高分子論文集
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50 巻, 3 号
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  • 山登 正文, 巽富 美男, 伊藤 栄子
    1993 年 50 巻 3 号 p. 131-136
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンテレフタレートにおけるβ分散の緩和時間, 緩和強度などに及ぼす結晶化の影響を誘電測定から考察することを目的とした. 今まで, 周波数分散における吸収極大周波数fmaxは結晶化の影響をほとんど受けないとされてきたが, 本実験においては結晶化度が増加するにつれて高周波数側にシフトするのが観察された. すなわち, 結晶化度の増加によりβ分散の緩和時間が短くなることを見いだした. また, 緩和強度は非晶の量に比例しており, 結晶化度の増加とともに減少した. 活性化エネルギーには結晶化度依存性はほとんど見られなかった.
  • 岸 克彦, 亀山 敦, 西久保 忠臣
    1993 年 50 巻 3 号 p. 137-145
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリ (グリシジルメタクリレートーメチルメタクリレート) 共重合体とノルボルナジエン (NBD) -2-カルボン酸クリド類との付加反応を行い, 側鎖にNBD残基を有する光エネルギー蓄積・変換高分子を合成した. さらに, 得られたポリマーのUV光照射による光反応の検討を行った. その結果, フィルム状態での光反応では, ポリマー側鎖のNBD残基は照射時間15分で定量的に対応するクワドリシクラン (QC) 化合物へと異性化した. また, この光反応は波長依存性を有し, 異性化反応では320nmの光を, 逆異性化反応では258nmの光を照射した場合に最も効率よく進行することも明らかとなった. 次に, 溶液状態における光反応をジクロロメタン溶液中で行った結果, ポリマー側鎖のNBD残基はフィルム状態と同様に光照射により対応するQC化合物へと定量的に異性化した. また, 触媒としてテトラフェニルポルフィリンーコバルト (II) 錯体を用いた場合の溶液状態での逆異性化反応の検討を行った. その結果, NBDへの逆異性化速度は触媒の添加量を増加させるに従って増大した. また, この反応の速度と触媒の濃度との関係について検討を行った結果, いずれの触媒濃度においても原点を通る直線関係が得られた. このことから, ポリマー側鎖のQC残基の逆異性化の反応速度は触媒の添加量に対して一次であることも明らかとなった.
  • 木下 宏司, 大岡 正隆, 田中 信男, 荒木 長男
    1993 年 50 巻 3 号 p. 147-157
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリウレタン型高分子アゾ開始剤 (PUMAJ) を用いたラジカルブロック共重合の本質を知るため, 解析しやすい化学構造をもっアゾビスアルロール, ジオール, およびジイソシアナ-トの重付加により, まずPUMAIを合成した. このPUMAI中のアゾ基を熱分解してポリウレタンセグメントのキャラクタリゼーションを行った. PUMAIは対応する低分子アゾ開始剤とほぼ同様にスチレンの重合を開始し, ポリウレタンースチレンブロック共重合体 (PU-PS) を与えた. PU-PSを溶媒抽出法で精製したのち, ウレタン結合を分解し, ポリスチレンセグメントについてIR, 1H NMR, GPCによるキャラクタリゼーションを行った. また, PU-PSのフィルム特性を検討した. PU-PSは両種のセグメントがそれぞれ単分散性の高いブロック共重合体であり, 主構成は3~5個の繰り返しセグメントを有するものであると考えられる. 共重合体中のウレタン結合の分解法は水酸基末端をもっ単分散性の高いテレケリックポリスチレンの合成に利用できると考えられる. 溶媒抽出以外に吸着クロマトグラフィーを用いた組成による分別の可能性を示唆した.
  • 芳賀 一雄, 関 桂
    1993 年 50 巻 3 号 p. 159-168
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    塩素化ポリプロピレンの構造解析のため13C NMRスペクトルの一次元的分解を検討した. DEPT法での試みではシグナルピークの分離が不十分で重なりが大きいため, さらに塩素と直接結合している炭素と未置換炭素のシグナルを実験的に分離することを検討した. その結果, パルスシーケンスの再収束時間 (遅延時間, D3) をいずれか一方の炭素のJCHの逆数の値として得られるINEPTスペクトルは, JCH値に対応する炭素シグナルが選択的に消失するが, 他方の炭素のシグナルは解析に十分な強度を有していた. このINEPTスペクトルとDEPTスペクトルの加減算により, 炭素シグナルを結合塩素の数別および結合プロトンの数別に分離することができた. すなわち, RCH3型 (R=アルキル基) , RCH2Cl型, R2CH2型, RGHCl2型, R2CHCl型, およびR3CH型炭素のそれぞれ単独のスペクトルの編集が可能であることを明らかにした.
  • 芳賀 一雄, 芦原 照明, 関 桂
    1993 年 50 巻 3 号 p. 169-177
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    アイソタクチックポリプロピレンの塩素化を行い, 13CNMRスペクトルを用いて塩素の置換位置の定量を行った. シグナルの定量性の確認のために, 反転回復法によりT1を測定をした. 定量計算の基本スペクトルはNOEの影響のないゲートデカップリング付13CNMR法によって得た. シグナルの分離は, 前報に述べたINEPTのJ変調法を用いて行った. また4級炭素のピーク形状および化学シフトの確認のため, APTのJ変調により4級炭素のシグナルを分離した. この結果ポリプロピレンの3級炭素の塩素化によるシフトファクターは47ppmであった. 36. 0% (wt/wt) 塩素化ポリプロピレンの分析結果は, R3CCI: R2CHCI: RCH2Cl: RCHCl2=1. O: 3. 9: 3. 1: 0. 1であった. この結果より得られる塩素組成の値を元素分析値と比較すると1%の誤差で一致しており, J変調によるシグナルの分類がこの種の高分子物質の構造解析に有益であることを確認した.
  • システイン残基を含むポリペプチドの新合成法
    飯塚 靖子, 若松 馨, 大屋 正尚, 林 壽郎, 岩月 誠
    1993 年 50 巻 3 号 p. 179-187
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    システイン (Cys) 残基のメルカプト (SH) 基の保護基としては, ベンジル (Bzl) 基およびカルポベンゾキシ (Z) 基が, 最もよく知られている. 保護基の除去の際, 困難さを伴うために, 今回保護基としてエチルカルバモイル (Ec) 基を選んだ. Cys残基のSH基は, Ec基によれば温和な条件で保護することができる. 同時に, Ec基で保護したCys残基を常法により, 席カルボキシアミノ酸無水物 (NCA) に変えた後に重縮合反応により得られるSH保護ポリアミノ酸はその側鎖から保護基を極めて温和な条件で除去できることを明らかにした. またS-エチルカルバモイル-N-カルポキシシステイン無水物 (Cys (S-Ec) NCA) は, 新規物質であり, これを原料単量体として用いることにより高分子量のシステインの単独重合体または共重合体を安価に工業的に製造できると思われる.
  • 小林 琢磨, 水上 透, 広滝 亀鶴
    1993 年 50 巻 3 号 p. 189-198
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリエステルーポリエーテルブロックポリマーおよびポリ (1, 4-ブチレンテレフタレート) とε-カプロラクトンより合成されるポリエステルーポリエステルブロックポリマーの構造と物性に及ぼす樹脂組成の影響について動的粘弾性, X線回折および透過型電子顕微鏡を用いて調べた. ポリエステルーポリエステルブロックポリマーは融点, Tgとも一つしか持たない. ポリエーテル系のTgはテスト全範囲でGordon-Taylorの式が適応できるがポリエステル系はハードセグメントが50~70wt%の範囲しか適応できない. ブロックポリマーの結晶性を比較すると, ソフトセグメントが40wt%以上でポリエーテル系の結晶化度が高くなる. またポリエステル系はソフトセグメントが75wt%まで高くなると結晶化しハードセグメントは非晶となる. ポリエステル系ブロックポリマーの相状態を透過型電子顕微鏡で観察した結果, 均一なミクロ相分離構造をとることを確認した.
  • 高木 健, 長沼 善昭, 中島 邦彦
    1993 年 50 巻 3 号 p. 199-204
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ナイロン46 (PA46) とポリフェニレンサルファイド (PPS) を相溶化剤を用いずに, 減圧中で溶融混練することによるアロイ化について検討した. この系をAr雰囲気の大気圧中で溶融混練した試料には粗大なPPS粒子が分散しており均一にブレンドされていないのに対し, 減圧中で溶融混練した試料は相溶化剤を用いなくても均一にブレンドされることが明らかとなった. 吸水率の測定を行った結果, 減圧中で作製したポリマーアロイは, Ar雰囲気中で作製したポリマーアロイに比べ吸水率が向上していた. FT-IRによる構造解析およびDSCによる熱分析を行ったが, 高分子間の相互作用に関する知見は得られなかった.
  • 鈴木 章泰, 小林 馨子, 功刀 利夫
    1993 年 50 巻 3 号 p. 205-207
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリ塩化ビニル繊維のネッキングゾーン延伸における臨界ネッキング応力 (σc) と延伸温度 (Td) の関係を調べた. その結果, ガラス転移温度 (Tg=76℃) 以下の温度域でσcTdにほぼ反比例することが確認された. そこで, Tg以下におけるσcTgTdの差 (Tg-Td) についてプロットしたところ良好な直線関係が見いだされ, 次式で示されるような簡単な実験式を得た. σc=C (Tg-Td). なお, この定数CはO. 947MPa・℃-1である. また, ネッキングゾーン延伸繊維の延伸倍率 (λn) と複屈折 (△n) はTdに依存せずほぼ一定値をとり, λnは約1.2倍, △nは約1.3×1O-3である. これらの繊維のTMA曲線では, Tg以下で延伸した繊維の熱収縮を開始する温度 (Tg) はTdにほぼ等しく, 一方, Tg以上で延伸した場合はTsTgが等しい.
  • 1993 年 50 巻 3 号 p. e1
    発行日: 1993年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
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