高分子論文集
Online ISSN : 1881-5685
Print ISSN : 0386-2186
ISSN-L : 0386-2186
52 巻, 5 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 中村 隆司
    1995 年 52 巻 5 号 p. 249-257
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    セラミック高温超伝導体 (Y系, Bi系, およびT1系) バルク試料表面にモデル的な4種の有機ケイ素化合物からのプラズマ重合膜を堆積させ, 水蒸気の存在する環境下あるいは高温・無酸素下でのこれらの膜の超伝導体へのパッシベーション (特性劣化抑止) 性能を調べた. その結果, ヘキサメチルジシラザン (SZ) もしくはビス (トリフルオロプロピル・ジメチル) ジシロキサンから形成した膜は, 常温において優れた水蒸気からの保護作用を示した. またSZからの膜は85℃の高温においても水蒸気からの保護作用を維持し, かつ400℃, アルゴンガス下 (すなわち無酸素状態) においてもパッシベーション効果を有することがわかった. 膜の特性評価として構造解析と水蒸気および酸素透過性測定を行い, パッシベーション作用との関連を考察した.
  • 祖父江 晋, 根木 一彌
    1995 年 52 巻 5 号 p. 258-264
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ナイロン66を塩化リチウムとジメチルスルホキシド溶液に溶解し, 脱溶媒して得られた変性ナイロン66の熱処理による状態変化を固体高分解能13C, 7Li NMR法により検討した. 未熱処理状態では塩化リチウム-ジメチルスルホキシド錯体とナイロン66は部分的な相互作用をしているが, 熱処理によってこの相互作用が増大することを見いだした.
  • 越智 光一, 福島 功明, 藤田 典子
    1995 年 52 巻 5 号 p. 265-271
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ビスフェノールA型エポキシ樹脂をRTV (room temperature vulcanized) シリコーンで変性した系における内部応力低下の機構を詳細に検討した. 未変性系の内部応力は成形時の冷却過程における温度低下に伴い直線的に増加し, 再び加温すると同じ経路を通って減少した. 一方, RTVシリコーン変性系の内部応力は冷却過程の70℃付近で, 試料の一時的な膨張に起因する急激な低下を示した. この応力の急激な低下により室温での内部応力は未変性系に比べて大幅に低下した. この冷却過程に起こる硬化物の特異な膨張の原因を偏光顕微鏡を用いて検討したところ, シリコーン-マトリックス界面に発生した局所的な内部応力によるシリコーン相のキャビテーションが原因であることが明らかとなった.
  • 〓 茂盛, 栗山 卓, 成澤 郁夫, 藤本 元弘
    1995 年 52 巻 5 号 p. 272-280
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ナイロン6/熱可塑性エラストマーアロイの構造をDSC, レオグラフ, X線回折装置, 偏光顕微鏡, 光散乱装置, 画像解析装置, および走査型顕微鏡を用いて調べた. 用いた熱可塑性エラストマーはダイマー酸ポリアミドエラストマーであり, ハードセグメントがナイロンオリゴマー, ソフトセグメントがポリエーテルからなるものである. これらのアロイの構造は相溶化剤を添加したときとも比較検討した. DSCおよび力学損失の曲線からこれらポリマー間の部分的な相溶性を指摘した. ナイロン6の不均一な球晶構造がアロイ化により均一な球晶構造に変わる. また, アロイに相溶化剤を添加することでより微細な球晶構造が得られることも明らかになった.
  • 川邊 浩, 佐藤 洋
    1995 年 52 巻 5 号 p. 281-285
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    クロロメチル化ポリスチレン (CMPS) とその低分子モデルである塩化ベンジル (BC) とキナアルカロイド (キニーネ, シンコニン) との反応をジメチルフォルムアミド (DMF), ジメチスルホオキシド (DMSO) 中で速度論的に検討した. 比較のためシンコナアルカロイドの部分構造塩基モデルであるキノリン, キヌクリジンについても行った. CMPSの反応性はBCのそれと同等であった. 反応の活性化自由エネルギーはキヌクリジン≪シンコニン≈キニーネ≪キノリンの順に高くなった. この順位はまた活性化エンタルピーの順位とも一致した. 塩基のpKa値の順位はこの逆である. それゆえ, 塩基の求核性が重要な役割をしていると思われる. したがってCMPSのクロロメチル基との反応において, 塩基の反応部位はキノリン側でなくキヌクリジン塩基部位であると推測される. またCMPSとシンコニンおよびキニーネの反応ではDMF中でもDMSO中でも反応中の加速現象が認められた.
  • 越智 光一, 清水 義弘, 露野 円丈, 中西 義則, 村田 保幸
    1995 年 52 巻 5 号 p. 286-293
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    代表的なメソゲン基の一つであるビフェニルエーテルを骨格とするビフェノール型エポキシ樹脂の動力学的および力学的性質に対する硬化剤中の活性水素の立体配置の影響が検討された. その結果, このエポキシ樹脂をカテコールノボラックのように活性水素の隣接した硬化剤と反応させると硬化物のガラス転移がほとんど消失し, しかもその現象は硬化剤の活性水素が隣接していればその他の部分の構造を変化させても共通に観察されることが示された. また, エポキシ樹脂の活性エステル硬化のように網目鎖に嵩高い分岐が導入される硬化系では明瞭なガラス転移が観察された. これらの実験事実から, メソゲン基を含むエポキシ樹脂硬化物にみられるガラス転移の消失は, 網目中で立体構造的に隣接するメソゲン基の配向により網目鎖のミクロブラウン運動が強く抑制された結果と考えられた.
  • 安 英, 小山 俊樹, 英 謙二, 山田 瑛, 白井 汪芳, 池田 順一, 米野 肇
    1995 年 52 巻 5 号 p. 294-298
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    25 mol%部分リン酸エステル化したポリ (ビニルアルコール) (P-PVA) をグルタルアルデヒドで架橋した陽イオン交換能を有する架橋P-PVA樹脂を合成し, 各種金属イオンに対する選択分離能を調べた. 架橋P-PVA樹脂は, 部分リン酸化PVAをグルタルアルデヒド水溶液中で塩酸を触媒として部分アセタール化することにより合成した. その交換容量は, 2.86 meq/g-乾燥樹脂で, 交換速度も速く, 通液性も優れていた. この樹脂の各pHでの各種金属イオンに対する分配係数, 吸着平衡定数を求めた. この樹脂を用いた置換クロマト法により, 1 mol/l塩酸溶液中でCu (II), Cr (III) などの金属イオンからFe (III) イオンを完全に分離できることが明らかになった.
  • 臼杵 有光, 川角 昌弥, 小島 由継, 岡田 茜, 倉内 紀雄, 小川 忠男, 荒賀 年美
    1995 年 52 巻 5 号 p. 299-304
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ナイロン6中に粘土が均一分散したナイロン6-粘土ハイブリッド (NCH) の分子構造を電界脱離質量分析法により分析した. NCHのマススペクトルから主なフラグメントイオンを読み取り, 特性的なイオン群に分類した. 次に, 予想されるNCHのナイロン成分の構造を, 重合の際に粘土の有機化に用いた原料であるナイロン12モノマーユニット (12-アミノラウリン酸) の位置で2種類推定した. 各構造に由来する推定フラグメントイオンをナイロン6のフラグメンテーションに基づき考察し, 実験結果との整合性を詳細に検討した. その結果, 12-アミノラウリン酸がナイロン6の末端ではなく, ナイロン6の主鎖中に組み込まれて存在していることが明確に示唆された. そこで, NCHの構造からナイロン12のモノマーユニットを除いてナイロン6のホモポリマーを粘土存在下で重合したところ熱的物性が改善された.
  • 尾野 凱生, 網田 佳代子, 橋詰 源蔵, 石田 信伍, 小西 孝
    1995 年 52 巻 5 号 p. 305-314
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    振動ボールミルを用いて2種類の麻短繊維 (ラミー繊維およびリネン繊維) を空気やアルゴン雰囲気下, あるいはラジカル捕捉剤 (トルエン) の存在下で摩砕したときの特性変化について検討した. これら両繊維は摩砕初期において脱繊維化してフィブリルを生じその比表面積は大きくなったが, 摩砕時間の増加とともにフィブリルは凝集して粒状化し, その比表面積は減少した. また, この摩砕による機械的エネルギーを受けた両繊維は, セルロース主鎖の切断による重合度の急激な低下とともに非晶質化した. さらに, 未処理の両繊維に比較してこれら摩砕した繊維の表面活性度は, 劇的に増大し, その増加に及ぼす摩砕雰囲気の影響は次のとおりであった. 空気雰囲気>アルゴン雰囲気>空気雰囲気でトルエン添加. 特に, このトルエンの添加については, 摩砕時に生成する繊維上のメカノラジカルを消失させ, その表面活性度を減少させるとともに粒子相互の凝集を抑制することもわかった.
  • 山下 祐彦, 次田 浩, 近藤 美佐, 横山 文義
    1995 年 52 巻 5 号 p. 315-321
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    p-アセトキシ安息香酸 (ABA) あるいは4-アセトキシフェニル安息香酸 (APBA) を芳香族高沸点溶媒中, 低濃度で脱酢酸重合を行うとポリ (p-オキシベンゾイル) (POB) のウィスカー状結晶あるいはポリ (p-オキシフェニルベンゾイル) (POPB) のフィブリル状結晶集合体が得られる. これら両モノマーをさまざまな割合で溶液共重合し, 生成物を得た. 仕込比による生成物の形態変化とその生成機構について検討を行った. その結果, 両側組成付近と中間組成では生成機構が異なっていることが分かった. APBAの割合が0~5 mol%または70~100 mol%の範囲で得られる結晶化物はそれぞれのホモポリマーの場合と類似したオリゴマーの結晶化により生成したと考えられ, またAPBAの割合が10~60 mol%の中間組成で得られる塊状物は, オリゴマーの液-液相分離を経由して生成したと考えられる. この塊状物が得られる組成範囲では, どの広角X線回折写真においても, 六方晶的な充填を示唆するただ1本の回折線のみが観察されたこと. また, モノマー仕込比と生成物中のモノマー残基組成の良い一致が, 高速液体クロマトグラフで確認できることから, 塊状物は液-液相分離を経由して生成することが支持される.
feedback
Top