ナイロン66繊維に高温ゾーン延伸法を適用し, 繊維の高強度・高弾性率化を試み, 得られた繊維について高次構造及び力学的性質を検討した. まず, 延伸温度や延伸張力を変えて高温ゾーン延伸を行い, 延伸倍率 (λ) と複屈折 (Δ
n) の関係から最適延伸条件を求めた. その結果, 1回目の高温ゾーン延伸 (HT-ZD1) は延伸温度を210℃, 延伸張力を29.4MPa, 2回目の延伸 (HT-ZD2) は220℃, 284.2MPa, 及び3回目の延伸 (HT-ZD3) は230℃, 411.6MPaと決定した. 各段階でのHT-ZD繊維のλとΔ
nはしだいに増加し, 両者はほぼ比例関係にある. 最終的にHT-ZD3繊維ではλは7.1倍, Δ
nは74.4×10
-3に達する. 重量分率結晶化度はHT-ZD1の段階で増加し, HT-ZD2及びHT-ZD3ではほとんど変化しない. 結晶配向係数はHT-ZD1繊維で0.980に達し, 1回のゾーン延伸で容易に高度に配向する. 一方, 非晶配向係数はHT-ZD1繊維の0.672からHT-ZD3繊維の0.826まで延伸とともにしだいに増加する. 原繊維のDSC曲線では260℃に融点 (
Tm) が観察されるが, HT-ZD1繊維では
Tmが256℃に低下する. しかし, HT-ZD2繊維では259℃, HT-ZD3繊維では260℃に鋭い融解ピークがそれぞれ観察され, 一度低下した
TmはHT-ZD2及び3で再び上昇する. 25℃における動的弾性率はしだいに増加し, HT-ZD3繊維では13.6GPaに達する. また, この繊維の動的弾性率は240℃においても5.8GPaと高い.
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