高分子論文集
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51 巻, 9 号
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  • 野村 孝夫, 西尾 武純, 守屋 悟, 橋本 幹夫
    1994 年 51 巻 9 号 p. 569-576
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    最近, 自動車バンパー材などに使用されているSOP (スーパーオレフィンポリマー) は耐衝撃性ポリプロピレン (PP) にエチレンプロピレンゴム (EPR) が添加されたPP系複合材料であるが, その優れた物性は従来のPP相中にゴムが分散する構造では説明ができなかった. 今回, SOPの単純化した試料としてPP/EPRブレンド物を用い, その相構造をX線回折, 粘弾性解析, 高分解能透過電子顕微鏡観察により詳細に検討した. その結果, 小角X線散乱解析および動的粘弾性解析により, EPRブレンドによってPP非晶相が広がり, EPRがPP非晶相に溶け込んでいることが推察された. さらにPP/ゴムブレンド物の破壊部分を透過電顕を用いて観察した結果, EPRがPP非晶相にとけ込んだ試料では, 従来のクレーズ破壊ではなく, マイクロクレーズが多数発生して破壊していることが分かった. このようなPP/EPRブレンド物の構造は広義の非晶マトリックス=ゴムマトリックス構造であり, この構造を持つブレンド物は高衝撃性材料となることが判明した.
  • 野村 孝夫, 西尾 武純, 中川 將, 住友 孝司, 鈴木 俊一
    1994 年 51 巻 9 号 p. 577-585
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    組成の異なるエチレン-プロピレンゴム (EPR) を市販のアイソタクチックポリプロピレン (PP) にブレンドし, そのモルフォロジーと衝撃強度の関連について調べた. ゴム量が30wt%以下では海-島構造をとるが, ゴム量40wt%を越えるとスピノーダル分解による相分離が進行し, EPR相とPP相両相の連続構造による擬網目状構造が生成することを見いだした. プロピレン含量の高いEPRを用いることによりPPとの相容性が向上するとともに, PP相とEPR相の界面の厚さは大きくなる. この界面厚さの増大とともに衝撃強度も著しく向上した. 本研究では破壊の際に発生するクレーズと界面厚さの関係についても論じた.
  • 後藤 日出夫, 蔵谷 克彦, 小倉 興太郎
    1994 年 51 巻 9 号 p. 586-591
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン (ABS) 樹脂の測定温度に対するアイゾット衝撃強度の挙動には, その強度が大きく変化する三つの転移温度があり, また各転移点間では破壊形態が異なることを観察し, 各転移温度また転移点間での破壊挙動の研究が強度解析には重要となる. そこでABS樹脂の衝撃強度に対して最も重要な因子となる島部分のゴムの各因子に焦点をあて, ゴム含有量 (数: 樹脂中のゴム成分の占める重量比率) およびゴムの種類 (組成) 共に各転移温度に影響していることが確認された. 一方ゴム粒子径については, 高温側と低温側での挙動が異なり, 高温側ではこのゴム粒子径が大きな因子となっているものの, 低温側ではゴム粒子径のみではなくゴム界面でのグラフト構造がより大きな因子となっている.
  • 川邉 浩, 佐藤 洋, 久我 義和
    1994 年 51 巻 9 号 p. 592-596
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ニコチン, ピリジン, およびN-メチルピロリジン (MPL) とクロロメチル化ポリスチレン (CMPS) ならびにその低分子モデルである塩化ベンジル (BC) との反応をN, N-ジメチルホルムアミド (DMF) およびジメチルスルホキシド (DMSO) 中で行い速度論的に検討した. CMPSの反応速度はBCのそれと同等であった. ニコチンの反応速度はピリジンのそれに匹敵する値であったが, MPLのそれは極めて大きな値であった. さらにCMPSとMPLの反応は通常の二次反応速度式に従ったが, ニコチンとピリジンとの反応では共に反応中の加速現象が見られた. 以上の点よりCMPSとニコチン反応ではピリジン塩基部位 (pK1=6.16) で反応していると推測される. 求核性の点ではMPL塩基部位 (pK2=10.90) が優先すると考えられるが, 反応の際の立体障害のためMPL部位との反応が困難になるためと考えられる.
  • 上原 宏樹, 山崎 善啓, 大竹 千賀, 金元 哲夫
    1994 年 51 巻 9 号 p. 597-604
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本報告では, 高い立体規則性を有するシンジオタクチックポリプロピレン (syn-PP) の融解挙動, I型結晶の融解熱, 平衡融解温度などの熱的性質を検討し, アイソタクチックポリプロピレン (iso-PP) と比較した. 溶融結晶化あるいは溶液結晶化させたsyn-PP試料は, しばしばDSC二重融解ピークを示す. この原因を広角X線回折像の温度変化, 結晶化条件およびDSC昇温速度が融解挙動に与える影響, 発煙硝酸処理試料のDSC測定により検討した結果, 低温側ピークは結晶化過程で生成した結晶の融解に対応し, 高温側ピークは昇温過程で再配列した結晶の融解に対応することが明確となった. また, I型結晶の融解熱を130±10kJ/kgと決定した. 立体規則性が異なる6種のsyn-PPの平衡融解温度 (T0m) を, 結晶化温度とDSC融解ピーク温度の関係からHoffman-Weeksの式を用いて見積もった. これらの値を分子鎖中のr, mの分布に対して修正したFloryの融点降下の式に代入して得られた, 100%シンジオタクチックPPのT0mは168±2℃であった. この値は, iso-PPのT0m (186℃) に比べ, かなり低い.
  • 奥村 城次郎, 山口 幸一
    1994 年 51 巻 9 号 p. 605-611
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリスチレン (PSt) あるいはポリアクリル酸n-ブチル (PBA) マクロモノマーによるスチレンーブタジエンブロック共重合体のグラフト化物の力学的性質に及ぼすキャスト溶媒の影響について検討した. PStマクロモノマーによるグラフト化物のキャストフィルムの引張強さは, グラフト鎖の分子量が異なっても低グラフト率のものではキャスト溶媒の溶解度パラメーター (δ) が9付近で極大となった. これらのミクロ相分離構造はキャスト溶媒が異なると大きく変化した. 300%引張応力は低グラフト率のものではδが大きくなるとともに上昇した. PBAマクロモノマーによるグラフト化物の引張強さはグラフト鎖の分子量が大きい (Mn=10000) ものではδが9付近で極大となった. グラフト鎖の分子量が小さい (Mn=6000) ものでは引張強さはキャスト溶媒の相違による影響は少なく, ミクロ相分離構造の変化も小さいことが分かった. このように, グラフト化物の引張特性はキャスト溶媒によって異なり, ミクロ相分離構造およびグラフト鎖の分子量に依存することが明らかとなった.
  • 藤本 悦子, 中村 邦雄
    1994 年 51 巻 9 号 p. 612-618
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    芳香族ジイソシアナートをハードセグメントとするポリウレタンは紫外線照射により力学的特性が劣化する. 本報はその光劣化機構を解明することを目的としている. 分子量200, 400, 1000, および2000のポリエチレングリコール (PEG) とジフェニルメタンジイソシアナート (MDI) との反応により4種類のポリウレタン (PU200, PU-400, PU-1000, PU-2000) のフィルムを調製した. このフィルムに312nmの紫外線を照射し, 全反射赤外吸収スペクトル (FT-IR-ATR) 分析, 動的粘弾性 (DMA) 測定および示差走査熱量 (DSC) 測定を行った. 紫外線照射により, FT-IR-ATRスペクトルにおいて3330cm-1 (水素結合N-H伸縮), 2870cm-1 (-C-H伸), 1532cm-1 (アミドII; N-H面内変角振動とC-N伸縮振動) のバンド強度が減少し, 新しいバンドが3416と3200cm-1 (O-Hおよび/またはN-H伸縮), 3106cm-1 (=C-H伸縮), 1740cm-1 (C=O伸縮), および1698cm-1 (C=C伸縮) に出現し, PU-1000とPU-2000の場合にアミドIIバンドの強度の減少が顕著である. また, DMA測定の結果からPU分子は72時間照射までは分子の凝集状態が密になり, それ以上になると分子鎖の切断が優先してくると考えられる. DSC測定からもTgの低下が観測され, 主鎖の切断を示唆した. これらの結果から, MDIをハードセグメントとするPUの光劣化には, ソフトセグメント鎖の長い場合にはGardetteらによって指摘された光Fries転位機構の寄与が大きく, ソフトセグメント鎖の短い場合にはNorrish II型機構の寄与が大きいと考えられる.
  • 岡村 みや, 永田 公俊
    1994 年 51 巻 9 号 p. 619-622
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    シリカゲル吸着クロマトグラフを用いて, 塩化ビニル-N-シクロヘキシルマレイミド共重合体の共重合組成分布を分析する方法を検討した. 移動相には, クロロベンゼンとテトラヒドロフランの混合溶媒を使用した. シリカゲルに吸着した塩化ビニル-N-シクロヘキシルマレイミド共重合体は, 移動相中のテトラヒドロフラン濃度の増加 (1~10vol%) に従って, N-シクロヘキシルマレイミド含有率の低い共重合体から高い共重合体へと溶出した. この方法を用いることによって, 共重合体の組成分布を測定することができた.
  • 林 貞男, 瀬尾 拓人, 畑 宏則, 平井 利博
    1994 年 51 巻 9 号 p. 623-630
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ヒドロキシプロピルセルロースを含むエタノール溶液中でのスチレンとγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの分散共重合で合成した直径6.7μmのポリマー微粒子アレイのレンズ機能を調べた. メタノールで湿らした粉末試料を硝子板上に置き, これにカバー硝子を乗せて人差し指で押さえつけ, 一層あるいは二層からなるポリマー微粒子アレイを作成した. 顕微鏡観察から, 一層に並んだポリマー微粒子は凸レンズ機能を有することが確認された. 一視野のポリマー微粒子アレイの中の粒子による倒立像は, 背後から見て, それぞれの粒子の中の同じ位置に結ばれた. このことは粒子アレイ面から物体までの距離がポリマー微粒子の直径の104倍以上であったことから説明できた. カバー硝子を指先で回転させて二層のポリマー微粒子アレイ間にずれを与えると, 各層の粒子アレイに基づくモアレ縞がカバー硝子の回転角度に応じて大きさを変えた亀甲模様として発現した. それにF文字を照射すると, 前層の無数のポリマー微粒子レンズによるF文字の倒立像に起因して後層の一部のポリマー微粒子が輝き, その輝いた粒子は全体で一個の約90゜横転したF文字の像を構成した. この興味ある現象が凸レンズとモアレ縞の原理から考察された.
  • 宮内 信之助, 尾崎 直人, 中山 昇, 児島 克典, 下村 雅人
    1994 年 51 巻 9 号 p. 631-635
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    導電性高分子フィルムの膜厚制御と厚さの測定は, それをデバイスに応用する際, 非常に重要である. 本論文では, 電解重合法によって得られたポリ (3-メチルチオフェン) (P3MT) とポリ (3-ヘキシルチオフェン) (P3HT) について, 膜厚制御と表面粗さ計による測定法を検討した. すなわち重合後, そのフイルム表面に, アルミニウムを均一に蒸着し, その金属コートされた表面を表面粗さ計によってトレースし, 基板とフィルム間段差の値からフィルムの厚さを決定した. 膜厚と通過電荷量の関係は, P3HTにおいては, 通過電荷量3C/cmcm2以下で, またP3MTでは, 1C/cmcm2以下で, 1次の比例関係が認められた. また, フィルム端で厚いことがわかった. SEM観察から電極端では3次元的に成長し, その他の部分は2次元的成長していることと対応した. 場所による差異は電界強度で説明でき, 高電界では3次元的成長が促進されている. P3MTの導電率は膜厚2.9~0.62μmの範囲では, 薄くなると著しく増加することがわかった.
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