高分子論文集
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53 巻, 7 号
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  • 野村 孝夫, 西尾 武純, 今泉 公夫, 植田 致知, 小山田 洋
    1996 年 53 巻 7 号 p. 389-397
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリプロピレン単独重合体 (PP) の立体規則性を上げ分子量を下げると, 曲げ弾性率 (FM), 熱変形温度 (HDT) が向上した. これらのホモPPの結晶化度を広角X線回折法, 密度法によって測定したが, 結晶化度には変化はみられなかった. 一方, 動的粘弾性で測定した非晶部の力学的分散 (tanδ) を示すピーク面積が低下すると, 融解エンタルピーが増加し, FMとHDTが向上した. これらの挙動は非晶部の状態が変化していることを示しており. 非晶部と結晶部が部分的に拘束しあった相 (中間相) に由来すると考えられる. 等温結晶化挙動を解析した結果, 線成長速度が高くなるほど, また長周期が短くなるほど中間相の量は増加した. また, 結晶子サイズは立体規則性と分子量の影響を受けなかったことから, 中間相は結晶子表面において非晶部と結晶部が相互拘束している部分であり, その量はラメラ中の結晶子の配列状態が密になるほど増加すると考えられる.
  • 大杉 宏治, 田辺 久記
    1996 年 53 巻 7 号 p. 398-405
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    白金触媒を用いたヒドロシリル化反応による有機/無機ポリマーネットワークを, アルケニル基含有アクリル系ポリマーとフェニルメチルハイドロジェンポリシロキサン (PMHS) との高分子架橋反応により得た. アルケニル基含有酢酸エステルとPMHSとのモデル反応を行い, 得られた生成物の29Si NMRスペクトルより, ヒドロシリル化反応とシリルエステル生成反応との二つの反応が生じることがわかった. 酢酸2-メチル-2-プロペニルおよび酢酸3-メチル-3-ブテニルとPMHSとのモデル反応では, 選択的にヒドロシリル化反応のみが生じた. ラジカル単独重合で得られたpoly (3M3BMA) とPMHSとの熱硬化膜は優れた耐アルカリ性 (0.1 N KOHエタノール溶液) を示した. その硬化膜の動的ガラス転移温度Tgは架橋密度ρ (E′) とともに増加する傾向を示し, 関係式Tg=K1 (logρ (E′) +log K2) (K1, K2はそれぞれ定数, K1: 70, logK2: 3.0) に従うことを確認した.
  • 高山 茂樹, 雨宮 布美子, 武田 邦彦
    1996 年 53 巻 7 号 p. 406-414
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリフェニレンエーテル (PPE) およびポリフェニレンエーテルとポリスチレン (PS) の相溶性ポリマーアロイについてその燃焼挙動および有機リン化合物とのブレンドによる燃焼挙動の変化を調べた. その結果, アロイにおいてはPPEの含有量および芳香族有機リン化合物の場合にはその中のリンの含有量に比例して燃焼性が低下する結果を得た. またPPEおよびアロイの熱重量分析 (TGA), 燃焼表面の元素分析などによりPPEおよびPPE/PS相溶性アロイにおいて燃焼時には高分子表面で酸素不足になり, 不活性雰囲気中での高分子の分解反応が進むことが明らかになった. またPPEはこの過程で転位反応を起こし, さらに元素比では水素と酸素が少ない構造へ変化する可能性が示唆された.
  • 草薙 浩
    1996 年 53 巻 7 号 p. 415-422
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    アイソタクチック-ポリメタクリル酸メチルの1本鎖の立体構造について. (5/1) らせんと (10/1) らせん構造を高分子モンテカルロ法を用いて熱運動によるコンフォメーションゆらぎを与えて計算した. その結果, (5/1) らせんコンフォメ-ションはポテンシャルエネルギーのバリアーを越えてX線結晶構造解析によって明らかにされている (10/1) ~ (13/1) らせん構造に収歛し, この構造の正しいことを分子運動を考慮したエネルギー計算の立場から支持した. さらに計算結果から, 主鎖の立体構造にらせん軸に垂直な2回回転対称性が出現する原因を考察した.
  • 堀内 徹, 山根 秀樹, 松尾 達樹, 高橋 雅興
    1996 年 53 巻 7 号 p. 423-433
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリアミド6 (PA6) と, 無水マレイン酸 (MAH) 変性した (グラフト率0~0.8wt%) 高密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンとのブレンド (ブレンド比10~30wt%) を2軸混練押出機で調製し, 射出成形した. ブレンドポリマーの種類, ブレンド比, ならびに変性率の差によるモルフォロジーと摺動特性の変化を評価し, 機械的特性との関連を調べた. PA6/HDPEおよびLDPEブレンドは, それぞれトライボロジー特性の傾向が異なっていることから, その挙動が発現する機構も相違すると考えられた. これはMAHのグラフトによるマトリックス中の分散粒子径変化などによってもたらされるブレンドの機械的性質の変化 (引張りおよび曲げ剪断の強度とそれらの降伏応力) で定性的に説明される.
  • 堀内 徹, 山根 秀樹, 松尾 達樹, 高橋 雅興
    1996 年 53 巻 7 号 p. 434-440
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリアミド6 (PA6) と, 無水マレイン酸 (MAH) 変性した (グラフト率0~0.3wt%) ポリプロピレンとのブレンド (ブレンド比10~30wt%) を2軸混練押出機で調製し, 射出成形でテストピースを作製した. ブレンド比ならびに変性率の差によるモルフォロジーと摺動特性の変化を評価し, 機械的特性との関連を調べた. PA6/PPブレンドは, PPにMAHを導入して分散粒子径を変化させてもトライボロジー特性にはほとんど影響しなかった. トライボロジー特性と機械的特性の比較から, 両者の相関はMAHの有無によるPA6/PP間の相溶化に影響を受けることが推察された.
  • 池田 能幸, 有鼻 至澄, 小林 完治, 沢田 薫, 香西 保明
    1996 年 53 巻 7 号 p. 441-447
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    アクリルアミド (AAm), ならびにメタクリルアミド (MAAm), クロトンアミド (CAm) とアンモニア水とを封管中で加熱することによるオリゴ-β-アミノ酸の合成を各種条件下で検討した. その結果, AAmは反応初期にアンモニアとの付加物であるβ, β', β”-ニトリロトリプロピオンアミドを生成し, これからさらにβ-アラニンアミドが形成され, これが重縮合してオリゴマーを与えるが, MAAm, CAmではAAmとは異なり, アンモニアが付加してそれぞれβ-アミノ酸アミドを形成し, これが重縮合してオリゴマーを与えると推察される. また, AAm, MAAm, CAm, チグリンアミド (TAm) の同一条件下での反応性を比較すると, AAm>MAAm>CAm>TAmの順となった. さらには, AAmと各種有機アミンとの反応についても若干検討した.
  • 木村 隆夫, 壁矢 良次, 三部 正大
    1996 年 53 巻 7 号 p. 448-452
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    頭-頭結合を構成単位に含むポリメタクリル酸t-ブチル鎖を模倣した化合物である2, 3-ジメチル-2, 3-ジ (2, 2, 2-トリクロロエチル) コハク酸ジ-t-ブチルの熱分解を180℃で行い, その挙動およびt-ブトキシカルボニル基の寄与を調べた. このコハク酸誘導体にはmeso-およびdl-形の2種類の立体異性体が存在することから, その立体配置の相違が熱分解に及ぼす影響についても検討した. その結果, イソブテンの脱離, 続いて脱水環化が進み, ジカルボン酸を経由して, 最終的に酸無水物が生成した. 特に, dl-形は第二段階の脱水環化において有利な立体配座を取り得ることからmeso-形に比べて高い反応性を示した.
  • 大浦 純一, 柴山 充弘, 櫻井 伸一, 野村 春治, 岩本 壮弘
    1996 年 53 巻 7 号 p. 453-460
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ナイロン6 (Ny6) と芳香族ポリアミドであるポリメタキシレンアジパミド (MXD) からなる2成分ブレンドフィルムの引き裂き性と構造の関係について報告する. ブレンド試料の引き裂きのずれおよび荷重は, 引き裂き方向が機械の押出し方向 (MD) の場合と, その垂直方向 (TD) の場合で差が生じた. ホモポリマーではこのような差はなかった. また, TEM観察の結果, ブレンド試料はMDに連続相を成す細長いMXDドメインがNy6マトリックス中に存在している構造であることが分かった. この異方的なドメイン形状が, 引き裂き性のMDとTDにおける差の原因であると考えられる.
  • 草薙 浩
    1996 年 53 巻 7 号 p. 461-464
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    赤外法で測定したポリマー収着水の収着エネルギー (ΔE) とNMR法で測定した相関時間 (τc) の間にτc=A exp (BΔE) ただし, AおよびB, 定数の関係のあることを見い出した. その結果, ポリマー収着水はポリマーマトリックス中で, ポリマーのもつ極性基構造に依存した引力相互作用を受けた状態で存在し, 両者間の相互作用を赤外法ではエネルギー (ΔE) という静的情報として, 一方, NMR法では運動 (τc) という動的情報として観測していることが明らかとなった.
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