高分子論文集
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50 巻, 5 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 福冨 兀
    1993 年 50 巻 5 号 p. 353-360
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ミクロゲル集合体がどのような構造を取りうるか研究した. 特にミクロゲル間の反応によって有限のクラスターが生成する条件, およびその有限クラスターが球形になる理由を, 粒子間に働く力をもとに考察した. 粒子間に斥力が働く場合には最終的な生成物の量体分布は非常に狭くなること, 近距離的な引力によって球形でコンパクトな粒子が得られる結果について述べた. ついで粒径分布の狭いミクUゲルの固体構造について, 単成分系と2種混合系で得られている結果について報告した. いずれの場合も規則的に粒子が配列した構造体を得ることができ, 単成分系では面心立方配置が認められ, 成分および粒径とも異なるミクロゲル2種の混合系でLaves相のMgCu2に対応する合金構造が認められた結果について述べる. 混合状態は, 表面部分の組成が大きく影響する結果について述べた.
  • 松岡 孝明, 東 智美, 小島 由継
    1993 年 50 巻 5 号 p. 361-367
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ナイロン6-粘土ハイブリッド (NCH) は, ナイロン6に粘土のモンモリロナイトを幅1000Å, 厚さ10Åの大きさの単位結晶層ごとに分散させた材料である. NCHの特徴の一つに水バリア性がナイロン6に比べて大幅に向上していることが挙げられる. これは, 粘土が板状で射出成形品表面に平行に配向分散しているためにNCHの水拡散係数が低下したものと考えられている. そこで, NCHの水バリア性を予測するために, NCHを板状粒子分散系複合材料と見なしてNCH内における水の拡散挙動を有限要素法によって数値解析した. その結果 (1) 有限要素法解析によってNCHの拡散係数を定量的に予測できる, (2) NCHの拡散係数は粘土の体積分率, 幅配向, 配列に依存している, (3) NCHの水バリア性向上は主に配向した粘土の障害物効果に起因していることを明らかにした.
  • 中尾 泰志, 田中 剛, 籔田 元志, 冨永 章
    1993 年 50 巻 5 号 p. 369-373
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    非水ポリマーディスパージョン (NAD) は高分子分散安定剤の立体反発力によって, サブミクロンオーダーのポリマー微粒子が有機液体中に安定に分散されたものである. 本研究はNADの粒子組成の違いによる粒子間相互作用に着目したものであり, 粒子成分にアミノ基やカルボキシル基のような正または負の電荷を有すると思われる官能基を導入したNADを合成し, それらの混合系の粘度を調べた, 正電荷NAD, 負電荷NADそれぞれ単独ではニュートニアンであるが, 混合系は明らかな凝集現象を示した. 粒子間の凝集は粒子成分の官能基量, および分散安定剤/粒子比に大きく依存するとともに, 高分子分散安定剤の存在のために可逆的であることがわかった. また混合前にいずれか一方の電荷をあらかじめ中和することにより, 混合系の粘度のコントロールが可能なことがわかった.
  • 山崎 信助, 服部 滋
    1993 年 50 巻 5 号 p. 375-382
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    有機ポリマーと無機ガラスとのハイブリッド化は, 両者の欠点を相補し, 両者の特性を併せ持つ新材料として期待される. 水分散系の高分子ミクロスフェアとして超微粒子の粒子内部が適度に架橋しているアクリル系の反応性ミクロゲルとシリカガラスの前駆体のテトラエトキシシランとを直接乳化混合した系で, ゾルーゲル法によるシリカガラスとのハイブリッド体合成と得られたハイブリッド体の物性および微細構造について検討した. その結果, シリカガラスとのハイブリッド化によって反応性ミクロゲルは著しく高性能化され, 自然乾燥するだけで, 三次元架橋した高光沢性で耐水, 耐溶剤性, 耐熱性の改善された皮膜が形成されることを認めた. また, 生成皮膜の強度は著しく増し, 高い弾性率と400%近くの伸び率を有するフレキシブルで強靱な皮膜が形成されることを認めた.
  • 林 貞男, 小松 昭彦, 井手本 憲二, 平井 利博
    1993 年 50 巻 5 号 p. 383-390
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    単分散ポリ酢酸ビニルラテックス粒子の沈積層に見いだされる粒子の秩序構造と無秩序構造を走査型電顕で観察し, それらの構造の制御を研究した. 精製したラテックスからは粒子が規則正しく配列した秩序構造だけの沈積層が, 塩の存在したラテックスからは無秩序構造が面の内部に面に平行にサンドイッチ状に形成した沈積層が得られた. その無秩序構造の層の厚さは塩の濃度に依存して増大した. 蓋を施してラテックス粒子を長時間沈降した後の乾燥では塩の濃度には無関係に秩序構造だけの沈積層が, 短時間の沈降での乾燥では上層部に無秩序構造の, 下層部に秩序構造の組み合わさった沈積層が形成した. これらの構造の形成機構はラテックスからの水の蒸発速度とポリマー粒子の沈降速度から説明づけられ, PVAcラテックス粒子の沈積構造の制御が可能になった.
  • 藤井 泰行, 伊藤 公一, 柳ヶ瀬 昭, 山本 直己
    1993 年 50 巻 5 号 p. 391-395
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    乳化重縮合により得られたラジカル重合性の官能基を含んだシリコーンラテックスにアルキルアクリレートを加えラジカル重合で複合ゴムとした後, アルキルメタクリレートをグラフト重合した. 得られたシリコーン/アクリル複合ゴムグラフト共重合体のモルホロジー解析を透過型電子顕微鏡 (TEM) 観察により実施しシリコーン/アクリル複合ゴムの重合条件との関連を検討した. その結果, シリコーンとアクリルとの複雑な相分離形態が確認され, さらにシリコーン/アクリル複合ゴムの重合手法および組成がモルホロジーに大きく作用することがわかった.
  • 橋谷 茂雄, 高嶋 康隆, 松尾 斗伍郎
    1993 年 50 巻 5 号 p. 397-402
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    我々が先に開発した迅速角度走査型光散乱光度計を用いて, スチレンおよびメタクリル酸メチル (MMA) の無乳化剤系乳化重合過程を調べた. 極初期の粒子形成過程を観測するために, 主に2s/scanの走査速度で, 20°から160°の角度範囲の散乱強度について重合過程中の変化を測定した, 散乱強度は, 重合初期に予期しなかった異常な角度分布をもった曲線から, やがてGuiRierの近似よって表せる曲線へと変化した. この極初期の大きな角度依存性は, 粒子核形成期に系中で生成する微小粒子の濃度ゆらぎによると推測できる. 光散乱測定データのうちGuinierの近似が成立し, 球形粒子と見なせるものについて, 粒子径および粒子数の時間変化を求めた. 重合時間とともに粒子径は単調に増加し, 粒子数は減少する傾向を示してやがて一定値に収束する. 最終の粒子数は, スチレンとMMAにおいて, モノマーの種類や濃度に無関係に1011のオーダーの値を与える.
  • 城戸 浩胤, 園田 英博, 塚越 一彦, 前田 瑞夫, 高木 誠, 牧 秀志, 宮島 徹
    1993 年 50 巻 5 号 p. 403-410
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    最近, 我々は新規な鋳型重合法として界面鋳型重合を考案した. Cu2+型樹脂は, 配位性官能基を有する界面活性剤としてオレイン酸, 樹脂形成モノマーとしてジビニルベンゼンを用いて合成した. この樹脂は非鋳型樹脂に比べて, 低濃度領域 ([Cu2+] =14-8~10-6mol・dm-3) において特徴的なCu2+錯生成挙動を示した. すなわち鋳型樹脂のCu2+吸着能は非鋳型樹脂と比べると103倍高かった. この高い吸着能は“鋳型効果”と密接な関係があると考えられる. したがって, さまざまな合成条件の下に樹脂を合成し, 得られた樹脂の錯生成平衡を電位差法で調べた. その結果, 開始剤の種類, エマルジョン中の水/油の比, および鋳型金属の性質などさまざまな因子が, この錯生成挙動に大きく影響することがわかった. 金属イオンの吸着平衡に及ぼす共存塩の影響を検討することにより, 樹脂表面上のオレイン酸炭化水素鎖の動きやすさなどの表面構造が鋳型効果の発現に密接に関係していることが示唆された. また本系では多座配位型の錯体形成が“鋳型効果”の必須条件になっていると考えられる.
  • 滝沢 稔, 星川 真樹, 福冨 兀
    1993 年 50 巻 5 号 p. 411-416
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    エタノール中, アンモニア-H2Oで加水分解してシリカ微粒子が生成する機構について研究した. 走査型電子顕微鏡の観察領域 (50~500nm) では, 粒子は等方的に生長し, ほぼ真球の生成物を与え, かっ成長粒子数は一定である. Tetra Ethyl Ortho Silicate (TEOS) 初期濃度によって生長粒子の数は変わらず, アンモニア濃度増加とともに生長粒子数は減少する結果が得られた. これらの結果より粒子生長はオストワルド機構によること, およびアンモニアの濃度が高くなると, 微小粒子の加水分解反応が早くなり, 従来知られている反応機構に従って, 反応生長粒子の数は減少すると仮定すれば得られた諸結果をよく説明できることが分かった.
  • 粕谷 裕司, 宮本 正樹, 清水 一弘, 藤本 啓二, 大高 章, 舩越 奨, 藤井 信孝, 川口 春馬
    1993 年 50 巻 5 号 p. 417-423
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    細胞接着活性をもつペプチドRGDSを固定することにより, ミクロスフェアに生物特異的な活性を付与することを試みた. 種々の固定化法を比較・検討し, 目的物を得ることができた. このミクロスフェアを白血球浮遊液に加えたところ, 特異な酸素消費がみられた. この現象は, スペーサーを介してRGDSを固定したミクロスフェアにおいて, より顕著であった. しかしなが図レファレンスのミクロスフェアと被貧食量は違わなかった. これらの結果より, 固定化RGDSは単にミクロスフェアの細胞に対する親和性を向上させて貧食を促進するのではなく, 生物特異的な接着シグナルを細胞に与え, 白血球の活性化を引き起こすことが明らかとなった. さらに遊離のRGDSは単独では全く酸素消費を引き起こさなかったことから, RGDSは固定化されることで細胞を活性化する機能を発現することが示唆された.
  • 村松 一郎, 加瀬 光雄, 小越 昇
    1993 年 50 巻 5 号 p. 425-430
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    微粒子の重要な特性の一つである, 粒度分布の形状を数値で表現することを目的とし, 平均粒径が10~25 (μm) のウレタン系ポリマービーズを試料とし, ワイブル確率分布の形状パラメーター, mで粒度分布を評価する方法について考察した. 測定はレーザー回折法により行い, 得られた測定データを変換処理した後, 市販のソフトによりパソコンで計算し, 標準偏差とmの値を求めた. ワイブル確率分布は主に信頼性工学の中で寿命データ解析に用いられ, 良く知られている分布であり, mの値が小さいと粒度分布が広いことを示す. 解析の結果, 標準偏差などの従来の値の順と燐のそれとは一致しない場合が認められたが, mが最も正確に粒度分布の形状を表現している. また, ワイブルプロットにおける直線性が低い場合には, 位置パラメーター, γの導入によって, 直線性を向上させることも可能である.
  • 赤澤 太朗, 藤本 啓二, 川口 春馬
    1993 年 50 巻 5 号 p. 431-435
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    アクリルアミド, グリシジルメタクリレート, メチレンビスアクリルアミドを水/エタノーノレ溶液中で重合することにより単分散ハイドロゲル粒子が得られた. この粒子に, 親水性スべーサーを介して, C反応性タンパク質 (CRP) の抗体を固定した. このラテックスはCRPの共存下で抗原抗体反応に起因するラテックス凝集反応を起こし, CRPの濃度に応じた吸光度変化を示した. また, 粒子は, 非特異吸着やリウマチ因子による凝集反応を起こしにくいことも明らかになった. したがって, このハイドロゲル粒子はラテックス診断薬用担体として有用であると結論した.
  • 後藤 和生, 野口 徹, 村上 晋, 山口 良雄, 出来 成人
    1993 年 50 巻 5 号 p. 437-441
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    真空蒸着法により作製されたナイロン11膜上に, Auを真空蒸着して得られるAu/ナイロン積層体を熱処理することで, 1~10nmの粒径分布を持つAu超微粒子がナイロン11中に凝集することなく均一に分散した材料を作製することができた. 我々はこの方法を「Relaxative Auto-Dispersion Process; RAD法」と名付けた. Au超微粒子の分散現象は, ナイロン蒸着膜のα分散温度以上, 融点以下で起こり, 例えば, 120℃で4分間熱処理を行った場合, Au超微粒子は厚さ30μmのナイロン蒸着膜全体に均一な濃度で分散した. この分散現象は, 真空蒸着により準安定な状態で固定されたナイロン分子が, 熱処理により安定な状態に緩和する際の分子運動に起因すると考えられる. 次にRAD法により得られたAu超微粒子ナイロン11 (Au-ナイロン) 複合体をm-クレゾールに溶解し, さらにガラス粉を混合した. 得られたペースト状物をアルミナ焼結体上に印刷し乾燥した後, 600℃で30分間焼成しガラス状フィルムとした. TiO2, あるいはAl2O3を含有したガラス粉を使用した場合, Au微結晶は粒成長せずガラス中に固定され, Auのプラズモンバンドは長波長側にシフトした. これらの結果から, Au微結晶の固定はAu微結晶とTiO2, あるいはA12O3の間の強い相互作用により生じるものと推定される.
  • 白浜 博幸, 矢野 由美子, 飯田 千奈美, 安田 源
    1993 年 50 巻 5 号 p. 443-450
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ソープフリー乳化重合による高分子マイクロスフィアの合成においては重合系が不安定になりやすいことから, マイクロスフィア生成過程における物性などの検討はこれまであまりなされていない. 本研究では, 粒子径分子量 (分布) , ゼータ (ζ) 電位などを測定することにより, ポリスチレン (PS) マイクロスフィアの生成過程について詳細な検討を行った. さらに, マイクロスフィアの特徴を利用した応用例として, タンパク質 (コラーゲン) の各種マイクロスフィアへの吸着性についても調べた. その結果, スチレンのソープフリー重合においては, 生じたポリマー粒子の粒子間凝集が重合初期に顕著に起こり, マイクロスフィアの粒子径が急激に増大することや, 粒子表面に新たな電荷が導入されることなどが実験的にも理論的にも明らかにされた. また, コラーゲンの吸着性はマイクロスフィアの表面特性に強く依存して変化することがわかり, このことは, アフィニティー評価材料としてのマイクロスフィアの有用性を示す結果となった.
  • 黒川 洋一, 今井 良香
    1993 年 50 巻 5 号 p. 451-454
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ゲル膜を介して反応液を接触させる対向拡散法により多孔性ポリビニルアルコール (PVA) ゲル膜中にAg微粒子を分散させた. Ag微粒子分散膜はいずれも420nm近辺に単分散微粒子のプラズモンの吸収を示し, 粒子の凝集が進むにつれて長波長側に幅広い吸収を示した. Ag微粒子が凝集分散している膜でSERSの測定を試みたところ吸着種の強いバンドが観測された.
  • 塚越 一彦, Yu Kaiyu, 前田 瑞夫, 高木 誠
    1993 年 50 巻 5 号 p. 455-458
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    Co (II) -鋳型ミクロスフェアの金属イオン吸着特性を調べた. 鋳型樹脂は, 著者らが開発した “Surface Imprinting”法に基づいて合成した. まず, Co (II) -鋳型ミクロスフェアへのZn (II) の吸着を従来法の条件のもとで調べ, 錯体構造との関連からth (II) -鋳型効果を間接的に議論した. さらに, イオン吸着性の評価について新しい実験系を工夫し, Co (II) -鋳型ミクロスフェアが非鋳型ミクロスフェアに比べより多くのCo (II) を吸着することを示した. これらの結果より, 鋳型ミクロスフェアにおけるth (II) -鋳型効果が確認された. “Surface Imprinting”により鋳型構造が樹脂表面に保持されることで鋳型効果が正確に吸着特性に反映された結果, このようなCo (II) -鋳型効果の証明が可能になったと考えられる.
  • 伊藤 研策, 村本 禎, 北野 博巳, 島崎 長一郎
    1993 年 50 巻 5 号 p. 459-461
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    細胞間の特異的認識・会合過程における非特異的相互作用の役割を解明するため, 高分子微粒子界面間の凝集過程を調査した. 従来用いられてきた分光法などによる間接的な方法ではなく, 光学顕微鏡による凝集過程の直接観察および画像解析法を採用した. この方法によれば, 凝集速度の測定のみならず, 界面近傍における高分子微粒子の運動を解析することにより, 相互作用の影響範囲などを評価することが可能である. 本報告では, 粒子界面間の静電的相互作用による凝集過程を解析し, 粒子間凝集の解析結果と比較した. 異符号に帯電した粒子界面間では, 同符号粒子界面間ではみられなかった凝集の加速効果や特徴的な粒子運動が観測された.
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