高分子論文集
Online ISSN : 1881-5685
Print ISSN : 0386-2186
ISSN-L : 0386-2186
49 巻, 10 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 建元 正祥
    1992 年 49 巻 10 号 p. 765-783
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ヨウ素化合物は炭素-ヨウ素結合の解離エネルギーが低いためラジカル的に活性で, ラジカル重合反応の過程では連鎖移動反応が関与する結果, ラジカル的連鎖再賦活化機構によるラジカルリビング重合の可能となることを見いだした. これを『ヨウ素移動重合』と称したが, 基本的に次のように総括することができる. 1) 重合系のポリマー分子数は系内に添加するヨウ素化合物分子数で決まる. 2) 分子量分布が狭いものを含め, 自由に調整できる. 3) ブロックポリマーの合成を含む遂次連鎖成長が可能である. 4) 分子末端を占めるヨウ素は反応性に富み, 種々のポリマーのテレキリックな架橋や末端反応性高分子の合成に利用できる. 5) 非対称モノマーでは付加配向性の変化が起こりうる. 6) ラジカル開始法として光 (レーザー) の利用が期待される. これらの知見より分子量が数十万に及ぶ高分子, 例えばフッ素ゴムを分子末端のみで架橋するテレキリックなパーオキサイド架橋法, 熱可塑性ゴムをはじめとする種々のブロックポリマー, 液状末端反応性ポリマーなどの開発が可能となった. 本稿では, このヨウ素移動重合の機構解明の結果と種々の利用について述べる。
  • 前田 佳治, 結城 康夫, 国貞 秀雄, 近藤 修寿, 井口 伸児
    1992 年 49 巻 10 号 p. 785-790
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    異なる分子量 (分子量約270, 1000, 3000, 5000, 10000) のメタクリレート末端シリコーン系マクロモノマー (M1; MASn+1) と2-アミノ-4- (N-エチルアニリノ) -6-イソプロペニル-1, 3, 5-トリアジン (M2; N2) を, AIBNを開始剤としてテトラヒドロフラン (THE) 中でラジカル共重合させ, グラフト共重合体を合成した. モノマー反応性比は, マクロモノマーの分子量の増加に伴いr1が0.48から0.10に減少し, r2は1.60から4.83に増加した. グラフト共重合体のTgは, マクロモノマーの分子量の増加に伴いトリアジンセグメントに起因する高温部と, シロキサンセグメントに起因する低温部の二つのTgが観察された. グラフト共重合体を塗膜化し, 表面の動摩擦係数を測定した. シリコーン含量20wt%では動摩擦係数には変化が見られなかったが, 40wt%以上のシリコーン含量では, マクロモノマーの分子量の増加により, 動摩擦係数の減少が見られた.
  • 青木 俊樹, 豊島 泰生, 山際 克義, 及川 栄蔵
    1992 年 49 巻 10 号 p. 791-799
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    末端にアルコキシシリルスチレンを持つ2種のパーフルオロアルカンを合成, 重合し, 酸素及びエタノール選択透過膜への利用を検討した. p- (1H, 1H, 2H, 2H-パーフルオロアルキルオキシジメチルシリル) スチレンをバルク共重合することにより丈夫な膜を得ることができ, この膜は優れた酸素選択透過性を有していた (α=3.36, PO2=6.99×10-9cc (STP) ・cm/cm2・s・cmHg). このポリマーを少量架橋ポリジメチルシロキサン (PDMS) に添加した膜は高いエタノール選択透過性を示した (αEtOH=22.3, P=2.06×10-2g・m/m2・h). いずれもパーフルオロアルキル基の性質が透過に効果的に生かされた結果であると考えられた. またp- (1H, 1H, 2H, 2H-パーフルオロアルキルジアルコキシシリル) スチレンのパーフルオロアルキル基の性質とアルコキシキ基の反応を生かしてPDMS膜の酸素選択透過性を改善することができた.
  • 大畑 正敏, 五十野 善信
    1992 年 49 巻 10 号 p. 801-808
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    保護された水酸基を有する1,1-ジフェニルエチレン誘導体とn-ブチルリチウムの反応生成物を開始剤としてメチルメタクリレート (MMA) をアニオン重合させ, リビング末端に二酸化炭素を付加させた後, 開始剤の保護基を脱離させることにより非対称型テレケリックポリ (MMA) を合成した. 得られた重合体のキャラクタリゼーションを蒸気圧オスモメトリー, GPC, 1H NMR及び電位差滴定により行い, 純粋で分子量分布のかなり狭いα-ヒドロキシ-ω-カルポキシポリ (MMA) が得られたことを確認した. tert-ブチル基とトリメチルシリル基の保護能力を比較した結果, 前者は有用性の高いことが知られているtent-ブチルジメチルシリル基と同等の保護能力を有することが明らかとなった. tert-ブチル基による水酸基の保護は容易かっ低コストで行えるので, 工業的メリットが大きいと言える.
  • 手塚 育志, 八重樫 馨, 吉野 真美, 今井 清和
    1992 年 49 巻 10 号 p. 809-816
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    片末端に種々の環状オニウム塩, すなわちテトラヒドロチオフェニウム, N-メチルピロリジニウム, 及びキヌクリジウム塩基を有する分子量のそろったポリテトラヒドロフラン (ポリ (THF)), さらに片末端にキヌクリジウム塩基を有する分子量のそろったポリt-ブチルアジリジン (ポリ (TBA)) を合成し, これらを用いて置換度の異なるナトリウムカルボキシメチルセルロース (CMC) とのイオンカップリング反応を試みた. その結果, ポリ (THF) 及びポリ (TBA) プレポリマーのTHF溶液をCMCを含む冷水中に滴下, 沈殿させるという簡便な操作によって, 両プレポリマーの環状オニウム塩末端基とカルボン酸塩基との間のイオン交換によるカップリング反応が生じ, ついで沈殿生成物を加熱処理すると, 環状オニウム塩基の選択的な開環反応が生じてイオン結合が共有結合に転換され, ポリエーテル及びポリアミングラフト鎖を有するセルロース系グラフト共重合体を合成することができた.
  • 瀬 和則, 鈴木 正明, 松尾 斗伍郎, 梅田 達夫, 上野 昌宣
    1992 年 49 巻 10 号 p. 817-823
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    (p-イソプロペニルフェネチル) ポリ (α-メチルスチレン) マクロモノマーを合成するため, ポリ (α-メチルスチリルリチウム) とp-イソプロペニルフェネチルクロライドのカップリング反応を, テトラヒドロフラン (THF) 中, 10-6mmHg下, -78℃で行った. 得られた試料の分子特性をGPC, 蒸気浸透圧計, NMR, 低角度光散乱光度計で測定した. Mnが2000から7100の3種類のマクロモノマーを合成し, そのMw/Mn値は1.09~1.12であり, カップリング反応率は0.98~1.00であった. このマクロモノマーのTHF溶液を室温で多量のナトリウム鏡に加えると溶液は赤色に変化し, この溶液の可視及びNMRスペクトルを真空下で測定し, プレカーサーのGPC測定も行った. 末端のイソプロペニルフェネチル基は, その天井温度が室温以下であり, α-メチルスチレンのように2量体や4量体のジナトリウム塩を生成せず, 単量体のナトリウム塩を生成した. その反応速度は分子量に比例して遅くなることを見いだした.
  • 鈴木 佳太, 勝村 軍平, 近藤 順治, 奥 淳一, 高木 幹夫
    1992 年 49 巻 10 号 p. 825-831
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    トリエトキシシリル末端ポリスチレン (TESi-PS) の縮合反応をいろいろなアルカリ触媒を用いて行った. 縮合反応は, アミンのような弱アルカリを触媒とした場合にはほとんど起こらず, 水酸化アルカリなどの強アルカリの場合に進行した. 強アルカリによる縮合反応の時間一縮合物生成率曲線には極大値が存在し, 長時間の反応で縮合物の生成率はゼロとなった. 例えば, NaOH触媒では縮合物の生成率は, 60℃4時間の反応で62%に達するが, 24時間以内には見かけ上ゼロとなった. これは, いったん生成した縮合物からポリスチレン部が脱離する反応が副反応として起こるためであることがわかった. 縮合反応と脱離反応において, 反応速度は前者の方が大きく, 活性化エネルギーは後者の方が大きい値を示した. この縮合反応で得られる縮合生成物はLiOH触媒ではTEsi-PSの4量体, NaOHとKOHでは5量体相当のものであり, 単分散性に優れた (Mw/Mn<1.1) ものであった.
  • 井上 賢三, 武田 洋明, 小河 雅義, 谷垣 禎一
    1992 年 49 巻 10 号 p. 833-838
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリスチレンの両末端及び片末端に機能性基を多数導入できるホスファゼン環をもつポリスチレンを新規なアゾ開始剤による重合ならびにリビングアニオン重合によって合成した. アゾビス (シアノ吉草酸クロリド) と2- (p-アミノフェノキシ) ペンタクロロシクロトリホスファゼンより合成した開始剤 (ABPP) はスチレンの重合に有効に作用し, 両末端にホスファゼン環を持つポリマーを与えた. リビングアニオン重合においては (NPF2) 3及び (NPCl2) 3を停止剤として用い, 片末端活性ポリスチレンの合成を行った. (NPF2) 3を用いた場合にはホスファゼン環はポリマー末端に導入されるが, 環を含まないポリマーも一部生成してくることが示唆された. (NPCl2) 3による停止反応は上記反応に加えて環を核とする二本鎖ポリマーの生成も含まれ, より複雑となった. ラジカル重合及び (NPF2) 3で停止して得たポリマーの末端に存在する活性なP-Cl基やP-F基のエチレングリコール類, 末端にアミノ基をもつポリスチレンなどによる置換反応を行い, その結果についても考察した.
  • 青柳 隆夫, 秋元 倫子, 長瀬 裕
    1992 年 49 巻 10 号 p. 839-845
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    片末端にクロロメチルフェネチル基を有するポリジメチルシロキサン (PDMS-BzCl) を用い, 三級アミンを用いた四級化反応によりカチオン基を片末端に有するPDMSを合成した. また, カルボニル挿入反応及び加水分解により, アニオン基を片末端に有するPDMSを合成した. 得られたポリマーの経皮吸収促進効果をウサギ腹部剥離皮膚を用いたin vitro薬物透過実験により評価した. いずれのポリマーも薬物の皮膚吸収を促進し, その効果はカチオン性PDMSでは重合度が増大するに従って増加し, 平均重合度が12付近で最大値を示した. 一方, アニオン性PDMSでは重合度が低いほど促進効果は大きかった. 薬物の皮膚吸収過程における透過, 拡散, 分配の各係数を算出した結果, これらのポリマーは薬物の基剤から皮膚への分配のみを高めることによって効果を発現しており, 低分子量促進剤とは促進効果発現機序が異なることが示唆された.
  • 塩野 毅, 黒澤 弘樹, 石田 修, 曽我 和雄
    1992 年 49 巻 10 号 p. 847-854
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    エチレン-ビス (テトラヒドロインデニル) ジルコニウムジクロリドーメチルアルモキサン系触媒を用いて重合温度0~40℃, エチレン/プロピレン気相モル比1で共重合を行った. 得られた共重合体のプロピレン含率は55~62mol%, モノマー反応性比の積は0.87~0.88とそれぞれ重合温度によらずほぼ一定値を示し, ランダム共重合体が生成していることが確認された. 一方, 分子量は重合温度の上昇に伴い急激に減少したが, 分子量分布は約2と一定であった. 1HNMR, 13CNMR, 及びIRスベクトルの解析から, 生成ポリマーの停止末端には選択的にビニリデン結合が存在していることが明らかとなった. このビニリデン結合をヒドロメタレーション反応を利用して, 水酸基, 臭素ならびにアミノ基に変換することにより末端修飾ポリオレフィンを合成した.
  • 宮本 真敏, 岡田 寿夫, 中 建介, 三枝 武夫
    1992 年 49 巻 10 号 p. 855-860
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    2-メチル-2-オキサゾリン及び2-エチル-2-オキサゾリンのカチオン開環重合のリビング性を利用し, 開始末端にスチリル基を有し, 生長末端にカルボン酸基有するマクロモノマー (4) を新たに合成した. スチリル基及びカルボン酸基の4への導入率はそれぞれ0.85~1.10, 1.03~1.11と1に近いものであった. 4をコモノマー兼界面活性剤として用いるスチレンとのソープフリー乳化共重合を行うことにより, カルボン酸基を表面に効率的に導入したポリスチレンビーズ (5) が調製できた. さらに5を担体として用いた牛肝臓カタラーゼの固定化についても検討を加えた.
  • 山本 統平, 竹内 淳, 藤木 文美, 金沢 浩二, 山本 忠弘, 原田 修, 蒲池 幹治
    1992 年 49 巻 10 号 p. 861-863
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    2, 2'-アゾビス [ (ヒドロキシメチル) プロピオニトリル] (AHPN) を用いたスチレンのラジカル重合の動力学的研究を行った. 0℃で光重合することにより連鎖移動反応及び不均化停止を抑え, 効率よくポリスチレン末端に水酸基を導入できた。このポリスチレンはブロック共重合のマクロモノマーとして期待される.
feedback
Top