高分子論文集
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50 巻, 7 号
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  • 渡辺 庄司, 国岡 正雄, 渡辺 寧
    1993 年 50 巻 7 号 p. 537-541
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    高分子材料の特性と海生生物汚損性の相関性を調べるために, 代表的な高分子材料, テフロン (PTFE) , ポリエチレン (PE) , ポリカーポネー (PC) , ポリメチルメタクリレート (PMMA) , 塩化ビニル (PVC) , 6-ナイロン (PA) を選び, 茨城県平磯において実海域浸漬試験を行った. また, PE, PC, PMMA, FVC, PA, およびシリコン樹脂 (Si) へのムラサキイガイのベディベリジャー幼生の着床性試験を行った. 実海域浸漬初期には主としてスライムが形成され, その時期をすぎるとアオサ, イギスなどの大型藻類, ムラサキイガイ, フジッボ, カキなどの大型動物種が群居して付着する. 材料の海生生物汚損性は材料の表面特性にある程度依存する. 高分子材料の汚損には, 少なくとも高分子と汚損動物・植物種との間の疎水的相互作用, 高分子の永久双極子間力 (極性力) 成分および分散力成分と汚損動物・植物種との間の相互作用が働くものと考えられる.
  • 小林 琢磨, 水上 透
    1993 年 50 巻 7 号 p. 543-549
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    ポリ (1,4-ブチレンテレフタレート) とε-カプロラクトンより合成されるポリエステルーポリエステルブロックポリマーの耐熱老化性について調べた. この結果をハードセグメナントがポリ (1, 4-ブチレンテレフタレート) , ソフトセグメントがポリテトラメチレングリコールからなるポリエステルーポリエーテルブロックポリマーについてのものと比較した. 熱処理温度はポリエーテル系の連続使用可能温度より40℃高い140℃で加速テストしたポリエステルーポリエステルブロックポリマーの破断強度, 伸度保持率, および粘度保持率はポリエステルーポリエーテルブロックポリマーより優れている. 耐熱性向上のためラジカル補足剤を添加するとポリエステルーポリエーテルブロックポリマーは効果があるが, ポリエステルーポエステルブロックポリマーでは効果は認められない. ポリエステルーポリエステルブロックポリマーの融点, 結晶化温度は23日間の熱処理では変わらない. 広角X線回析より, 熱処理によりBragg角2θが16°と25°の回析ピークの強度が増加するのが認められる. ポリマーの結晶度指数は熱処理日数が増加すると高くなり, 比重の増加挙動と一致する.
  • 林藤 克彦, 吉松 明
    1993 年 50 巻 7 号 p. 551-555
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    液晶層の均一性を左右するスべ一サとして, 単分散性が高い高分子微粒子を応用した報告例はない. 本研究では, 促進拡散シード重合法 (ADシード重合法) により得られた単分散ポリマービーズを微小圧縮試験機を用いてその粒子1個の圧縮挙動を測定した. この荷重一変位の関係から, スべーサ1個の強度を示す指標となる10%圧縮弾性率を定義するとともに, 粒子径分布, 圧縮弾性率または, 散布個数を考慮した系でスべーサ粒子とパネルのセル厚との関係についてシミュレーションを行った. その結果, 1) 単分散性が高いスペーサほどビーズ散布個数の変動に対してもセル厚の乱れが少ない, 2) 圧縮弾性率が高く粒子径分布が狭いスペーサほど優れたセル厚の均一性を発揮することが確認できた. さらに, これらの結果と実際のパネル組立後の評価結果とが良い一致を示した.
  • 堀江 治之, 朱山 秀雄, 大石 勉
    1993 年 50 巻 7 号 p. 557-563
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    モノブロモスチレンおよびジブロモスチレンの位置異性体混合物の重合挙動を検討した. 液体クロマトグラフィー (HPLC) を用いて重合溶液中に残存する各異性体の組成比を測定し, 相対的な重合速度の関係を求めた. ブロモスチレンの重合速度は単に臭素置換数によって決まるのではなく, その置換する位置に大きく影響されることがわかった. すなわち, その影響の度合いはオルト位>メタ位>パラ位の順になり, Br基が複数置換した場合にもこの関係は成立し, ジブロモスチレンでは2,5-体>2,4-体 (+2,3-体) >3,4-体の順となった.
  • 芹田 元, 村井 幸一
    1993 年 50 巻 7 号 p. 565-570
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    アイオネンのグラフト共重合体を2-ヒドロキシ-3-アイオネンにアクリルアミドをグラフト重合することにより合成した. 5%カオリン懸濁液に対する凝集作用を沈降速度, 沈降容積および残留濁度を測定することにより, その構造との関連において検討した. 得られた結果は次のとおりである. 1) いずれの共重合体においても, 最適共重合体の添加濃度は20~50ppmであった. 2) グラフと鎖長 (F2) および分子量の増加に伴って凝集作用は増加した. 3) pH 2~12の範囲で良好な凝集効果を示し, 最適な凝集作用はpH 6~6.5 (等電点) で認められた. 4) 共重合体添加量とζ電位との関係については, 20ppmの共重合体の添加濃度のところに等電点が認められた. 5) 本共重合体は高分子凝集剤として代表的な市販品のSumi Floc FC, Himoloc Neo600, およびPAS-Aと比較して遜色のない性能を示した.
  • 藤本 悦子, 中村 邦雄
    1993 年 50 巻 7 号 p. 571-576
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    本研究は312nmの紫外線を照射した1, 2-ポリブタジエン (1, 2-PBD) について, 動的粘弾性測定, 示差走査熱量測定, ゲルパーミエーションクロマトグラフィによる分子量および分子量分布さらに全反射赤外吸収スペクトル測定を行い, それらの解析から1, 2-PBDの光分解の機構を明らかにした. すなわち, 1, 2-PBDの側鎖のビニル基が紫外線を吸収してπ-π*励起されてラジカルとなり, そのラジカルの一部は光酸化されてカルポニル基を生じる. カルポニルのγ炭素上に水素原子があるので, 紫外線によりn-π*励起され, Nonish II型光分解機構によって主鎖が切断されて低分子量化される. ラジカルの他の部分は架橋反応や環化反応などによる再結合により高分子量化される. このようにして1, 2-PBDは光によつて崩壊されることを明らかにした.
  • 山下 純, 亀山 敦, 西久保 忠臣, 福田 和吉, 友井 正男
    1993 年 50 巻 7 号 p. 577-582
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    触媒として側鎖にクラウンエーテル残基を有する架橋ポリスチレンビーズと種々の金属塩を用いた, エポキシ化合物と二酸化炭素との付加反応による環状カーボナートの合成について検討を行った. その結果, 一般の有機溶媒中においては, この付加反応はほとんど進行しなかったが, DMFなどの非プロトン性極性溶媒中においてはよく進行した. また, 非プロトン性極性溶媒中においては, 金属塩を単独で用いた場合においても, この付加反応は進行するが, 高分子クラウンエーテルを添加することにより, 生成する環状カーボナートの収率が向上した. さらに触媒の再使用についても検討を行った. その結果, 反応終了後回収した触媒に金属塩を添加して用いることにより, 触媒活性の低下なしに, 再使用が可能なことが判明した.
  • 鈴木 章泰, 桐原 浩司, 功刀 利夫
    1993 年 50 巻 7 号 p. 583-586
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    振動熱処理法をポリアリレート繊維に適用し, この方法が力学的性質を向上させるのに効果的であることが分かった. この振動熱処理は2回行い, 第1回目の振動熱処理 (VA1) の処理温度と処理張力は200℃と76MPa第2回目 (VA2) では200℃と84MPaとした. なお, 振動周波数は100Hz振幅は5μmとして行った. 得られた繊維の動的粘弾性を測定した結果, 原繊維の25℃おける動的弾性率は49GPa, VA1繊維では69GPa, VA2繊維では83GPaに達し, 処理回数とともに動的弾性率は増加する. これら繊維のtanδ-温度曲線では60℃付近に主分散ピークが現れ, ピーク強度は原繊維VA1繊維およびVA2繊維の順に小さくなる. また, TMA測定では原繊維は50℃から100℃の温度域で段階状に熱収縮するが, VAl繊維およびVA2繊維では徐々に熱収縮する. 最終的に190℃における熱収縮率は原繊維ではO. 48%, VA1繊維では0.47%, およびVA2繊維では0.42%といずれもわずかである.
  • 松原 凱男, 森光 太郎, 上澤 俊治, 吉原 正邦, 前嶋 俊壽
    1993 年 50 巻 7 号 p. 587-590
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    光学活性ポリ-l-メンチルメタクリレート (PMnMA) およびポリ- (-) -ボルニルメタクリレート (PBoMA) を担体として, 一価銅イオンを担持させ, このものとアスコルビン酸混合系を不均一系触媒として, pH4.0硫酸水溶液とアセトンの混合溶液中, アルゴン雰囲気下, 1-クロロ-2-ブテンの不斉水酸化反応を検討した結果, 光学活性の1-ブテン-3-オールを得た. これらの結果と, 同様な条件下で行ったアスコルビン酸と光学活性物質 (l-メンチルアセテート, (-) -ボルニルアセテートなど) を用いる均一系触媒の結果とを比較検討したところ, 高分子担体を用いた系は, 用いない系に比べて高い不斉導入を示した. この結果は, おそらく, 高分子担体表面の疎水的なミクロ環境により反応基質と光学活性なリガンドとの安定化された相互作用の効果と推測されるとともに, 反応中間にπ-アリル銅クロリド錯体を経由する触媒活性を示すものと思われる.
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