間の延長に伴って単調に増大した. 複合体にはPVAとシリカ間に化学結合が存在し, これがPVAの炭素鎖切断を抑制していると推論された.
  • 佐藤 貞雄, 斉藤 工, 大柳 康
    1991 年 48 巻 1 号 p. 57-59
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    ガラス繊維を30%充填した液晶ポリマー (以下LCP-GF30と呼称) とポリカーボネートなど汎用樹脂のp-v-T特性を独自に設計-試作した装置を用い, 温度20~325℃, 圧力0~150MPaの節囲で, 等温圧力変化法によって検討した. その結果, ポリカーボネートの大気圧下溶融温度領域の比容積は熱膨張によって7%増大し, 負荷圧力の増加とともに漸次減少する. これに対してLCP-GF30の比容積は0.15% (325℃において) 程度増大するだけでその変化量は前者に比べて著しく小さく, また, 圧力 (最大150MPa) を負荷してもその比容積は大気圧下室温のものとあまり変わらない. したがって, 定常状態におけるこの種液晶ポリマーの比容積は温度・圧力の影響をあまり受けないことがわかった.
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