ポリ (エチレンテレフタレート) 繊維のネッキングゾーン延伸における臨界ネッキング応力 (σ
c) と延伸温度 (T
d) との間には, ガラス転移温度 (T
g=75℃) 以下でほぼ直線関係が成立することが確認された. また, この温度域では, σ
cと (T
g-T
d) との間に次式で示されるような簡単な実験式を得. c=C (T
g-T
d). なお, この定数Cは0.546MPa・℃
-1であった. σ
cで延伸した繊維のネッキング延伸倍率は3倍から5倍の範囲内にあ, T
dが高いほど延伸倍率は大きくなる傾向にある。一方, 複屈折はT
dの低下とともにほぼ直線的に増加し, T
d=102℃で延伸した繊維では0.008と低いが, T
d=65℃では0.150と最も高い値を示す. T
g以上で延伸した繊維には結晶生成が認められないが, T
g以下の延伸では配向結晶化により微結晶が生成している. また, T
dが低いほど結晶化度及び晶配向性が高いことが, 広角X線回折写真から確認された. T
g以下で延伸した繊維の動的弾性率-温度曲線には皮革状領域が存在するか, T
g以上で延伸した繊維ではこの領域が存在しない. また, T
d=65℃で延伸した繊維の20℃における動的弾性率は6.8GPaと最も高く, T
dが高くなると順次低下し, T
d=94℃の延伸繊維では2.0GPaと低い.
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