高分子論文集
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52 巻, 8 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 山崎 博人, 松田 賢哉, 山本 統平, 三軒 齊
    1995 年 52 巻 8 号 p. 465-471
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    両末端ポリオキシアルキレン変性ジメチルシロキサン (PSiE) を, 表面エネルギーの高いポリ (エチレングリコール) (PEG), または表面エネルギーの低いポリ (テトラメチレングリコール) (PTMG) と混合し, ハードセグメントにポリ (エチレンテレフタラート) (T) を用いた重縮合系ポリエーテル・ポリエステル型ブロック共重合体のソフトブロック鎖に組み入れた. PSiEと混合したポリエーテル鎖がPEGの場合でも, あるいはPTMGの場合でも. いずれもPSiEブロック鎖が共重合体の表面層に濃縮される. この濃縮は, ポリエステルハードセグメントとの間でハード・ソフトの相分離を生じやすい組成ほど促進されることを, 水の接触角測定とESCA解析により明らかにした.
  • 筏 英之, 棚橋 朗, 森阪 信之
    1995 年 52 巻 8 号 p. 472-477
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    従来は, 材料の耐久性は重要な機能の一つとみなされてきた. プラスチック廃棄物による環境汚染が顕在化しだすと, 耐久性という至上課題がゆらいできた. そして, 分解性プラスチックが出現し, 大きな期待がかけられるようになった. ポリ乳酸などの生分解性ポリマーは, 光エネルギーの吸収によっても分解することがわかった. 本報では主鎖骨格中に芳香環構造を含むポリエステルであるポリエチレンテレフタレートの光分解性を測定し, ポリエステルの光分解性と分子構造との関係を調べた. UV光源を使い, ポリエチレンテレフタレートフィルムにUV照射を行い, 照射によるゲル形成, UV吸収スペクトル変化, IR吸収スペクトル変化, 主鎖切断数などを測定した. ポリエチレンテレフタレート分子はカルボニル基を含むが, 同じポリエステルであるポリ乳酸の光分解速度と比べると遅く, 光分解性の抑制はフェニレングループによると考えた.
  • 小林 正俊, 高橋 辰宏, 南川 慶二, 滝本 淳一, 小山 清人
    1995 年 52 巻 8 号 p. 478-483
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本研究ではチタン酸カリウムウイスカーを充填したポリスチレン溶融体の動的粘弾性, 定常せん断粘度および一軸伸長粘度を140~250℃の範囲で測定し, 時間-温度換算則を適用した. 動的粘弾性の高周波側が一致するように, そして一軸伸長粘度の線形領域が一致するように決定した移動係数αTはウイスカーの充填量や変形様式に依存せず同じWLF式で表すことができた. 一軸伸長粘度の線形領域では短時間側の増加傾向および長時間側の定常値ともに良好に1本のマスターカーブに一致し, 高分子/無機粒子複合系の一軸伸長粘度の線形領域において換算則が成立することを確認した. また, 非線形強度の換算ひずみ速度依存性より, 換算則が均一系および複合系の非線形領域においても成立すること示す結果を得た. ポリスチレン/ウイスカー複合系においてもせん断粘度と一軸伸長粘度の線形領域にTrouton則が成立した.
  • 〓 茂盛, 栗山 卓, 成澤 郁夫, 藤本 元弘
    1995 年 52 巻 8 号 p. 484-490
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ナイロン6およびナイロン6と3種類の熱可塑性ダイマー酸系重合脂肪酸ポリアミド系エラストマーを混合したポリマーアロイの力学特性について検討した. エラストマー添加量の増加による分散粒子径の増大と結晶化度の低下とともに弾性率と降伏強度の低下が生じた. ナイロン6の衝撃強さは18℃から45℃まで昇温しても低い値が示した. これに対し, ナイロン6のポリマーアロイの衝撃強さは温度の上昇につれて著しく向上した. また破壊面と損傷領域のSEMの観察によってナイロン6の破壊プロセスがノッチ先端での塑性拘束による脆性破壊であることを明らかにした. ナイロン6のポリマーアロイの破壊は23℃の場合ナイロン6と同様でノッチ先端の塑性拘束によるものであるが, ノッチ先端の塑性変形領域で多数のボイドと部分的に伸ばされたフィブリルから構成されている. この変形が衝撃エネルギーを吸収する. 一方, 45℃の場合にはナイロン6のポリマーアロイは延性破壊し, 塑性変形領域内で多数の変形したボイドと塑性変形による引き伸ばしが生じている. この変形は応力状態が平面ひずみ状態から平面応力に転移したことで促進されたものである. 延性破壊は塑性領域におけるボイドの連結によってノッチ先端から開始した.
  • 小瀬垣 公穂, 岩瀬 圭子, 佐野 博成, 三輪 知代
    1995 年 52 巻 8 号 p. 491-496
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリプロピレン (PP) /イオン結合型無機充填材系への特定有機酸処理による弾性率などの力学特性向上手法につき検討した. その結果, 炭酸カルシウムのようなイオン結合型無機充填材への, 特定の有機酸処理により飛躍的に弾性率の向上が図れると同時に衝撃強度の維持も図れることを確認した. また, この作用機構について検討を加えた. その結果, 有機酸が無機充填材と反応し該表面が活性化され核剤効果を示すようになったことが要因であることが判明した. このような手法は, 多くのイオン結合型無機充填材にも適用できることが判明した.
  • 北尾 幸市, 鶴田 秀和
    1995 年 52 巻 8 号 p. 497-503
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリプロピレンの衝撃特性に関するアニーリングの影響についてホモポリマーとコポリマーを用いて検討した. ホモポリマーではアニーリングにより衝撃吸収工ネルギーの顕著な増加および脆性/延性遷移温度の低下が認められた. また, 耐衝撃性のコポリマーにおいても遷移温度の低下はホモポリマーと同様に認められた. 結晶化温度が低温の時, 衝撃特性に及ぼすアニーリング効果が大きい. アニーリングにより衝撃吸収エネルギーが増加し, 遷移温度が低下する機構として, 非晶部を拘束していた微細結晶の融解・消失が考えられた.
  • 浅田 啓介, 城戸 淳二, 倉本 憲幸, 長井 勝利
    1995 年 52 巻 8 号 p. 504-511
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    N-アルキル置換アクリルアミド系ポリマーのアニオン性ポリスチレン (PS) ラテックスに対する吸着特性とこれらのポリマーの親疎水性の指標となる水溶液の曇り点, および水溶液中での溶存状態に関係する表面張力やピレンの蛍光強度比 (I1/I3) との関係について検討した. 本研究で用いたN-アルキル置換アクリルアミド系ポリマーはすべてアニオン性のPSラテックスに対し吸着性を示し, その吸着はLangmuir型であった. ホモポリマーおよび側鎖のアルキル鎖の短いコモノマー単位を有するコポリマーよりもコモノマー単位のアルキル鎖が長く, その含有量が高いコポリマーの方が高い飽和吸着量を示した. PSラテックスに対するポリマーの吸着の平衡定数はI1/I3値と相関があり, I1/I3値が高く, 疎水ドメインを形成しないポリマーの方が高くなる傾向があった. PSラテックスへのポリマーの吸着は主に疎水相互作用によるもので, 水溶液中でのポリマー鎖の溶存状態が吸着の平衡定数および飽和吸着量に関係することがわかった.
  • 大内 宗城, 堀内 裕治, 酒井 義郎
    1995 年 52 巻 8 号 p. 512-517
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    架橋ポリスチレンスルホン酸系のイオン交換体内のNa+イオンおよび水の動的挙動についてNMR法により検討した. 水に浸したナトリウム型のイオン交換体の樹脂相内のNa+イオンおよび水の拡散定数をパルス磁場勾配NMR法により測定した. その結果, イオン交換体内のNa+イオンおよび水分子の拡散は, 水溶液中のNa+イオンおよび水分子の拡散に比べて5, 6倍程度遅くなっていることが判明した. 温度を変化して拡散定数を測定したところアレニウスの関係を示したので, 拡散の活性化エネルギーを求めた. さらに, Na+イオンおよび水のNMRの緩和時間を測定した. Na+イオンおよび水の緩和時間は水溶液中より短く, Na+イオンおよび水分子の運動が束縛されていることが明らかになった. 温度を変化して緩和時間を測定したところアレニウスの関係を示したので, 運動の活性化エネルギーを求めた.
  • 大谷 規隆, 井上 幸彦, 武石 一路, 松田 圭祐
    1995 年 52 巻 8 号 p. 518-523
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    カルボキシル基結合橋かけポリスチレン (PS-COOH) あるいはスルホ基結合橋かけポリスチレン (PS-SO3H) を用い, 触媒である銅 (II) イオンを水相から反応場である樹脂内に相間移動によって移動させ, アラニンデシルエステル (AlaODc) の加水分解をトルエン/銅塩水溶液/樹脂の三相系で行った. PS-SO3HよりPS-COOHを用いた方が反応は速く進行した. また, 樹脂の酸性基導入量を増すこと, 銅塩として酢酸銅 (II) を用い銅塩水溶液の濃度を増すことによって反応は加速した. アルコールあるいはトリブチルアミンを添加することにより反応は促進され, 加水分解生成物であるアラニンは反応を阻害することが分かった. 以上の結果を基にこの三相系におけるAlaODcの加水分解の反応機構を考察した.
  • 山本 信也, 小松 一男, 高松 翼, 松岡 昌弘
    1995 年 52 巻 8 号 p. 524-527
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    フローセルタイプのGPC/FT-IRを用い, 化粧品分野で幅広く利用されているシリコーン系界面活性剤であるポリオキシエチレン変性ジメチルポリシロキサン (POE-DMSi) のPOE重量分率であるポリエーテル変性率の簡便な測定法とこの分子量依存性について検討した. 試料を分取用GPCにより分画し, 1H NMR測定結果よりポリエーテル変性率の絶対値を求め, これとGPC/FT-IRで測定したPOE基の指標となるC-O-Cとシリコーン骨格の指標となるSi-Oの吸光度比と相関を検討し, 良好な結果を得た. POE-DMSiの低分子領域におけるポリエーテル変性率の分子量依存的増加については, 反応させるエチレンオキシド鎖長に起因することがわかった.
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