高分子論文集
Online ISSN : 1881-5685
Print ISSN : 0386-2186
ISSN-L : 0386-2186
52 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 辛 京漢, 青木 俊樹, 及川 栄蔵
    1995 年 52 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1995/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    主鎖にジシロキサン鎖とピリジン環を交互に持つ新規のポリアゾメチンおよびポリ (アゾメチン-アミド) を合成し, 酸素選択透過膜素材としての性能を評価した. ポリアゾメチンは1, 5-ジクロロヘキサメチルトリシロキサンの添加または70℃での熱処理により丈夫な膜となり, 特に前者の膜は高い酸素透過係数を示した (PO2=1.52×10-8cc (STP) cm/cm2・s・cmHg). ポリ (アゾメチン-アミド) は単独で丈夫な膜となり, 対応するポリアゾメチンやポリアミドよりも高い酸素選択透過性 (PO2/PN2=α=4.39) を示した. またジシロキサンのかわりにトリシロキサン鎖を含むポリアゾメチンおよび1, 5-ジクロロヘキサメチルトリシロキサン添加のポリ (アゾメチン-アミド) はα≒3.0, PO2>5×10-9の比較的優れた素材であった. アゾメチン結合はシロキサンの高透過性を効果的に活かすのに適しており, またピリジン環の吸水性はポリアゾメチンの成膜性の向上に有効であった.
  • 胡 連春, 山根 秀樹, 北尾 敏男
    1995 年 52 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 1995/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリメチルメタクリレート (PMMA) およびメチルメタクリレート (MMA) とアクリルアミド (AM), あるいはジメチルアクリルアミド (DAM) とのランダム共重合体 (CPMA, CPMD) をそれぞれ合成し, これらを卓上型ニーダより, ナイロン6 (Ny6) に10 wt%ブレンドした. 調製したブレンド物をホットプレスで厚さ200 μmのフィルムにした. このブレンドフィルムから, 長さ70 mm, 幅4 mmのサンプルを切り出し, 加水分解実験に供し, Ny6の加水分解に及ぼすPMMAの効果について検討した. ブレンドフィルムをpH 1.68~10の40℃, 60℃, あるいは80℃の緩衝溶液中で, 加水分解し, 微細構造, 固有粘度, 力学的性質の経時変化を追跡した. Ny6に少量のPMMA, CPMA, あるいはCPMDをブレンドすることにより, ブレンド中のNy6の加水分解速度が増大した. 例えば, 60℃の中性緩衝溶液に60日間浸漬したブレンド物の固有粘度は3/5にまで低下した. さらに, ブレンド物が塩基性の水溶液中でも, 容易に加水分解することも分かった. 60℃に保ったpH 10の緩衝溶液に60日浸漬した後, Ny6のみからなるフィルムの固有粘度の低下はわずかであったが, ブレンドフィルムの固有粘度は2/3にまで低下した. また, AMあるいはDAMをMMAに共重合することにより, Ny6との混合性を向上し, Ny6の加水分解をより促進した.
  • 大島 純治, 石田 正登, 森田 広一
    1995 年 52 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 1995/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    コアがポリブチルアクリレート, シェルがポリメチルメタクリレートのコアシェノレポリマー粒子を乳化重合により合成し, キャラクタリゼーションを行った. ブチレングリコールジアクリレート (BGA), アリルメタクリレート (AMA) をコアに共重合させると, BGAよりAMAの方が, コアの架橋効率, シェルのコアへのグラフト効率, いずれも高くなったが, 耐熱分解性は低下した. コアの架橋密度が高くなると, 低温側のtan δピークが低温側にシフトし, 面積が減少した. またシェルのグラフト量が多くなると, 高温側のtan δピークが低温側にシフトし, 面積が減少した. フローテスター昇温試験では, コアの架橋密度, シェルのグラフト量が増加するにつれて, 流動開始温度が高くなった. ダイからのストランドは, ダイの中での変形と応力の状態により, ダイスウェルが無い状態から, いったんシャークスキンを呈してダイスウェルが現れ, 再び消失した.
  • 西田 裕文, 山根 秀樹, 木村 良晴, 北尾 敏男
    1995 年 52 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 1995/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリ (フェニルシルセスキオキサン) (PPSQ) の両末端にアルコール性OH基が導入されたHO-PPSQを調製し, ジオール, ジイソシアナートと共重合することにより, PPSQ連鎖およびポリウレタン連鎖の繰り返しから成るブロック共重合体を合成した. まず, フェニルトリクロロシランの加水分解およびそれに続く脱水縮合によりPPSQを合成し, 低分子量成分を除去してMn~5000のPPSQを得た. ついで, フェニルジクロロシランによるエンドキャッピングおよびそれに続くアリルアルコールとのヒドロシリル化により, HO-PPSQを得た. 1H NMRおよびFT-IRにより目的のテレケリックジオールの生成が確認された. 次に, HO-PPSQとプロピレングリコール (PG) との混合物にm-キシリレンジイソシアナート (XDI) を反応させ, Mn~11500のポリ (PPSQ-block-ポリウレタン) を合成した. 得られたブロック共重合体のIRスペクトルには, PPSQに基づく吸収と, XDIとPGのみから得られるウレタンに基づく吸収との両方が観測された. さらに, DSC測定からも, ポリウレタン骨格中にPPSQ連鎖が化学結合により組み込まれていることが示唆された.
  • セメント用分散剤としての性質
    木之下 光男, 結城 康夫, 三浦 義雅, 高橋 智雄
    1995 年 52 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 1995/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    流動性に優れ, 高品質のセメントコンクリートを製造するために, セメント用分散剤が使用されている. セメント分散性能を有する水溶性高分子を得るには, 官能基の分子設計だけでなく分子量制御も重要である. 水系での分子量制御の方法として, メタリルスルホン酸ナトリウム (SMS) に着目し, 開始剤に過硫酸塩を用いて水系でのSMSの重合性について調べた. SMSはアリル化合物特有の強い破壊的連鎖移動の性質を示した. 水系でSMSを, メタクリル酸ナトリウム, ω-メトキシオリゴ (オキシエチレン) メタクリレート (オキシエチレン数, 9), およびアクリル酸メチルとの共重合を行った結果, SMSの添加により, 重合速度の調整とともに適度の分子量を有する優れたセメント分散性能を示す共重合体が得られ, SMSは水系ラジカル重合における分子量調整剤として有効であることが確認された.
  • 奥本 忠興, 松浦 元司, 堤 大輔
    1995 年 52 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 1995/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    代表的な結晶性高分子である脂肪族ポリアミド (ナイロン6) と芳香族ポリアミド (MXD6) との混合系は結晶性高分子同士で相溶性を有する数少ない組合せであることがわかった. 本混合系の融点近傍およびガラス転移点近傍における結晶化挙動を, 光学顕微鏡観察, 光散乱法ならびにX線回折により調べた結果, 融点近傍の高温域ではナイロン6, MXD6はそれぞれ独立に結晶化し (MXD6の結晶化が先行) 共晶を形成しないこと, またガラス転移点近傍の比較的低温ではナイロン6とMXD6の結晶化速度は大きく異なるにもかかわらず, 両ポリマーが同時に結晶化することがわかった.
  • 大島 純治, 藤井 達夫, 立花 真二
    1995 年 52 巻 1 号 p. 46-53
    発行日: 1995/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    架橋ポリブチルアクリレートコア, グリシジルメタクリレート (GMA) を含むポリメチルメタクリレート (PMMA) 系シェルからなる2層コアシェル型ポリマー粒子 (CSP) は, ポリブチレンテレフタレート (PBT) 中での分散が悪いため, PBTの耐衝撃性改良効果は不十分だが, GMAを含む中間層, PMMA系シェルを設けた3層CSPは, PBTへの分散性が改良され, 高い耐衝撃性改良効果が発現した. この3層CSPの粒子径を0.3μmにした時, 最高の耐衝撃効果を発揮するのは, 粒子表面から5~10 nmの距離にポリグリシジルメタクリレート (PGMA) 中間層が1 wt%存在する時であった. これらの結果より, CSPが最高のPBTへの耐衝撃改良効果を発揮するのは, 乳化重合で生成した粒子の大きさで分散する時であり, このためCSPとPBTの界面を安定化させるグラフトポリマーの生成が必要であるが, このグラフトポリマーは本質的に界面でのPBTの変形可塑化能を損ない, 耐衝撃性を低下させるので, 最適なGMA量が存在することが考察された.
  • 守田 啓輔, 彦坂 正道, 米竹 孝一郎, 増子 徹
    1995 年 52 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 1995/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリ [ビス (3, 4-ジメチルフェノキシ) ホスファゼン] の相転移に伴う球晶形態の変化およびその結晶形について, 偏光顕微鏡観察, 脱偏光強度測定, DSC, X線回折により検討した. メソモルフィック相 (δ相) から室温まで徐冷結晶化を行うと, マルテーゼ・クロスを有する小型のA型球晶と, より大型のB型球晶が混在して現れた. 昇温過程では, 96℃付近でA型球晶の輝度が減少し, 110℃でB型球晶は消失した. この変化はDSCの吸熱ピーク温度と一致した. 高温X線回折実験によると, 室温から90℃までは単純格子に帰属される結晶 (α型) が存在するが, 100℃以上ではα型結晶が存在せず, すべて底心格子を持つ結晶 (β型) になると推定した. 一方, δ相より徐冷し75℃で等温結晶化を行った場合, A型球晶は現れず, B型球晶だけが確認され, その結晶形はβ型であった. β型結晶はα型結晶に比べ熱的に安定であり, その発現はB型球晶の形成に関連がある.
  • 高橋 雅江, 島崎 昌子
    1995 年 52 巻 1 号 p. 60-65
    発行日: 1995/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    水酸化ナトリウム水溶液に溶解するセルロースIV型としないIV型がセルロースI型およびII型からそれぞれ作製された. 溶解するIV型は室温において, 約10 wt%の濃度域の水酸化ナトリウム水溶液にのみ溶解するという現象が認められた. このような溶解現象を理解するためにCP/MAS 13C NMR, X線広角・小角散乱, IRなどの測定手段を用いて, 可溶および不溶試料のミクロな構造の違いを調べた. その結果, セルロース結晶部に存在する分子間水素結合の弱化に伴う微小な構造歪の増加により, 格子エネルギーが低下したため, この溶解性が生じていると予想された. また, 水酸化ナトリウム水溶液の10 wt%近傍でセルロースの膨潤度が極大になることにより, 構造歪を持つ結晶内部にNaOHが容易に浸透し, この濃度での溶解を引き起こしていると考えられる.
  • 岡田 淳, 一ノ瀬 暢之, 河西 俊一
    1995 年 52 巻 1 号 p. 66-68
    発行日: 1995/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体 (PFA) を希アンモニア水溶液中でエキシマレーザー光照射することにより, 表面に高い親水性が付与できた. この場合, ArF光の方がKrF光よりも有効であった. 水との接触角は, 未照射の106゜からArF光照射 (203 J cm-2) で31゜まで低下した. X線光電子分光法 (XPS) による表面元素比の測定から, PFA表面では光化学反応によりフッ素の脱離と, 酸素および窒素の導入が起こっており, 接触角の低下とよい相関を示すことがわかった. 表面反応層の深さはおよそ1.5~7.0 nmと見積れ, 走査型電子顕微鏡 (SEM) 観察からは, 表面の形態変化を伴わない改質方法であることがわかった.
feedback
Top