高分子論文集
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52 巻, 11 号
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  • 石川 優
    1995 年 52 巻 11 号 p. 669-677
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ナイロン6 (PA6), ポリフェニレンエーテル (PPE), そしてスチレンーエチレンーブチレンースチレンブロック共重合 (SEBS) の三成分系のポリマーアロイ (PA6/PPE/SEBS) において変形とタフネスの発現機構をそれぞれの樹脂の役割と関連して, 平面ひずみの応力条件の下でU字型切り欠きの3点曲げ試験によって検討した. PA6にPPEのみの添加はそのアロイをぜい性に導くけれども, SEBSの添加はそれらからのボイドの形成によるひずみの拘束の解放と降伏応力の低下による応力集中の緩和によってPA6多成分アロイのタフネスを改善する. PPEの機能はPA6とSEBSの相溶化剤と弾性率の低いSEBSの添加による剛性の低下を抑さえる効果を持つ.
  • 石川 優, 小林 裕二
    1995 年 52 巻 11 号 p. 678-683
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    モディファイヤーの強度がポリマーアロイのタフネスの改善に及ぼす効果がポリブチレンテレフタレート樹脂をマトリックスとして検討された. 低い強度のモディファイヤーを用いたときに, 負荷により容易にボイドが形成されることが確かめられた. モディファイヤーの種類にはよらず, 強度の低いモディファイヤーを用いたポリマーアロイではボイド間でのボアソン収縮によりひずみの拘束が解放され, 応力集中が緩和されるので効率よくタフネスが改善できることが結論された.
  • 高村 聡, 亀山 敦, 西久保 忠臣
    1995 年 52 巻 11 号 p. 684-691
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    主鎖にノルボルナジエン (NBD) 残基を有する新しい光機能性ポリエステルの合成を目的として, 2, 5-NBD-2, 3-ジカルボン酸ジグリシジルエステル (NDGE) と種々のジカルボン酸クロリドとの重付加反応について詳細に検討を行った. 相間移動触媒としてテトラブチルアンモニウムプロミドを用いて, 2, 5-NBD-2, 3-ジカルボン酸のカリウム塩と過剰のエピブロモヒドリンとの反応により, 単離収率75%でNDGEを合成した. NDGEとテレフタル酸クロリドなどのジカルボン酸クロリド類との重付加反応により, 主鎖にNBD残基を有する対応するポリエステル類が高収率で得られた. また, 上記の重付加反応により得られた主鎖にNBD残基を有するポリエステル類のフィルム状態における光反応を行い, いずれのポリマーも光照射約7時間でNBD構造から対応するクアドリシクラン (QC) 構造に変換されることが判明した.
  • 李 賛雨, 木村 良晴
    1995 年 52 巻 11 号 p. 692-697
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体 (PN, ユニット組成: 70/30; Mn, 11500) の存在下にL-ラクチドを重合することにより, ポリ-L-ラクチド (A) とポリエーテル (B) からなるA-B-Aトリブロックコポリ (エステルーエーテル) を合成した. オクチル酸スズを触媒として用い, 加えたPNとL-ラクチドの重量比を5/95, 10/90, 20/80としたとき, L-ラクチドがPNのヒドロキシル末端から重合し, 目的とするA-B-Aブロック共重合体が収率よく得られた. その分子量は重合したモノマーとPNの組成比から計算される値とよく一致することがわかった. 得られたブロック共重合体を溶融紡糸した後, 40~60℃で5~10倍に冷延伸した. 繊維の引張り弾性率はPNの含有率の増大に伴って低下することが認められ, PNの導入によりポリ-L-ラクチドに柔軟性が付与されることが明らかとなった.
  • 米津 潔
    1995 年 52 巻 11 号 p. 698-702
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    エチレンービニルアルコール共重合体 (EVOH) をジメチルスルホキシド/水系溶媒中でホルマール化し, Charlesbyのゲル化理論を適用してゲル化点までの分子間ホルマール化反応速度を解析した. その結果, EVOH濃度 ([OH]) が0.6mol/l以下の低い領域では, 反応速度は [OH] の1次に比例し, 同一 [OH] ではポリマー分子数にほぼ比例し, また貧溶媒系ほど速かった. これは, この [OH] 領域では孤立しているポリマー鎖中のヘミホルマール部へ, 他のポリマー鎖のOH基が衝突する過程が反応の律速段階であることを示しており, ポリマー分子間の排除体積効果が反応に影響することを示唆している. [OH] が0.6mol/l以上の領域では, 反応速度は [OH] の高次に依存し, ポリマーの重合度が大きいほど, また良溶媒系ほど速くなった. この [OH] 領域ではポリマー鎖のからみ合いが生じ, 反応が加速されることを示している.
  • 日下石 進, 恒川 佳秀, 増子 徹
    1995 年 52 巻 11 号 p. 703-709
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    金属Ni粉/エポキシ樹脂複合材料において, 金属Ni粉末表面に各種カップリング剤処理を行うことにより, マトリックス樹脂との接着力を向上させて力学的物性の改善を計った. Ni粉末の体積分率を0.245とし, カップリング剤としてシラン系, チタネート系, アルミニウム系を用いた. 各複合材料の動的粘弾性の温度依存性を周波数100Hzで30~320℃の温度範囲で測定し, カップリング剤処理の効果を評価した. この結果, エポキシ官能基を持つシラン系カップリング剤でNi粉末を処理した場合, 複合材料の貯蔵弾性率が急激に低下する温度は約240℃であり, 未処理試料の示す190℃に対して大幅に向上することが認められた. このとき, カップリング剤量はNi粉末に対し1w%で十分な効果があった. また, 複合材料のガラス転移に関連した活性化エネルギーを求めることによって, 粒子表面とマトリックスとの親和性を相対的に評価可能であった. それによると, カップリング剤による表面改質効果はシラン系>チタネート系>アルミニウム系の順に現れた.
  • 岡崎 正樹, 宮坂 信義, 松沢 秀二
    1995 年 52 巻 11 号 p. 710-717
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    シンジオタクチシティに富むポリビニルアルコール (s-PVA) を塩酸溶液から紡糸することを目的として, その塩酸溶液の性質, 水酸化ナトリウム水溶液凝固能を調べるとともに紡糸繊維の性質を調べた. 純水溶液に対する溶液の電気伝導度の低下, および極限粘度の増加からOH基がオキソニウムイオンを形成し, s-PVAが溶解するものと推定した. 60℃以下では塩酸水溶液の放置による重合度低下はほとんどないことがわかった. 凝固性は従来のポリ酢酸ビニルから得たポリビニルアルコール (a-PVA) より高く, 低い水酸化ナトリウム濃度の凝固浴でゲル紡糸的紡糸ができることがわかった. また, この紡糸繊維は均一に凝固しており, 延伸性は高く, 200℃での最大延伸倍率は20倍以上で, 延伸繊維の引張り強度が2.5GPa, 初期ヤング率は45GPaに達するものであった. 結晶化度と配向度は延伸倍率とともに増加したが, 高延伸繊維中には繊維軸に垂直な縞の発生がみられ, 力学的性質は縞発生前の延伸倍率のものより大となることはなかった.
  • 丹羽 浩, 永田 公俊
    1995 年 52 巻 11 号 p. 718-722
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    懸濁重合で得られたポリ塩化ビニルおよびエチレン/塩化ビニル共重合体中の微細構造を, 1Hおよび13CNMRを用いて解析した. 1HNMRによる解析の結果, 立体規則性度の違い, アリル末端基および分子内二重結合量は共重合体中のエチレン含量とは相関が見られなかった. 共重合体中の分枝構造については, エチレン/塩化ビニル共重合体を, 水素化トリ-n-ブチルスズで塩化ビニル部分を完全にポリエチレン構造に還元した試料を用いて, 13CNMRで解析した. その結果, ポリ塩化ビニルの単独重合体と同様に, エチレン/塩化ビニル共重合体中にもC1, C2およびC4などの短鎖分枝が存在することが明らかとなった. 各々の分枝量を定量した結果, C1分枝が最も多く, C1>C4>C2の順序で少なくなることがわかった. さらに, これらの分枝は共重合体中のエチレン含量に伴って増加した. エチレンと塩化ビニルの共重合では, 重合時におけるエチレン単位の存在が分枝の生成に大きく関与し, head-to-head付加反応およびバックバイティング反応を促進していると推定した.
  • 安藤 勝敏, 近藤 五郎
    1995 年 52 巻 11 号 p. 723-726
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    コロナ荷電時に不織布表層で逆電離放電が起きることはすでに知られている. しかしながら, 逆電離が不織布層内に与える影響は知られていない. そこで, モデルとして積層不織布を用いてコロナ荷電を行い, 層内に与える影響を電荷図, 表面電荷密度, 熱刺激電流フィルタ性能から調べた. 結果として, 逆電離放電が各層の帯電特性に与える影響を明らかにした. そして, その帯電機構を推定した.
  • 臼杵 有光, 岡本 一夫, 岡田 茜, 倉内 紀雄
    1995 年 52 巻 11 号 p. 727-733
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    アクリル酸エチル, アクリル酸, およびジメチルアミノプロピルアクリルアミドの4級塩からなる4種類のアクリル樹脂と粘土の水分散液を混合することにより, アクリル樹脂-粘土ハイブリッド分散液を調整した. アクリル樹脂中のジメチルアミノプロピルアクリルアミドの量は, 添加する粘土の量を考慮して, それぞれ0.12mol% (A), 0.36 (B), 0.56 (C) と0.89 (D) とした. 粘土量は樹脂固形分に対してAが1.0wt%, Bが3.1, Cが4.9とDが8.0である. その粘性挙動を測定した結果, 粘土量の少ないAではニュートン流動を示したが, B, CとDでは擬塑性を示すことがわかった. さらにこの分散液にメラミンを添加して架橋したハイブリッドフィルムを作製し, ガスの透過率, 貯蔵弾性率を比較すると, 粘土3wt%の添加でガスの透過率が半減し, 貯蔵弾性率は1.5倍になることがわかった.
  • 草薙 浩, 下村 岳彦
    1995 年 52 巻 11 号 p. 734-736
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    これまで, H2O分子やCO2分子を単独でポリマーに収着させた系の赤外スペクトルを測定して, ポリマーとこれら分子との相互作用の研究を行ってきた. 本研究において, H2O分子とCO2分子をポリマーに同時に収着させた系では, それぞれの単独の赤外吸収バンドの他に, 別の物理状態にあるH2O分子とCO2分子の存在を示す新たな吸収バンドが出現することを見いだした.
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