高分子論文集
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51 巻, 1 号
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  • 藤森 行雄, 金子 隆司, 西出 宏之, 土田 英俊
    1994 年 51 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ジメタクリレートで橋かけしたポリメタクリル酸によるカルシウムイオンの吸着は, Langmuir式に従い, 膨潤した樹脂での飽和吸着量から組成 [-COO-] 2Ca2+での結合と大きな安定度定数 (104l/mol) 示された. 樹脂のカルボキシル基はエナメル質のカルシウムとも結合し, 樹脂はエナメル質を良好に吸着した.
  • 鈴木 章泰, 小林 馨子, 功刀 利夫
    1994 年 51 巻 1 号 p. 5-10
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリ (エチレンテレフタレート) 繊維のネッキングゾーン延伸における臨界ネッキング応力 (σc) と延伸温度 (Td) との間には, ガラス転移温度 (Tg=75℃) 以下でほぼ直線関係が成立することが確認された. また, この温度域では, σcと (Tg-Td) との間に次式で示されるような簡単な実験式を得. c=C (Tg-Td). なお, この定数Cは0.546MPa・℃-1であった. σcで延伸した繊維のネッキング延伸倍率は3倍から5倍の範囲内にあ, Tdが高いほど延伸倍率は大きくなる傾向にある。一方, 複屈折はTdの低下とともにほぼ直線的に増加し, Td=102℃で延伸した繊維では0.008と低いが, Td=65℃では0.150と最も高い値を示す. Tg以上で延伸した繊維には結晶生成が認められないが, Tg以下の延伸では配向結晶化により微結晶が生成している. また, Tdが低いほど結晶化度及び晶配向性が高いことが, 広角X線回折写真から確認された. Tg以下で延伸した繊維の動的弾性率-温度曲線には皮革状領域が存在するか, Tg以上で延伸した繊維ではこの領域が存在しない. また, Td=65℃で延伸した繊維の20℃における動的弾性率は6.8GPaと最も高く, Tdが高くなると順次低下し, Td=94℃の延伸繊維では2.0GPaと低い.
  • 鈴木 佳太, 江崎 元勇, 三沢 明弘, 高木 幹夫
    1994 年 51 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    酸触媒によるトリエトキシシリル末端ポリスチレン (TESi-PS) の縮合反応を種々の条件で行った. ハロゲン化水素酸やスルホン酸は縮合反応の触媒として高活性を示した. これに対し, トリフルオロ酢酸は低活性であり, その場合, 溶媒の種類により反応速度の差が顕著にみられた. 例えば, テトラヒドロフラン (THF) を用いると反応は遅いが, ニトロベンゼンやジクロロエタンなどの溶媒では速やかに進行した. TESi-PSの縮合反応は, 末端エトキシ基の加水分解が律速段階で, 加水分解後は速やかにシラノール基の脱水縮合が起きていることが示唆された. 縮合生成物の重合度は, 用いた触媒や溶媒の種類によって異なり, 硝酸/THF系では2量体が生成し, 塩酸/THF系やメタンスルホン酸/THF系では3量体が, リン酸/THF系やメタンスルホン酸/ジクロロエタン系では4量体が生成した. これら縮合生成物はいずれも単分散性に優れていた (Mw/Mn≅ 1.07).
  • 丹羽 貴裕, 水上 潤, 長谷川 智, 杉本 雅信, 日比 貞雄
    1994 年 51 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリ (エチレンテレフタラート) (PET) シートはTダイ押出しで準備された. PETシートはカレンダーロールを用いて100℃で圧延された. 圧延されたフィルムは温度200℃で3時間熱処理された. 未熱処理および熱処理圧延フィルムの広角X線回折写真および極図は, 回折面の配向を調査するのに測定された. PET分子鎖中のベンゼン環を含む (100) 面法線の配向分布は, フィルムの厚さ方向への強い選択配向を示した. 引張りの測定は, ロール圧延未熱処理および熱処理PETフィルムのヤング率および降伏応力の異方性を求めるのに行われた. ヤング率と降伏応力の間の良い相関関係が, ロール圧延未熱処理および熱処理フィルムで認められた. ロール圧延未熱処理フィルムは, さらに厚さが一定でOff-axis angle再延伸倍率3.0倍延伸された. 再延伸フィルムは200℃で3時間熱処理を施された. このように再延伸されたフィルムの極図は配向機構を調査するのに求められた.
  • 高橋 利禎, 青山 かおり, 馬 石平, 辻 正晴, 桜井 謙資
    1994 年 51 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    全芳香族の熱可塑性ポリイミド (TPI) の高次構造を偏光顕微鏡法, 広角X線回折 (WAXD) 法, 小角X線回折 (SAXD) 法などを用いて研究した. 分子量 (Mw) が3490から85800の7種のTPIを用いた. TPI (Mw=3490, 6050, 6500) は結晶化してヘドライト, 楕円構造, 球晶的構造などを形成した. それらの構造は分子量が大になるにつれて複雑になった. TPI (Mw=23900) は小さな負の球晶を形成したが, TPI (Mw=35100) は微細な複屈折を示す構造を形成した. TPI (Mw=55600~85800) は溶融状態からは結晶化しないことがWAXD法により確かめられた. ラメラの厚さはSAXD図における長周期より決定された. TPI (Mw=3490) のラメラの厚さは伸張状態の分子鎖長にほぼ等しかったが, 分子量が6050から35100のTPIのラメラの厚さはほぼ同じであった. これらの結果は約20nm以上のTPIの分子鎖は結晶表面で折りたたまれて折りたたみ鎖結晶を形成するとして説明される.
  • 垣下 智成, 吉武 淳也, 松本 喜代一, 清造 剛
    1994 年 51 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    フォトクロミック化合物1, 3, 3-トリメチルスピロ [インドリン-2, 3' (3H) ナフト [2, 1-b] [1, 4] オキサジン] (TM-SNO) とその9'-置換体3種類をポリメチルメタクリレート (PMMA) 中にトルエンで溶解キャストさせたフィルムについて, それぞれUV照射後に出現する可視部極大吸光度の消色過程に及ぼす高分子鎖の配向様式と配向度の影響を速度論的に検討した. 製膜後, 各試料フィルムは無色であるが, UV (100W高圧水銀灯) 60s照射によって可視部約600nmに極大吸光度を持つ青色を呈した. それは室温暗所で消色し, 9'-ヘキサフルオロブロペントリマー置換体 (TM-Rf-SNO) のみは他と異なり, その速度が遅かった. いずれのフィルムも, この消色減衰曲線における吸光度 (A) の逆数を時間に対してプロットすると, 直線関係となり, この傾き (k) を消色速度のパラメーターとした. 各種延伸法における延伸倍率の増大はな値の増大を伴った. 以上の消色過程の解析結果を, 延伸フィルムの高分子鎖の絡まりの観点から考察した.
  • 呂 奏洪, 朝倉 哲郎
    1994 年 51 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    通常の固体高分解能15N CP-MAS NMRでは消去される固体15N NMR化学シフトテンノルの異方性に着目した新しい固体15N NMR解析手法を提案した. 特に, アミド系配向高分子の繊維軸とアミド基のNHならびにNC′の間の角度を決定するための理論式を誘導した.
  • 呂 奏洪, 出村 誠, 小中沢 岳仁, 朝倉 哲郎, 伊藤 卓郎, 藤戸 輝昭, 今成 司
    1994 年 51 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    三種のポリアミド系繊維, 絹フィブロイン, poly (p-phenylene-terephthalamide) (PPTA), poly (mphenylene-isophthalamide) (PMIA) の配向ブロック試料を作製し, 磁場に平行と垂直な15N CP NMRスペクトルを測定した. 前報で誘導したポリアミド系繊維構造解析のための理論式を用いて, 構造パラメーターを決定した. 特に, 非晶部の定量的な構造解析が本手法を用いて可能であった.
  • 坂見 宏, 金 平
    1994 年 51 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    高結晶性ポリプロピレン (PP), 液体パラフィン (Pa), およびシリカ粒子 (SiO2) から成る混合物を種々の倍率に圧延して, Paを有機溶媒により抽出して, PP層間に微細孔を形成させた. その多孔質PPの微細構造を見掛けの比容, 窒素吸着後の脱離による表面積測定および小角X線測定により検討した. 多孔質PPフィルムはPaとの混合比 (MR) が0.20~1.00に調整し, 圧延温度が125℃の条件で圧延倍率 (RR, 厚さ比) を5~20倍に圧延すると圧延方向に層状の空孔を形成した. そのうちMRが0.67でRRが20の条件では240mm2/gの大きい表面積が得られた. PP配向層 (ホスト) の間のPa中においてSiO2はゲストとしてランダムに分散した. 20倍に圧延した最も微細な空孔では84Åのホストと94Åの層状孔が多量に積み重なった構造であった. それらはホスト層間にゲストがintercalationして層状孔の支柱を形成すると推察された.
  • 垣下 智成, 松村 賢次, 吉武 淳也, 松本 喜代一, 清造 剛
    1994 年 51 巻 1 号 p. 59-67
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    1, 3, 3-トリメチルースピロ (インドリン-2, 3′ [3H] -9′-ヒドロキシナフト [2, 1-b] [1, 4] オキサジン (TM-H-SNO) とグリシジルメタクリレート共重合体 (GMA) との反応を行い, 反応物のフォトクロミズムを検討した. 反応はN. N′-ジメチルホルムアミド (DMF) 中で, 塩化ベンジルトリメチルアンモニウム触媒を用い, GMAのエポキシ基197mmol/1に対して, TM-H-SNO 19.7 mmol/1の濃度比にて, 57~75℃の温度で行い, 精製後, NMRスペクトルによって確認定量した. 反応速度は一次式に従い, その活性化エネルギーは約25kcal/molであった. 反応率が高いキャストフィルムでは, UV未照射時には550nm以下の吸収が増大し, UV 1min照射時には約606nmに出現する極大吸収の吸光度は反応量と比例しなかった. UV 5min照射では, キャスト溶媒によって約568nmまたは606nmに極大吸収が出現し, その吸光度は1min照射時より増大した. この現象は反応TM-H-SNOの高分子鎖間での拘束状態 (異性体) の相違のためと推定して, 加熱架橋および溶媒膨潤等の観点から考察した.
  • 近田 淳雄, 大越 豊, 高橋 秀吏, 清水 義雄
    1994 年 51 巻 1 号 p. 69-72
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    炭素繊維と, マトリックス樹脂との界面から繊維の半径方向に1次元的に成長する結晶 (トランスクリスタル) の形態を偏光顕微鏡で観察するとともに, その分率と厚さを定量化した. 炭素繊維表面がトランスクリスタルによって覆われている割合は冷却速度の影響をあまり受けず, いずれもPAN系よりもピッチ系炭素繊維の方が高く, マトリックス樹脂についてはポリ (エチレンテレフタレート) (PET), ポリ (フェニレンサルファイド) (PPS), ポリ (エーテルエーテルケトン) (PEEK) 150G, PEEK 450Gの順で高かった.
  • 沢田 英夫, 須山 修治
    1994 年 51 巻 1 号 p. 73-75
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ピリジン存在下, 2, 5-ジメチル-2, 5-ジヒドロペルオキシヘキサンとヘプタフルオロブチリルクロリドとの反応により新規な2官能性含フッ素過酸エステルの2, 5-ジメチル-2, 5-ビス (ヘプタフルオロブチリルペルオキシ) ヘキサン (2, 5-DFH) の合成を行った. 2, 5-DFHの熱分解速度は, 通常の1官能性含フッ素過酸エステルであるt-ブチルペルオキシヘプタフルオロブチレート [C3F7CO2OC (CH3) 3; TBH] のそより高まる傾向にあることがわかった. 2, 5-DFHはTBHと同様, スチレンのラジカル重合開始剤として有用であることが示唆された.
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