高分子論文集
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48 巻, 7 号
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  • 武野 明義, 奥居 徳昌, 晝間 敏慎, 鬼頭 哲治, 村岡 道治, 梅本 晋, 酒井 哲也
    1991 年 48 巻 7 号 p. 399-404
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリフッ化ビニリデン (PVdF) の真空蒸着過程における, 高分子鎖の熱分解特性及び蒸発特性を研究した. PVdFの真空蒸着は, 蒸発源温度, 基板温度, 蒸発源と基板間の距離を変化させて, シリコン基板上に薄膜を作成した. 蒸発源温度が300℃以下ではPVdFは熱分解せず, 原試料中に含まれる低分子量成分 (数平均分子量約460) が蒸発した. 蒸発原温度が300℃以上になるとPVdFは熱分解し, 主鎖の切断により数平均分子量が約2700以下に低下した. 350℃以上になると未蒸発試料の炭化が起こり始めた. 基板上に付着する分子の分子量及びその分子量分布は, 蒸発源温度, 基板温度, 蒸発源と基板間距離によって制御することができた. 例えば, 基板温度を上昇させると低分子成分は付着しなくなり, 基板と蒸発源間の距離を離すと高分子量成分は付着しなくなる. また, 基板温度125℃に設定して蒸着膜を作成すると, 数平均分子量が約460, 分子量分布が約1.03から成る, かなり均一な分子量成分で構築された薄膜が得られた.
  • 武野 明義, 奥居 徳昌, 晝間 敏慎, 村岡 道治, 梅本 晋, 酒井 哲也
    1991 年 48 巻 7 号 p. 405-410
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    真空蒸着法により作製したポリフッ化ビニリデン (PVdF) 薄膜において, 分子鎖の配列特性及び結晶構造を, X線回折, 赤外吸収スペクトル解析により研究した. 薄膜中における分子鎖の配向及び結晶構造は, 真空蒸着条件, 特に基板温度及び蒸着速度によって制御することができた. 例えば, 基板温度-100℃, 蒸着速度約1~3Å/sの蒸着条件で薄膜を作製すると, 基板に対し分子鎖が水平に配列し, β型結晶構造を持ったPVdF薄膜が得られた. 基板温度25℃で蒸着薄膜を作製すると, α型結晶構造を持つ薄膜が得られ, その分子鎖の配列特性は, 蒸着速度を遅くするに従い, 水平配列から垂直配列へ変化した. また, 基板温度を125℃に設定し, 蒸着速度をできるだけ遅い条件で薄膜を作製すると, γ型結晶構造を持ち, 分子鎖が基板に対し垂直に配列した薄膜が得られた.
  • 張 大省, 姜 〓東, 石坂 弘子, 奥山 健二, 福本 修
    1991 年 48 巻 7 号 p. 411-417
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    合成したポリエチレンテレフタレート/p-ヒドロキシ安息香酸/ポリエチレンドデカン二酸共重合体の液晶挙動をDSC, 偏光顕微鏡による観察及びX線回折により検討した. この共重合体は広い温度範囲でサーモトロピック液晶状態を示す. 室温で固体結晶 (C) のサンプルを転移点以上に加熱するとネマチック液晶相 (N) が現れ, さらに温度を高くすると秩序性の高い液晶相 (スメクチック液晶相, Sと推測) に変わり. このスメクチック液晶状態から冷却すると, ネマチック液晶相 (N) を経て, もとの固体結晶 (C) に戻ることがX線回折で認められた. 偏光顕微鏡の観察, DSCの測定の結果もX線回折の結果を支持した. C〓N〓Sのような可逆的相転移の報告は少ない.
  • 甲斐 昭, 許 平
    1991 年 48 巻 7 号 p. 419-424
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    蛍光増白剤存在下の酢酸菌培養で生じる複合体及びその染料抽出処理で再生するCell I試料の構造と吸湿性の関係を, 室温気相重水素化-赤外吸収スペクトル測定法で検討した. バクテリアセルロースのOH基は, 60分間の重水素化で約37%がOD化する. これに対して, 複合体中のセルロースのOH基は, 5分前後の重水素化でその80~90%がOD化されることが分かった. 染料抽出試料は, 5分の重水素化で43.1%, 60分では48.6%のOH基がOD化された. 複合体のOHバンドは, 3400cm-1近傍にピークを持つブロードな吸収を示し, バクテリアセルロースのスペクトルに認められる分子内, 分子間水素結合に基づく吸収は認められなかった. また, 複合体のODバンドは, 2517cm-1にピークを持つブロードな吸収を示し, Cell I結晶由来の水素結合性OD基の吸収は認められなかった. 染料抽出試料のスペクトルには, Cell Iが再生したことを示す分子内水素結合に基づく3345cm-1の吸収が認められるが, その低い結晶性のためにOH基はブロードな吸収を示した. 事実, 再生Cell Iの非結晶性の0H基は約50%になり, バクテリアセルロースのその量に比べ, 約13%増加することが分かった. 複合体は, (110) 面に相当する単分子層セルロースシート間に増白剤を含み, この増白剤がシート間の結合を妨げているために水分子の複合体への拡散が極めて容易になり, その吸湿性が飛躍的に増大することが明らかになった.
  • 車 源日, 玄 丞烋, 筏 義人
    1991 年 48 巻 7 号 p. 425-430
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    透明及び不透明ポリビニルアルコール (PVA) ハイドロゲルに対する種々のタンパク質の吸着量を比較した. タンパク質としてはクロラミン-T法で125Iラベル化した免疫グロブリンG (IgG), 牛血清アルブミン (BAS) 及びりゾチームを用い, 125Iの放射能を測定することにより吸着量を求めた. 透明PVAハイドロゲルに対するタンパク質の吸着量は不透明PVAハイドロゲルとポリ (2-ヒドロキシエチルメタクリレート) (PHEMA) ハイドロゲルより少なく, その値は1/2~1/30であった. また, 透明PVAハイドロゲルにおいてはIgGとBSAの吸着量がPVAハイドロゲルの含水率に関係なく一定の値を示したが, 分子量が14,600と低いリゾチームではPVAハイドロゲルの含水率に依存し, 含水率が低くなるにつれて低下した.
  • 小寺 宣一, 大橋 英之, 山本 晋平, 高木 幹夫
    1991 年 48 巻 7 号 p. 431-435
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリマーに導入する親水基の濃度を極力低く規制した疎水性の結晶性ポリエステルから水性ポリエステルを得る方法を検討した. 親水性原料として5-スルホイソフタル酸モノナトリウムを全酸性成分に対して2mol%共重合させた結晶性ポリマー (融点<200℃) を2-ブトキシエタノールのような水溶性有機化合物に溶解後, 水を添加すると1000nm以下のコロイド状ディスパージョンが得られる. このものの平均粒径は非晶性ポリマーから得られたものと比べてやや大きく, ディスパージョンの粘度も低めであった. また結晶融解熱が300cal/unit程度であれば安定性にも優れている. すなわち結晶性があまり強くなく, ポリマー鎖間相互作用が弱くなるに従って分散性と安定性が共に向上する.
  • 御船 直人, 永井 靖隆, 西本 一夫, 石丸 暁
    1991 年 48 巻 7 号 p. 437-442
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    屋外暴露による天候劣化と紫外線照射による促進劣化とを与えたSBR試料について, 動的粘弾特性を測定し, SBR試料の表面硬さ, せん断弾性率, 及び膨潤網目密度との相関を検討した. いずれの劣化方法においても損失係数の最大値の規格化値と各物性の規格化値との間に良好な直線関係が認められ, 損失係数の最大値が各物性を類推する上で重要な因子である可能性が得られた.
  • 王 秀訓, 斉藤 拓, 井上 隆
    1991 年 48 巻 7 号 p. 443-447
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    光学顕微鏡観察及びガラス転移温度の測定により, ポリオキシメチレン (POM) とノポラック樹脂が相溶することを見いだした. POMの融点はノボラック樹脂の添加量が増すにつれて低下した. 融点降下量より算出される相互作用パラメーターχは負であった (χ=-0.038). 赤外吸収スペクトルのピーク分割により, POMとノボラック樹脂との間に水素結合相互作用が存在することを確認した. またノボラック樹脂の混合によりPOMの球晶成長速度は劇的に低下した.
  • 甲斐 昭, 許 平
    1991 年 48 巻 7 号 p. 449-452
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    バクテリアセルロース-蛍光増白剤複合体膜の結晶配向及び複合体膜の染料抽出に伴う構造変化とその結晶配向をX線法で調べ, 複合体の構造について考察した. 複合体膜の反射法で得たX線回折図には, 2θ=9.4° (9.4Å) に (110) 面による強い回折が現れた. これに対して, 複合体膜の透過法で得た回折図には, 2θ=22.1° (4.0Å) に強い回折が現れた. 両者の回折面は, 互いにほぼ直交している. 複合体の (110) 面は膜表面と平行に配向している. (110) 面と直交している面は, (110) 面であると考えられる. 複合体膜を染料抽出処理すると, (110) 面による回折はしだいに消失し, Cell Iの (110), (110), (020) 面による回折が現れるが, これらの面には特定の配向は認められなかった.
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