高分子論文集
Online ISSN : 1881-5685
Print ISSN : 0386-2186
ISSN-L : 0386-2186
52 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 中沢 士郎, 功刀 利夫, 鈴木 章泰
    1995 年 52 巻 2 号 p. 69-75
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリアミノビスマレイミド・オリゴマーを, 熱処理温度240℃, 260℃, および280℃で, 熱処理時間を7.5minから1920minの範囲で種々変えてフィルムを作製した. 得られたフィルムの赤外吸収スペクトル, 動的粘弾性および引張り特性などを測定し, 熱処理条件と熱処理物の力学的性質との関係を検討した. 赤外吸収スペクトルについては, マレイミドの二重結合の特性吸収である690cm-1と820cm-1の吸光度が処理時間の対数に対して直線的に減少し, スクシンイミドの-C-N-C-結合の1170cm-1の吸光度が増加した. 熱機械分析においては, 処理時間が短く硬化反応が十分進行していないプレポリマーの熱膨張率は, 200℃付近から急激に伸長し, その傾向は処理時間の増大とともに減少し, 最終的に急激な伸長がなくなりほぼ直線状となった. 動的粘弾性においては, 処理時間の増大とともに, プレポリマーのガラス転移に起因する260℃付近の分散ピークの温度が高温側にシフトし, 強度が減少し, 最終的には消失した. また, 320℃以上の測定温度域では, いずれの処理時間のフィルムもほぼ同様の温度依存性を示し, 貯蔵弾性率は320℃から熱処理物のガラス転移に基づく急激な減少を示し, また, 損失弾性率は360℃と420℃にそれぞれ熱処理物のガラス転移と熱分解によるピークを示した. 強度測定においては, 常温における引張り破壊強度と, 290℃のような高温での引張り破壊強度が最大となる試料の処理温度および処理時間は異なることが分かった. 高温において強度を最大とするためには, 硬化反応が十分行われる必要がある.
  • 吉村 菊子, 岡元 由紀子, 穂積 啓一郎
    1995 年 52 巻 2 号 p. 76-82
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    2-Propyn-1-ol (propargyl alcohol) をモノマーとして, ポリメタクリル酸メチル平板上にプラズマ重合を行い, 空気中および水中保存中の重合膜の親水性および可視光透過特性の変化とともに, 重合膜表面形態の顕微鏡観察によって耐水性を評価した. 臨界表面張力は, Zismanプロットで外挿すると, 重合時の電力が2Wでも5Wでも38dyn/cmとなるが, 試験液の極性を考慮にいれたRabelの理論で求めると, 2Wで63dyn/cm, 5Wで45dyn/cmと得られた. 試料を空気中または水中で15日間保存すると, 水の接触角は2Wで40°から約55°に増え, 5Wでは約60°の変化ない値となった. 2Wで作った重合膜の可視光の透過率は, 水中保存で最初の値から最低85%まで低下し, 空気中保存ではこれより低下量が少なかった. 5Wで作った重合膜は保存状態によらず変化がなかった. 表面を光学顕微鏡 (×500) で観察すると, 重合時2W, 5Wとも水による膨潤で生じたと考えられる隆起が見られたが, 重合膜のはく離やき裂は全く認められなかった. 以上の実験より, このプラズマ重合膜は比較的長期にわたり, 高い親水性, 光透過性, 耐水性のあることが認められた.
  • 野村 孝夫, 西尾 武純, 秋山 雅也, 杉原 栄一, 田中 耕三
    1995 年 52 巻 2 号 p. 83-89
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    プロピレン含有量の異なるエチレン-プロピレン共重合体エラストマー (EPR) とポリプロピレン (PP) とのプレンドにおけるEPRとPPとの相互作用を動的粘弾性および13C固体NMRを用いて測定した. 動的粘弾性で測定したPPのガラス転移点はEPRとブレンドされることにより変化し, また13C固体NMRで測定したEPRのスビン-格子緩和時間 (T1C) にはPPとブレンドされることにより緩和時間の長い成分が現れる. これらの結果は, PP/EPRブレンドにおいては, EPRとPPの非晶部とがお互いの運動性に影響を与え合うこと, およびその程度はプロピレン含有量の高いEPRとのブレンドに多い傾向にあることを示した. PP/EPRブレンドの低温衝撃強度はプロピレン含有量の高いEPRでより大きな値を示すが, この差はPPとEPRとの相互作用によりマトリックスを形成する非晶部の性質が変化したことに由来する現象であると推定される.
  • 野村 孝夫, 西尾 武純, 田中 秀明, 森 謙次
    1995 年 52 巻 2 号 p. 90-96
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリプロピレン (PP) /エチレンープロピレンゴム (EPR) 系ポリマーブレンド材料のなかでも, 最近発表されたSOP (スーパーオレフィンポリマー) では, 従来品に比べ高剛性・高耐衝撃性を高いバランスで両立させている. 今回, この高性能が実現された機構を解明すべく構造解析を行った. その結果, 次の特徴が明らかとなった. (1) EPRドメインは, いびつな楕円板状の形態をとり, 流動方向に伸長し, 表面に平行に高配向している. (2) PP相中の結晶ラメラは, 柱状の形態をとり表面に垂直方向に高配向している. (3) PP結晶ラメラは, 界面からEPR内部に侵入しているものがある. これは, PP・EPRの相溶性の高さと結晶化により形成されたと考えられる.
  • 佐藤 貞雄, 戸田 晋作, 林 哲哉, 吉永 貴行, 大柳 康
    1995 年 52 巻 2 号 p. 97-104
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリカーボネート (PC), ポリメチルメタクリレート (PMMA) とそれらのポリマーアロイの固体から液体までのpvT特性をプランジャー加圧型装置を用いて等温法によって測定し, CAE (Computer Aided Engineering) 成形加工に適用できる状態式と圧縮率に及ぼす温度, 混合比依存性について検討した. その結果, 非晶性ポリマーPC, PMMAとそのポリマーアロイに関する状態式は次式で示される. v (p, T) =v0 (0, T0) + (3Σi=0AiTi+p1Σi=0BiTi+p21Σi=0CiTi). ここで, v0は室温 (T0), 大気圧 (p=0) 中における比容積, Ai (i=0~3), Bi, Ci (i=0~1) はポリマーの種類によって決まるpvT特性係数である. この状態式による計算値と実験による測定値は±2.5%の範囲で一致する. PC/PMMAポリマーアロイの圧縮率は温度上昇とともに増大し, 250℃の温度域で8~9×10-4MPa-1の値を示し, 各温度域においてPMMAの混合比が10~40wt%のときベースポリマーの圧縮率より小さいポリマーアロイになることをpvT測定によって実験的に明らかにした.
  • 小野寺 誠也, 柿沼 正久, 中村 好子
    1995 年 52 巻 2 号 p. 105-109
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    種々のオリゴ (アクリレート) の光反応特性をUVを照射し硬化反応を連続的に測定するシステム (UV-FTIR) を用いて評価した. DPET-6A (ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート) が評価したオリゴ (アクリレート) の中で最も優れた反応性を示すことが明らかとなった. このDPET-6Aとアクリル変性したポリマーを用いて感光性ソルダーレジストインキを調製し, 硬化塗膜中の各官能基の反応率について評価した. 二重結合, エポキシ基, およびカルボキシル基の反応率を赤外分光光度計, 電位差滴定装置を用いて測定した. 硬化塗膜中の各官能基の反応率と絶縁抵抗値の関係についても検討を行った. 絶縁抵抗特性は硬化塗膜中の橋かけ密度に大きく影響されることが明らかになった.
  • 山登 正文, 木村 恒久, 伊藤 栄子
    1995 年 52 巻 2 号 p. 110-113
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリブチレンテレフタレート (PBT) のガラス転移温度 (Tg) について, 力学的, 誘電的, 熱的方法により測定された結果が報告されているが, その値は23~80℃とかなり幅がある. 本研究は, PBTのTgを決定し, その温度近傍での熱処理によるTgおよび非晶構造の変化について考察することを目的にした. 熱測定により求めたTgと昇温速度との平方根との間に直線関係がなりたち, この直線を昇温速度0に外挿した値23℃をPBTのTgであると定めた. 20℃で熱処理した試料のTgは熱処理時間とともに高温側へシフトし, Tg以上の温度でピークが観察されることから試料は室温においてエンタルピー緩和が起こっているものと考えられる. 広角X線回折パターンでの非晶性ハローには, 熱処理時間の経過とともに変化が見られた. すなわち, エンタルピー緩和により芳香環のパッキングがα型結晶に近い構造をとるようになると考えられる. また固体13C NMR測定においてはスペクトルはどの熱処理試料においてもほとんど変化が見られなかったが, 芳香環のスピン格子緩和時間は熱処理により増加した. このことは, エンタルピー緩和による非晶構造の変化はアルキル基のコンフォメーション変化を伴わず, 分子鎖のパッキング, 特に芳香環部分のパッキングがα型結晶に近い構造になるために起こることを示唆している.
  • 胡 連春, 篠田 法正, 吉田 絵里, 北尾 敏男
    1995 年 52 巻 2 号 p. 114-120
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    溶融紡糸法により90wt%のナイロン6と10wt%のポリ乳酸とを含むブレンド繊維を紡糸した. ブレンド繊維を80℃に保った蒸留水に最長120日間浸漬することにより加水分解した. 所定時間浸漬した後, 固体状繊維を取り出して十分乾燥し, GPCで分子量Mn, Mwの経時変化を追跡した. 浸漬液の一部を用いて紫外分光 (UV) で水溶性分解物の変化を追跡した. さらに凍結乾燥により得られた水溶性加水分解物に対して, 赤外分光 (FT-IR) および1H NMR分析を行った. 80℃に保った蒸留水に10日間浸漬したところ, ブレンド繊維の分子量Mn, Mwは未分解前の1/4にまで低下した. 浸漬液中の加水分解物には波長λmax200nmの付近にUVの最大吸収が観察され, それらの値も浸漬時間の増加につれ増大した. ブレンド繊維の加水分解に伴って, ブレンド繊維中のナイロン6は水溶性のε-アミノカプロン酸のオリゴマーまたはモノマーを生成することが明らかになった.
  • 小林 美貴, 倉本 隆宏, 土橋 秀康, 望月 雅文, 明畠 高司, 岸 良一, 平佐 興彦
    1995 年 52 巻 2 号 p. 121-124
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    熱応答性のよいスポンジ状のポリビニルメチルエーテル (PVME) ゲルの調製条件を, 生成するゲルの構造に及ぼす前照射の吸収線量および本照射時の試料温度の曇点よりの上昇度の影響の観点から, 実験的に検討した. PVME水溶液にNaClを加えることにより溶液の曇点を調整し, 前照射における種々の吸収線量および種々の本照射試料温度の曇点よりの上昇度のもとでゲルを調製した結果, スポンジ状のゲルの得られる操作条件領域が明らかになった. また, 前照射された水溶液の粘度, 分子量分布の測定結果を併せ考えると, スポンジ構造の形成には相分離速度と架橋反応速度との競争のバランスがとれるような前ゲル状態が必要と考えられる.
feedback
Top