高分子論文集
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49 巻, 11 号
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  • 坪川 紀夫, 梁取 和人
    1992 年 49 巻 11 号 p. 865-870
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    カーボンブラック表面に露出した縮合芳香族環の強力なラジカル捕捉性を利用したポリマーのグラフト反応について検討した. 主鎖中にアゾ結合を持つポリマー (アゾポリマー) をカーポンブラックとともに加熱すると, アゾポリマーの熱分解で生成するポリマーラジカルが粒子表面で効率よく捕捉され, 対応するポリマーがカーポンブラック表面ヘグラフトすることが明らかとなった. また, アゾポリマーを用いるグラフト反応は, 表面官能基の少ないファーネスブラックやアセチレンブラックの表面グラフト化に有効であることも見いだした. さらに, グラフト反応に及ぼすアゾポリマーの分子量の影響を調べたところ, アゾポリマーの分子量が大きくなるほどグラフト率が低下することが明らかとなった. また, このような系で得られるポリマーグラフトカーポンブラックは, グラフト鎖の良溶媒中へ長期にわたり安定に分散することもわかった.
  • 梶山 幹夫, 柿本 雅明, 今井 淑夫
    1992 年 49 巻 11 号 p. 871-877
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリジメチルシロキサン-ポリアミド系マルチブロック共重合体のフィルムについてその化学構造と性質の関係を熱分析, 動的粘弾性測定, 引張試験の結果から検討した. 用いたマルチブロック共重合体は, α, ω-ビス (3-アミノプロピル) ポリジメチルシロキサンをソフト成分とし, トランス-2, 5-ジメチルピペラジンと2種のオキシジアニリン, 及びイソフタル酸クロリドとテレフタル酸クロリドを組み合せたポリアミドをハード成分とする4種である. これらのマルチブロック共重合体の溶解性は, ハード成分を構成するポリアミドの溶解性に非常に近いことがわかった. また, これらの共重合体のソフト成分相のガラス転移温度はいずれも-120℃付近に観察され, ミクロ相分離構造をとっており, ハード成分を主鎖が柔軟なピペラジン系ポリアミドから剛直なオキシジアニリン系ポリアミドに変えると, さらに明確な相分離構造をとり, 同様な効果によってフィルムの引張弾性率も上昇することがわかった.
  • 西島 克典, 岡野 滋
    1992 年 49 巻 11 号 p. 879-884
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    主鎖の長さを変えて官能基濃度を変化させた脂肪系のアクリレートモノマーを用いて, 電子線硬化架橋高分子の架橋密度ρ (E') 及び架橋構造の, 機械的強度, 表面強度への影響について検討を行った. 電子線架橋高分子のガラス転移温度Tg及び弾性率, 破断時の強度, 破断時の伸びなどの機械的強度とρ (E') との間には相関性がみられた. しかし, 耐摩耗性等の表面強度とρ (E') との間に相関性はみられず, 架橋分子密度の影響がみられた. またX線回折のパターンから, 架橋分子の構造は非晶質のみから成り結晶化していない. 電子線架橋高分子の機械的破壊は「共有結合の切断」が優先していると考えられるが, 表面から徐々に破壊する過程では「共有結合の切断」と「分子間のスベリ」の両方が大きく影響しているものと推察した.
  • 寺田 和俊, 佐藤 寿昭, 丸山 均, 山内 淳之介, 岡谷 卓司
    1992 年 49 巻 11 号 p. 885-891
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    片末端にチオール基を有するポリビニルアルコールと臭素酸カリウムとのレドックス開始反応を利用して. 各種のモノマーを水中で重合することで, ポリビニルァルコール (PVA) を一成分とするブロック共重合体の合成を行った. 得られたブロック共重合体は対応するホモポリマー同士のブレンド系と比べると明瞭に性質が異なり, ブロック体と考えて良い挙動を示した. PVAとポリアクリルアミド (PAAm) のブロック共重合体についてさらに検討し, ブロック共重合体はPVA/PAAmブレンド系と比べ水中での相分離が遅く, また透明なフィルムが得られることが分かった. さらにでん粉と見かけ上相溶するPAAm系成分をPVAにブロック共重合で導入すると, でん粉との相溶性がPVAに比べ顕著に改善され, でん粉とのブレンドフィルムの透明性と機械的強度が, PVA/でん粉ブレンド系に比べ顕著に向上することが分かった.
  • 荒木 長男, 藤木 徹, 成田 宏, 田中 信男
    1992 年 49 巻 11 号 p. 893-898
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    多官能性のトリエチレンテトラミン及びペンタエチレンヘキサミンをホルムアルデヒドにより1, 3-イミダゾリジル環型5員環保護した両末端二官能性化合物を合成し, これらとアジピン酸ジクロリドとの重縮合を研究した. 水分を避けて, パラホルムアルデヒドの熱分解で生じたホルムアルデヒドを用いることにより, 重合反応中にゲル形成を起こすことなく, 期待した直鎖性の高い水溶性の5員環保護したポリアミドを得た. これを, 1, 3-ジァミノプロパンを用いた環交換反応によって脱保護すると, 分子量は低下するものの, 対応する-NH (CH2CH2NH) 5-セグメントを主鎖中に有するポリアミドが得られた. これらのポリアミドは水溶液中で高分子電解質の性質を示した.
  • 高橋 恒人, 齋藤 修
    1992 年 49 巻 11 号 p. 899-905
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    反応前の分子は直鎖型高分子であるとし, 反応性末端を両端に持つもの, 一端にのみ持つもの, 一つも持たないものが混合している場合の末端による結合について理論的に調べた. 先ず末端による結合によって変化する重合度分布に関する基礎方程式を求めた. これから数平均・重量平均重合度の変化が解析的に求められた. またゲルが発生するための条件とゲル点の値が明らかになった. すべての分子が一端に反応性末端を持つ場合でもゲルは発生しないこと, 反応性末端がそれよりも少ない場合でも両端に持つ分子が混じっている場合はゲルが発生することなどが分かった. 初期重合度分布がボアソン (Schulz-Zimm) 分布として, 重合度分布の変化を求めた. またゲルとゾルが共存する場合のゾル部分の重合度分布とゲル分率に関する基礎方程式を求めた. これからゲル点以後のゾル部分の平均重合度の減少とゲルの成長のようす, 反応性末端の数によってはゲル分率が1に達しないことなどが分かった.
  • 高橋 啓司, 櫻井 伸一, 中山 美矢, 乾 洋治, 柴山 充弘, 橋本 保, 野村 春治
    1992 年 49 巻 11 号 p. 907-914
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    二官能性かつ単分散に近いアリル末端ポリテトラヒドロフラン (PTHF) を合成し, 架橋剤のメルカプト基 (-SH) のプレポリマーの末端 (-C=C) への付加反応によりフィルム状の末端架橋型ポリマーネットワークを合成することができた. 得られたポリマーネットワークについて, 赤外吸収二色性測定, 示差走査熱量分析 (DSC) 及び引張試験を行った. その結果, ネットワークポリマーとしての挙動はPTHFが結晶性であるため, 試料中に存在する結晶形態に敏感に影響を受けることがわかった.
  • 古澤 邦夫, 小川 徳大, 板橋 正志, 北原 静夫, 渡辺 浩志
    1992 年 49 巻 11 号 p. 915-920
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    分子末端をイミニウムイオンで変性した, 分子量の異なる各種ポリスチレンの吸着特異性を, シクロヘキサン溶液. 35℃のθ状態下で検討した. 吸着担体には多孔性ガラスビーズ (CPG-10) を溶媒洗浄後使用した. 末端をイミニウム変性するといずれの分子量ポリマーも非変性ポリマーに比べて高い吸着性を示すが, その傾向は比較的低分子量種において顕著に現れ, 分子量が増大すると次第に末端基効果が減衰することが分かった. これは分子量が増大すると末端基による吸着が困難となり, 吸着飽和に長時間要するためであることが分かった. また, 分子量の異なる2種類の非変性高分子を同時に競争吸着させると, 低分子量種は排除され高分子量種のみの吸着層が形成されるが, 低分子量種に変性高分子を用いて同様な実験を行うと, 吸着の優先性が逆転して非変性高分子量種が吸着層から排除されることが分かった. さらに, 分子量の異なる2種類の変性高分子量種を同時に競争吸着させると低分子量種がやや優先的に吸着する傾向を示すものの, 両種高分子が同時に吸着して, 従来見られない高い全吸着量を示すことが分かった.
  • 北原 静夫, 川中 孝文, 渡辺 浩志, 古澤 邦夫
    1992 年 49 巻 11 号 p. 921-926
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    最近, 分子末端を化学修飾することにより, カーボンブラックなどの無機粒子表面への高分子吸着が促進されることを見いだした. またこの技術を用いて分子末端に官能基を導入したゴムとカーボンブラックとの配合物の反発弾性が著しく向上することを見いだした. これは末端官能基がカーボンブラック表面に強く吸着し, カーボンブラックの分散安定性を向上したためと考えられる. 末端変性高分子の特異挙動を明らかにするため, n-ブチルリチウムを用いて各種モデル化合物を合成した. IR, ESR, NMRを用いてモデル化合物を解析した結果, 末端官能基はイミニウムイオン基であることが明らかとなった. UVスペクトルから高分子末端官能基もイミニウムイオン基と推定され, カーボンブラックなどの無機粒子表面の極性基と酸-塩基相互作用をするものと考えられる.
  • 呉 馳飛, 浅井 茂雄, 住田 雅夫, 宮坂 啓象
    1992 年 49 巻 11 号 p. 927-932
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    粒子分散系高分子導電材料の電気伝導度及びその温度変化を測定し, マトリックス高分子内の粒子の分布をSEMで観察することにより, ミクロ分散構造とマクロ電気物性に及ぼすポリマーの末端変性の効果を検討した. ポリスチレン (PS) の分子末端変性がCBの分性を向上させ, その程度は粒子表面に存在する各種含酸素基の数に依存する. マトリックスポリマーの末端変性と充填粒子の表面酸化処理により, より高分散性の複合材料が得られる. マトリックスを多成分にした場合, PSの末端変性が相分離したマトリックス内での粒子の分布に大きい影響を与えることができ, 粒子と末端基の相互作用は界面エネルギーに基づく主鎖との相互作用に優先することが分かった.
  • 五十野 善信, 棚瀬 省二朗, 大畑 正敏, 風間 武雄, 富田 雅之
    1992 年 49 巻 11 号 p. 933-936
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    チーグラー触媒を用い, プロピレンとジビニル系モノマー [ジビニルベンゼン, 4-イソプロペニルスチレン, 及び1-フェニル-1- (4-ビニルフェニル) エチレン (PVPE) ] とのランダム共重合により反応性ポリプロピレンを得た. ついで, それらを幹分子とし, リビングポリスチレン (PS) を側鎖ビニル基と反応させることにより結晶性ポリプロピレン/ポリスチレン・グラフト共重合体を合成した. 特にPVPEは2mol%の比率でプロピレンと共重合可能であり, 側鎖ビニル基へ反応率80%でPSグラフト鎖を導入でき, 工業的に有用である.
  • 青島 貞人, 尾田 浩, 小林 英一
    1992 年 49 巻 11 号 p. 937-941
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    感熱応答性ポリマーの相分離挙動に及ぼすモノマー単位の連鎖分布の影響を調べるために, リビングカチオン重合により分子量分布の狭い種々のブロック及びランダムコポリマーを合成した. 2-エトキシエチル及び2-メトキシエチルビニルエーテルのブロックコポリマー合成は, 2/Et1.5AlCl1.5開始剤系を用い, 酢酸エチル存在下, トルエン中, 0℃でのモノマーの逐次添加により行った. ほぼ同じ組成及び分子量を有する分子量分布の狭いコポリマーを使用し, ポリマー水溶液の500nmの光の透過率測定を行い, 相分離挙動を評価した. ブロックコポリマーは, 単独やランダムコポリマーとは全く異なる多段階の相分離挙動を示した. これらの結果から, ブロックコポリマーの相分離時における会合状態などを考察した.
  • 中條 善樹, 井原 栄治, 三枝 武夫
    1992 年 49 巻 11 号 p. 943-946
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    アミノ基を有するジシロキサンエンドブロッカー存在下, オクタメチルシクロテトラシロキサンの開環平衡重合により, 両末端にアミノ基をもつテレケリックポリシロキサンを合成した. 一方, 2-メチル-2-オキサゾリンを異性化開環重合して合成したポリマーの生長末端であるオキサゾリニウム塩をポリシロキサン末端のアミノ基と反応させることにより, ポリオキサゾリンーポリシロキサンーポリオキサゾリンのABA型ブロック共重合体が得られた.
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