高分子論文集
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48 巻, 6 号
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  • 星野 誠, 宋 鎮哲, 吉田 孝, 瓜生 敏之
    1991 年 48 巻 6 号 p. 341-346
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    石油類火災の消火剤として, ケラチン加水分解物系泡消火剤が使われているが, Fe (II) イオンとケラチン加水分解物とのコンプレックス構造を13C NMRを用いて調べた. ケラチン加水分解物にFe (II) イオンを加えると, 13C NMRスペクトルの3本のピークで変化が見られた. これはケラチン加氷分解物に含まれるアミノ酸残基にFe (II) イオンが配位して, メチレン基の変化が13C NMRスペクトルに現れたと推定した. そこで, この複雑なスペクトルを解析するために, モデル化合物としてポリ-L-オルニチンやポリ-L-リジンなどを選びFe (II) やCu (II) イオンとのコンプレックス形成能を調べた. ポリオルニチンとFe (II) との反応では, 13Cピークのブロードニングと低磁場シフトが観察され, Fe2+が主にオルニチンの側鎖末端のアミノ基と配位したと考えられる. Cu (II) との反応ではピークの明瞭なブロードニングが見られたが, Fe (II) と比べ, コンプレックス形成能は弱いと考えられる. ポリリジンとFe (II) との反応では, 明瞭なピークの変化は観察されなかったが, pH 4.5でNMRを測定すると, ピークのブロードニングが見られた. また, Cu (II) との反応では2本のピーク (CδとCε) で強いブロードニングが観察された. これはCu2+イオンと側鎖末端アミノ基が強固なコンプレックスを形成したためと思われる. これらのことにより, ケラチン加水分解物中のオルニチンやリジンなどのアミノ酸残基はFe (II) イオンとコンプレックスを形成していると考えた.
  • 末次 憲一郎
    1991 年 48 巻 6 号 p. 347-351
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    繊維強化複合材料について, 繊維がすべて一方向に平行配列していると仮定し, 外力の充てん繊維に対する伝達状態を考慮して, 不完全接着引張り強度理論を導いた. この理論を用い, ポリカーボネイト/ガラス繊維系材料などの種々の材料系について, 充てん繊維に対する処理剤の種類や濃度に対する荷重伝達状態を示す関数H. の変化を, 未処理の場合の関数の値H との比をとって調べた. その結果, Hs/Hs0は, 樹脂/充てん剤間の接着状態が良好になるにつれて, また, 処理剤の濃度が高くなるとともに増大し, 最終的にほぼ一定値に収束した. また, 通常のシラン処理剤よりもグラフト剤による処理剤の方が荷重伝達状態が高くなる傾向が見られた.
  • 末次 憲一郎
    1991 年 48 巻 6 号 p. 353-357
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ナイロンRIM材料に窒素雰囲気下で, ミルドグラス及びガラスフレークなどの充てん剤を混合した場合, 引張り強度の場合とは異なり, それらの曲げ弾性率は充てん剤の重量分率や平均ァスペクト比の増加に応じて向上する傾向が見られた. また減圧脱泡処理後に成形した場合と処理せずに成形した場合とでは, それほど大きな違いは生じず, 樹脂/充てん剤間密着度の影響はほとんど受けないことがわかった. これは曲げ試験片において, 厚み方向に垂直な荷重がかかり, 試験片の表裏で延伸と圧縮の両方が生じ, 同時に厚み方向で試験片の表面と平行な各断面においても, この延伸と圧縮が生じるため, 充てん繊維と樹脂との接着度にあまり差が生じなくなるからだと考えられる. このことから, 充てん剤強化ナイロンRIM材料の曲げ弾性率は, 樹脂/充てん剤間接着度の影響が少なく, 窒素雰囲気下で混合するだけで, 充てん剤の補強効果が得られることがわかった.
  • 丸野 透, 中村 孔三郎
    1991 年 48 巻 6 号 p. 359-363
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    低屈折率の紫外線硬化型樹脂を得る目的で, ビス (1, 1, 1, 3, 3, 3-ヘキサフルオロ-2-ヒドロキシイソプロピル) シクロヘキサンと4, 4′-ビス (1, 1, 1, 3, 3, 3-ヘキサフルオロ-2-ヒドロキシイソプロピル) ジフェニルエーテルのエポキシアクリレート及びエポキシメタクリレートを新しく合成した. 4種の化合物はいずれも粘調液体である. また, 紫外線照射により重合を開始して硬化した. 硬化物はフッ素原子含有量が29~34wt%と高いため1.428~1.495の低屈折率を有しており, ビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂と混合して硬化することにより1.428~1.565の範囲で屈折率制御が可能である. 硬化物は波長が0.5~1.6μmの範囲で光透過性が高く, ガラスに対するせん断接着強度が85kgf/cmcm2以上の大きな値を示した. 合成した樹脂を光通信の部品組立用光学接着剤に適用して, 反射減衰量が40dB以上の光ファイバ接続部が得られることを明らかにした.
  • 糸山 國義
    1991 年 48 巻 6 号 p. 365-371
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    母関数法を用いて, ラメラ晶中の一つの折り畳み結晶鎖の分配関数を鎖の屈曲性パラメーターの関数として表した. 一つの障壁に束縛された高分子鎖の空間配座の統計重率を体心立方格子中の相関酔飛問題として計算して, Roeによって取扱われた無相関酔飛モデルの一般化を行った. ループ鎖の形成が配電盤モデルに従う場合の計算結果では, 結晶鎖の化学ポテンシャルは鎖の屈曲性にほとど関係しないことがわかった. 一方, 配電盤モデルでの非晶分子鎖の混雑を解消するために, 結晶と非晶領域の間に, 分子鎖がラメラ晶面に垂直方向に引き伸ばされている境界領域を設けた, 単純三相モデルを導入した. このモデルの計算から, 分子鎖の剛直性が低下すると, 熱力学的に結晶鎖は不安定化することがわかった. また, 結晶の融点近傍では, 境界領域の厚みの増大がループ, シリア鎖の成長を著しく促進する.
  • 田中 裕子, 田中 勝敏
    1991 年 48 巻 6 号 p. 373-379
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    エポキシ樹脂に表面構造の異なる多孔質中空球形シリカ粒子 (シリカ粒子) を充 した複合体を, 硬化前の脱気時間の長さ及び原料のエポキシ樹脂, 硬化剤, シリカ粒子の混合順序を変えて合成した. これらの合成条件が複合体の力学的性質及び界面の相互作用に及ぼす影響を動的粘弾性, 衝撃強さ, 曲げ強さ, 線熱膨張係数を測定して調べた. その結果, シリカ粒子を硬化剤よりさきにエポキシ樹脂と混合した試料はTgが最も高く, エポキシ樹脂と硬化剤を混合後, シリカ粒子を混合した試料は脱気時間が短い方がTgは高くなった. これは硬化剤がエポキシ樹脂より優先的にシリカ粒子に吸収され, エポキシ樹脂と硬化剤の反応比が低下するためと推定された. 貯蔵弾性率は3.75nm以上の細孔の比表面積への依存性を示した. シリカ粒子へのシランカップリング剤 (SC) 処理効果についても検討した. SC処理試料のTg衝撃強さ, 曲げ強さ, 及び線熱膨張係数が未処理試料より向上した. この結果は, SC処理によって硬化剤の損失が少なくなることによる効果が大きいと考えられた.
  • 仲野 幸弘, 山根 秀樹, 木村 良晴, 北尾 敏男
    1991 年 48 巻 6 号 p. 381-389
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    サーモトロピック液晶性コポリエステル (LCP) をビスフェノールAポリカーボネート (PC) にLCP/PC=20/80 (wt/wt) で溶融ブレンドした. 溶融ブレンドの際の機械的要因, 及びPCの分子量がブレンド繊維内のLCP成分の分散性及び形状に与える影響, またブレンド繊維の力学的性質に与える影響について検討した. 少量成分であるLCPの分散状態は溶融ブレンドに使用したニーダのローター回転速度, 及びPCの分子量の増大とともにより良好となった. これらのブレンド物から得られた繊維内のLCP成分はブレンド繊維の繊維軸方向に伸長されているが, その形状はブレンド直後のLCP成分の平均粒径に依存した. ブレンド繊維の力学的性質もLCP成分のアスペクト比と直線的な関係を示した, しかしながら, LCP成分の補強効果は繊維の弾性率に顕著に現れたが, LCP/PC界面での接着性の欠如のため, 引張強度に対しては負の効果となって現れた.
  • 末次 憲一郎
    1991 年 48 巻 6 号 p. 391-394
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリカーボネイト/ガラス繊維 (GF) 系材料, ポリプロピレン/GF系材料などの多くの射出成形複合材料について, 引張り弾性率と曲げ弾性率との関係を調べた. その結果, 通常の射出成形材料では, 引張り弾性率と曲げ弾性率がほぼ直線関係にあることがわかった. ベースポリマーが結晶性の場合や樹脂/充てん剤間の密着度が良好でない場合には, 引張り弾性率が低下してこの直線からややずれる傾向が見られた. 直線からずれたのは, 特に引張り弾性率において, 曲げ弾性率よりも樹脂/充てん剤間密着度の影響を受けやすいため, 樹脂/充てん剤間密着度が良好でない材料系の引張り弾性率が低下し, 直線からずれたものと考えられる.
  • 加藤 隆史, 小白井 厚典, 瓜生 敏之
    1991 年 48 巻 6 号 p. 395-398
    発行日: 1991/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    フェニルハイドロキノンと1, 6-ジフェノキシヘキサン-4, 4′-ジカルボン酸からなるポリエステル1を溶融重縮合により合成した. 1は155~180℃でネマチック液晶性を示した. 1の液晶状態及び等方性融液状態から射出成形を行ったところ, 引張破断強度がそれぞれ1×103kgf/cmcm2, 0.8×103kgf/cmcm2の成形品が得られた. 引張試験片の破断面のSEM観察によると, 液晶状態から成形したものはフィブリルがよく形成していたが, 等方性融液からのものはフィブリルはほとんど形成していないことがわかった. 液晶状態から射出成形したものの方が引張破断強度が高いのはこの分子配向の異方性によるためと考えられる. また, また, 等方性融液状態から異方性の大きく減少した射出成形片が得られたことは, 融点, 液晶-等方性融液相転移点共に比較的低い半剛直性芳香族ポリエステルの射出成形温度を変えることにより機械的性質の異方性を制御できる可能性を示している.
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