芳香族ジイソシアナートをハードセグメントとするポリウレタンは紫外線照射により力学的特性が劣化する. 本報はその光劣化機構を解明することを目的としている. 分子量200, 400, 1000, および2000のポリエチレングリコール (PEG) とジフェニルメタンジイソシアナート (MDI) との反応により4種類のポリウレタン (PU200, PU-400, PU-1000, PU-2000) のフィルムを調製した. このフィルムに312nmの紫外線を照射し, 全反射赤外吸収スペクトル (FT-IR-ATR) 分析, 動的粘弾性 (DMA) 測定および示差走査熱量 (DSC) 測定を行った. 紫外線照射により, FT-IR-ATRスペクトルにおいて3330cm
-1 (水素結合N-H伸縮), 2870cm
-1 (-C-H伸), 1532cm
-1 (アミドII; N-H面内変角振動とC-N伸縮振動) のバンド強度が減少し, 新しいバンドが3416と3200cm
-1 (O-Hおよび/またはN-H伸縮), 3106cm
-1 (=C-H伸縮), 1740cm
-1 (C=O伸縮), および1698cm
-1 (C=C伸縮) に出現し, PU-1000とPU-2000の場合にアミドIIバンドの強度の減少が顕著である. また, DMA測定の結果からPU分子は72時間照射までは分子の凝集状態が密になり, それ以上になると分子鎖の切断が優先してくると考えられる. DSC測定からもTgの低下が観測され, 主鎖の切断を示唆した. これらの結果から, MDIをハードセグメントとするPUの光劣化には, ソフトセグメント鎖の長い場合にはGardetteらによって指摘された光Fries転位機構の寄与が大きく, ソフトセグメント鎖の短い場合にはNorrish II型機構の寄与が大きいと考えられる.
抄録全体を表示