高分子論文集
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48 巻, 8 号
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  • 筏 英之, 井田 恭子
    1991 年 48 巻 8 号 p. 453-461
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    25℃及び50℃の低密度ポリエチレン溶液に50時間紫外線照射を行い, 光分解反応における溶媒の役割, 照射温度と照射雰囲気の効果を検討した. 溶媒として, ベンゼン, トルエン, o-ジクロロベンゼンを用いた. また, 酸素の影響を調べるため, 溶液を酸素, 空気, 窒素飽和状態で照射を行った. 反応挙動の追跡は粘度測定, FI-IR, GPC, 13C NMRを用いた. FI-IR, 13C NMRスペクトルから, 照射50時間後では, カルボニル基, 二重結合, ハイドロパーオキサイドグループの生成が認められたが, 分子量に大きな変化はなかった. 官能基の生成量, ゲル生成の速度は, ベンゼン, トルエン, o-ジクロロベンゼンの順に大きくなった. 酸素分子はこの光化学反応で, 重要な役割を演じていることがわかった.
  • 中村 俊一, 岡村 健次, 金子 新吾, 水谷 幸雄
    1991 年 48 巻 8 号 p. 463-468
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    炭酸カルシウム, シリカ微粒子をフィラーとして高充填したポリプロピレンの押出しシートを二軸延伸して微多孔シートを得た. 二軸延伸率の増大に伴って空隙率が増大し, 透湿性も増大した. フィラーの充填量の増加に伴って最大細孔径は大きくなり透湿性, 透気性は増大した. 最大細孔径は平均孔径と正の相関関係を示し, シートの耐水圧とは負の相関関係を示した. フィラー粒子径が大きくなると, シートの平均孔径も増大した. 透気性, 最大細孔径, 耐水圧に対するフィラーの種類の影響は炭酸カルシウムとシリカで異なることがわかった. 無機フィラー充墳延伸法微多孔シートの孔構造は, シートの一方の面から反対の面に向かって, 大きな空隙部を無数の小さい孔で連結した連続孔である, ことが明らかとなった.
  • 山口 宗明, 足立 公洋, 田中 利光, 田中 勝敏
    1991 年 48 巻 8 号 p. 469-475
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    炭素原子の六角網平面が層状構造を形成している炭素微粒子である天然グラファイト (NG), 人造グラファイト (MG), 及び石油コークス (PC) を, エポキシ樹脂に50あるいは85 wt%まで充てんした. 充てん試料の動的粘弾性測定, 圧縮試験, ビッカース硬度試験, 及びSEM観察を行った. 試料中の微粒子はいずれもランダム分散している. 充てん量が多くなるほどTgは上昇し, ガラス状領域及びゴム状領域の貯蔵弾性率 (E') は増大した. また, 高温のゴム状領域における増加はさらに著しい. E'に対する充てん効果はNG>MG>PCとなった. 充てん試料の圧縮強度は, PC充てん試料はエポキシ樹脂よりも増大したが, NG及びMG充てん試料では充てん量が多くなるほど減少した. ビッカース硬度は50 wt%までの試料でエポキシ樹脂よりも増加したが, 特にPC充てん試料における増加は顕著であった.
  • 笹野 幹雄, 西久保 忠臣
    1991 年 48 巻 8 号 p. 477-483
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    グリシジルビニルエーテル (GVE) とN-フェニルマレイミド及びN-フェノキシカルボニルオキシマレイミドとのラジカル共重合, またはGVEと無水フタル酸との開環交互共重合により側鎖にエポキシまたはビニルエーテル基を有する反応性ポリマーを合成し, 得られたポリマーの光及び電子線架橋反応について検討を行った. ポリマーの光架橋反応において, 光カチオン開始剤としてスルホニウム塩を用いた場合, ポリマー側鎖のビニルエーテル基はポリマー側鎖のエポキシ基に比べて高い反応性を示した. ポリマー側鎖のビニルエーテル基とジチオールとの光マイケル付加反応は未増感でも進行し, 増感剤としてベンゾフェノンを添加することによりその反応性は著しく向上した. これらのポリマーの電子線架橋反応においては側鎖にエポキシ基のみを有するポリマーと比較して側鎖にエポキシ基及びカーボナートを有するポリマーが高感度を示した. さらに側鎖にビニルエーテル基を有するポリマーは上記の側鎖にエポキシ基を有するポリマーと比較して高い感度を示すことも判明した. またこの電子線架橋反応に種々の光カチオン開始剤を添加し, 化学増幅効果を試みたところ, いずれの開始剤においても感度の向上が認められ, 鉄アレーン錯体はスルポニウム塩より高い触媒活性を示すことも判明した.
  • 加藤 仁一郎, 冨野 伸子, 今西 太一, 中村 克之
    1991 年 48 巻 8 号 p. 485-490
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    多次元に高弾性率を有する耐熱性材料を開発するために, 新規な架橋性ポリイミドを4, 4'- (1, 3-ブタジイン-1, 4-ジイル) ビスフタル酸無水物とp-フェニレンジアミンから合成した. このポリイミドは, 約250℃以上で架橋し, その架橋収率が85%であることがわかった. 架橋ポリイミドの貯蔵弾性率は, 未架橋のポリイミドの場合に比べて約2倍に増大した. また, ジアセチレン基のないポリイミドと比べて, この架橋ポリイミドの貯蔵弾性率は, より高温まで増加した.
  • 中村 俊一, 岡村 健次, 水谷 幸雄
    1991 年 48 巻 8 号 p. 491-497
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    炭酸カルシウム (CaCO3) をフィラーとして充填したポリプロピレン (PP) のニップロール冷却方式によるT-ダイ押出しシートを成形し, 一軸 (MD) 延伸性と, CaCO3の充填量と粒径, 分散剤の種類や添加量, 低温低倍率予備延伸の効果との関係で検討した. CaCO3の充填量の増大とともにMD3倍延伸での均一延伸可能な温度範囲は広がった. 粒径が小さくなるほど, 分散剤を多く必要とし, ノニオン界面活性剤では0.05~0.07 g/m2・CaCO3で3倍延伸での延伸性は向上した. アジピリン酸系のポリエステル可塑剤は3倍延伸での延伸向上効果が大きい. 分散剤はCaCO3の均一分散と, 延伸応力下にPP/CaCO3界面の均一な剥離形成による延伸性の向上に有効である. 低温低倍率予備延伸は高温延伸の予備延伸として, 3倍延伸での均一延伸性向上に有効である.
  • 宮内 信之助, 今泉 達也, 反町 嘉夫
    1991 年 48 巻 8 号 p. 499-506
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    高分子バインダーとしてポリグリシジルメタクリラートを用いて, スクリーン法によって, Y-Ba-Cu-O系超伝導体厚膜を作製した. 本研究では, ペレット状超伝導体と比較しながら, バインダーの超伝導体の電気的特性に与える影響を検討した. 製膜後, 非常に遅いバインダーの熱分解によって, 特性の良い超伝導体厚膜を得ることができた. しかしながら, バインダーを使わないで作製したペレット状試料に比べて, 抵抗が0になる温度, Tcはバインダー量とともに, 少しずつ低下した. X線分析, 電子顕微鏡観察, XMA分析から微量の高分子バインダーがその超伝導特性に影響していることが推定された.
  • 相田 博, 松尾 斗伍郎, 橋谷 茂雄, 漆崎 美智遠
    1991 年 48 巻 8 号 p. 507-515
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ラジカル重合によって得られたポリスチレン試料について同一の手順を用いたGPCの共同測定が21研究室によって行われ, 得られた平均分子量のばらつきが詳しく検討された. 数平均, 重量平均, 及びz-平均分子量の平均変動係数 (標準偏差値を平均値で割った値) はそれぞれ11.0, 11.3, 及び21.1%である. 計算法, 検出器の種類及びクロマトグラムの分割数は得られる平均分子量に著しい影響を与えない. 同一カラムを用いる異なる研究室によって得られた平均分子量は20%を越える変動を示す. 平均変動係数を10%以下に減らすには, カラムの分解能, 溶媒の流量などの操作条件のわずかな変化に十分注意を払う必要がある.
  • 奈倉 正宣, 西村 弘, 大越 豊
    1991 年 48 巻 8 号 p. 517-523
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリビニルアルコール (PVA) とポリ (L-グルタミン酸ナトリウム) (PSLG) との濃厚混合水溶液を作製する際, 加圧・加熱により相分離が生じ, 得られる凝集相をメチルアルコールに浸漬後, 再び水中で膨潤すると強靱なハイドロゲルとなることを見いだし, このゲルの形成条件を知るため相図を求めた. このハイドロゲルはすべてのPSLG分率において反復凍結解凍により得られるPVAハイドロゲルよりも弾性率は大きい. このような高い弾性率を示す理由はPVAとPSLGとの相互作用領域の形成と, 束縛水の増大が重要な役割を果たしていることを明らかにした.
  • 西村 健, 矢島 博文, 石井 忠浩, 遠藤 隆一
    1991 年 48 巻 8 号 p. 525-528
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    DP約20のアミロースを用いてアミロース・ヨウ素錯体の青色発色機構を, CDと吸収スペクトルのストップトフロー同時測定により検討した. 結合ヨウ素種がI-3のみで, アミロース濃度がI-3濃度に比べて大過剰のとき, 錯体形成は2段階過程が観測された. 第1段階は288nmと353nm近傍に正の誘起CD帯を伴うI-3とアミロースに基づく無青色錯体が生成した. 第2段階は錯体の青色発色に関与する2量体I-3・I-3が生成した. 一方, ヨウ素の発色種がI2・I-3となるKI不在下における錯体形成は見掛け上1段階反応で進行した. 青色発色種I-3・I-3形成の見掛けの初速度はI2・I-3より小さく見積られた. 青色発色種I2・I-3は, 2個のI-3間に比べてI2とI-3間の協同的相互作用により, 形成が容易なことが示唆された.
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