高分子論文集
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52 巻, 4 号
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  • 小野 浩司, 川月 喜弘
    1995 年 52 巻 4 号 p. 195-206
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    液晶/高分子複合体の特性に及ぼす, 液晶と高分子の界面の相互作用, モルフォロジーの影響について考察した. まず界面の相互作用を制御するために, 界面の制御層を持った新しい複合体 (Interface-Controlled Polymer/Liquid crystal Composite (IC-PLC)) を提案した. この複合体では, 界面層の組成, 材料を変えることによってさまざまな特性を持った複合体を形成することができた. この新しい方法を用いて, poly (vinyl alcohol) (PVA) /液晶複合体の特性向上を試み, 特性向上のためには, 界面層にふっ素を含有させることが効果があり, この原因はアンカリング強度の測定から液晶と高分子の相互作用が弱くなったためであることがわかった. さらに特性を向上させるために, 液晶ドロプレットを歪ませ, 電場無印加時の光散乱を増強させる方法として, 水とメタノールの混合溶媒を用いる新しい方法を提案した. この方法により特性の改善を試みた結果, 駆動電圧を6Vrms, ヒステリシスを0.2Vrms以下, 応答速度を11msと特性を向上させることができた.
  • 田中 章
    1995 年 52 巻 4 号 p. 207-210
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    FTTHの構築により加入者, 特に家庭内にB-ISDNの信号がサービスされた場合の光通信網の候補として, 大口径で, 取り扱いやすく, かつ光コネクタなど周辺部品の経済性に優れるプラスチック光ファイバ (POF) が注目されてきた. 伝送速度 (NRZ符号) 700Mbit/sまでの高速応答性を屈折率分布型およびステップインデックス型POFについて, 評価した. 電気光変換部には, POFの伝送損失の窓に相当する赤色半導体レーザー (発光波長: 650nm) を用い, 遮断周波数が490MHzの高速応答が確認できた. また, アイパターンの測定から100mの光ファイバ長さに対して, 屈折率分布型で700 Mbit/s, ステップインデックス型で156Mbit/sが伝送できることを確認した. 屈折率分布型POFの広帯域持性を実証するとともに, FTTHの家庭内通信媒体として, POFが可能であることがわかった.
  • 佐藤 寿弥, 杉原 光律, 林 崇子, 荻野 賢司, 伊藤 祐一
    1995 年 52 巻 4 号 p. 211-215
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    テトラフェニルジアミノビフェニル (TPD) 単位を側鎖に含むスチレン型 (PST), メタクリレート型 (PMA), およびフォスファゼン型 (PPZ) ポリマーを合成し, 電気化学的. 光学的物性の評価, 正孔輸送材料としての評価を行った. 紫外可視スペクトル, イオン化ポテンシャル, 正孔移動度の測定結果より, TPD単位をポリマーの側鎖に導入することによる電気的及び光学的物性変化は小さく, TPDのポリマー分散膜と同程度の高い正孔輸送能を持つことがわかった. これらのポリマーを正孔輸送層, アルミニウムキノリン錯体 (Alq) を電子輸送性発光層に用いた有機電界発光 (EL) 素子 (ITO/正孔輸送ポリマー/Alq/Mg: Ag) は 3000~6000 cd/m2の輝度を示し, これらのポリマーがEL素子の正孔輸送物質として有効であることがわかった.
  • 城戸 淳二, 原田 学, 長井 勝利
    1995 年 52 巻 4 号 p. 216-220
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ホール輸送性のトリフェニルアミンを側鎖に有するN-置換ポリメタクリルアミド (PTPAMA) を合成し, 積層型有機エレクトロルミネッセント素子 (EL素子) のホール輸送層として使用した. 陽極にインジウムースズ酸化物 (ITO), 陰極にマグネシウム-銀 (10: 1), 発光層に電子輸送性のトリス (8-キノリノラト) アルミニウム (III) 錯体 (Alq) を使用した二層型素子 (ITO/PTPAMA/Alq/Mg: Ag) から10Vで6000 cd/m2の高輝度が得られ, このポリマーが高いホール輸送性を有し, 有機EL素子のホール輸送層として有効であることが示された.
  • 村井 秀哉
    1995 年 52 巻 4 号 p. 221-228
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    高分子分散液晶 (PDLC) の液晶相に二色性染料を溶解したゲスト・ホスト型PDLC (GH-PDLC) の特性を染料分子の配向による吸光度の変化のみを考慮した近似的取扱い (入射光の屈折・散乱, 偏光面の回転などを無視) により, 液晶滴の形状, 液晶分子の配向方向, 層数 (液晶滴の積層数) との関係において検討した. (1) OFF時の透過率は2層型<積層型GH<PDLC (x) <PDLC (R) <PDLC (z) の順になる. (2) 層数mの増加に伴いOFF時の透過率は低下するが, その変化率はmが3程度でかなり小さくなる. (3) 液晶滴の対称軸の方向を水平にすることによりGH-PDLCのOFF時の透過率が低下, コントラストが向上する. (4) 染料分子が球状に分布するため吸光に寄与しない染料分子がかなりあり, この点において水平配向のGH型に比ベコントラストなどにおいて不利である. (5) 計算による透過率は実測値に比べやや大きい.
  • 米竹 孝一郎, 篠原 充, 虻川 重昭, 増子 徹
    1995 年 52 巻 4 号 p. 229-237
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    p-ヒドロキシ安息香酸 (HBA), テレフタル酸 (TPA), ビフェノール (BP), イソフタル酸 (IPA) からなる液晶性全芳香族ポリエステル共重合体のIPAモノマー組成比が異なる2種のコポリマーをペンタフロロフェノールとクロロホルムの混合溶媒を用いて成膜して, それらのコポリマーフィルムの高次構造および熱処理に伴う高次構造変化について検討した. 溶媒キャスト法で成膜したHTBIコポリマーフィルムにはわずかに微結晶の形成は認められるものの結晶性は極めて低く, 透明で等方的な構造を示した. フィルム内の分子鎖はフィルム面とほぼ水平に積層した構造を示し, これは剛直鎖からなる高分子の特徴と考えられる. as-castフィルムはTg以上の温度での熱処理により, 低温結晶化を生じ, 密度は熱処理温度に伴って増加する傾向を示した. as-castフィルムには斜方晶の微結晶が形成され, 微結晶は低温結晶化により生長するために, 斜方晶から六方充填構造への相転移は200℃~230℃と, 溶融成形試料よりも高い温度で生じた. 非晶性の高いas-castフィルムはいずれも高い引張伸度を示し, IPA組成が12 mol%のフィルムにおいては180%という高い伸度を示した. このように溶媒キャストフィルムは熱処理や延伸操作によって高次構造が比較的幅広く変化することが示された.
  • 木部 茂, 菊池 裕嗣, 梶山 千里
    1995 年 52 巻 4 号 p. 238-242
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    低分子液晶分子のホモジニアス配列からホメオトロピック配列への分子配列遷移の急峻性は, ベンドとスプレイモードの弾性定数の比, K3/K1が小さいほど高くなる. 一方, 液晶の弾性定数は, 液晶分子自身の幾何学的形状や, 分子配列の近距離秩序性に影響される. 本研究では, ネマチック相を示す低分子液晶にスメクチック相をとりやすい側鎖型高分子液晶を添加し, 分子ラテラル方向の近距離秩序性を変化させた複合系について, 分子配列遷移の急峻性を検討した. 複合系の高分子液晶分率が増加するとともに, ネマチック液晶中のスメクチック的短距離秩序性が増加し, K3/K1の値が減少した. さらに, 液晶セルの電気容量の印加電圧依存性から評価される, 液晶分子配向の立ち上がり応答の急峻性が向上した. これらの結果は, 側鎖型高分子液晶の添加が, ネマチック液晶の電界応答挙動の改善に有効であることを示している.
  • 岩下 芳典, 菊池 裕嗣, 梶山 千里
    1995 年 52 巻 4 号 p. 243-248
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    (高分子/液晶) 複合膜は新規な液晶示素子として期待されている. この複合膜を電界駆動する際の立ち下がり応答は, 液晶分子の配列に対するアンカリング効果に支配されている. 液晶分子が膜面に対してプレチルト角を有するように液晶が2枚の等方性高分子ではさまれたセルでは, 偏光顕微鏡観察下でネマチック液晶に代表的な組織であるシュリーレン組織と同時に, 特異的な線状組織 (ブロッホ壁) が出現する. ブロッホ壁の幅は, 液晶分子の歪みのエネルギーと極角方向のアンカリングによるエネルギーとの釣り合いに支配されている. したがって, 力学的平衡状態における総自由エネルギー量と, ブロッホ壁の幅との関係式より, 極角アンカリング強度Apolarを評価することが可能となり, この方法は「表面ディスクリネーション法」と呼ばれている. 表面ディスクリネーション法を用いて評価した, 側鎖の化学構造の異なる3種のフマレート系高分子の極角アンカリング強度は, 側鎖長の増大, すなわち, 高分子表面における側鎖の熱運動性の増大とともに低下した. 外場を用いない表面ディスクリネーション法が (等方性高分島/ネマチック液晶) 界面の極角アンカリング強度を測定するのに適した方法であることを示すことができた.
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