高分子論文集
Online ISSN : 1881-5685
Print ISSN : 0386-2186
ISSN-L : 0386-2186
49 巻, 8 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 仲野 幸弘, 牧野 誠, 山根 秀樹, 木村 良晴, 北尾 敏男
    1992 年 49 巻 8 号 p. 635-643
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンテレフタレート (PET) とp-ヒドロキシ安息香酸 (HBA) から成る液晶ポリマー (LCP) の力学的性質の異方性改善を二つの方法により試みた. すなわち, 1) LCPとPETの溶融混練時にこれらのカルボキシル末端と容易に反応する二官能性低分子化合物である鎖長延長剤を添加し, LCP/PETブレンド内にLCPとPETのブロック共重合体を生成 (PPL) させる方法と, さらに2) このPPLをLCPにブレンドする方法により行った. 鎖長延長剤としては2, 2'- (1, 4-phenylene) bis (2-oxazoline) を用いた. PPLの動的粘弾性の温度依存性の測定結果ならびに分散状態はブロック共重合体の生成を示唆した. PPLのフィルム破断面からはLCPのフィブリルが観察されず, MD方向のE' はLCP単独と比較すると低下するものの力学的性質の異方性が小さくなった. また, LCP単独では, 60℃付近にE' の低下が観測されたが, PPLではその低下は小さくなった. PPLとLCPとのブレンド物では. 分散状態の観察からLCPとPPLの強い接着性が示唆された. PPLの組成の増加に伴いフィルムのMD方向のE' は若干低下するが, TD方向のE' は大きく上昇し, 力学的性質の異方性が改善された.
  • 森 邦夫, 大石 好行, 佐藤 芳隆, 滝沢 利樹, 山田 弘
    1992 年 49 巻 8 号 p. 645-653
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    エポキシ化合物, 硬化剤, 溶剤, 及びニッケル粉からなる塗料を調整し, 塗膜の導電性に及ぼす硬化条件, 導電材の種類, 塗膜の性質, バインダー, 及び溶剤の影響などについて検討した. 導電性塗膜は塗布塗膜の加熱により溶剤の揮発, エポキシ化合物の分子量増大反応, 三次元化反応を経て形成され, それぞれの過程で塗膜の表面抵抗が減少した. 塗膜の表面抵抗の変化のようすは等価回路モデルを用いた粒子間の接触レベルで説明した. 硬化温度を高くすると塗膜の表面抵抗は減少するが, これは塗膜の収縮とニッケル粒子の凝集に原因があると考えた. 硬化型塗料においても臨界フィラー含量が存在し, この値はニッケルの粒径の増加とともに高含量側ヘシフトした. しかし, 臨界ニッケル含量における体積抵抗値は乾燥型塗膜と異なり, 高含量側で低くなった. これはバインダー効果が十分に発揮されたことと粒子が大きくなっただけ電極間の電気抵抗ギャップが減少したためと考えた. 臨界値以上における導電性の減少は塗膜のモルホロジーの変化に基づく塗膜密度の減少によった. 臨界値はバインダー分子量によりほとんど変化しないが, この時の体積抵抗値は分子量の影響を受けた. 溶剤量には最適値が存在し, これを塗料粘度と粒子間の毛細管圧から説明した. 溶剤の沸点の違いによって塗膜の導電性が変化した.
  • 浜田 和秀, 細川 純, 西山 昌史
    1992 年 49 巻 8 号 p. 655-660
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    FRP材の熱分解を大気圧下で水蒸気を用いて行うと, 水蒸気の存在によって無水フタル酸結晶や炭化物の分解炉壁への付着が少なく, 分解物回収が容易になった. 水蒸気を用いるFRP材の熱分解は500℃では5分以内で完了し, その主要な熱分解生成物はフタル酸とスチレンであった. 350℃では, 500℃の場合よりも分解油の生成量が6%ほど少なく, 熱分解が完了しなかった. 水蒸気はFRPのポリスチレン成分の熱分解反応には直接関与しなかったが, ポリエステル成分の熱分解では窒素ガスでは無水フタル酸が生成したのに対し, 水蒸気ではフタル酸が生成した. この熱分解法で発生するガスの約70%は二酸化炭素であった.
  • 高木 勝, 石原 昌宏, 乗松 孝好, 山中 龍彦, 中井 貞雄
    1992 年 49 巻 8 号 p. 661-669
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    レーザー核融合用のクライオターゲットの燃料保持容器である低密度フォームシェルの開発に成功した. ヒドロキシエチルセルロース, ポリ (p-ビニルフェノール) と塩化イソフタル酸を使用して油/水エマルションの界面縮合反応法で低密度フォームシェル表面に厚さ1~10μm, 均一性98%以上, 表面粗さ0.1μm以下の架橋高分子膜を被覆して, 気化防止層を兼ねたアブレータ付低密度フォームシェルを開発した.
  • 石井 利昭, 江口 州次, 尾形 正次, 北村 輝夫, 鈴木 宏
    1992 年 49 巻 8 号 p. 671-676
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    エポキシ樹脂の耐熱性を向上させる目的で, 硬化剤としてレゾール型フェノール樹脂 (RE) を用いたエポキシ樹脂系の硬化反応及び硬化物の物性に及ぼす触媒の影響を検討した. その結果, 硬化反応では, エポキシ基とフェノール性水酸基との反応とREの自己縮合反応が競争的に進行することが分かった. 触媒として1,8-ジアサビシクロ (5, 4, 0) -ウンデセン-7 (DBU) を用いた場合にはエポキシ基とフェノール性水酸基との反応が主に進行し, テトラフェニルボスホニウムテトラフェニルポレート (TPP-TPB) を用いた場合にはエポキシ基の反応とREの自己縮合反応が同時に進行する. 硬化物の物性では, ノポラック型フェノール樹脂を硬化剤としたエポキシ樹脂系に比べREを硬化剤として用いた系はガラス転移温度, 高温での強度, 弾性率が上昇し, TPP-TPBはDBUに比べこれら物性値を上昇させる効果が大きいことが分かった.
  • 永田 員也, 児玉 総治, 児子 英之, 川崎 仁士, 出来 成人, 水畑 穣
    1992 年 49 巻 8 号 p. 677-685
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    低密度ポリエチレンにグラファイト, 酸化スズなどの導電性粒子を配合し, ロールにて混練し試料を調製した. 充填粒子の形状及び高分子の結晶性が複合材料の構造ならびに電気伝導度に及ぼす影響について検討した. その結果, 板状粒子であるグラファイトを充填した場合, 粒子はロール列理方向に配向し充填されおり, ポリエチレン結晶も充填方向に対応して配向していることが明らかとなった. 複合材料中に連続な導電経路を形成する臨界充填体積はグラファイト充填試料で0.199, 酸化スズ充填試料で0.249であった. 球状で親水性粒子である酸化スズを充填した場合, 粒子は凝集して充填されており, 複合材料中で連続な導電経路を形成している0.25以上の充填量においては, ポリエチレン結晶の配向が認められた. ロール混練時のせん断力で粒子接触による伝導路が形成され, ポリエチレンの結晶化が粒子上で生じていることが見いだされ, 粒子の配列と深く関わっていることが示唆された.
  • 小林 琢磨, 広滝 亀鶴
    1992 年 49 巻 8 号 p. 687-696
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリエステルーポリエーテルブロックポリマー及びポリ (1, 4-ブチレンテレフタレート) とε-カプロラクトンより合成されるブロックポリマーの, 融点に及ぼす樹脂組成の影響について調べた. テレフタル酸, ブタンジオール, 及びポリテトラメチレングリコールで構成される三元系ポリマーは, マクロ相分離を起こさない組成では, ブロックポリマーの融点と, 共重合モル組成との間にFloryの式が成立する. 前記三元系に, さらにイソフタル酸や, 分子量の異なるポリテトラメチレングリコールを共重合した四元系ポリマーについて, マクロ相分離を起こさない組成で, 融点-共重合組成の関係式を求めた. ポリエステルーポリエステルブロックポリマーでは, ソフトセグメントを構成するポリラクトンの末端を, 一方が酸末端他方をグリコール末端とし取り扱うことにより, ポリエーテル系の四元系ポリマーで求めた関係式が適応できる. ポリエーテル系とポリエステル系ポリマーの結晶性を比較した結果, ソフトセグメントが40wt%以上では, ポリエステル系のソフトセグメントの平均連鎖長がポリエーテル系より長くなるが, 結晶分率は低くなる.
  • 大槻 荘一, 足立 公洋
    1992 年 49 巻 8 号 p. 697-702
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    光学的湿度測定法の確立のための基礎データを得ることを目的として, 塩化コバルト (II) を含有する親水性高分子フィルムの含水率及び吸収スペクトルの湿度依存性を測定した. ポリビニルピロリドン中では, 塩化コバルト (II) の吸収スペクトルは, フィルムの吸湿に伴って吸光度の減少とともに, 最大で8nmの吸収極大の長波長シフトを示した. 高分子の極性基はコバルトに配位しフィルムの吸湿に伴って水によって置換されると考えられる. 一方コバルト塩を含有するヒドロキシプロピルセルロース中ではフィルムの吸湿に伴う吸光度の減少を示したが, コバルトと高分子の極性基との錯形成は認められなかった. このフィルムは安定で微細な相分離構造を有し, 可逆的な吸湿によってCo錯体の配位状態の変化を助けると考えられる. また, どちらのフィルムでもコバルト塩の含有率が多いほど高湿度では含水率が著しく大きくなったが低湿度では影響が少なかった.
  • 吉井 正樹, 蔵本 浩樹, 加藤 和典
    1992 年 49 巻 8 号 p. 703-710
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリカーボネート樹脂の射出成形において, 微小な矩形溝 (幅0.55μm, 深さ70nm) への転写性を検討し, 次の結論を得た. (1) 微小幅溝への転写は樹脂のクリープ的な変形成分を含むもので, 樹脂温度, 金型温度を高く, 充填速度, 保圧力を大きく, 保圧時間を長くすることによって, 転写性は向上する. (2) 充填速度, 保圧力が小さく, 保圧時間が短い場合, 樹脂流動の下流の方が上流よりも転写性が悪い. しかし, 充填速度, 保圧力を大きく, 保圧時間を長くすることにより転写性の差はなくなる. (3) 保圧完了からゲート切断までの経過時間が長いほど, ゲートからの樹脂逆流に起因する圧力降下のため転写性は低下する. (4) 微小幅溝への転写モデルを提案した. 成形転写量から, 充填完了時の相当固化層厚みは約100~150nm程度と推定される.
feedback
Top