高分子論文集
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52 巻, 10 号
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  • 脇田 正明, 橋本 正憲
    1995 年 52 巻 10 号 p. 589-593
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    キトサンを1-プロモオクタデカンと反応させることにより, 2-オクタデシルアミノ-2-デオキシ-D-グルコピラノース (70 mol%), 2-アミノ-2-デオキシ-D-グルコピラノース (17 mol%), および 2-アセトアミド-2-デオキシ-D-グルコピラノース (13 mol%) から構成されるN-オクタデシルキトサンを合成した. N-オクタデシルキトサンは, 結晶-液晶相転移を示し (Tc=46℃, 示差走査熱量測定), 酸の存在下で超音波照射することにより水に分散した. 動的光散乱測定, 透過型電子顕微鏡観察により, N-オクタデシルキトサンが直径10~150 nmの二分子膜ベシクル (ユニラメラベシクル) を形成していることがわかった. 得られたべシクルは, 水溶性物質を保持することができ, 希薄溶液では6ヵ月以上分散状態を保った.
  • 原田 明, 鈴木 淑子, 中光 隆子, 岡田 三愉子, 蒲池 幹治
    1995 年 52 巻 10 号 p. 594-598
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    シクロデキストリンが種々の分子量のポリテトラヒドロフラン (PTHF) と包接錯体を形成することを見いだした. α-シクロデキストリンの場合, PTHFの分子量が高くなるに従って錯体の収率は減少したが, γ-シクロデキストリンの場合, 錯体の収率はPTHFの分子量が約1000までは増加したが, 1000以上では逆に減少した. 連続変化法により錯体の化学量論はα-シクロデキストリンの場合, 1: 1.5 (シクロデキストリン: モノマーユニット) であり, γ-シクロデキストリンの場合, 1: 2.8 (シクロデキストリン: モノマーユニット) であることがわかった. この化学量論は錯体の1H NMRにより確認した. 包接様式について粉末X線回折や核磁気共鳴スペクトルにより検討した.
  • テール構造の効果
    関 隆広, 市村 國宏, 福田 陵一, 玉置 敬
    1995 年 52 巻 10 号 p. 599-605
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    直鎖アルキルテール長が0, 1, 4, 6, 8, 10, 12であるアゾベンゼン (Az) 側鎖を持つ一連のポリビニルアルコール誘導体の単層Langmuit-Blodgett (LB) 膜を石英基板上に調製し, 基板上での単分子膜のトランス体Az側鎖とネマチック液晶との相互作用を紫外可視吸収スペクトル測定により評価した. ネマチック液晶はAz側鎖の基板面に対する垂直配向を誘起するとともに, Az単位の会合性変化をもたらした. テール長の違いがこうした液晶との接触で誘起されるAz側鎖の状態変化の挙動に与える影響を明らかにした.
  • 伊原 博隆, 首藤 健, 高藤 誠, 平山 忠一, 鉢迫 博, 山田 仁穂
    1995 年 52 巻 10 号 p. 606-614
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    種々の二鎖型L-グルタミン酸誘導脂質を合成し, 有機溶媒中での会合挙動およびその不斉認識能について調査した. フェニル基やカルボキシル基を含む頭部基およびジドデシル基がアミド結合で導入された脂質は, それらのベンゼンやエタノール溶液をゲル化させる能力を有した. 電子顕微鏡およびDSC, CDスペクトルの観察により, ゲル化は脂質の高度な配向とそれに伴う繊維状会合体の形成と関連づけられることがわかった. このような有機溶媒中での高度配向体の形成やゲルの形成は, 相当するエステル型脂質では観察されなかった. またIRスペクトルおよびCAChe-MechanicsおよびMOPAC計算により, 高度配向体の形成には, 三つのアミド結合が分子間水素結合に有効に利用されていることが明らかとなった. 本報告ではさらに, このゲルを用いた不斉誘起現象や不斉選択的透過挙動などについても報告する.
  • 平野 幸治, 福田 博行
    1995 年 52 巻 10 号 p. 615-620
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    新たに合成したアルキル鎖長の著しく異なる非対称性イオン対型両親媒性化合物は水中で二分子膜を形成した. イオン対型両親媒性化合物の二分子膜を表面電荷状態の異なる膜と融合させ, アルキル鎖長の違いが与える影響についてDSC測定から検討した. イオン対型両親媒性化合物同士を融合させるとイオン対の組み替えが生じ, ゲル-液晶の相転移温度は成分のアルキル鎖長や混合比を変えることにより変化した. また, カチオン系の二分子膜とはアルキル鎖長に関わらずイオン交換で融合が進み, 新たなイオン対型両親媒性化合物を含む均一な二分子膜を形成した. ベタイン構造の二分子膜とはアルキル鎖長がほぼ同じ場合には均一に混合した二分子膜を形成し, 大きく異なる場合には相分離することが明らかになった.
  • 成清 善孝, 冨永 昌人, 中嶋 直敏
    1995 年 52 巻 10 号 p. 621-628
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    気/液界面単分子膜と溶液中のチトクロムcとの相互作用に及ぼす膜電荷, 電解質濃度の影響について, 電解質溶液にリン酸緩衝溶液 (pH 7) を, 脂質にカチオン性タンパク質のチトクロムcと反対の膜荷電を有するアニオン性脂質のジパルミトイルホスファチジン酸 (DPPA), ツビッター型脂質のジパルミトイルホスファチジルコリン (DPPC) とジオクタデシルジメチルアンモニウムポリスチレンスルホン酸 (2C18N+PSS-) を用いて, π-A等温曲線およびその場 (in situ) 電気化学測定を行った. その結果, 気/液界面単分子膜とチトクロムcとの間の静電的相互作用が, チトクロムcの脂質単分子膜上での電子移動反応に大きな影響を及ぼすこと, また, 電極上の脂質単分子膜の表面圧によりチトクロムcの電極反応が大きく異なることがわかった.
  • 山田 哲弘, 小山 恵美子, 丸山 克也
    1995 年 52 巻 10 号 p. 629-638
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    フェニルアラニン, イソロイシン, またはアラニンを1~3個含むペプチドを一鎖型両親媒性分子の中央部に導入し, 水中および有機溶媒中での会合特性を透過型電子顕微鏡観察から検討した. これらの分子は1本のアルキル鎖しか持たないにも関わらず, ジペプチドおよびトリペプチドを持つ場合には, 水中で二分子膜構造を形成した. また, トリペプチド基を持つ場合に限り, 無極性有機溶媒中でも二分子膜構造を形成した, この有機溶媒中における二分子膜形成は溶媒の極性とアミノ酸残基構造に影響を受け, トリイソロイシンを含む両親媒性分子が他のトリペプチドを含む分子よりも二分子膜形成に優れていた. 有機溶媒中において, 両親媒性分子は親水基の疎溶媒性と疎水鎖の親溶媒性によって自発的に集合すると考えられるが, 水中, 有機溶媒中, いずれの場合においてもアミノ酸残基数の増加に伴って会合性が向上したことから, ペプチド基間の多重水素結合はこれらの会合構造に分子配列の方向性と安定性を与えていると考えられる.
  • 今多 秀夫, 高橋 圭子, 服部 憲治郎
    1995 年 52 巻 10 号 p. 639-643
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    α-, β-, γ-シクロデキストリン (CyD) およびヘプタキス (2, 6-ジ-O-メチル) -β-CyD (DMCyD), ヘプタキス (2, 3, 6-トリ-O-メチル) -β-CyD (TMCyD) と1, 8-アニリノナフタレンスルホン酸 (ANS) の1: 1包接錯体溶液に過剰のサッカロース, アラビノースを添加すると, 糖の種類, CyDの種類で全く異なった蛍光強度の変化が観察された. 蛍光強度が減少したのはβ-CyD存在下, アラビノースを添加したときのみで, γ-CyD, β-CyD, DMCyD存在下サッカロースを添加した場合顕著な増加が, γ-CyD存在下, アラビノースを添加した場合はわずかな増加が観察された. 円偏光二色性スペクトルおよび蛍光強度の添加糖濃度依存性より, この蛍光強度変化の差異はCyD空洞に包接されたANSの相対的位置の変化によるものではなく, 糖がCyD空洞に複数近接し, CyD空洞中にあるANS疎水性環境を変えているためと考えられた.
  • 大久保 捷敏, 船越 義郎, 浦田 泰男, 広田 尚吾, 臼井 聡, 佐川 尚, 吉永 耕二
    1995 年 52 巻 10 号 p. 644-649
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    一つの標的アミノ酸エステル基質Z-L-Leu-PNP (PNP=p-ニトロフェノール) を極めて効率よく加水分解する高分子触媒を分子設計するため, 反応の遷移状態類似体Z-Leu-PP (フェニル1-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-メチルペンチルホスホナート) あるいは基底状態類似体Z-L-Leu-AA (エチルN-ベンジルオキシカルボニル-L-ロイシンアントラニラート) を鋳型分子として合成した. これら鋳型分子の形状をL-ヒスチジン触媒部位と相互作用させながら記録した, 各種水溶性・難水溶性ラジカル重合高分子触媒は, 10 vol%ジメチルスルホキシド (DMSO) -Tris緩衝液 (pH 7.15) 中, 293~308Kでのアミノ酸エステルの加水分解反応において, 標的基質を反応キャビティーに効率良く取り込み, 特に最大活性化エントロピーを示す4級アンモニウム鎖導入型水溶性高分子触媒は, 無触媒反応の活性化自由エネルギーを7.0 kcal/mol低下させ, 著しい反応促進力を呈示した.
  • 大久保 捷敏, 占部 憲治, 山本 淳二, 佐川 尚, 臼井 聡
    1995 年 52 巻 10 号 p. 650-656
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    単純な低分子ペプチドを触媒部位として配列した界面活性剤の二分子膜が形成する超分子が, 短鎖N-アセチル-L (-D) -アミノ酸エステルに対して, 効果的な膜内での基質・ペプチド触媒部位間多点相互作用を通じて, 迅速にかつ極めて優れた立体選択性をもって加水分解する機能を発揮するため, いかに超分子の構成と反応環境を設定すべきかを明らかにした. すなわち, L-His含有ペプチド (1, 2a~g, および3a~c) およびカチオン性界面活性 (4a, b) を具体的な超分子構成分子として例示し, 2cと4bとの組み合わせ構成により, N-アシル化アミノ酸エステル基質 (5a~f) のうち, 反応には不利な短鎖基質5aを効率良く膜内に取り込ませ, ペプチド触媒部位2cと適切な多点疎水性相互作用を通じて, 反応温度298K, 3vol% MeCN/Tris-KCl緩衝液 (pH 7.68, イオン強度0.01) 中, 反応速度比L/D=167倍をもって5aを迅速に加水分解させることに成功した.
  • 竹岡 敬和, 青木 隆史, 讃井 浩平, 緒方 直哉, 渡辺 正義
    1995 年 52 巻 10 号 p. 657-661
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    レドックス活性基を有する非イオン性の界面活性剤であるα-ferrocenylundecyl-ω-hydroxy-oligo (ethylene oxide) は, ポリ (エチレンオキシド) 部分の分子量が600あまりしかないにもかかわらず, ミセル形成状態においてポリアクリル酸とコンプレックス形成することがわかった. pH測定から, 水素結合性コンプレックス形成率 (θ) は, ポリアクリル酸の濃度に関係なく0.8と高い値を示した. サイクリックボルタンメトリーの結果より, このような高いコンプレックス形性能は, 水素結合以外に疎水性相互作用が大きく関与していることがわかった. α-ferrocenylundecyl-ω-hydroxy-oligo (ethylene oxide) は, ミセル状態でポリアクリル酸とコンプレックスを形成していると考えられるため, 水素結合性相互作用と疎水性相互作用が協奏的に働くことにより, 高いコンプレックス形成能を示し, また, そのコンプレックス形成が電極反応にも反映された.
  • 丹羽 政三, 新谷 武史, 東 信行
    1995 年 52 巻 10 号 p. 662-665
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    スチレンスルホン酸を親水部対イオンとしてもつジアルキルアンモニウム型重合性脂質よりなる気液界面単分子膜の二次元レドックス重合ならびに重合に伴うモルフォロジー変化について検討した. 一定表面圧下での重合反応は, 分子占有面積の変化として検出することができ, レドックス開始剤添加後わずか10分程度で重合が完了した. 1 mol%のオクタデシルローダミンBを含む単分子膜の蛍光顕微鏡観察の結果, 重合前には, 表面圧に無関係にオクタデシルローダミンBの蛍光に基づく白い部分が全視野を覆い, 膜が流動性の高い液晶状態にあるのに対して, 重合後には明確な結晶ドメイン (20~200 μm) が認められ, しかもドメインの形状や大きさは重合時の表面圧に依存することを明らかにした.
  • 田中 基雄, 川端 康治郎, 松本 睦良
    1995 年 52 巻 10 号 p. 666-668
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    表面に疎水基を配列しているアラキジン酸, TA (ω-トリコセン酸) のラングミュア・ブロジェット (LB) 膜上にNaCl水溶液を滴下することにより, 数十%の試料において, NaCl結晶の (111) 面からの成長が見られた. このことは, NaCl水溶液に接した部分のLB膜表面の分子が再配列し, 水側に親水基を向けた配列をとったことを示唆している. しかし, 水面上の単分子膜表面における親水基の配列が, 分子再配列により完全には再現されないことも分かった. さらにステアリルアミンLB膜上での結晶成長においては (110) 面からの結晶成長がみられた. また, LB膜累積後にTAを重合することにより, NaClの (111) 面を誘起するような核生成を抑制することが可能であった.
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